【第十七話・再誕! 真実の炎!!】

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 ラビットというロボットと出会った。  彼は丸っこくて、白いボディに、所々ピンクのパーツが使われた可愛らしいロボットだった。  それなのに、その外見に似合わない哲学的な話をする不思議な“友達”だった。  メタルブラックというロボットと出会った。  彼は自らを侍と名乗る、黒い鎧で、巨大な得物を操る戦闘ロボットだった。  ブラッククロス四天王の一人として立ちはだかる、最強の“敵”だった。  再び、メタルブラックと出会った。  彼は厳ついボディに生まれ変わり、侍ではなく破壊兵器だった。  窮地の親友と自分を助けてくれた“恩人”だった。  その彼が、今また、目の前に立っている。  今の彼を表す言葉は何だろう?  とても、一言では言い表せないように思う…… 佐天「アルカイザー……そう名乗ったよね?」  「ああ。だが、正確には少し違う。私はあくまでも私だからな……」 佐天「なら、何て呼べば良い?」  名を問われ、黒い機械戦士が、自分自身を確かめるように名乗る。  「鋼(メタル)……メタルアルカイザーだ」  【第十七話・再誕! 真実の炎!!】  体の調子を確かめるように、佐天はゆっくりと立ち上がった。  単純な骨折は直りかけているようだが、まだそこら中がズキズキと痛む。  複雑骨折したらしい左腕を押さえると、電流を流されたように全身が跳ねる。  激痛を、歯を食いしばって耐えた。  まだ変身はしない。  その前にもう一度だけ、この佐天涙子の姿で聞かなければならないことがある。 佐天「メタル……アルカイザー? どうして私の回復を待つの?」 メタルA「傷ついたお前を倒しても、最強の証明にはならんからだ」 佐天「貴方は以前言ったわ。数の差も力だって……なら、不意を打って倒す事だって、力じゃないの?」 メタルA「……奴の非道を目の当たりにして、考えが変わった」 佐天「……」 メタルA「真に最強の戦士とは、正面から堂々と戦うものだ。相手がどんな手を使おうとな……」 佐天「そう思っているなら……どうして、どうしてブラッククロスなんかに居るの!?」  それが信じられなかった。  彼はあのとき、確かに自分達を助けてくれたはずなのに。  ブラッククロスという組織がどんなものなのか、弱者が踏みにじられることが、どんなことなのか知ったはずなのに。 佐天「どうしても……私たち戦わなきゃいけないの……?」 メタルA「……愚問」 メタルA「私は“メカ”だ。そして、主の名はDrクライン」 メタルA「ならばそれが、私の戦う意味の全てだ」  彼の意思は固い。  意思?  そうか……彼はやっと手に入れたんだ……  なら、戦おう。  それしか道は無い。  ……それでも。私は友達を救いたいと思う。  だから、そのためにこの力を使おう。  この力はただ一つ。“守る”ためにあるのだから。  願いを込めて、希望を込めて。  何度もこの名を叫んできた。  そして今、もう一度、全ての想いを込めて叫ぼう。 佐天「変身!!! アルカイザァアアアアアアア!!!!!!」  舞い上がる塵の一つ一つの動きが見える。  魂が破裂しそうなほど鼓動する。  細胞を、生命力が塗り替えていく。  打ち出す拳が灼熱に燃える。  駆け抜ける足は光速を超える。  蔓延る闇を額で切り裂き、蒼いマントが烈風に舞う。  輝く光が希望を示し、守るべき信念を照らし出す。  その眼光は曇りなく、進むべき道を見据えている。  願う通り、その体は紅く染まった――――!!!!!!  これが、佐天涙子の最後の変身だった。 メタルA「直接手合わせするのは久しぶりだな」 アルカイザー「強くなったよ。私は」 メタルA「私は? 私“も”だろう?」  ……冗談まで言えるようになったのね。  肩を回し、傷の治り具合を確認する。  大丈夫だ。  複雑骨折していた左腕も、自由自在に動かせる。  ……いつも思っていたことだが。  この傷の治り方は異常じゃないだろうか?  常識を超えた力なのだろうことは分かる。  でも、こんなことをして何のリスクも無いとも思えない。  『ファイナルクルセイド』という技がある。  あれは、自らの生命力を周囲に分け与えることで傷を癒す。  なら、この力の源はやはり―――― アルカイザー「……私は“長生き”できるかな?」 メタルA「生き延びたければ、構えろ」  二人は距離を空け、円形の舞台の上で向かい合った。  アルカイザーが、拳を握り締めて腰を落とす。  すると、メタルアルカイザーも同じように構える。  まるで、合わせ鏡。  もう一人の自分との決闘だ。  二人は動き出すのも同時だった。  空洞に、二人の雄たけびが響き渡る。  「「おぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」」  互いに右腕を振りかぶり、エネルギーを送り込む。  拳が光り輝き、眼前に迫った敵に打ち出された。 アルカイザー『ブライトナックル!!!』 メタルA『タイガーランページ!!!』  速い――!  機械戦士は以前、ヒーローさえも苦しめる圧倒的な戦闘能力を見せた。  パンチのスピード一つとっても、二人の差は歴然としていたものだ。  だが―― メタルA「……ッ!? 互角か!!?」  アルカイザーのパンチは、メタルアルカイザーのそれに匹敵する速度と精密性を持っていた。  メタルアイルカイザーとなった彼の性能は、メタルブラックだったときよりも向上されているというのに……! メタルA「チィ!!」  キリが無い。  メタルアルカイザーは、そう判断し体を捻る。  姿勢を低くし、全身を回転させての後ろ回し蹴り。  竜巻を起こすほどの勢いで放たれた蹴りが、アルカイザーのわき腹をえぐる。 アルカイザー「……ゲホッ!?」  内臓にめり込む鋼鉄のカカト。  一瞬呼吸が止まり、口の中に鉄サビの味が広がる。 メタルA「もう一度だ!!」  メタルアルカイザーは、その勢いで押し切ろうと一歩踏み出す。  しかし、今度の攻撃には反応された。  振り上げた足を、がっちりと腋の下で固定される。 アルカイザー「接近戦は……打撃だけじゃない!!」  彼女は、そのまま彼の足を抱え振り回し、壁に向かって放り投げた。  激突しそうになる直前、くるりと体勢を立て直した彼は壁に“着地”する。 アルカイザー「まだまだぁ!!」  追撃しようと、アルカイザーが右拳を振りかぶって飛び出した。 メタルA「それで間に合うと思うかぁ!!!」  メタルアルカイザーの背中から、蝙蝠のような翼が飛び出した。  同時に腕が開き、中から鋼の剣が現れる。 メタルA『ムーンスクレイパー!!!!!』  急激に加速し、弧を描きながら宙を駆ける異形の黒い戦士。  空中に飛び出したアルカイザーの左側面に回りこみ、剣を両手で構えた。 メタルA「首……貰った!!!」  かつて、少女らの腹を切り裂いた凶刃が、再び奮われる。 メタルA「――――!!?」  ありえない。  読んでいたというのか。  アルカイザーの視線がこちらを向いて、しかも―― アルカイザー『カイザーウイング……!!』  その手に、蒼い光の剣が煌めいていた――!  振るわれた剣が空を裂き、紅い烈風を巻き起こす――!! メタルA「……ならば、こちらがそれを凌駕すればいい……っ!」  メタルアルカイザーの体が、空中で急停止した。  以前の無茶なロケットブースターによる加速では不可能だった。  安定した『翼型』への改造を経て、彼の機動性能は格段にアップしている。  紅い風を飛び越え、さらに上昇していく。 メタルA『ムーンスクレイパァァアアアア!!!』  飛行中の急速な方向転換。  アルカイザーの頭上を飛び越え、逆方向から旋回して戻ってきた。  彼女は反応できていない。  立体的な動きで、今度こそ、空中に三日月の軌跡が現れる。 アルカイザー「――――っ」  切り裂かれた“紅い鎧”は地に崩れ落ち、血の“紅い花”を舞い散らす…… メタルA「……これでも仕留め切れんか……!!」  確かな手ごたえだった。  確実に相手の裏をかき、手心など加えずに急所を狙った。  だが、生きている。  生きて、立ち上がり……なお攻撃の手を休めない!! アルカイザー『アル・ブラスタァアア!!!』 メタルA『喰らうか!! サンダァァァボォォル!!!』  光の弾丸を、雷の球で迎撃した。  その際に起こった閃光に紛れ、彼女は自らも弾丸となって飛び込んでくる。 アルカイザー『シャイニングキックッ!!!』 メタルA「ぬおっ!!?」  上体を反らせて回避する。  持ち上げたアゴをギリギリ掠めていった。  鋼の剣で、振り返りざまに斬りかかる。  蒼い剣も同じく、空中から無茶な体勢のまま振り下ろされていた。  切り結び、距離を空けるため後ろに飛び退いた。  向こうも、剣を弾いた反動を利用して飛び上がり、一回転して着地した。 メタルA「……強くなった……確かに……強くなった……!!」  何故この短期間にこれ程の成長を?  メタルアルカイザーは知らない。  彼女とアルカールの一戦を。  あれは、アルカールによる特別授業だった。  佐天の覚悟を確かめ、足りない経験を自分と戦わせることで補う。  もちろん。  それだけで強くなどなれない。  御坂美琴。  白井黒子。  初春飾利。  今のアルカイザーは、彼女たちの信頼で成り立っている。  佐天涙子には、ずっと足りないものがあった。  それが「自信」。  無能力者のレッテルが、それを彼女から奪い去った。  だが、今は違う。  数々の戦いを乗り越え、自分に何が出来るのかを知った。  自分が、何をしなければならないのかを知った。  その精神の変化が、彼女のヒーローとしての資質を高め、“覚悟”を決めさせたのだ。  ゆえに、今のアルカイザーには“制限”がない。  彼女自身、無意識のうちに掛けていた“制限”が――外れた。 メタルA「今確信した……貴様を乗り越えたときこそ、私は『最強』を名乗る……!」 アルカイザー「……最強……万能の力……!」 メタルA「そうだ! それだけが我が望み!! そのためならば――」 メタルA「涙子!!! 貴様さえも供物としよう!!!!!!」  メタルブラックの両腕の装甲が開き、漆黒の煌きが舞い踊った。  燃え盛る『黒炎』。  こんな禍々しいものなど、聞いたこともない。 アルカイザー「黒い炎……!?」  どういう原理なのか。  それはアルカイザーの紅い鎧さえ燃やす。 アルカイザー「なら……こっちも!!」  右手を床に付き、そのまま走り出す。  その摩擦で火花が散り、それが火種になって燃え上がった。  焦げ跡を地面に残して、拳が紅い炎を纏う。 アルカイザー『アル・フェニックス!!!』  鋼鉄を燃やし尽くす轟熱。  この技を放つということは、すなわち敵対するものの消滅を意味する。  黒炎を纏ったメタルアルカイザーは、腰を深く落とし構えた。  紅い渦が、周囲の物を無差別に溶かし、突き進んでくる。  不死身と呼ばれた男さえも一撃で葬った灼熱。  真正面から受け止めるなど愚の骨頂だ。  だが――  黒い戦士は退く事を知らない。 メタルA「この程度乗り越えずして、何が『最強』……!!!」  迫り来る不死鳥に対し、自ら突貫した。  無論、自分ならば“勝てる”と踏んだのだ。  勢いを増した黒い炎が、彼を守るように渦巻き、突き出した右拳から放たれた―― メタルA『ダークフェニックス……!!!』  ギラギラと殺意を放つ黒炎が、真っ直ぐに突き進んで征く。  「不死鳥」というよりも「凶鳥」。  眼前の全てを、その業火で焼き尽くさんと牙を剥く……!  紅い炎と黒い炎。  二つの炎が激突し混ざり合う。  勢いは互角。  だが―― アルカイザー「失敗したね……!」 メタルA「……!?」  アルカイザーの技は、まだ完了していない……!  メタルアルカイザーは、黒炎を紅い炎にぶつけようと技を“放った”。  だが、アルカイザーは違う。  彼女は、まだ炎を纏ったままだ。  いまだ、ぶつかり合う炎の中心に自らを置いている。 アルカイザー「逃げたね……! メタルアルカイザー!!!」 メタルA「逃げただと……? 私が……!?」 アルカイザー「確実に私を倒そうとするなら、炎は放つべきじゃなかった……」 アルカイザー「距離を保って、安全な場所で見物してたんじゃぁ届かないよ!!!」  彼女の気合に呼応して、紅い炎が勢いを増していく。  紅い炎はやがて、黒炎を包み込み巨大な塊になった。 アルカイザー「アンタの技も、そっくりそのまま返してやる!!!」  床を踏みしめ、再び炎の渦を纏おうと前進する。  しかし――機械戦士は、冷静に状況を分析していた。 メタルA「……ならば、そのセリフをそっくり返そう……」 メタルA「失敗したのは貴様だ。アルカイザー!!」 アルカイザー「――――っ!?」  炎が、一瞬にして全て――  黒く染まった……!!  炎の奥から、こちらに飛び出してくる影が見える。  翼を広げ、凄まじいスピードに加速して―― メタルA『ダークフェニックス!!!!!!』  今度こそ、黒炎を纏った鋼の拳が、アルカイザーの心臓に叩き込まれた――!!! アルカイザー「があぁああああああっ!!???」  体が燃える。  こんなこと、これまでには無かった。  いつだって、彼らは味方だったはずだ。  友達に、なったのだから。  それなのに……  黒く反転した彼らは、紅い鎧を焼き尽くそうと猛り狂う。 アルカイザー「どう……して……!?」  どうして……裏切ったの……?  …………  ……  やがて炎は掻き消え、舞台の上に静寂が訪れた。  そこに見えるのは、静かに佇む黒い機械戦士。  そして、燃え尽きることなく、炎の猛攻を耐え切ったアルカイザーの疲弊しきった姿だった。  蒼いマントは塵になって飛散した。  床に付いた手のひらは、鎧が熔け、酷い火傷を負い、指一本動かせない。  全身の至る所に、焼け焦げや熔解の跡が残っている。  だが、死んではいない。  ヒザをつき、俯いて、立ち上がれずにいるだけだ。 メタルA「……なるほど。やはり、貴様の言うことも正しかったようだ」  メタルアルカイザーが歩くたび、金属が床を叩く音が空洞に木霊する。  ゆっくりと、もはや目線すら合わせない宿敵に近づく。 メタルA「トドメを刺しそこなった……まだ迷いがあったらしい……」 アルカイザー「……っは……はははは!」  金属音が止まり、その代わりに乾いた笑い声が響いた。 メタルA「何が可笑しい……気でも触れたか?」 アルカイザー「ははは……いや……」 メタルA「貴様は我が最大の好敵手だ。最後まで誇り高くあってくれ」 アルカイザー「ふ……ふふっ! 誇り……あはははは!!!」 メタルA「……何だと言うんだ」 アルカイザー「……“迷い”に“誇り”……本当に人間臭いことをいうんだね」 アルカイザー「どうしてだって聞いたらさ……炎が教えてくれたよ」 メタルA「……」 アルカイザー「あの黒い炎……火の中に“何か”混ぜてあって、それで操ってるのね?」 メタルA「……ご名答だ。あれは、『ナノマシン』によって作られた炎だ」  超ミクロサイズのナノマシン。  黒い炎は、それを通常の炎に混ぜることによって生み出されていた。  本体であるメタルアルカイザーからの指示を受け、ナノマシンが炎を自在に操るという仕組み。  それは細菌のように数を増やしていき、炎から炎へと移り広がっていく。  だから、たとえ拳から離れていても、そんなことは関係ない。  本体からの情報伝達さえ果たされれば、アル・フェニックスにさえ乗り移り、黒く染め上げてしまうのだ。 メタルA「これが、貴様の技を元にDrが作り出した、私の『ダークフェニックス』だ」 アルカイザー「そっか……ふふっ」 メタルA「……いい加減にその笑いを止めろ。不愉快だ」 アルカイザー「あははははは!! 不愉快だって! あはははははは……!!!」  ダンッ!  ……と、メタルアルカイザーが床を踏み締めた。 メタルA「安い挑発は止めろと言っている!!」  その態度が気に食わなかった。  まるで、この戦いを侮辱しているようだ。  それはつまり、『メタルアルカイザー』という存在の否定に他ならない。  彼は、このためだけに作られたのだから。 アルカイザー「……怒れるんじゃん」 メタルA「……なんだと?」 アルカイザー「そうやってさ。怒って、悲しんで、喜んで……」  アルカイザーが、顔を上げた。  仮面越しだが、その瞳はしっかりと彼を見つめている。 アルカイザー「手に入れたんでしょう……『ココロ』をさ?」 メタルアルカイザー「――――!?」  ラビットと名乗っていたころ、彼にはココロが無かった。  メタルブラックだったころも、彼にはそれが理解できなかった。  彼はロボット。メカなのだから、それはしょうがないことだ。  しかし、シュウザー基地での戦いの際、彼の電子頭脳は奇跡を起こした。  主を裏切り、自身を傷つけ、敵を救い出すという「理屈に合わない行為」。  およそメカらしくないその行動は、決して「故障」などではない。 アルカイザー「なら……考えたんでしょう? この戦いの意味を――」 アルカイザー「何のために、『万能の力』なんてものが必要なのかを!!」 メタルA「……っ!!」  彼女のしていることは、不可解だ。  メカに対して、こんな説得は意味が無い。  彼らはただ、冷酷に冷静に、真実だけを述べ、使命だけを果たすものなのだから。  だが、こと『メタルアルカイザー』に限ってはその範疇ではない。  彼の行動原理は、メカとしての使命ではなく、『固い意思』によってのモノなのだから…… アルカイザー「教えてよ……世界征服なんて馬鹿な真似を、どうして……?」 メタルA「……君が居た時代とは、事情が違うんだ」  黒い戦士が拳を下ろした。  態度と口調が柔らかくなる。  それはまるで、旧知の友と語り合っているかのようだ。 メタルA「このリージョン界は今、『トリニティ』という組織が牛耳っている」 アルカイザー「トリニティ……?」 メタルA「奴らは軍事力を盾に全てのリージョンを支配下に置いた。実際に、ワカツというリージョンが滅ぼされている」 アルカイザー「そんな……それじゃあまるで!?」  まるっきり、『悪の組織』の『世界征服』じゃないか――!! メタルA「だからこそ……奴らから世界を取り戻さなければならない……」 アルカイザー「じゃあ……そのために、ブラッククロスは世界征服を?」 メタルA「私は……」  メタルアルカイザーは、少し困ったように首を振り、間を置いてから―― メタルA「そう、聞かされている」  真実だけを述べた。 アルカイザー「……待って。聞かされている……って……」 メタルA「それ以上言うな。分かっている」 アルカイザー「嘘だよ……そんなの……!!」  世界を悪い奴らから開放するために、自分達が世界を征服しなおす?  それだけで、もうふざけてる!  しかも、そのために人の命を散々弄ぶようなことを繰り返して……?  ありえない。  そんな『正義』はありえない――!!! アルカイザー「メタルアルカイザー! そんなのは嘘よ!!」 メタルA「分かっていると言った!!! だが……」  メタルアルカイザーは、必死に理由を探している。  らしくない。  いつもの彼なら、すっぱりと一言、事実だけを述べている。  それが、彼がココロを持っている証。  ココロがあるゆえの苦しみ。 アルカイザー「なら、言い訳なんてしないでよ! 気付いてるなら!!」 メタルA「これは『ブラッククロス』の話だ! 私の主はDrで、組織は利用していただけだ!!」 アルカイザー「それも詭弁!! 人を利用して、犠牲にして得る力に意味なんて無い!!!」 メタルA「五月蝿い!! だが……なら――――」 メタルA「私が信じずに……誰が“父”の味方になれるというんだ!!!??」 アルカイザー「――――“父”……」  メタルアルカイザーの両腕から、再び黒炎が噴出し燃え盛った。 メタルA「父は……その才能ゆえに世界から追い出されたのだ……!」 メタルA「誰一人、彼の言葉に耳を貸さなかった!!」 メタルA「あげく……道を外れた彼を、奴らはこう罵った!!!」  『マッドサイエンティスト』 メタルA「人より優れ! 人とは違う感覚を持った彼を! 誰も救おうとはしなかった!!!」  黒い炎は、際限なくその勢いを増していく。  まるで、彼の小さな電子頭脳に溜め込まれ続けた感情が、その姿を現したかのように…… メタルA「確かに……彼は『狂人』なのだろう……『悪人』なのだろう……!」 メタルA「だが、それはこの世界が今、“こうなっている”からだ!!!」 メタルA「反転した世界なら……我々が征服した世界なら!!!」 メタルA「こんな世界など……一度滅びてしまえば良い!!!!!!」  漆黒の炎に包まれ、メタルアルカイザーは灼熱の化身と化した。  放っておけば、彼は『最強』の力で、このまま世界を焼き尽くすだろう。  怒りに任せ。  感情に任せ。  願い求め、やっと手に入れたその『ココロ』を、“悲しみ”のみに染め上げて……  ……なんて悲しい声だろう。  子ども。  生まれたての子どもは、泣いて感情を表す。  きっと、彼は感情の表し方がまだ分からないんだ。  胸を苛む苦しみに、どう向き合えばいいのか。 アルカイザー「……大丈夫」  ズキズキと痛む体に鞭を打ち、上体を持ち上げる。 アルカイザー「人は、段階を踏むんだよ」  ヒザに力をいれ、立ち上がった。 アルカイザー「一気には解消できないんだよ。ココロって不完全なものだから」  彼女が私にそうしたように、私は彼の想いを―――― アルカイザー「力があれば、何だって出来るわけじゃない……」 アルカイザー「強いって、大変なんだよ。抱えるものが増えるんだから……」  受けて立とう……!  アルカイザーに黒炎の渦が迫る。  もう一度同じことを繰り返せば、今度は立ち上がることはないだろう。  焼き尽くされ、灰になって、混沌の中に飲み込まれる。 メタルA「オォォオオオォォオォオオオオォォオオオオオオオオオォオオオ!!!!!!」  すっ……と、むきだしになった手のひらで、黒炎に触れた。  そこから―― アルカイザー「行きます……御坂さん!!!」  黒い炎が反転し、紅へと帰っていく――――!!! メタルA「な、何故だ……!? ナノマシンが、駆逐されて……!!!?」 アルカイザー「炎の温度に上限はない……」 メタルA「!!?」 アルカイザー「そのナノマシンっていうのは、一体何度まで耐えられるのかなぁ!!!」  炎の渦が、瞬く間に本来の色を取り戻していく。  例えばウイルス。  人間の体に入ったウイルスは、体温の上昇で滅菌される。  炎が、自分の中に混入した異物に対して反旗を翻した。 メタルA「何故だ……何故だ!? ナノマシンに操られて、何故そんなマネが出来る!!?」 アルカイザー「何故かって? そんなこと……決まってる!!」 アルカイザー「アル・フェニックスの炎は、操られているんじゃない……自分の意思で、力を貸してくれてるんだ!!!」  全ては、友のために――!! アルカイザー「人には人の……炎には炎の意思がある……!!」 メタルA「炎の……意思……?」 アルカイザー「そして、メカにはメカの……意思があるんでしょぉがぁああ!!!」  そして、炎は全て紅に帰り、アルカイザーの全身を包み込んだ。 アルカイザー「機械のプログラムで無理やり言うことを聞かせるなんて……そんなのが『最強』のはずがない……」 アルカイザー「メタルアルカイザー……あの黒い炎は、まるで貴方そのものだよ……」  アルカイザーの鎧が、炎のエネルギーを吸って修復を始めた。  火傷した手のひらが癒え、また、拳を握ることが出来た。  炎がその形を変えていく。  そう、この紅い炎もまた、佐天涙子という人物を写している。  一度焼き尽くされただけで、もう力を失うようなナノマシンとは違う。  倒れても、傷ついても、友のために何度でも立ち上がる、あの親友達から授かった、高潔な心を……! アルカイザー「大切な人が間違ったことをしているのなら……それに気付いたなら!」 アルカイザー「例え敵対してでも、止めて見せるのが真実(ほんとう)なんだ!!」 アルカイザー「だから……私は貴方に立ち向かう!!!」  炎が翼となって羽ばたいた。  アルカイザーの体が宙に舞い上がる。  この炎は、真実の強さを持つヒーロー・アルカイザーの化身。  かくして不死鳥は顕現し、全ての悪を焼き尽くす――――!!  『真アル・フェニックス』――――!!!!!!! アルカイザー「メタルアルカイザー……貴方は強かったよ。でも、間違った強さだった……」  落ちこぼれのヒーローは、真実を見つけた。  【次回予告】  悪は滅びたのか……?  世界に平和が訪れたのか……?  否! まだだ!!  全てはまだ終わってはいなかった!!  ここからが……始まりなのだ!!  次回! 第十八話!! 【驚愕! 全てを支配する者!!】!!  ご期待下さい!!  【補足】  ・メタルアルカイザーについて。   「石には石の心があると。ならば、メカにもメカの心があって然るべきだ」   という原作での彼のセリフが、一連の展開の元になりました。   Drクラインへの想いやココロの葛藤などはこのSSでの創作です。   推測ですが、原作の彼は結局、プログラムされた武士道精神のみで、心は手に入れては居なかったように思います。   ちなみにダークフェニックスの設定も創作です。   佐天さんのアル・フェニックスが「協力」の力なのに対して、「強制」の力にしてみました。  ・トリニティについて。   リージョン界を統べる軍事組織。   反トリニティの革命軍なども存在する、ブラッククロスなんかより更に大きな存在。   ワカツは、トリニティの執政官が無実の罪を着せて滅ぼしたリージョンで、   原作では悪霊の蔓延る廃墟として登場します。   ブラッククロスの目的を考えると、どうしてもこことやりあうことになると思うんですが……

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