満月の翌日、日が沈む頃になって紅魔館当主レミリア・スカーレットは起き出して来た。
彼女にとっての『朝食』を終え、執務室に入った頃には空に月が白々と輝いている。まだ
目が覚めないのか、どことなく眠たげな顔つきだった。
 そんなレミリアの傍らには、紅美鈴の姿があった。彼女は当主警護隊長であり、幼い主
に代わって実質的に執務を遂行する側近でもある。紅魔館において何か取り決めなどを行
うときは、主に適切な助言を与えることが求められるし、実際にその要求に応えてきた。
美鈴こそが紅魔館のナンバー2と言ってよいだろう。

 今夜は紅魔館始まって以来の重要案件を話し合うことになっていた。レミリアが執務机
に肘を着いて気だるそうに問いかける。

「……それで、パチェは何と言っている?」
「技術的には問題ないそうです。手持ちの魔導書・魔道具だけで『移転』は可能とのこと
です」
「そう。移転先の状況についてわかっていることは?」
「調査の結果、お嬢様のご期待に添えるものとのこと。決して広大ではありませんが、相
当数の人外が確認できたそうです」
「なるほど……まさに楽園ね、その『幻想郷』とやらは」
 レミリアは満足げに頷く。この幼い吸血鬼は新天地へこの館ごと移住するという壮大な
計画を企てていた。新世紀を間近に控え、人間はこの星全てを覆い尽くすような早さで勢
力を拡大している。そんな世界に自分たちのような存在の居場所など無い、というのが彼
女の考えだった。美鈴は念を押すように問う。

「では、よろしいのですね?」
「何度も同じ事を言わせるな。化物はいずれ人間に滅ぼされる、そういうものなんだよ。
だがその幻想郷なら我々を受け入れる余地もあるだろう。……それに、各地で『同胞』が
狩られているという噂も気になる」
「その件に関して確証はありませんが、英国の秘密情報部が関与しているとの報告もあり
ます」
「いずれにせよ、選択の余地は無いさ。要員の確保もままならないのだろう?」
 美鈴は黙って頷く。レミリアの言う『要員』とは妖精のことで、紅魔館では彼女らにメ
イドや警備を担当させている。しかし近年、妖精は激減しつつあり定員も満たせていない
のが現状だった。そのため館内は一部を除いて荒れ放題である。

「では……」
「予定通り決行する。パチェに準備を――」
 主がそこまで言いかけた時である。ノックも無しに執務室のドアが開かれ、何かが中に
放り込まれた。鈍い音を立てて絨毯の上に転がったそれは、警護隊に所属する妖精だった。
喉をかき切られ、大きな傷口から血を溢れさせて死んでいる。
 美鈴が息を呑んだのも束の間、開いたドアから一人の少女が入ってきた。髪は銀色で黒
の戦闘服姿、その右手には血塗れのナイフが握られている。底冷えのするような青い瞳は
何を映しているのか判然としなかった。

「警護隊!」
 緊急事態だと悟り、美鈴は隣室に向かって叫んだ。すぐに横手のドアが開き、二名の警
護隊妖精が駆け込んでくる。慌てふためく周囲を尻目に、レミリアは肘を着いた姿勢を崩
さず、退屈そうに事態を傍観していた。できればおとなしく避難して欲しいのだが、と胸
中でぼやきつつ美鈴は指示を飛ばす。

「侵入者だ、拘束しろ!」
 命令と同時に二人の妖精は警棒型スタンガンを抜き、得体の知れない娘へ向かっていく。
これに対する少女の反応に、美鈴は目を奪われた。
 少女は床を蹴って駆け出すと、銀のナイフを一閃させた。一方の妖精が悲鳴を上げ、首
筋を手で押さえる。指の隙間からは血が噴き出していた。
 倒れゆく同僚の姿に激昂し、もう一人が警棒を振り下ろす。少女は妖精の肘辺りを腕で
跳ね上げ、その胸を水平に突く。根元まで食い込んだナイフは心臓に達しただろう。妖精
は痙攣し、その場に崩れ落ちた。

 美鈴が少女を目で追えたのはそこまでだった。いつの間にかその姿が掻き消え、警護隊
妖精二名の死体だけが転がっている。

「消えた……!?」
 思わず驚愕の声を上げる。直後、鋭い痛みが美鈴を襲った。下を向くと、胸や腹に何本
もの投げナイフが突き刺さっている。刃には特殊な処理が施してあるらしく、妖怪である
美鈴に焼け付くような苦痛を与えた。
 倒れる直前、どうにか主の方へ視線を這わせた。レミリアの目の前にあの少女が立って
いる。幼い吸血鬼の胸には銀のナイフが深々と沈められていた。主は意外そうに自らに突
き刺さる刃を見下ろしていたが、やがて口の端を歪めて笑う。いつも退屈だと言っていた
彼女はこの状況を楽しんでいるようだった。

 レミリアが右腕を振るうと、少女はナイフを抜いて飛び退いた。そのすぐ目の前を長く
鋭い爪がかすめていく。そこから先は美鈴には着いていけない世界だった。少女はあのレ
ミリアを相手に、ほぼ互角に立ち回っている。怪力で繰り出される攻撃をかいくぐり、格
闘用ナイフで、あるいは投げナイフで吸血鬼の身体に傷を刻み付けていった。

 なんだあれは、と横たわりながら美鈴は思った。あの娘は本当に人間なのか。警護隊妖
精を始末した時点で、尋常でない相手だとは見抜いていた。妖精の中でも素質のある者を
選抜し、美鈴自ら訓練したのが警護隊である。それを少女は一瞬で二人も殺害した。
 しかし信じがたいのはその後の動きだった。美鈴に避ける暇も与えず投げナイフを食ら
わせ、その上でレミリアの目の前に立って一突きしている。見間違いで無いならよほどの
高速で動いたとしか思えなかった。

「神速……」
 美鈴は思わず呟いた。こうして見ている最中も、少女はいつの間にレミリアの背後に回
りこんで背中にナイフを突き立てている。

「やるじゃないか。いいぞ人間、面白いぞ!」
 驚愕するばかりの美鈴とは対照的に、彼女の主は心底楽しそうだった。すでに体中が傷
だらけで血塗れになっているというのに、顔つきは愉悦に染まりきっている。
 いつまで経っても倒れる気配を見せぬ相手に、少女は焦りを感じ始めたようだった。首
を狙った一撃がやや大振りになる。レミリアはそれを見逃さなかった。左腕で攻撃を跳ね
除け、右手で少女の首を掴む。その体が軽々と持ち上げられ、つま先が床から離れた。

 終わったか、と美鈴は安堵のため息をついた。攻撃を弾かれた時にやられたようで、少
女の右手首はありえない方向に曲がっている。その手を離れたナイフが床に突き刺さって
いた。あとは首をへし折られて終わりだろう。
 苦しげに顔を歪めながらも、少女はなおも抵抗した。左手で腰のナイフを抜き、レミリ
アの前腕部に振り下ろす。刀身はバターを突き刺したようにするりと食い込んだ。わずか
に顔をしかめながらも、レミリアはまた笑う。
 右腕を振り回し、少女を執務机にたたき付ける。机は派手な音を立てて真っ二つになり、
少女はその残骸に埋もれた。

 レミリアは突き刺さったナイフを抜いて投げ捨て、少女の前に立つ。すでに動く力も残
っていないようで、少女は自らを見下ろす吸血鬼を見つめ返していた。そしてかすれた声
で呟く。

「……殺せ」
「自殺志願者か? だが各地で同胞を殺ったのはお前だろう?」
「……」
「私はお前を殺せる。そうしようとするだけで、いとも簡単に。つまりお前の命は私の手
の内にあるわけだ」
 美鈴は会話を聞いているうちに嫌な予感がしてきた。また主が妙な気まぐれを起こして
いるのではないか。そしてそれは的中した。レミリアは窓の外で煌々と輝く月を見上げ、
嬉しそうに笑う。

「十六夜の下で見事に血の花を咲かせた娘、お前は私のものだ」
「……」
「名を与えてやる。十六夜咲夜――今日からそう名乗るといい」
「十六夜……咲夜……」
 それまで能面のようだった少女の表情が、微かに動いた。虚ろな瞳に幾ばくかの光が戻
る。何も寄る辺が無かったような印象が薄らいだ、美鈴はそんなふうに感じた。
 レミリアがこちらを見た。あの娘に対してはどこか優しげですらあったのに、美鈴を見
下ろす瞳は酷く冷たい。

「それで、お前はいつまで無様に寝ているつもりだ?」
「え……あ、あの……」
 刺さったままの投げナイフで体が悲鳴を上げるが、それでもどうにか力をこめて起き上
がった。そんな美鈴に対するレミリアの態度は変わらない。怒っているというよりも、関
心を失ったような顔つきだった。

「部屋を片付けさせろ。今すぐにだ」
「片付け、ですか……?」
「死体、机、その他散乱した物。お前は私を怒らせて楽しいのか?」
「い、いえっ! ただちに!」
 美鈴は慌てて部屋を飛び出し、妖精メイドたちへの指示を出す。そんな中で彼女は確信
する。警護隊長としての役割を満足に果たせなかった自分は、主の不興を買ってしまった
のだ。



 それから程なくして、紅魔館は幻想郷に移転した。外の世界では山奥に建っていたのだ
が、今は湖に浮かぶ孤島の館である。

 新天地でレミリアが真っ先に着手したのが、要員の補充だった。荒廃した館を修復し、
維持するためには頭数がいる。幻想郷には妖精がいくらでもいたので、数はすぐに揃った。
だが質の低い者が多く、組織に組み込む上では問題だった。それに食料や資材など物資を
調達する必要もある。
 その際に頭角を現したのが十六夜咲夜だった。扱いは一介のメイドに過ぎないが、レミ
リアに大きな裁量を与えられ、その能力を発揮したのである。
 日常作業を合理化し、基本的な訓練を積んだだけの妖精メイドでもどうにか維持できる
ような状態を作り上げた。さらには警備体制の不備を指摘し、レミリアの許可を得て警護
隊を再編した。彼女は特にその方面で力を発揮し、隊の練度向上に貢献したのである。
 さらには情報を集め人里と交渉し、食料や物資の確保に成功した。その上で上白沢慧音
に相談して『吸血鬼異変』以来の契約内容を確認し、紅魔館に便宜を図ってもらえるよう
にしている。
 レミリアを殺しに来た少女は、その相手のために精力的に働いた。あの夜、彼女の中で
何かが吹っ切れたのかもしれない。そんな咲夜をレミリアは高く買っているようだった。

 咲夜が幻想郷における紅魔館の新体制構築に貢献している姿を、美鈴は指をくわえて見
ていることしかできなかった。今までは自分が担当していたあらゆる事が持っていかれて
しまったし、レミリアも何かあればまず咲夜に相談しているようだった。
 どうすればいいんだ、と美鈴は胸中で呟いた。自分は冷遇され、立場が危うくなってい
る。彼女がこうして警護隊待機室の椅子を尻で暖めている間も、咲夜は主のため献身的に
働いているのだ。何とかしたいのに何も出来ない、そんな焦りがこみ上げてくる。

「……見回りでもするか」
 ポツリと呟いて席を立つ。本来なら隊長がやるような事ではないのだが、何もせずにい
るのが怖かったのである。
 廊下を歩いていると妖精メイドなどとすれ違ったりするが、皆どこかよそよそしい。以
前なら笑顔で挨拶されていたというのに。そして警護隊の者は困惑気味ながらも、一応敬
礼してそそくさと通り過ぎていく。レミリアの指示で事実上の指揮権が咲夜に移ったため、
隊員としてはどう接したらよいのか戸惑っているのだろう。

 しばらく行くと人だかり――もとい、妖精だかりができていた。その中心には咲夜の姿
がある。美鈴はとっさに柱の影に身を潜めた。どうして自分がコソコソしなければいけな
いのだ、と思いながらも姿を見せるのがなんとなくはばかられる。
 遠いのではっきり聞き取れないが、妖精たちは質問や相談事などをしているらしい。咲
夜は的確に対処しているようだった。仕事に関わることだけでなく、ただの雑談も混じっ
ているようで、妖精たちの笑い声が聞こえてきたりもした。

「なんだこれは……」
 美鈴は思わず口に出して歯軋りした。以前なら、あそこは自分の居場所だったのだ。そ
れが今ではすっかり咲夜が頼られている。尊敬と憧れの対象は今や自分ではなく、あの新
参者の十六夜咲夜だった。あの夜、彼女が現れたことで全てが一変してしまった。
 また妖精たちが笑っていた。それがまるで自分に対する嘲笑のように聞こえる。居た堪
れなくなり、美鈴は足早にその場を立ち去った。



「ご苦労だったわね、美鈴。今日付けで警護隊長の任を解く」
「は……?」
 久々にレミリアから出頭を命じられ何事かと思えば、いきなりこの一言だった。呆然と
する美鈴のことなど意に介さぬように、傍らに控える咲夜を手で指し示した。

「新たに『メイド長』という役職を設けることにした。それに咲夜を就かせる」
「メイド長……?」
「私の直属として、館内の全てを取り仕切る。その中には当然警備も含まれる。だからお
前が隊長職を務める必要は無くなったわけだ」
 美鈴は信じがたい思いで主の言葉を聞いていた。要するに咲夜が紅魔館のナンバー2と
なるのだ。何十年も仕えてきたこの自分が、やって来てわずか数ヶ月の小娘に取って代わ
られる――美鈴には耐え難いことだった。

「そ、それで、私はどうなるんです?」
「警護部門の一隊員として、咲夜の指揮下に入れ」
「冗談じゃありませんよ! どうして私がこんな……こんな人間なんかに従わなければい
けないんですか!?」
 とうとうこらえきれなくなり、美鈴は激発した。そしてありったけの憎悪を込めて咲夜
を睨み付けるが、相手は顔色一つ変えない。レミリアが面倒くさそうに、そして冷ややか
に言った。

「ふうん……『こんな人間』に敗れ、無様に這いつくばっていたのはどこの誰だったか
な?」
「そ、それは……あの時は、その、不意を突かれただけで……」
「無様な言い訳だな、敵が待っていてくれるとでも思ったか? ……それで、お前はどう
したいんだ」
「ともかく納得いきません、こんな仕打ち……!!」
 レミリアの指摘がことごとく的を射たものだったので、美鈴には感情的に喚くことしか
できなかった。気まぐれな主は鬱陶しそうに天井を仰いでいたが、やがて吐き捨てるよう
に言う。

「ならもう一度だけチャンスをやる。咲夜と決闘をしろ、勝てばお前の言い分を聞いてや
ってもいい」



 紅魔館の中庭が決闘の場となった。月明かりの下、レミリアやパチュリー、そして大勢
の妖精メイドたちがこの勝負を見守っている。皆の前で打ち負かしてやればまた以前のよ
うに戻れる、と美鈴は自らに言い聞かせた。彼女には武術の達人としての自負があり、正
面対決ならば、という思いがあった。

「見ていろ、今度はお前なんかに遅れは取らない!」
「……」
 いきり立って構える美鈴に対し、咲夜は何も答えずナイフを抜いた。その態度がさらに
神経を逆なでする。

「よし、始めろ」
 レミリアの合図と同時に、美鈴は猛然と突進した。そして渾身の力を込めて殴りかかり、
そして蹴りを放つ。
 だが咲夜はこちらの動きを完全に読み切っているようだった。繰り出す攻撃がことごと
く紙一重でかわされ、その度に反撃が襲い掛かってくる。それでも初めのうちはやり過ご
していたが、次第に相手の攻撃が鋭さを増していった。
 気がつけば咲夜の拳がみぞおちに沈んでいた。前かがみになると膝で顔面を蹴られた。
ふらついたところで、回し蹴りがこめかみを襲う。美鈴はバランスを完全に崩し、芝生の
上に倒れこんだ。

「嘘だ……」
 信じがたい思いで呟く。咲夜の格闘やナイフの技量は自分を上回っているのか。だがそ
れは美鈴にとって、とうてい受け入れがたい事実だった。
 どうにか起き上がり、右の拳に全身の気を集中させる。そしてありったけの殺意を込め
て、咲夜へ突進する。気功の一撃を食らえば人間などひとたまりもない。内臓という内臓
が破裂し、全身から血を噴き出して絶命するだろう。
 そしてあと一歩の間合いにまで入った時である。咲夜の双眸が赤く光ったように見えた。
次の瞬間、その姿が美鈴の眼前から消え失せる。

「な……!?」
 あの時と同じだ、と彼女は思った。得体の知れない神速、それを咲夜が使ったのだ。そ
こまで考えた直後、両足首に鋭い痛みが走る。立っていられなくなり、その場で両膝を着
いた。
 なんとか振り返ると、血の滴り落ちるナイフを手にした咲夜が立っていた。両足の腱を
切られたらしい。睨み付けた直後、咲夜が腕を振り上げた。首筋を衝撃が襲い、美鈴はそ
の場で昏倒した。



「……さて、どうしようか。これだけ大勢の前で醜態を晒したんだ、紅魔館にはいられな
いだろう」
 おぼろげに意識が回復してきた頃、そんなレミリアの声がやけに遠く聞こえた。芝生の
感触が頬に触れる。どうやらあのまま放置されていたらしい。
 重たい瞼を持ち上げると、レミリア、咲夜、パチュリーの三人が少し離れたところに立
っていた。すでに解散したのか、妖精メイドたちの姿は無い。

「ではお嬢様、追放ということですか?」
「ああ。あれでも私に数十年仕えた者だ、命までは取らないよ。だが無様な者を紅魔館に
置くつもりはない」
 やはりそうなるか、と美鈴は思った。それに紅魔館のほとんどの者が見ている前で敗れ
たのだ、皆にも力関係がはっきり知れ渡ってしまっただろう。そんな中でここに留まり続
けるのは美鈴にとっても苦痛だった。追放というのはある意味、レミリアの思いやりなの
かもしれない。
 ところが意外なことに、咲夜が反対意見を口にした。

「恨みを抱いた者を野に放つのはよくありません。殺さないのであれば、適当な仕事を与
えて手元に置いた方がよろしいかと」
「なるほど……ふふ、そうか。飼い殺しとは良い趣味だな。ならそうしよう」
 レミリアは喉を鳴らして心底楽しそうに笑い、咲夜を褒めてその提案を受け入れた。美
鈴の意向など確認しようともしない。ここでもか、ここでも咲夜を重用するのか、と美鈴
は憤慨した。
 何もかも、そう、何もかもがこの新参者によって奪われてしまった。地位や名誉、賞賛
と尊敬、そして最後に残った誇りまでも。何も残っていない、自分には何も残されていな
い。全ての元凶、十六夜咲夜のせいで。

 畜生、畜生、畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜
生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜
生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生!!!
 この上ない屈辱の中、美鈴にはそれ以外の何の言葉も思い浮かばなかった。



 それから歳月は流れ、紅美鈴は紅魔館の門番をしていた。そして今、目の前には巨大な
レーザーが迫っている。彼女はそれを回避することも無く飲み込まれた。ものすごい勢い
で吹き飛ばされ、紅魔館の外壁にぶち当たる。体のあちこちが焦げているが、スペルカー
ドなので死ぬことは無い。

「悪いな、お邪魔していくぜ!」
 そう言って白黒の魔法使いが敷地内へ侵入していく。美鈴にはそれを見送ることしかで
きなかった。これで何度目だろうか。すでに数えることなどやめてしまったが、三桁に達
したところまでは覚えている。

「まったく、これで失態は何度目なのかしら?」
「あ、咲夜さん……」
 叱責の声に、美鈴は気の抜けた声で答える。門前にはいつの間にか、日傘を差したレミ
リアと咲夜の姿があった。これからまた神社へ行くのだろう。美鈴はへらへら笑って答え
た。

「あはは、ごめんなさい。またやられちゃいました……」
「あのね、少しは反省を――」
「咲夜、そんな事はどうでもいいから早く行くわよ」
 そう言ってレミリアが咲夜を促す。美鈴のことはわずかに横目で見ただけだった。すで
にこの主は彼女に対して興味など持っていないのだろう。レミリアの言葉なので、咲夜は
肩をすくめながらも従った。

「ではそうしましょうか。……美鈴、もっとしっかりやりなさいよ」
「は、はい。ではお二人とも、行ってらっしゃいませ」
 美鈴は取り繕うような笑みを浮かべ、見送りの挨拶をした。咲夜はまだ何か言いたそう
だったが、レミリアに袖を引っ張られたので歩き始める。

 遠ざかっていく二人の背を見ながら、美鈴は歯軋りしていた。湧き上がる屈辱を必死で
こらえる。まだだ、今はまだ雌伏の時だ。その思いだけを胸に、今はひたすら耐える。
 時が経てば、人間である咲夜はいずれ死ぬ。そこまで待たなくとも、老いて力が衰えた
ならば取って代わることもできるだろう。だが今はその時ではない。自らに言い聞かせる
と、普段の柔和な笑顔でレミリアと咲夜の姿を見送った。











  • 美鈴にも子分的な存在がいればな -- 名無しさん (2009-06-01 18:18:56)
  • 咲夜と妖精の関係は上司部下だが
    美鈴と妖精の関係はそれにさらに友情という関係があるように思えてしょうがない -- 名無しさん (2009-06-01 18:54:23)
  • 美鈴の復讐劇キボン! -- 名無しさん (2009-06-02 00:43:25)
  • 咲夜やレミリアが酷い目に合っても何とも思わないが
    美鈴が酷い目に合うのは心が痛むな… -- 名無しさん (2009-06-02 09:35:44)
  • >>3
    早苗「どこの馬の骨とも知らぬ人間に地位を奪われ、あまつさえ長年
    遣えた主の信頼までも失った。今の自分に存在意義はあるのだろうか?
    あなた程の妖怪が何を悩む必要がありますか。どうせ人間はすぐに死ぬ。
    その時お嬢様を守れるのは美鈴さんだけです!さあ、祈るのです
    守矢の神に信仰を捧げるだけであなたはどこまでも強くなれるのです!
    奇跡の力を見せてあげましょう!」

    この作品を読んで美鈴の弱みに付け込み信仰を増大していく
    早苗さんを幻視した。

    美鈴「あなたは -- 名無しさん (2009-06-02 16:51:55)
  • 衰えるまで待つ、とか言っちゃってるからもうダメなんだろうな
    もう二度とおぜうさまには相手にされないと予想 -- 名無しさん (2009-06-02 19:42:08)
  • 美鈴が非情になるのは土台無理な相談か -- 名無しさん (2009-06-02 22:56:40)
  • >>5
    それなんて八坂学会 -- 名無しさん (2009-06-03 00:02:29)
  • 魔術的なものが一切使用できなくなる状況になれば
    美鈴が最強生物になるよ -- 名無しさん (2009-06-03 12:33:57)
  • スペルカードルール自体が武道家に超不利だからな
    でもこの話の中だと接近格闘戦で負けてる・・・ --   (2009-06-03 20:15:52)
  • まぁ元々超接近戦でもレミリアや萃香はともかく
    咲夜や靈夢にさえ勝てるか怪しいが… -- 名無しさん (2009-06-03 20:44:11)
  • 「怪しい」んじゃなくて「分からない」だろ
    というか霊夢には夢想天生があるからレミリアよりは強いだろ -- 名無しさん (2009-06-04 23:37:12)
  • 英国の秘密機関てHELLSIGの事wたしかにまずい -- 名無しさん (2010-03-16 22:09:27)
  • 美鈴のU-1物が多すぎて辟易してたから良い物を見せて貰った -- 名無しさん (2010-03-16 23:01:27)
  • 確かに負け癖付いた奴の考え方だよな、老いを待つのは
    この様子じゃ自身の鍛錬怠っていて老獪さを身につけた老咲夜にも負けかねん -- 名無しさん (2010-06-28 22:27:49)
  • 伏龍かあ -- 名無しさん (2010-07-03 21:06:54)
  • 「雌伏の時」が「雌犬の時」に見えてビックリした -- 名無しさん (2010-09-07 14:39:20)
  • ↑俺がいる -- 名無しさん (2010-09-09 19:38:17)
  • ↑俺ガイル -- 名無しさん (2013-04-08 21:42:34)
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