長野営業所では、持ち前の宴会芸を駆使して大口の契約を多数とり「ミラクルさなえ」の異名を欲しいままにする早苗さん
いまいち成績がふるわない遠野営業所へテコ入れする使命を帯びて長期出張に赴くことになる
1日2本のバスに乗った先の営業所で型どおりの自己紹介を終え、抱負だとかなんだとかを熱く語る早苗さん
長野営業所での話をすでに聞いているらしい面々はその言葉の一つ一つに頷き、深く聞き入っている様子
「ま、ともあれ初日ということだし……」と、所長さんが早苗さんの話をキリの良い所で区切り歓迎会をすると言う

いい加減酒も回ってきた所でめいめいの一芸披露となった大宴会
早苗さんの隣に座って徳利を持ち酌をする所長さんが言う「早苗さんにはトリを飾っていただくということで……」
一番手は赤いリボンの黒髪ポニテの確か霊夢さん「スプーン曲げしまーす」
その言葉に思わず苦笑する早苗さん、きょうび長野(とかい)ならスプーン曲げくらい誰でもできる
そんな顔に気づきちょっと恥ずかしそうに頬を染めて、でも芸を中断する訳にもいかずにスプーンを置いた机の前に立つ霊夢さん
温かく見守る早苗さんの前で両手をふわりと広げた霊夢さんが、やはりふわりと宙に浮き…… 机も浮き出した所で、空中で異様な回転を始めるスプーン
とんがり帽子を被った金髪の魔理沙さんが慌てて机を抑えこんだ瞬間めきめきと音を立てて絡まり出したスプーン
霊夢さんがゆっくりと降下を始め足が地面に着く頃、3cm立方程度まで圧縮されたスプーンが机にころりと転がった

「おいおい霊夢! 浮かせるのはスプーンだけでいいだろ。 お前と机まで浮いちまって! そんなだから早苗さんに笑われるんだぜw」、とからかう魔理沙さん
一方の早苗さんは目の前の状況をまだ信じられない。 そこにかかる「二番手妖夢、光を斬ります」の声
チンと鍔鳴りが聞こえた瞬間、妖夢さんの周囲を除き真っ暗になる室内
照明は確かに照っているのに、不自然な照らし方でしか光の無い部屋に唖然とする早苗さん
パチリパチリとスイッチをON/OFFする音、そして魔理沙さんの声「相変わらず判りにくい芸だなw 早苗さんも反応に困ってるぜ」
「未熟者ゆえ」寡黙でありながらもやはりどこか恥ずかしげに瞑目して頬を赤くする妖夢さん

「それじゃ私も恥ずかしながら……」そういって障子を開けて、縁側へ飛び出す魔理沙さん
「上手くいったらおなぐさみ、魔符『ミルキーウェイ』だぜ!」叫ぶと同時に上空へ一枚のカードを放る
その瞬間、まさにミルキーウェイの名前通り天上に煌く星の河が現れる
顔面蒼白な早苗さんの心中を知ってか知らずか魔理沙さんは「へへっ、私も人の事言える程大した芸じゃないけどな」と戻ってくる

さて宴会場の視線を独り占めにした早苗さんの番だ。 所長も「さ、見せてください。 貴女のミラクル!」とか囃したてる
かたかたと震える手を懐に突っ込み、引きつった笑顔で「お、お天水の奇跡ぃ」とか言いながら扇子を取り出して拡げると水がぴゅ~と吹き上がる
瞬間一気に冷え込む宴会場。 あわあわとなりながら荷物からお手玉を七つバトン七本取り出してジャグリング「七つの石と、七つの木~」
ぎり、と歯軋りすら聞こえるほど怒りの表情も露に詰め寄ってくる遠野営業所の皆さん
「田舎の営業所だからってバカにしてるんですか?」早苗さんが取り落としテンテンと転がるお手玉
ひぃっと叫びながら「お、おどろけ~……!」と、始めた傘の上での球回しを見せても当然遠野営業所の面々の足は止まらない
壁際に追い詰められて取り囲まれ、早苗さんが「うわぁ!」としゃがみこんだその瞬間

「スプーン曲げしまーす」と、霊夢さんの声。 やんやとはやし立てる皆。 自分も席について酒を飲んでいる
今のは夢だったのか? 幻だったのか? 目をキョロキョロする早苗さん
(なに、ちょっと時間を戻しただけですよ)徳利を持ったままメイド服の所長さんがウィンクする

「先ほどのは何かの冗談でしょう? 今度こそは本気のミラクル、見せてくださいよ」





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