【第五話・錯綜! 人のココロ!!】

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固法「困ったものね……」  固法美偉は、その日何度目になるか分からない溜息をつく。  「風紀委員として見逃してはいけない」と自分に言い聞かせ、目の前の少年に声をかけた。 固法「ちょっといいかしら?」 少年「ああ?」 固法「風紀委員『ジャッジメント』よ。鞄の中を確認させてくれないかしら?」 少年「!?」  慌てて逃げ出す少年。  焦ることなく、固法は少年の足を引っ掛け転ばせると、手首を掴んでひねり上げた。 少年「痛い痛い痛い痛い!!!!」 固法「大人しくしないからよ……確認!」  固法の指示で、後輩の風紀委員が少年の鞄を開ける。  すると、そこから出てきたのは袋に入った白い錠剤。 風紀委員「麻薬ですね」 固法「まったく……今日これで何人目?」  風紀委員の仕事は、悪の秘密結社と戦うことではなく、街の治安維持だ。 固法「はぁ……誰か手を貸してくれる人、いないかしら?」  【第五話・錯綜! 人のココロ!!】  常盤台中学。  いわずと知れた名門女子校で、例え王侯貴族だろうとレベル3未満は入学できない。  学園都市でも五指に入る名門中の名門。  学舎の園に存在するお嬢様学校の中でも、注目度は一際高い。  何故なら。  学園都市に七人しか存在しないレベル5。その内の二人が在籍しているからである。  その内の一人―― 美琴「ん~~……今日はいい天気ねぇ……」  御坂美琴が、学生寮のベッドで目を覚ました。  年齢や評判に見合わない幼稚趣味なパジャマを脱ぎ、制服に着替える。  シャワーを浴びようかと思ったが、やはりやめておく。  今日は気乗りしない。  出来れば、この部屋からすぐに出たい…… 黒子「おはようございますの。お姉さま」 美琴「……うん。おはよう」  ルームメイトの白井黒子。  先日のキャンベルビルでの一件以来、二人の間に気まずい空気が流れていた。 美琴「ねぇ黒子? 今日も遅いの?」 黒子「ええ。最近は怪人だけでなく、能力者の犯罪も増えていますの」 美琴「治安悪いのねー……相変わらず」 黒子「えぇ。まったくですわね」  …… …… ……。  会話終了。  美琴は悩んでいた。  あの日は気が立っていた。  そのことは黒子も分かっているし、謝れば許してくれるだろう。  が―― 黒子「では。先に出ますので」 美琴「え? あ……う、うん……」  リズムが合わない。  結局、上手くタイミングが計れず、部屋に居る間ずっと息が詰まりそうになる。 美琴「………………はぁ……何て不器用」  先日の公園。  ツンツン頭の少年・上条当麻との、久しぶりの喧嘩。  美琴は思いのたけを思いきりぶつけ、上条はそれを全て受け止めた。  結局それは、叫んで暴れて、体力も気力も尽きた美琴が倒れるまで、一時間ほど続いたのだった。 上条『さて。すっきりしたんならさっさと帰れよ。フラフラじゃねえか……』 美琴『……やだ』 上条『はい?』 美琴『だって……居づらいんだもん……』  その日と同じく気の立っていた自分は、八つ当たりで黒子を傷つけた。  それを気にしないように気を使っている黒子。  そのことが、美琴の機嫌をさらに悪くしていたのだ。 上条『後輩と喧嘩したぁ?』 美琴『……うん』 上条『何だ……そんなことかよ……』 美琴『そんなことって……!』  言い返そうとしたが、少年はあっさり、真実を述べる。 上条『だって。自分が悪くて喧嘩したなら謝りゃすむじゃねーか』 美琴『うぐっ…………!?』 美琴「そんな簡単に出来たら苦労しないってのよ……あの馬鹿!」  風紀委員第一七七支部。  慌しい空気の中、私は親友とのスキンシップを図る。 佐天「初春ー?」 初春「……」 佐天「初春ー?」 初春「……」  返事が無い。ただのお花畑のようだ。  おのれ初春……この私を無視するとはいい度胸だ……!  目標補足! 目標を掴むと同時に捲り上げる!!! 佐天「うーーいーーはーー……るーーー!!」 初春「……」  馬鹿な!? スカートを捲っても無反応だと!!? 佐天「……」 初春「……」 佐天「えい! おお!! きれいなお尻だ!!」 初春「ひゃああああああああああああああああああああ!!!!???」  バチーーーーーン!!! と、部屋中に綺麗な破裂音が響き、私は意識を失った…… 初春「ななななななななななななななな何をするんですかーーーーーー!!!??」 佐天「いや……返事が無いから。コレは更に先に進めということなのかと……」 初春「忙しいんですよ!!! 見たら分かるでしょう!!!?」  おー。珍しく本気で怒ってらっしゃる。  いや、これは恥ずかしさを誤魔化すためにオーバーになってるな? 初春「もう……邪魔するんなら出てってくださいよ……」 佐天「えー? 初春が難しい顔してるから、気を紛らわせてあげようと思っただけなのにー」 初春「セクハラを人の所為にしないで下さい!!」  本当なのになー……  まぁ元気になったからいっか。 固法「戻ったわ……」  そこへ、巡回に出ていた固法先輩が帰ってきた。  なにやら暗い面持ちで、やっぱり、こちらも相当お疲れのようだ。  ……いや。期待されても流石に先輩にはしないよ?  ……ホントダヨ? 初春「どうでした?」 固法「どうもこうも無いわ……酷いなんてものじゃないわね」  風紀委員はここのところ、著しい治安の乱れに悩まされていた。  それはブラッククロスだけではなく、学生達による犯罪の増加や、なにより―― 固法「ほら。戦利品」 佐天「これって……クスリですか?」  麻薬。ドラッグ。  いわゆる違法薬物が横行していた。 固法「今日だけでこれだけの数よ……あー、目の毒だわ……」  固法先輩は透視能力を使い、街中で違法薬物の取締りを行っている。 固法「やっぱりこれだけ治安が悪いとね……皆不安になって、こういうものに頼り出すのよ……」 初春「そういうもの……でしょうか?」  嫌な話だ…… 初春「でも。薬物は出所さえ掴めば何とか出来ますからね。ブラッククロスの件よりはマシです」 固法「その出所が分からないから困ってるんでしょ……」 佐天「出所……スキルアウトとか?」 固法「どうかしら……それだけじゃない気もするけどね……」 固法「白井さんは? まだ戻ってないの?」 初春「ええ。出てったきりです」  無理してなきゃいいけど……と、呟いて、個法先輩は机に向かった。  報告書を作るらしい。  初春に視線を移すが、彼女もまたパソコンで何やら調べもの中の様子。  ……ここのところ、ずっとこの調子である。  風紀委員は大忙し。  以前のようにみんなでお出かけしましょうというワケにもいかず、会話も減っている。  これはいけない。  こういう空気が長く続くと人は良くない方向へ転がるものだ…… 佐天「ふむ……」  さて、私こと佐天涙子がするべきことはなんだろう?  考えるまでも無い。  そんなことは決まっている―――― 佐天「じゃあ。私もそろそろ行くね? 邪魔にならないように……」  私がドアを開けて出て行こうとすると、初春が無言で手だけをひらひらさせて挨拶してくれた。  それに「じゃあね」と返し、私は駆け出した。 佐天「さぁて。ヒーローの仕事は戦いだけじゃない――ってね!」  ヒーロー・アルカイザーが、街に蔓延るドラッグを駆逐しちゃいますよ!  一七七支部を出た私は、人気の無い路地裏へ駆け込んだ。  誰にも見られないようにするためだ。 佐天「ふー…………この瞬間はいつまで経っても慣れないねぇ……」  何せ、正体を見られたら記憶を消されるのだ。  命がけの変身。慣れるはずが無い。  念入りに周囲を調べる。  物陰。通路の先。人が何処からも見ていないか?  最後に前後左右をもう一度見回して、目を閉じ、意識を集中する…… 佐天「……」  心臓が一つ大きく跳ねる――  体の中心から、全身の血管へ。  血が廻るのを感じる。毛細血管の一本一本まで……  心臓で生まれた熱量が、指先、つま先まで広がっていく。  力が湧いてくる――――! 佐天「変身! アルカイザー!!」  佐天涙子の体が輝き、視界が光に包まれる……! ピーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!! 佐天「………………え?」  突然のアラーム音に驚き、私は、さっき確認しなかった『頭上』を見上げた。  そこに『居た』のは――――  「異常な数値の周波数を発見。ライブラリに該当無し。未知のエネルギーと断定。発生源、確認」  白くて丸っこい、大体40センチくらいの、何やら可愛らしい空飛ぶ機械。  「学園都市学生名簿と照合……該当者・佐天涙子」 佐天「……え? え?」  これって――――  「佐天涙子より、未知のエネルギーを検出。映像、データを検証」 佐天「――――――」  やばい。  私、死んだ。  「おい、あの頭、見ろよ!」  「ツインテールか?」  「ツインになってねーじゃん! 分かれちゃってるじゃん! 蛸の足じゃん!」  「ハハハ! いっぱい分かれてるテールじゃねーの?」 黒子「……ここはいつ来ても不快ですわね」  不潔で嫌な臭いが充満している。  そういう場所はいる人間も不快で下劣だ。  ――しかし、昔の私なら蹴り入れてましたの。私も淑女になったということですわね……フッ。  白井黒子が居るのは工業地区の外れ。  古くなった建物や、廃棄された製品が溢れる、掃き溜めのような場所。 黒子「流石に遠出しすぎましたの……第七学区を出てしまいましたわ」  どんな場所だろうとテレポートで移動できる。  それゆえに、よく考えずに行動するとどこまでも来てしまう。  ……どうしても。あの時のことが頭をチラついて…… 黒子「……集中しませんと……気付いたら『壁の中に居た』では笑えませんの」  もう戻ろう。  黒子は踵を返し、今来た道を戻ろうとする。  「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」 黒子「!?」  先ほどのスキルアウトの一人が突然苦しみだした。 黒子「何事ですの!? 貴方達――!?」  「わ、わからねぇ……! コイツが突然……」  「く、クスリ……」 黒子「薬?」  「怪しい奴から買った、新しいブツを試したんだよ、そ、そしたら……」  ……呆れた。何故怪しいと思って買うのか……  いや、そんなことよりも今は――!  「ウゴ、ググッげ……ぐるあああああああああああああああああああああ!!!」 黒子「こ、これは!?」  苦しんでいたスキルアウトの体がボコボコと流動している。  歯が抜け落ち、その代わりなのか、歯茎から牙が生えてきた。  肌が黒く変色し、アンバランスに膨れ上がった筋肉で皮膚が破れ、体毛が伸びる。 黒子「怪物……いえ、まさか怪人……に……?」 怪人「ぐるる……ぐっぅあああああああああああああ!!!!!??」  怪人になった男は苦しんでいる。  無理も無い。ただの人間が、どういう理屈なのか、突然怪物にされてしまったのだ。 黒子「――――!」  戦いますの――――?  だって、相手はただの人間ですのよ!?  「ひ、ひいいぃいいいい!!!?」 黒子「ちぃっ……!」  とにかく、今は一般人の避難を――!  例えスキルアウトでも、罪を犯していないなら守るべき対象。  黒子はテレポートで逃がそうと考えたが、止める。 黒子「……三人……!」  いくら黒子でも一度に運べるのは二人まで。  ということは、一人がここに残されることになる……!! 黒子「貴方たち! 早くお逃げなさい!!」  「は、はひぃぃ!!!」 黒子「……!!」  男達を逃がし、一人戦場に残った黒子は、怪人になった男と対峙した――――  ……………………  どうしてこうなった。  「どうしたんだ涙子? 心拍数が落ちているぞ?」 佐天「うん……そろそろ落ち着いてきたんだよ……」  「そうか」  私の部屋に、あの白くて丸っこい機械がいる。 佐天「ねぇラビット? 本当にどこにも連絡してないのね?」  「ああ。私は嘘はつかない。メカだからな」  ラビットと名乗ったそのロボットは、私に興味があるらしくここまで着いてきてしまった。  しかし、この場合どうなるんだろう?  相手はロボットだ。  決して『一般人』とは言えないだろう。  と、いうことは―― 佐天「セーフ?」 ラビット「何がだ?」 佐天「なんでもないよ」 ラビット「そうか」  うん。大丈夫のはず。  もしアウトだったら、きっと今ごとアルカールさんが現れているだろう…… 佐天「あのさ。さっきのアレについて聞かれても、私は何も答えられないよ?」 ラビット「そうか。残念だ」 佐天「……」 ラビット「……」  出て行かないんかい。 ラビット「何か悩んでいるな?」 佐天「はい?」  いや、あんたのことで悩んでるんだけどね? ラビット「涙子。何を悩む?」  ………………何だコイツ…… 佐天「……何を悩んでるのか分からないのよ」 ラビット「そういうときもあるだろう。まだ若いのだからな」  …………ロボット相手に人生相談か。 ラビット「己のココロというものは見えづらいものだ」 佐天「心……」 ラビット「私には無いものだ」 佐天「そうなの……? あなたのAIってすごく性能よさそうだけど?」 ラビット「ココロを求めれば求めるほど、己の中にはココロが無いことを確信することになる」  ふーん……変なロボット。 佐天「私はさ。この街に来てから悩んでばっかりだよ」  ラビットは黙ってぷかぷかと浮かんでいる。  話を聞いてくれてるのかな? 佐天「最近はそうでもなかったんだけどね。今はちょっと、嫌なことを思い出しちゃって」 美琴「…………」  美琴は行くアテもなく街をうろついていた。  馴染みの自販機でジュースを『頂き』、それをチビチビ飲みながらふらついている。 上条『喧嘩したなら謝りゃすむじゃねーか』 美琴「はぁ………………」  コンビニで立ち読みしていても落ち着かないし、初春や佐天とは連絡がつかない。 美琴「…………ひょっとして、私って友達すくない……?」  いや、分かっていたことだ。  だからこそ、尚更白井黒子が大切な存在なのだと。  レベル5の自分のことを憧れの先輩だと言いつつも遠慮しない。  ずけずけと、それこそ風呂場にまで入り込んでくるずうずうしさ。 美琴「黒子……」  いつの間にか、彼女は心の中にまで入り込んできていたらしい。  それにしても、まさか自分がたった一度の失敗でここまで落ち込むなんて。 美琴「うん。謝ろう。今度こそ。次こそ!」  そう強く決意し、美琴は空になったジュースの缶を清掃用ロボットの傍に投げ込んだ。  が――  その前に突然一人の男が割り込んできた。  カコーーーーーーーーーン。 美琴「……………………私の所為じゃないわよね?」 美琴「だ、大丈夫?」  おそるおそる近づく。 美琴「ねぇ? 怪我とか――」  妙だ。  男は、何かに怯えるようにガタガタと震えていた。 美琴「ねえ? ちょっと、どうしたのよ?」  「か……怪人……」 美琴「怪人!?」  また街の中で――――!?  「怪人に……だ、ダチが……怪人に……なっちまった……!」 美琴「…………え?」 黒子「くっ……!!」  黒子は苦戦していた。  相手がただの人間なら、スカートの下に忍ばせた『鉄矢』で動きを封じて捕縛できる。  相手がただの怪人なら、容赦なく致命傷を与えて倒すことが出来る。  だが――  この相手は「怪人になってしまった一般人」なのだ。 黒子「一体どうすればいいんですの!?」  苦しそうに暴れる怪人。  薬の作用なのか、無理やり太くされた筋肉をフル稼働し、黒子に突撃する。  駄々っ子のように腕を振り回して、まるで助けを求めるように―― 黒子「――――」  攻撃できない。  黒子が風紀委員である以上。  例え麻薬の常習者だろうと。ロクデナシのスキルアウトであろうと。  この学園で生活する学生は皆、守るべき対象なのだから。  それが、『悪の組織』に利用されている被害者だとしたら、なおさらだ。  自分の行動に、自信が持てない―― 佐天「わたしはさ。自分に自信が持てないんだと思う……だから無能力者なのかな……」  能力を使うために必要なのは自分だけの現実『パーソナルリアリティ』。  つまり、他の誰が何と言おうと、自分自身を信じるということ。  それこそ、この世の常識を捻じ曲げるほどに…… ラビット「無能力者……カリキュラムを受けてなお超能力を使えない人間か」 佐天「……改めて説明しないでよ」  佐天涙子は学園都市で改造された無能力者である。 佐天「そのナレーションをやめろ!!」 ラビット「チカラか」 佐天「うん。それさえあれば。何だって出来るのに」  もう、あんな無力感を味わわなくててすむのに。 ラビット「私の主もそう言っていた」 佐天「あるじ?」 ラビット「ああ。私の主もまた、涙子と同じく『万能の力』を求めている」 佐天「万能の……力……」 ラビット「それゆえ、私もまた、チカラを渇望してやまない」 佐天「ふーん……まぁ、だからさ。コンプレックスなんだよね。単純に」 ラビット「しかし、理解できない。何故だ?」 佐天「何故って……」 ラビット「今の涙子にはもうチカラがあるではないか。強力なチカラが」 佐天「え――――」  アルカイザー。 ラビット「それ以上のチカラを求めているのか?」 佐天「いや。でも……これは借り物で……」 ラビット「それは紛れも無い涙子のチカラだ。何を臆することがある」 佐天「………………」 ラビット「自信を持て。強者にはそれが必要だ」 佐天「強……者……?」  私が。  強者?  まだ、怪人と黒子の戦いは終わらない。 黒子「っ! 一体いつまで続けますの……?」  攻撃自体はどうということはない。  例えどんな豪腕であろうと、攻撃が予測できればテレポートでかわせる。 怪人「ぐうあああああああああああああああああ!!!!??」  怪人が突撃し、それをまたテレポートで回避する。  すでに十数回。これを繰り返していた。  攻撃をかわされた怪人はジャンクの山に激突し、鉄くずの下敷きになる。 黒子「はぁ、はぁ……これで動きを止めてくれればいいのですが……」  ぐるるがあああああああああああああああああああああああ!!!  止まらない。  怪人は鉄くずを吹き飛ばし、再び黒子へと迫る。  その体当たりをまたもテレポートで回避。 黒子「いい加減に……っ!?」  そう――いい加減に、黒子の集中力は途切れていた。  黒子がテレポートした先。そこへ、先ほど怪人が吹き飛ばした鉄くずが落下して来る――! 黒子「……!??」  動揺で演算が狂い、テレポートが発動しない。  絶望。間に合わない。  否――間に合った――!  鉄塊に潰されることなく、黒子は着地に成功した。 黒子「………………お姉さま! どうしてここへ!?」 美琴「……黒子」  黒子の絶望は一瞬に満たなかった。  御坂美琴が放つ電撃は、音速を超えるのだから――  黒子に迫る鉄塊は、美琴の放った電撃で再び宙に浮いた。 黒子「お姉さま……黒子を助けに……?」 美琴「当然でしょ? だって――」  大切な、可愛い後輩だもの。 美琴「黒子。この前はゴメンね……」 黒子「……いいえ。いいのですお姉さま……黒子は……黒子は分かっていましたから……」  お姉さまがそのことを気に病んでいることも。  お姉さまが自分を大切に思ってくれていることも。  お姉さまが、どんな苦境に立たされても再び立ち上がって、真っ直ぐに進むということを――!  二人に向かって、怪人が迫る。  今までと同じ。腕を振り回しての体当たり。 美琴「行くわよ黒子!!」 黒子「はいですの! お姉さま!!」  もはや迷いはない!  お姉さまがいる!  自分は正義の側にいる!  正しいことを! 自分が正しいと思えることを!!  今はただ全力で信じる!!! 美琴「行っけぇっ――!!」  美琴がコインを弾く。  『超電磁砲』  それは怪人ではなくゴミの山に命中し、鉄くずを天高く巻き上げた。  怪人の行く手を阻むように鉄塊が降り注ぐ――!  が、怪人は止まらない……!  鉄の板だろうが、車の残骸だろうが。  何にぶつかろうが、意に介することなく進撃を続ける……!! 美琴「頑丈ね……! なら――――!!」  美琴の額から電撃が放たれる。  それは直接怪人にではなく、怪人の周囲にばら撒かれた鉄くずに向かった。  磁力によって鉄くずが浮かび上がり、怪人目掛けて一斉に集まって行く。 美琴「黒子!!」 黒子「はいですのお姉さま!!」  美琴が操る鉄くずは怪人の体に絡み付いていく。  鉄の山を吹き飛ばす怪力だが、決して剥がれない鉄の塊に手足を固定されては暴れることも出来ない。  そして、完全に動けなくなった怪人を―― 黒子「触れられるのなら、私の能力でどうとでもなりますの!!!」  黒子が天高く転移させた。 黒子「体も意識も落ちて下さいませ!!!」  全身に重りを付けられた怪人が、上空から落下――  否――まだ終わらない……!! 美琴「あれだけ頑丈なら……死にはしないでしょう……!!」  落下する怪人に、ダメ押しとばかりに電撃が浴びせられた……!!  テレポートと電撃を間髪居れずに叩き込む、二人の能力による連携――   『空間電撃』  頭から地面に落下した怪人は、電撃による追撃で完全に沈黙した。  それを確認し、黒子は隣に立つ美琴へ顔を向けた。  美琴も、黒子を見つめていた。  知らず口元が緩む。  場所がこんな所でなければ、素敵なムードでしたのに。  そんな軽口を叩ける。いつもの二人だった。  ピーーー! ピーーー! 佐天「な、何!? 故障!!?」 ラビット「呼び出しだ。戻らなければ」 佐天「そう……帰るんだ」 ラビット「また近いうちに会える」  そう言って彼は、フワフワとした軌道で窓から出ていった。  完全に外に出ると、空中で一度停止して数回光り、一気にスピードを上げて飛び去った。 佐天「また近いうちに……か」  彼の相談で、悩みは解消されたのだろうか?  ただ、胸にふつふつと燃えるようなものがあるのは確かだ。  彼は、私には力があると言った。  この力を、私のものだと言った。  戦いたい……  戦って、それを証明したい。  そうすれば、大嫌いな、無力な自分を塗り替えられる。  主人公になれる。  落ちこぼれのヒーローは、不思議な友達と出会った。  【次回予告】  ついに発見されたブラッククロスの麻薬工場!!  アルカイザーは街の平和を守るため、謎の麻薬工場へと挑む!!  そして邂逅する佐天と美琴!!  共に正義を求める二人が、一体何故戦わなければならないのか!!  次回! 第六話!! 【激突! アルカイザーVS超電磁砲!!】!!  ご期待ください!!  【補足という名の言い訳のコーナー】  ・ラビットについて。   セリフでピンと来た人も居ると思うけど、一応ネタバレ禁止でお願いします。  ・連携について。   試しに出してみました。サガフロのシステムの一つで、連携すると技名が合体します。   今回の技名は「空間移動」と「電撃」を混ぜて空間電撃です。   テレポ電撃と迷いましたが、真面目なシーンであまりにもダサかったので没です。  ・怪人になった男について。   クーロンで戦うイェティです。原作でもあった人間が薬でモンスターになるシーンです。   あのグラフィックをどう文章で表現するのか分からず何かグロいことに……  ・いっぱい分かれてるテール。   なんかラジオで言ってた気がする

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