一方、紅魔館の入口には新たな来客が訪れていた。

「慧音ぇー! 何処だぁー!」

紅魔館の中を走り回って慧音を探しているのは不老不死の人間、藤原 妹紅。

「そこを右よ!」

背中に乗って道案内しているのは幻想郷縁起の著者、稗田 阿求だ。
二人は紅魔館側の湖の畔で出会い、それから共に行動している。
それと言うのも数時間前、妹紅は人里で慧音の事を訊き慌てて紅魔館を目指して飛び立った。
そこで湖の畔で立ち往生している里の子供達を発見。
話を聞くと牢獄に捕まっていたところを慧音に助けられ脱出するも、途中で首の無い妖怪に襲われてしまう。
その時、慧音が囮になって逃がしてくれたおかげでなんとか此処まで来れたらしい。
しかし湖を渡る方法がなく困っていたところへ妹紅がやって来たという訳だった。
子供達をこのままにもしておけないので、一旦引き返し里の人間を呼んで来た妹紅は
里の者に子供達を任せ紅魔館に乗り込もうとする。
その時、慧音と逸れた場所を覚えていると迎えの船から降りて来たのが阿求だった。
最初は危険だから帰れと言っていた妹紅だったが、今は一秒でも時間が惜しい。
それに慧音を助けたいのは阿求も一緒だ。
こうして二人は慧音救出の為、紅魔館にやって来たのだった。

「此処よ! 此処で別れたの!」

そう言って阿求が止めたのは、一見何の変哲もない普通の廊下。
だが慧音はこの近くにいる筈だ。

「慧音ー! 私だ! 妹紅だ! 返事をしてくれ!」

大声をあげ慧音を探す妹紅。
すると妹紅に応えるように、今まで壁だった場所に扉が浮かび上がってきた。

「これって……もしかして歴史喰い?」
「慧音!!」

妹紅が勢いよく扉を開けると、目の前に慧音が姿を現した。
だがその姿は血で真っ赤に染まり、ぐったりとしている。
妹紅が慌てて抱き上げると、慧音はゆっくりと重い瞼を開いた。

「慧音! 大丈夫か! 何でこんな無茶したんだ!」
「ははは……妹紅、なのか? …幻聴ではなかったんだな……」
「なんで私に言わなかったんだ……私ならどんな目に遭っても死ななかったのに!」
「喧嘩っぽいお前では交渉にならないだろう? ……それより子供達は無事か?」
「…ああ! 全員無事さ! 作戦は成功したんだ…!」
「……そうか、よかった…」

達成感に満ちた表情で目を閉じる慧音。
すると突然体が宙に浮き何かに押し付けられた。

「も、妹紅…?」

見てみれば妹紅が自分を背負っているではないか。

「阿求、走れるか」
「出来る限りやってみるわ」
「……何をする気だ、妹紅」
「何って…里に帰るんだよ、全員でな」
「やめるんだ…どのみち私は助からん」

怪我の状態は慧音本人が一番分かっている。
服の下は肉が抉り取られ、骨や内臓が露出しているのだ。
永遠亭に駆け込んだって助かるかどうか分からない。
そもそもそれまで、もつかどうか考えても絶望的だ。

「足手纏いになるだけだ、此処に置いていけ」
「死んでも嫌だ、私は死なないけど」
「……妹紅、これは仕方ない事なんだ。私より阿求の事を…」
「先生!」

今までずっと黙っていた阿求が突然大声を出した。
その瞳は涙で潤んでいる。

「私、覚えてるの! 先生が隠した歴史の事!」
「なっ!! ……だったら分かるだろう。私は大罪を犯した、お前達が必死に守る価値などないんだ」
「そんな! あれは先生が悪いんじゃない! 先生は操られてただけじゃない!」
「あ、あのさぁ。まったく話が読めないんだけど…」
「だがやったのは私だ、それは変わる事のない事実なんだ」
「でも……、でも!」
「阿求、お前のような心優しい者達に出会えて私は幸せだ。……もう……限界…みたい…だな…」
「え? お、おい…慧音?」
「先生!」
「…妹紅……最後に…私の我儘を聞いては…くれないか……」
「な、なんだ?」
「……里を……皆を頼んだ………」

そう言うと慧音の体から力が抜け、妹紅の背中から滑り落ちていった。

「…慧音? おい、慧音!!」

体を擦っても、もう動かない。
気付けば妹紅の目から涙が零れていた。
隣にいる阿求も大声で泣いている。

「嫌だ……慧音ええええええぇぇええぇぇぇ!!」

妹紅は思いっきり虚空に向かって泣き叫んだ。













その頃、フランは紅魔館の廊下を何も言わずに進んでいた。

「い、妹様が御乱心でルミャアァァ!!」
「嫌……死にたくない! 死にたくなルナチャアァァ!!」
「ここはわっちに任せて先に行ミョオォォン!!」
「こんな所に一緒にいられるか! 私は自分の部屋に戻アヤヤアァァ!!」
「始めまして! 今日から春までメイドをする事になったリリーホワメルポオォォ!!」

最早フランの眼には妖精メイドなど映っていない。
ただ目の前で動いたものを全て壊す、それだけだ。
吹き飛ばした妖精メイドの血で真っ赤に染まるが、構いはしない。
無慈悲に躊躇なくフランは紅魔館の中心部、レミリアの部屋へ向かっていた。

「………」

そして姿を現すレミリアの部屋の扉。
あの日、この扉を開いてから全てが始まった。
レミリア亡き今、決着をつけるのは自分しかいない。
フランは扉を開き、部屋の中に入っていった。

「お久しぶりね、妹様。直接会うのは、あの夜以来かしら」

中ではパチュリーが本を読みながら紅茶を飲んでいた。
かつてレミリアが座っていた紅魔館の主の椅子に座って。
テーブルにはパチュリーの分とは別に、紅茶の入ったティーカップが置いてあった。
淹れたばかりなのか、まだ香りと湯気が広がっている。

「貴方が此処に来るとは思わなかったわ。いえ、貴方そのものが私の計算外」
「………」
「本当はこの紅茶はレミィの為に淹れたんだけど、貴方が生き残ったのなら貴方にあげるわ」
「………」
「……あら、紅茶は嫌いだったかしら? 甘いケーキでも用意しておけばよかったわね」
「………」
「さて、貴方は私と戦いに来たのでしょ? なら始めましょう、今宵の最後を彩る最終決せ…」
「ダマレ」

フランが手をぎゅっと握ると、パチュリーは爆散した。
辺りに血が飛び散り、グリモワールやベッドを赤く染める。
元々妖精メイドの血で染まっていたフランを含め、レミリアの部屋は紅一色に染まった。

「………」

フランは壁に近づくと、閉め切られたカーテンと窓を開く。
外から入って来た冷たい風が、フランの頬をそっと撫で部屋の中を駆け抜ける。
フランはそのまま窓縁に足をかけると、夜闇広がる外の世界へ飛び出した。





闇の中をひたすら上を目指して飛び続けるフラン。
空には綺麗な三日月が輝いている。
やがて時計台をも通り越し、紅魔館の遥か上空へと辿り着いた。
眼下には先程までの惨劇などなかったかのように、紅魔館が静かに佇んでいる。
フランはその大きな紅い目で紅魔館をじっと見つめると、時計台の天辺に舞い降りた。
すると時計台の影から何者かが姿を現す。

「何時から気付いてたの? パチュリーがとっくに死んでるって」
「最初からだよ、パチュリーに会った時は勘違いかと思ったけどね」
「……私の『パチュリー』は完璧だった筈よ」
「『パチュリー』としてはね、でも黒幕がパチュリーだったら私はここにいない」
「どういう事?」
「私の部屋の結界、パチュリーが張ってるんだ。本物のパチュリーだったら結界を張り続ければいい。
 でもそれをしなかったのは私を外に出す必要があったか、それか張り直す事が出来なかったか。
 ………私を外に出したいなら、また私を閉じ込めたり殺そうとしたりしないよね?
 殺したいなら餓死するの待ってれば安全なんだから。パチュリーだったらそうしてる」
「……なるほど、美鈴にしてやられたって訳ね」
「私はお姉様みたいに優しくないよ………ねぇ、なんでこんな事したの?













 アリス・マーガトロイドォッ!!」

フランの放つ凄まじい気迫を前にしても魔法の森の人形遣い、アリス・マーガトロイドは微笑を崩さない。
それどころか、むしろ楽しんでいるようにすら見える。

「当然、私の夢の為よ」
「夢?」
「完全な自立人形……私が何もしなくても自分の意思で動いてくれる存在……それが私の目指すものよ。
 今までどんなに頑張っても作り出せなかった、でもついに完成させる事が出来たのよ!
 ……貴方に分かる? 完全な自立人形を作る方法」

そう言うとアリスは自分の頭に人差し指を向けた。

「脳よ、思考を司る脳。ここを人形の核に使えば、使った脳の人物そっくりに動かす事が出来るの。
 今まで私は人形を一から作る事に拘り過ぎて、この発想に至らなかったわ。
 後で小悪魔にはお礼をしないと、態々人形の材料集めも手伝ってくれたんだもの。
 おかげで完成したのが完全自立行動型人形第一号、パチュリー・ノーレッジ。
 そして今宵完成した新たな完全自立行動型人形がこの二人!」

アリスの言葉に反応するように、時計台の天辺に二つの人影が現れる。
それは胸に穴の開いた咲夜と、全身に深い刺し傷のある美鈴だった。
無残な姿で再びフランの前に現れた二人だが、そんな二人を見てもフランは顔色一つ変えない。

「時間がなかったから修復は間に合わなかったけど、戦闘用人形としては十分な筈よ。
 それに非自立型ならまだまだいるわ!」

今度は紅魔館の至る所から首の無い妖怪が現れた。
その数は数十体に及び、月明かりに照らされ不気味に浮かび上がる。

「これも小悪魔の贈り物なの、湖に沈んでいたのを見つけたそうよ。
 おかげで貴方相手にも、正面から戦えるだけの戦力が揃ったと自負しているわ。
 ついでだから教えてあげる、吸血鬼には脳がないし死んだら灰になるから人形には出来ないの。
 だから邪魔なレミリアを殺そうとしたのよ、それが反乱の理由」

辺りを埋め尽くす屍の群れ。
しかしそれでもフランは表情を崩さない。
無表情のまま宙に浮かんだフランは、ようやく口を開いた。

「なんで紅魔館だったの?」
「小悪魔の願いだったからよ」
「里の子は?」
「私の人形には子供の脳しか入らないの」
「分かった、もういい」

それだけ言うとフランはレーヴァテインを取り出し、アリスに真っ直ぐ向けた。

「要するにオマエヲコロセバ、オワリッテコトカ!」
「丁度いいわ。完全自立行動型人形の実戦は初めてなの、試運転に付き合ってもらうわ!」



































その日もフランドール・スカーレットは一人ぼっちだった。
小さな照明だけが照らす薄暗い彼女の部屋を尋ねる物好きはそうはいない。
今日も遊び相手になるのはボロボロのぬいぐるみだけだ。
きっとこんな退屈な日が明日も続くのだろう。
明日も明後日も一人ぼっちの薄暗い部屋の中で過ごすのだろう。

「お姉様…」

アリスとの戦いは一瞬で終わった。
フランの放ったレーヴァテインは屍人形を掻い潜りアリスを綺麗に射抜くと、時計台もろともアリスを消し飛ばした。
衝撃で紅魔館は半壊したが、それを咎める姉はもういない。

「咲夜…」

食料は気付くと厨房に置かれていた。
恐らく八雲 紫がクーデターを知らずに置き続けているのだろう。
もしかしたら知ったうえでやっているのかもしれないが、フランには関係ない事だ。
最初はうまく吸えなかった血液も、今ではちゃんと吸い尽くせる。
時々甘いケーキが恋しくなるが、それを作る従者はもういない。

「美鈴…」

あの後、慧音がどうなったのかは分からない。
だが何処を探しても子供の姿がなかったので、うまく逃げ出せたのだろう。
今頃は皆で仲良く遊んでいるのだろうか。
少し微笑ましくなったが、フランには外に出た時遊んでくれる門番はもういない。

「パチュリー…」

この戦いでフランが失ったものは数知れず。
だが勝って得たものは何もない。
残ったのはフラン一人しかいない紅魔館。
貴重な家具や魔導書も、その価値を見いだせる魔女はもういない。

「やだよ! 一人にしないでよ! お姉様! 咲夜! 美鈴! パチュリー! うわあああぁぁん!」

きっとフランは明日も明後日も一人ぼっちで過ごすのだろう。
何時、誰が来るかも分からない壊れかけた洋館の一室で静かにずっと。
もしこの戦いでフランが得たものがあるとするなら、それは自由と孤独なのかもしれない。













壮絶な紅魔館での戦いから一夜明けた朝。
慧音の目の前には死神と何処までも続くかのような三途の川が広がっている、筈だった。

「……ここは…」
「お! 気がついたか、慧音!」

だが実際に視界に入ったのは懐かしい友人の家と、その友人の顔。
あの世の景色ではないのは確かだ。

「…妹紅、私は……」
「ああ! 助かったんだよ!」
「………そうか」

しかしあの怪我で助かるものなのだろうか。
疑問には思うものの、実際生きてるのだから助かったのは間違いない。
もしかしたら予め永遠亭の住人が待機していたのかもしれない。
それなら助かってもおかしくないだろう。

「あ、あのさぁ。私、慧音が死ぬかもって時、数百年ぶりに心の奥底から泣いたんだ…」
「………」

しかし先程から何か異臭がする。
妹紅の話が気にならない訳ではない。
だがそれ以上に、この臭いが何なのか気になるのだ。
とても嫌な予感のする不快な臭い。
確かにどこかで嗅いだ事のある臭いなのだ。

「おかしいよな、今まで人が死ぬとこなんて沢山見て来たのに。その時思ったんだ、私にとって慧音は特別な存在なんだって」
「……ありがとう…」

必死に記憶を探り、この臭いの正体を調べる慧音。
すると頭の中の一つの情報にぴったり一致するものを見つけた。

「だからさぁ、私……慧音がいないとダメなんだ! 慧音と別れると思うと胸が苦しくなるんだ!」
「………」

それは、死臭。死体が腐ると発生する臭い。
それが今、この部屋に充満している。
自分が気を失っている間に何があったのだろうか。
一気に背筋が寒くなる。

「こんな事するの初めてだけどさ、慧音と一緒の時間を歩いていけるって思ったら……なんだか嬉しくて…」
「………!!」

死臭に注意がいっていた慧音だったが、その言葉だけは聞き逃さなかった。
普通に聞くと愛の告白のようにしか聞こえない台詞、だが妹紅が言うともっと重く恐ろしい意味になる。

「ま、待ってくれ。今なんて………ッ!!」

そう言って妹紅に手を伸ばした慧音は愕然とした。
視界に入った自分の腕が、明らかに生きた人間のそれではなかったのだ。
所々肉が露出し、ボロボロに腐敗している。
皮膚も青白く、とても顔色が悪いで済むような色じゃない。

「い、嫌だなぁ! 何回も言わせるつもり!?」

一方で妹紅は顔を赤く染めモジモジしている。
しかしそれよりも慧音は、妹紅の後ろにある物を見て絶望した。

「あ…あああ……」

慧音が見つけた物、それは血塗れの妹紅の上着だった。
血は腹部と右袖にべっとりとついている。
死人のような体、血塗れの服、そして『一緒の時間』という言葉の意味。
それが何を意味しているのか。

「私には……生きる事も…死ぬ事も許されぬと言うのか……」
「け~いね」

青褪めた慧音とは裏腹に上機嫌で寄り添う妹紅。
そして慧音のすぐ隣まで来ると耳元でそっと囁いた。

「私達は永遠に一緒だ、慧音」













紅魔館の住人はフランを残して全員紅魔館から姿を消した。
しかし唯一人、生きて紅魔館を去った者がいる。

「お久しぶりですね、魔界の神」

そのものは紅魔館では小悪魔と呼ばれていた。
生き延び魔界へやって来た彼女は、今は足が無く壁に凭れかかって体を支えている。

「よくも抜け抜けと顔を出せたものね」

彼女の前にいるのは神と呼ばれた女性。
真っ赤な服に身を包んだ魔界の創造主だ。

「アリスちゃんを操って悪事を働かせるなんて…!」

その目には強い怒りがこもっている。
下手に刺激したら襲いかかってきそうな程だ。

「待って下さい。悪魔が人を誑かすのは自然な事、それを責めるのはお門違いでは?」

しかし彼女は一歩も引かない。
彼女には切り札があるのだ。

「……何をしに来たの」
「いえ、貴方のお力を借りようかと」
「本気で言ってるの?」
「ええ、本気ですよ?」

そう言うと彼女は、懐から小さな白い魂を取り出す。
それを見るなり女性の表情は更に険しくなった。

「これが何だか分かりますよね? 貴方の愛しのアリスちゃんの魂ですよ」
「私を脅そうっていうの?」
「まさか、私は取り引きをしに来ただけです」
「取り引きですって?」
「そうです、私は貴方にアリスの魂を返す。代わりに貴方はパチュリー様を生き返らせて下さい、神には容易い事でしょう?」

彼女の目的は最初から唯一つ、愛する主人の復活だけだ。
反乱もアリスも、その為に利用したに過ぎない。

「本当は5つの強い魂を集めれば自力で蘇らせる事も出来たのですが……妹様にはやられましたよ」
「どうしてアリスちゃんを巻き込んだの」
「万が一の時、こうして交渉に出る為です。…そもそもこんな事になったのも全部あのレミリアのせいよ。
 パチュリー様が魔法の実験に失敗して死にそうになってる時に、呑気にパーティなんかやってて……。
 あの時あんたが私の話を聞いてパチュリー様の状態に気付いてくれれば助かったかもしれないのに……!」
「自分じゃ何も出来なかった癖に、逆恨みとは酷いものね」
「ええ、そうよ! どうせ私は洗脳しか能の無い低級悪魔よ! だったら何!?
 あんただって魔界から出られずにアリス助けられなかったじゃない! 同等の癖に偉そうな事言わないで!」

その直後、咳込み吐血する小悪魔。
しかし顔を上げ、女性を見るその表情は勝ち誇っている。

「悪魔が手にした魂は、悪魔が死ねば共に消える。無理矢理奪い取ろうものなら魂に影響が出る。
 そして貴方は自分の子供を見殺しには出来ない、貴方は交渉に応じるしかない筈よ」
「そうね、昔だったらそうしてたわ」
「えっ?」

彼女は耳を疑った。昔はとはどういう意味なのか、今は違うとでも言いたいのか。
あれこれ考えていると突然現れた黒と白の魔法使いに両腕を掴まれた。
慌てて正面を向けば、魔界の神が大きな6枚の翼をこちらに突き立てている。

「ま、待って! アリスがどうなってもいいの!?」
「アリスちゃんは私の大切な子よ? そんな訳ないじゃない」
「なら何故………ぐっ! あああああ!!」

その瞬間、小悪魔の体を6枚の翼が串刺しにした。
同時にもの凄い量の魔力が流れ込んでくる。

「な、何を……」
「貴方の体と魂を分解してアリスちゃんを生み出す材料にするわ。
 これなら貴方が消えると同時にアリスちゃんは一人の人間として蘇る、貴方の影響は受けないわ」
「…うぐっ……」

しかしそれは蘇生より転生に近い方法だ。
転生した魂は前世の事など覚えていない。
その方法では形こそ再現出来ても、記憶の無いアリスしか生まれないのだ。

「…あ、あんたはそれでいいの!? アリスはあんたの事、何も覚えてないのよ!?
 あんたと暮らした事も全部忘れちゃうのよ!? それでもいいって言うの!?」
「……アリスちゃんは優しい子だから、あんな事したって分かったらずっと苦しみ続ける事になるわ。
 私はそんな事、望んでない! アリスちゃんには幸せになってほしいの! だから貴方の誘いには乗らない!
 私の事を覚えてなくてもアリスちゃんが幸せになってくれるなら、それが私の幸せになるのよ!」
「!! わ、私は………パチュ…」

彼女の主人を呼ぶ声は最後まで紡がれる事なく、彼女もろとも消えていった。
後に残されたのは彼女が着ていた服と、主人に貰った物なのかずっと持ち歩いていた魔導書だけ。
それを二人の魔法使いに片付けさせると、魔界の神と呼ばれるその女性は空を見上げぽつりと呟いた。

「さようなら、アリスちゃん。どうか幸せに暮らしてね」





「お譲ちゃんはどうしてこんな所にいるの? お名前分かる?」
「……私?」
「そう、お姉さん貴方のお名前知りたいな~」
「私は………アリス…」
「アリスちゃんって言うんだ! いい名前だね!」
「……分からない」
「えっ……あ、あはは。ど、どうしよう姉さん」
「落ち着きなさい、穣子。きっと知らない人に会って警戒してるのよ。見てなさい……こほん。
 私は秋 静葉、この辺りには詳しいの。もし迷子なら送ってあげたいんだけど、お家何処か分かるかしら?」
「……分からない、何も思い出せない」
「ね、姉さん。これって…」
「……記憶喪失ね。きっとお参りに来た里の子よ、途中で妖怪に襲われたのね…それで……」
「そっか、さすが姉さん!」
「私達が里まで送ってあげるわ、そしたらお家探してもらいましょう」
「…うん」
「心配しなくても大丈夫! お姉さん達がお母さんの所まで必ず連れてってあげるからね!」
「…お母さん……うん!」








  • 妹紅は予想GUYだったな -- 名無しさん (2009-10-24 12:52:39)
  • 結局霊夢は来ることがなく
    ただの事件として処理されたのか -- 名無しさん (2009-10-25 21:33:05)
  • 神綺様がまた育てないんだな -- 名無しさん (2009-10-25 22:06:21)
  • 妹紅のどういう意味なの? -- 名無しさん (2009-10-25 22:29:52)
  • 慧音の蓬莱人化 -- 名無しさん (2009-10-25 23:10:14)
  • 美鈴とレミリアかっこよすぎる -- 名無しさん (2009-10-26 00:18:35)
  • 途中の妖精メイド達が紅魔有情断迅拳的な事をされたようにしか見えない -- 名無しさん (2009-10-28 23:14:39)
  • ルナチャ死んでね? -- 名無しさん (2009-10-29 01:03:11)

  • 「御柱の墓場」の時点で三月精は死んでる
    妖精だから復活したみたいだけどな -- 名無しさん (2009-10-29 11:17:27)
  • 紫がクーデター知らないかもってのは、未だに衣玖さんとイチャイチャしてるという事だろうかw -- 名無しさん (2009-10-31 15:55:42)
  • でもこの人の話にしては珍しく生存者が多かったな -- 名無しさん (2009-11-04 08:53:56)
  • リリィとホロも殺されてるじゃないかw -- 名無しさん (2009-11-10 00:53:22)
  • ここのレミリア、他のところでへたれてる性もあってかかなりかっこいいな。
    あとフランちゃんがめっちゃ強い -- 名無しさん (2010-02-22 02:42:31)
  • 紅魔館の乗っ取り?ざまぁw

    なんと・・・レミリアのカリスマが・・・!

    えっ?アリス?

    フランかわいそう・・・。

    あれ?妹紅!?またアリスが!?(混乱)←今ここ -- 名無しさん (2010-07-12 13:37:36)
  • この話の主役は秋姉妹だな -- 名無しさん (2010-08-01 00:22:56)
  • 自分の中で、蓬莱人の定義が、音を立てて崩れた。
    だが、あえて言おう。
    顔を赤らめてモジモジしている妹紅はかわいい。
    そして、かわいいは正義であると。 -- 名無しさん (2010-11-02 00:19:17)
  • 久し振りにかっこいい紅魔館メンバー見た -- 名無しさん (2011-04-15 01:35:19)
  • アリスではなくおぜうたちを生き返らせろよ… -- 名無しさん (2011-04-21 16:36:48)
  • 超展開すぎてワロタ -- 名無しさん (2014-03-10 05:44:32)
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