103 名前:名前が無い程度の能力[sage] 投稿日:2008/01/03(木) 02:37:02 ID:Zq7f3z6AO
その流星が降り注ぐ日も、巫女はひとりきりでした。
いつもなら仲良く遊ぶ魔女たちも、フラフラと神社に立ち寄る妖精や妖怪も、この日だけは一番の友達たちと過ごしています。
流れる星を長めながら、少女は一番好きな彼女たちのことに心を馳せていました。
私じゃ駄目なんだろうな。
私は場違いなんだろうな。
何で私はこんなのなんだろうな。
少女は空に歌いました。
満天の 星に縋りて 願わくば 空より遠き 夢よ叶えと

「つらい思いをさせてごめんなさい」
いつの間に背後に立っていた妖怪は、涙を流して謝罪を繰り返しました。

一夜。

朝になると、少女は見知らぬ家の布団の中にいました。
驚いて飛び起きると、母が心配そうに駆け付けてきました。
食卓には父がいました。
家の外には人間の友達がいて、みんなが親しく話しかけてきます。
おはよう、霊夢。寝ぼけたか、霊夢。遊びに行こうよ、霊夢ちゃん。
知らない人知らない人知らない人。ご飯を作ってくれる人頭を撫でてくれる人手を繋いでくれる人。
知らない知らない知らない人。
少女は泣きながら逃げ出しました。
魔理沙!
アリス!
会いたい相手の名前を叫びながら、少女は逃げて逃げて逃げました。
途中で飛ぼうと思って、飛べなくて転んで、泣きながら森を目指しました。
僅かに残った経験を反芻し、妖怪を避けながら森の中を駆け抜けます。
しかしそこは魔法の森、ただの人間は受け入れられるはずもありません。
少女は何度も入り口へと戻されて、ついに日が暮れて力も涙も尽きました。
少女は妖怪から隠れるように木に身体を預け、夜空を仰ぎます。
そこには、昨日も見たはずの星屑の夢想。
願いは聞き入れられました。
普通の女の子は、その普通な生き方を望んだはずだったのです。
一時の憧れのために、何よりも大切なものを簡単に捨ててしまったのです。
悔しくて、また涙が出てきました。
遠い昨日に心を馳せて、たったひとり自分に会いに来てくれた相手の名前を呟きます。
紫にもう一度会いたいな。

「あら、こんなところに人間がいるなんて珍しいわ」
願いは、
「逢う魔が時は家に帰らないと危ないわよ。でも……」
聞き入れられました。
「そのお陰で久しぶりの人間にありつけたわ」
妖怪は悲しそうに笑いました。
少女は嬉しそうに眠りました。