【歪む思い】




 木々が風によってざわめき、五月蝿いほどの音を立てている。
 傾き紅く染まった日の光は、一人の少女の影を色濃く映し出していた。
 荒れ果てた山道に立ち、崖の下を見つめる少女は、青ざめた表情で冷や汗をかいている。

 私、マエリバリー・ハーンは、最愛の友人、宇佐見蓮子を殺してしまった。






 その日はいつもと変わらない活動のはずだった。
 私は蓮子とともに境界を探しに行っていた。そこは過去と繋がっているといわれる場所で、深い山奥であり、人気はまったくないような場所だった。
 そして山奥に踏み入った私たちは崖の下に境界を見つけ、あれこれ話し合っていた。
 始まりは些細なことであった。話し合っていたときに蓮子がもらした私に対する不満、その言葉に私は過剰に反応してしまった。 
 お互い長旅で疲れていて心が不安定だったのか、普段から感じていた些細な不満を言い合ううち、争いはエスカレートしていった。
 なぜだか私は、蓮子以上にいらいらして、思わず最低な事を口にしてしまった。
 普段なら絶対言わないような、彼女を傷つけるひどい事を。
 蓮子はいつの間にか私を平手打ちしていた。
 それは当然のことなのに、私はかっとなって、崖を背にしている蓮子を突き飛ばしてしまい、
 すると蓮子は崖から落ちて、崖の下の境界の中へと、吸い込まれていって――






 私は今、必死で山を降りている。
 やってしまった、そんなつもりはなかったのに……!
 もしかすると、この近くにも探せば他に彼女が落ちた境界と似た境界があって、そこから彼女を探し出せるかもしれない。
 このあたりは特殊な場所だ、ありえない話じゃなかった。
 だが、私は一目散に逃げている。
 どうせあの高さだ、どこかに出ても助かるはずがない。それよりも、今は自分の身が第一だ。
 境界に落ちたのだから蓮子自身の遺体が見つかるはずはないんだ、私が殺したなんて分かるものか……!
 人里に降りた私は、何食わぬ顔で電車へと乗り込む。念のため自分に疑いが掛からないよう、駅員に蓮子が来ていないかということを確認した。
 こうしておけば、もし警察が調べたとしても、『宇佐見蓮子はマエリバリー・ハーンよりも早く下山し、それ以来行方が掴めなくなった』というストーリーを作り上げることが出来る。
 彼女の持ち物一式は境界の向こう側だ、彼女が死んだことなど露にも思わないだろう。
 私は何食わない顔で家に戻り、独りになって冷静になると、私は自分のやったことが急に恐ろしくなった。
 私を理解してくれた、ただ一人だけの友人を、私は……。
 急に襲い掛かってきた不安を拭い去るように、私はベッドの中にもぐりこんだ。

 どうかこれが、全て夢であって欲しいと願いながら。






 ……ここはどこだろう。真っ暗で何も見えない。
 私はなぜこんなところでぽつんと一人立っているのだろう。
 とにかく動いてみないことには分からない、だから私は歩こうとした。
 しかし、足が動かない。何かが私の足を掴んでいるようだ。

 恐る恐る足元を見るとそこには、

 血だらけになってしまっている見慣れた帽子と服装をと顔した女が、

 私の足を、がっちりと掴んでいた。






 けたたましいアラームの音とともに私は目を覚ます。
 体中寝汗でびっしょりだった。あんな夢を見た後である、仕方ない。
 私は自分の手をまじまじと見つめる。
 私はこの手で蓮子を殺した、それは現実だ。
 しかも、友人を助けることよりも、自分の保身を最優先にまでした。
 私たちの関係は、そんな薄っぺらいものだったのだろうか?あの楽しい日々は偽りだったのだろうか?
 そんなはずはなかった、そんなはずはなかったのに……。
 ただ、罪悪感だけが重々しく圧し掛かってきて、いつの間にか、涙が頬を濡らしていた。

「ごめんね、ごめんね蓮子……」

 いくら泣こうが蓮子は帰ってこない。彼女を殺した私には悲しむ権利すらない。
 今は悲しむよりも、いかに自分の身を守るかを考えなければいけないのだ。
 捕まってしまえば、何のために友人を見捨てたか分からなくなってしまう。
 私は起き上がり洗面台に向かうと、勢いよく顔を洗い思考回路を自分の保身のために切り替えた。





 大学に行くと、蓮子の失踪はさっそく騒ぎになっているようであった。現代社会の情報の伝わるスピードに改めて感心する。
 登校早々教授に呼び出されたかと思うと、警察が待っていて、予想通り昨日の事を細かく聞かれた。
 私はあらかじめ用意していた答えを警察に答える。
 警察も教授も私の言葉を鵜呑みにした、それしか信じる要素がないから仕方がない。
 警察は絶対蓮子を見つけると私を励ますように言った。私はそれに不安そうな様子で答えながらも、内心意味がないのにと彼らを嘲り笑った。
 蓮子が死ぬことはない。普通、失踪者に死亡宣告を出すには7年掛かる。

 宇佐見蓮子ハ、少ナクトモ今後7年間ハ生キテイルノダ……!

 不思議だ。朝はあんなに蓮子を殺したことに悔いていたのに、今こうやって彼女の死を隠し、うまく事が運んでいるのに悦に浸っている自分がいる。
 一体、どちらが本当の本意なのだろうか?

 警察から解放されると、私は他の学生たちから質問攻めにある。
 都合のいい奴らめ、こういうときだけ友達面をして。
 もちろん私はこいつらの前でも友人が失踪した悲劇のヒロインを演じる。
 馬鹿なこいつらはころっと私の演技を信じ込んでしまう。
 実に扱いやすい奴らだ、どんな嘘も多くの人間が信じていまえば下手な真実よりも信憑性は増す。
 こいつらがどんどん噂を広めてくれれば、蓮子が生きていることがより真実味を増し、私の身の安全はより強固なものになるだろう。

 さあどんどん噂を広げなさい、せいぜい私の身の潔白を証明してよね……?

 私は、思わず口元が緩むのを感じた。






 私は今、必死で逃げている。
 何に追われてるかは分からない。いや、分からない振りをしている。
 捕まったら、私はきっと無事ではいられない。
 だから私は逃げなくてはならない。
 しかしいくら逃げてもそれは追ってくる、どのような道を通ろうとも、どれくらい走ろうとも、そいつは私を逃がすことはなかった。

 それどころか、だんだん距離が詰まっていって――






「……っ!!」

 セットしていたアラームよりも早く、私の目は覚めた。
 あれから三週間たったというのに、未だに蓮子は私の夢枕に立つ。
 まるで、忘れさせないといわんばかりに。
 蓮子の夢を見る頻度自体は減っているものの、夢の中の蓮子は確実に私との距離を詰めてきている。
 追いつかれたらどうなるのだろうか……。嫌な想像ばかりが頭を駆け巡る。

 「馬鹿馬鹿しいわ……。そんなこと、あるわけないじゃない……!」

 私は自分自身に言い聞かせるように言い、ベッドから這い出て朝の支度をして大学へと向かった。






 時間の流れとは恐ろしいもので、最初はあれだけ混乱していた大学も、いまではすっかり日常の平穏を取り戻している。
 ここで平穏を取り戻せていないのは恐らく私だけだろう。
 いくら平穏に過ごそうとしても、あの夢が私から犯した罪を忘れさせることはなかった。
 私にとって心休まるときはもう殆どない。
 起きているときは友人の安否を気遣うふりをし、眠るときは夢の中で逃げ回らなければならない。
 私は、心身ともに疲労していくのを肌身で感じていた。
 幸い、周りのほかの生徒達は友人が失踪したショックということで割り切っているので助かるが。
 警察もまともな手がかり掴めずにいる。おそらくこれから7年の間は、警察の労力など無駄であろう。
 私を疑っている人間もいるようだが、証拠がない以上私を犯人だと確定することは出来ない。
 この調子で行き、あの夢さえ見なくなれば、私もいつも通りの日常を取り戻せるはずだ。

 もはや、宇佐見蓮子がいなくとも、私は日常を謳歌できるのだ。






 私は真っ暗な空間をただひたすら走っている。
 いつの間にか、背後にあった気配は消えていた。
 恐る恐る後ろを振り返ると、もう追ってくる者はいなかった。

 助かった……?

「あは、あはははは……」

 思わず乾いた笑いが私の口からこぼれる。
 しかし、その瞬間、私の足元に小さなスキマができて、

 そこから現れた手が私の足を掴んだ。







「いやぁっっ!!」

 私は叫び声を上げながらベッドから飛び起きる。
 あれからもう1年たった。
 なのに未だに出てくるなんて……!!
 いくら隠しとうせても、あの夢が私を追い詰める。
 いい加減止めてよ……。
 私はもう日常を取り戻したいの……!

 消えろよ……私の夢から。

 消えろよ……私の記憶から。

 消えろよ……存在したこと自体。

 消えろよ……消えていなくなれよっ!!宇佐見蓮子っぉおお!!






 異様な静けさの中、私は大学へと続く道を歩いている。
 いつもは人の喧騒でにぎわっているはずの道なのに、なぜか今日に限って人っ子一人見当たらない。
 明らかに異常だ、一度立ち止まって周りを見渡しても動いているものは何もない。
 まるで、私ごとこの空間を世界から切り取ったよう。
 このおかしな空間から早く逃げ出したい、そう思い足を動かそうとしたときであった。

 足が、動かない。

 何かが私の足を掴んでいる。

 恐る恐る足元を見ると、

 地面からあいた隙間から、すらりと伸びた手が出ていて、

「う、うわああああああああああああああ!!!」

 思わず叫び声を上げながら私はその手を足を思いっきり振って振り解き、逃げようとする。
 すると目の前の空間が突然、二つに割れた。
 これは境界……!?なぜこんなところに突然……!?

「あらあら、ちょっと脅かしただけなのにねぇ?久しぶり、メリー」

 懐かしい声がしたと思った。
 しかし私の目の前にいるのは、決して懐かしさを抱くものではなかった。
 むしろ、それは常日頃から鏡の前で目にしている姿で――

「私……!?」

 そう、目の前にいるのは、今よりも成長しているとはいえ、明らかにわかる。
 それは、まるで私だった。

「半分正解で、半分間違い。ねえメリー、私が誰だか本当に分からない?」
「分かるわけないでしょ……!?」
「あら残念ね。それじゃあ、答え合わせ……」

 そういうと、目の前の女は目の前の空間にスキマを作り出したかと思うと、そこに手を突っ込み何かを取り出した。
 それはとても懐かしいものだった。
 今ではそれは夢でしか見ない。
 親友が愛用していた帽子だった。

 ……ねぇ私、もう知らない振りをする必要はないんじゃない?
 最初に声を聞いたときに分かってたんでしょ?
 ただ、それを否定したかっただけなんでしょ? 


 目の前にいるのが、宇佐見蓮子だって事を。


「これで分かってくれたかしら?」
「嘘よ……どうして……どうして……?」
「嘘だと思うなら、質問してみて?あなたと私の活動について。どんなことにも答えてあげる。いつ何があったか、そのとき何を言ったかまでしっかりね」

 その余裕溢れる態度から、言っていることが嘘ではないということが分かる。
 目の前にいる蓮子は、かまわず話を続けた。

「私ね、あなたに崖から落とされたでしょ?あそこね、本当に過去と繋がっていたのよ。不思議なこともあるものよねぇ?おちていった私は木々に受け止められながらなんとか一命を取り留めた。
 でも、その後が大変だったのよ。くすくすくす」

 かつての蓮子からは考えられないような物腰と笑い方だ。
 しかし長い間連れ添った間柄であるからであろうか、私は目の前にいる蓮子が偽者とは到底思えなかった。

「私が飛んだ時代は妖怪や亡霊、その他諸々が大手を振って外を闊歩できた時代。妖怪達は私を食おうとしたわ。私は必死に逃げた。いつかあなたが助けに来ると信じて。でもあなたは一向に助け
に来てくれない。私の中であなたへの信頼はだんだんと恨みへと変わっていったわ。そしてあるときね、私は運悪く捕まって、妖怪に食られてしまったの。本当に苦しかった。薄れいく意識の中、
私の心はメリー、あなたへの恨みや憎しみでいっぱいよ。するとね、とぉっても不思議なことに、私は生きていたのよ。それも、境界を操る妖怪としてね?信じられないわよね?でも、聡明な
マエリベリー・ハーン様なら分かるでしょう?」

 かつて権力争いによって職を追われ病に伏した菅原道真が祟り神となり京に災いをもたらし今では天神様として崇められてるように、
 志半ばに倒れた平将門の首が空を舞い関東地方に落ちて以来、今なお関東一体の守護神として崇められてるように、

 人は、恨みの念によって神にすらなることが出来るのだ。

「私は生憎神様にはなれなかったけど、強大な力を持つ妖怪になれた。そして私は自らの姿をあなたに似せたの。何故だか分かる?」
「わ……分かるわけないでしょ……!?」

 私は精一杯振り絞って震えた声を発した。
 そんな私の様子が楽しいのか、蓮子はとても楽しそうな笑みを浮かべながら、ゆっくりと口を開く。

「あなたへの恨みを、忘れないためよ」

 その言葉を聴いた瞬間、まるで時間が一瞬止まったような錯覚を感じた。

「臥薪嘗胆って言葉があるでしょう?私は姿形を似せてそれを実践したのよ。さらに他者に名乗る名前も、苗字はあなたのファミリーネームから連想して八雲、名前はあなたを思い出す色の紫の字
を用いてゆかり、八雲紫と名乗ったわ。これが効果覿面でね?水面や鏡に映る自分の姿を見るたびに私を突き落としたあなたの忌々しい姿を思い出すことが出来る。名前を呼ばれるたびにあなたと
の偽りに満ちた生活を思い出す。最高よぉ。いつまでたっても私の憎しみは消えないんだから、くすくすくす」

 ……狂ってる!私への恨みだけでそこまでするなんて、本当に気が狂っている!!
 もはや蓮子、いや、八雲紫は完全に人ではなくなっている。
 まさしく、化け物のという言葉が相応しい……!!

「……でもね、そんな日々を長い間過ごしていると、私はあることに気づいたのよ。これは単なる憎しみだけじゃない。あなたへの愛なんだって!!気の遠くなるほど抱いたあなたへの怨み辛み
は、あなたを愛する心でもあったのよ!!あなたを観察してきたこの一年、必死になって私の死を悲しむ振りをして己の罪を消し去ろうする姿を見て確信し、よりあなたへの愛と恨みが増したわぁ!
あぁメリィィ!!憎い愛してる憎い愛してる憎い愛してる憎い愛してる憎い愛してる憎い愛してる憎い愛してる憎い愛してる憎い愛してる憎い愛してる憎い愛してる憎い愛してる憎い愛してる憎い
愛してる憎い愛してる憎い愛してる憎い愛してる憎い愛してる憎い愛してる憎い愛してる憎い愛してる憎い愛してる憎い愛してる憎い愛してる憎い愛してる憎い愛してる憎い愛してるぅぅぅぅ!!!
くっくくくくくくくくく、ひーっひっひひひひひひひ、ひゃーっはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははっはははははははははははは!!!」

 口が三日月のように裂けた八雲紫が、さっきまでの落ち着いた雰囲気からは考えられないような下品で獣のようで、しかし恐怖心を植えつけるような狂った高笑いをしている。
 私はというと、そのあまりの気迫に気圧され、その場からまったく動けずにいる。
 怖い……目の前にいる友人が……いや、友人だった化け物が、たまらなく怖い……!!

「黙れ……黙れよ化け物っ!!」

 私はいつの間にか叫んでいた。
 いつの間にか笑うのを止めていた八雲紫は、そんな私に動じることなく先ほどまでの妖しい笑みを浮かべながら私を見つめている。

「なんで出てきたのよ!!どうせ私に夢を見せてるのもあんたでしょう!?ええそうよ!!私は表面ではあなたを殺したことを悔いる振りをしながら、内心自分が助かったことを喜んでいた!!
自分の思うように事が進むのがたまらなく面白かった!後はあの不愉快な夢さえ見なければ、私は普通の生活に戻れるの!!あなたなんかいなくてもね!!分かったらとっとと消えろよおおおお
おおおおおお!!」

 私は思いっきり心の内を八雲紫に叩きつけ、肩で息をする。
 しかし、八雲紫はそれを聞くと、よりいっそう歪んだ笑みを浮かべだした。

「くすくすくす……そうよ、それでこそ私の望んだメリー……。最高よ……!ねえ、メリー?私……あなたと一つになりたい……」
「……は!?何を、言って……?」
「言葉の通りよ。私はあなたを食べるの。そしてあなたの魂は、未来永劫私の中に囚われることになる。ああ、これからずっとメリーと一緒だなんて、考えるだけで鳥肌が立つっ!!さあメリー、
私と一つになりましょう……?」
「誰が……だれがあなたなんかと……ふざけるな!!」

 私はとっさに、手を差し伸べてくる八雲紫に背を向け走り出した。
 私だって境界を見る程度の能力の持ち主だ。この奇妙な空間はおそらく奴のせい。この空間の裂け目を見つけて逃げ出してやる……!
 後ろを振り返ると八雲紫がゆっくりと空を飛びながら迫ってくる。
 だから私は全速力で走った、必死に、決して捕まることのないように。





 もうどれくらい走っただろうか。
 いつの間にか、背後にあった気配は消えていた。
 恐る恐る後ろを振り返ると、もう追ってくる者はいなかった。

 助かった……?

「あは、あはははは……」

 思わず乾いた笑いが私の口からこぼれる。
 しかし、その瞬間、私の足元に小さなスキマができて、

 そこから現れた手が私の足をつかんだ。

「きゃあ!!」

 足をつかまれた私はいきよいよく転んでしまう。
 私をつかんだ手は境界へと続くスキマから伸びていた。
 そこからは、紅く光る二つの眼が輝いている。

「さあメリー、二人で一つになりましょう……私達は永遠に一緒なのよ……私が作り出した楽園、幻想郷でね。くすくすくす」
「いやああああっ!!止めてぇ!!ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!謝るから、謝るから許してぇぇぇ!!!!!」

 私は空間にあいたスキマへと徐々に引っ張られていく。
 いくら必死になって地面を引っかいたって、いくら泣き喚いて懇願したってこいつはすました顔で聞き入れようとしない。

 お願いよ助けてよこのまま取り込まれるなんて嫌だ死にたくない止めて止めて止めて止めて止めて止めてぇぇぇぇ!!
 股の下が暖かくなるのを感じる、いつの間にか私は失禁していた。


「あらあら恥ずかしいわねぇ。大丈夫、怖がる必要はないわ……。一緒になれば、恐怖なんて感じない。あなたに与えられるのは、満たされた気持ちだけ。さあ、心を決めなさい……」
「い……嫌ああああああああああああああああああああああああああ!!」

 そして私は、抵抗むなしくスキマへと連れ込まれていって、そして――







 博麗神社の縁側にて、博麗霊夢はいつも通りにお茶を啜っていた。

「ふぅ……今日も疲れたわー」
「あら、どうせ大したことはしてないんでしょう?」 
「あら、寝てばっかりのあんたよりはましだと思うけど、紫」
「まあ、私のような多忙な妖怪に対して、それはひどいですわね……ってあいた!」
「誰が多忙よ。こら、勝手につまむな」

 八雲紫はいつの間にか霊夢の背後に現れおせんべいをつまもうとしたが見事に霊夢に阻止されてしまった。 
 何気ない日常の一コマである。

「血も涙もない巫女ねぇ」
「はいはい……ところであんた、最近修行でもした?」
「え?どうして私がそんなめんどくさいことをしなくちゃならないのかしら?」
「いや、多分だけど、あんた強くなったしょ?」
「あらあら、どうしてそう思うのかしら?」
「うーん、細かい理由は色々あるけど……一番の理由は勘ね」
「流石霊夢ね、勘に頼らせたら幻想郷一番」
「それ褒めてるの?」
「貶してるの」
「まったく……まあいいわ、せっかくだからお茶飲む?」
「ええ、お願いするわ」
「それじゃあ……と、お茶がなくなったわね。ちょっと待ってて」

 そういうと霊夢は新しいお茶を沸かしに行った。


 ……本当に流石ねぇ。よかったわねメリー、あなたの存在に気づいてくれる人がいて。

 あなたのおかげで、私はよりいっそう強くなれたんだから……。

 ……そう、あなたも嬉しいのね、あなたが喜ぶと私も嬉しいわ。

 ああメリー、メリー、私のメリー、私だけのメリー。

 あなたは永遠に私の中、永遠に私と共にある。

 愛しくて憎い、私のメリー。

 これからも、ずっと一緒だよ……。






蓮子=紫説が私のジャスティス

  • 奇才あらわる -- 名無しさん (2009-09-23 15:25:31)
  • 蓮子を食べた某大妖怪が一番気の毒だったりする
    キ〇〇イになった蓮子に乗っ取られちゃって… -- 名無しさん (2009-09-23 18:33:56)
  • こういう考えもあるんだな。 -- 名無しさん (2009-09-23 20:59:01)
  • 蓮子=紫は考えなかったな -- 名無しさん (2009-09-24 00:29:42)
  • 読み応えがあるな -- 名無しさん (2009-09-24 22:58:47)
  • 鬼才だな・・・おもしろかった。 -- 名無しさん (2009-09-25 20:09:28)
  • まさしく憎しみ愛 -- 名無しさん (2009-09-29 16:24:03)
  • その発想は無かったw

    楽しかったんだぜ -- 名無しさん (2009-09-29 22:35:18)
  • こういうドロドロした愛、最高です。
    たまんねえええええ!!! -- J (2009-10-24 15:54:46)
  • 蓮子=紫は予想外だったな…。
    個人的にはメリー=霊夢なんて展開を想像してたんだが…それはないか -- 名無しさん (2010-04-06 19:56:38)
  • 蓮子が紫か…考えたことも無かったな


    あれ…?じゃあ衣玖さんは? -- 名無しさん (2010-04-06 21:59:31)
  • この作者の説なら衣玖さんは衣玖さんなんだろうね -- 名無しさん (2010-04-06 22:21:54)
  • ↑↑
    メリー=紫ネタは非公式だぞ? -- 名無しさん (2010-04-06 22:34:43)
  • ヤンデレンコ -- 名無しさん (2010-04-07 10:16:09)
  • ↑ツンデレンコみたいに言うなww -- 名無しさん (2010-04-07 10:18:44)
  • キチデレンコ -- 名無しさん (2010-05-20 19:47:03)
  • ↑も↑↑↑もはぁはぁ -- 名無しさん (2010-05-30 19:35:47)
  • うわぁ(笑) -- 名無しさん (2010-06-01 22:29:19)
  • アスラさん!アスラさんじゃないか!その発想はなかった -- 名無しさん (2011-01-12 22:45:42)
  • アスラさんとは、何ぞや? -- キング クズ (2016-06-21 02:27:17)
  • ↑アスラとは恋人に裏切られて恨みを忘れないように恋人の顔で転生した魔王 -- 名無しさん (2017-03-16 11:07:24)
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最終更新:2017年03月16日 11:07