「ステイル「最大主教ゥゥーーーッ!!!」/ エピローグ/02」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら
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インデックスたちから距離を取ったステイルは、
ギリギリで視界から外れない程度の位置に陣取って食事を摘むことにした。
もちろん、二人の会話の中身は聴こえない。
「なんだ、終わったのか?」
「お疲れ様です、ステイル」
「おう、今日は顔色がいいじゃないかー?」
姿を現したのは、最初に会って以来影も形もなかった二人と、舞夏であった。
「君たちか、どこに行っていた?」
舞夏は給仕の為にあちこち動き回っているのを何度となく確認したが、
ステイルは土御門と火織をその後一度も見かけていない。
彼はその事を怪訝に思い問い質した。
「なーに、誕生祝いがたっぷり届いてたんでな」
「不埒なものが紛れ込んでいないか、確認していたのですよ」
「…………そうかい。御苦労さま」
少し前のステイルなら、どうして自分を呼ばなかったのだと食って掛かるところだろう。
だが今の彼には、こうして二人を労う余裕さえある。
舞夏も含めた三人は顔を見合わせ、三様に笑った。
「なんだ、その反応は…………! 僕が何かおかしなことを言ったか?」
そんな彼らの応えに、ステイルは僅かばかり紅潮して憤慨する。
似合わない、という自覚はここまで散々からかわれて身に染みているようであった。
「いやー悪い悪い。インデックスは…………海原と一緒か」
「ほほー。良いのかステイルー?」
「……別に言いも悪いもない。僕が彼女の交友関係に口を挟むわけにもいかないだろう」
「ふむ…………。どうも貴方達の『ソレ』は複雑で、私には量りかねますね……」
煙草に手を伸ばして舞夏の口撃をかわすステイル。
それを見た火織は呆れの交じった口調でひとりごちた。
「放っておいてくれ。『この点』だけは余人に口を挟まれたくはない」
「……ま、誤魔化さなくなっただけマシ、と取ってやるよ」
(誤魔化す、か…………)
しかしステイル自身、目指す頂を把握しているわけではなかった。
「プレゼントと言えば、御坂姉妹が先ほど含みを持たせてきたな……」
やや重くなった雰囲気を解すため、ステイルは話題を切り替える。
三人は多々不満顔だったものの、これ以上は得るものが無さそうだと乗ってきた。
「シスターズ? オレたちはなんにも聞いてないぜい」
「それは気にはなりますが、彼女たちに限って心配はないでしょう」
「そーだ、私はまだインデックスにお祝いしてなかったなー」
「君は朝起こした時にしたんじゃないのか?」
「それはそれ、これはこれだー」
他愛もない会話が延々と続く中でふと、火織が形の良い眉を顰めた。
「どうかしたのかい、神裂」
「いえ……今にして思い当たったのですが…………」
言いにくそうに、口籠る。
事情を理解できないステイルや舞夏が疑問符を浮かべる中、
「なんだ、今頃気付いたのかねーちん」
「…………結局、気付いてて私には黙ってるではないですか!!」
テンプレート通り土御門が飄々とからかいの言葉をかけた。
憤懣やるかたなしの火織を押し留めて、ステイルが突如始まった漫才の解説を求める。
「どうどう。で、なんの話だい」
「いや、インデックスへの贈り物の話なんだがな? 学園都市からもタップリ来てんですたい」
「それはそうだろう。あの子の友人は科学サイドにも数多くいるんだからね」
ステイルの知らない彼女の片鱗を感じて、小さく胸が痛む。
しかしその辺りの事情は、むしろこのアロハシャツの方が良く承知しているはずだ。
訝しむ彼の疑問に答えたのは、土御門ではなく火織であった。
「…………無かったのです」
「……え?」
「『あの二人』からの分が…………どこにも」
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「…………そっか」
「……ご清聴、感謝いたします」
己の『物語』を語り終えたエツァリが、芝居がかった仕草で一礼する。
インデックスは、感慨深げにポツリと呟いた。
「……とうまはちゃんと、みことを幸せにしたね」
「…………ええ。自分にとっての『世界で一番』も、そろそろ期限切れですね」
二人の間を奇縁で繋ぐ、一組の男女。
彼らの幸せは、インデックスとエツァリにとっても甘く、そして切ない幸福だった。
「これからエツァリは、どんな『幸福』を捜すのかな?」
「おっと……申し訳ありませんが、其れを最初に告げる相手は既に決めておりますので。
どうか、ご容赦ください」
「……ルール違反、するとこだったかも」
舌を出しておどけるインデックスに、しかしエツァリは鋭く、次なる問題提起をした。
「たったいま課したルールを破るようで恐縮なのですが」
「………………なに?」
「貴女ご自身は、『幸福』というものを如何様に捉えておいでですか?」
問いに、息が詰まった。
「……貴女は、ショチトルを救ってくれました。自分の事も、トチトリの事もです。
この感謝は言葉では言い表せない。ゆえにこれからの行動で示そうと思います」
「そんな、私はそんな見返りなんて」
「きっと貴女は、他にも多くの人を救ってきたのでしょう?
その度に、自らも救われた、そう感じてはいませんか?」
――どうして?
彼女の表情から自らの推察が正しい事を感じ取ったのだろう。
エツァリは、更に畳みかける。
「救ったから、救われた。高尚で高潔な精神で、誰もが貴女を讃えるでしょう。
…………しかし、あなたはそれで本当に『幸福』ですか?」
彼の語る言葉の裏側に、二人の『独善』の背中が見え隠れしていた。
それは、インデックスも良く知る――
「はっきり、申し上げてしまいましょう。
あなたは、上条当麻と御坂美琴の『信念』を、『模倣』してはいませんか?」
それは、当に正鵠であった。
「……自分も、あの二人をそれなりに、しかも『そういう目』で眺めてきた身です。
他の皆さんがどうかわかりませんが、自分には、理解できてしまうんですよ」
――彼らのように、何の見返りも求めずただ誰かを救えば、それで『幸福』を掴めるかもしれない。
インデックスは、自らも確りとは自覚していなかった『勘違い』を、出会って間もない男に正確に突かれた。
「お節介なのは承知の上。……しかし貴女は、別の『幸福』も探ってみるべきだ。
自分達を救ってくれた貴女の痛々しい姿は、見るに堪えないのです」
『今のあなたも幸せそうですよ、インデックス?』
(ヴィリアン……良いのかな? そんな『幸せ』、私に似合うのかな?)
「以上、です。貴女の御心を乱したこと、お詫び申し上げます」
言うべきを終えたエツァリが、再び一礼した。
その時。
「まったくだね、万死に値する……とりあえず後で屋上来い」
「ははは。この聖堂、屋上なんてあるんですか?」
「聖堂裏でも構わないよ」
コツ、コツ、とこの五年で最も聞き慣れた深い靴音が鳴る。
インデックスが顔を上げると、赤髪の想い人が見分けのつけ難い顔を二つ、引き連れて立っていた。
「彼女らが、『プレゼント』を渡したいそうだ。……中身は、土御門でさえ検めていない」
『彼女』の妹達、13857号と17000号が、手に何か持って歩み出る。
「失礼します、インデックスさん。『私達』からの贈り物は、このチョーカーです」
17000号は豊かになった表情で微笑みかけ、見覚えのある首飾りをインデックスに渡す。
「一方通行を覚えておいでですね? 彼のように装着してください。その後は私達にお任せを」
修道服の13857号は対照的に、淡々とチョーカーから延びる電極を彼女の頭に装着する。
「本当に、大丈夫だね?」
苦い顔で問いかけたのはステイルだ。
しかし嫌な記憶が蘇ったにすぎない彼も、その行為自体を咎めるわけではない。
「ご安心を。安全性を最重視した設計ですので」
「その結果として、耐久力が失われることになりましたが。
一度きりの使用と割り切れば問題ないでしょう……終わりました」
当のインデックスを置き去りにしたまま、事は拍子良く進んでいく。
「け、結局コレってなんなのかな……?」
困惑のまま声を絞り出す彼女に、妹達はあくまで冷静に返した。
「使って頂ければすぐにご理解できるかと。先ほど言ったように、安全は確保されています」
「これが、私達『ミサカ』のお気持ちですよ。……どうぞ、チョーカーの電源を」
悪意など微塵も感じさせないシスターズが是非にと促す。
それでも不安を御しきれなかったインデックスは、ステイルに目を向ける。
彼は、どこか寂しさを隠しきれない表情で、しかし安心させるように微笑みかけてくれた。
意を決したインデックスは、電極のスイッチに手をかけ――
――そして、電子の海に飛び込んでいった。
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――んっ、ん! コレ、上手く行くのかぁ? ――
――なによアンタ、あの子に直接会いたくないワケ? ――
右も左もわからぬ小宇宙の中で、インデックスの耳にとても愛しい音が響く。
――いやそんなんじゃありません事よ!? ただ、俺の右手が邪魔しないかな、とは――
――信号自体は機械でやり取りしてるの。場所も脳、あらゆる意味で右手の干渉なんて――
――って、アレ!? ――
――おい、どうした!? やっぱりなんかトラブって――
そう言えばこの一月、一度も声を聴こうとはしなかった。
だから、なのだろうか。こんな、こんな温かい方法で。
――も、もうあの子『来てる』わよ!――
――んなぁっ!? おいおい、妹から連絡はまだ――
――ハメたわねぇ、アイツラぁ…………! ――
こんなにも優しい『熱』を、自分に届けてくれたのだろうか。
――あーもう、怒るのはあとあと! ――
――だな。……おい、聞こえてるか? いきなりで悪かったな――
――……コホンッ! 久しぶり。元気よね? ちゃんとご飯食べてる? ――
――おいおい、そういう話は後に置いて、まず言う事があるだろ? ――
――う、うっさいわね! わかってるっつーの! ――
ああもう、どうして。
どうして彼らは、これほどに。
――せーの、で行くぞ。ちゃんと合わせろよ美琴? ――
――当麻が、私に、合・わ・せ・るのよ! せーの! ――
――おっ、おいおい! ――
――誕生日おめでとう! 俺の大切な家族、インデックス! ――
――誕生日おめでとう! 私の大事な親友、インデックス! ――
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止まらない。止まってくれない。
止めなくても、いい。
一月前とは意味を異にする透きとおった水晶が、ぽたりぽたりと顔を覆う指の間から零れては消える。
「お二人が今日という日に、電話よりもメールよりも、もっと近くで繋がりたい、と。
ですので、ミサカたちとその他多くの協力者でご用意致しました。
…………本来ならば、この場にお呼びできるのが一番だったのでしょうが」
「んっ…………ひっぐ……べつ、に……いいよぉ…………すごく、すっごく!」
女のか細い躰が、すぐ近くで頭を撫でていた長身の腰に抱きつく。
男は、そっと華奢な肩に手を置いて、硝子のような躰を抱き寄せ――はしなかった。
男はあくまで、慈しむように絹の如き銀糸を撫でるのみ。
「嬉しかった………うれ、しかったよぉ!!」
「ああ…………良かったね。本当に……良かった」
インデックスは、己が思いの丈をひたすらに叩きつける。
ステイルは、巨木のようにそれを受け止め、吸収する。
やがて彼は、彼女の耳朶に顔を寄せ囁いた。
「僕からも一言いいかい?」
その言の葉の一つとて聞き洩らしたくないと、インデックスは目を瞑って頷く。
愛おしげにその姿を見やってから、ステイルは肩を握る手にかすかに力を籠めた。
「あらためて。誕生日、おめでとう。それと――」
――――生まれてきてくれて、ありがとう――――
そうして男女は暫く、そのままのかたちで寄り添っていた。
――んが。
パシャリ!
「「………………へ?」」
突然、シャッター音が響き、フラッシュが瞬いた。
いや、突然と認識していたのはステイルとインデックスのみで――
「第二の祝辞ですが、おめでとうございます」
「ううう、お幸せに、ふぁ、神父ステイル……」
「計画通り、とミサカは嗜虐心100%の笑みを浮かべます」
「うむ。よきかなよきかな、である」
「なかなか大胆だったの。男を上げたなステイル!」
「インデックスー! 私の胸にも顔を埋めて欲しきよー!」
「お、お兄ちゃん……わ、わ、私も…………」
「おっといけません。その話は部屋に帰ってからにしましょうね」
二人を取り囲む、人、人、人。
そして、いましがたカメラを鳴らした元凶は。
「すっ、すいません二人とも! 私は止めたのですが……」
「またまたやらせていただきましたァン! だぜい」
「……つっ、」
「す、すている……?」
「…………つ…………!」
「あーその、血管がキレない程度にしましょうねステイル?」
「……つうぅぅぅぅ………………!!」
「とりあえずこの写真はロンドンタイムズにタレこみますにゃーステイルくん」
ブチブチブチンッ
「あ」
「土 御 門 オ オ オ ッ ! ! ! ! !」
ロンドンでは珍しい、よく晴れた日のこと。
珍しくもなくなった絶叫が、青青く晴れ渡る空に響いて抜けた。
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元春「いやいや、なに勝手に終わらせてるんだにゃー?」
ステ「えっ」
イン「えっ」
イン「なんていうか、普通に絶叫オチもついて良いエンドだったと思うかも」
ステ「極めて遺憾だが、まあ……オチとしては普通だね」
元春「だーかーらー。つまりそれってノーマルエンドだろ?」
ステ「……なにか文句でもあるのか?」
イン「トゥルーエンド目指すのは疲れそうなんだよ……」
ステ(さっきから何語で喋ってるんだこの二人)
元春「ま、そういうわけだから」
ステ「どういうわけだ……というツッコミも使い古された気がするな」プカー
イン「この先どうやって続けるつもりなのかな?」
元春「おまえら、ちょっと学園都市行って来い。二か月ぐらい」
ステイン「」
ステ「……とりあえず彼女は、最大主教なんだが」
元春「最大主教だからこそ、友好を深めるために訪問するんだろうが」
イン「二か月はちょっと……」
元春「サーシャの件もショチトルの件も片付いたんだ。たまには息抜き息抜き」
ステ「そもそもこの状況で学園都市に行った場合、結構気まずいんだが」
イン「とうまとみことにあんな会い方した手前、あっさり行っちゃうと向こうも……」
元春「ハァ…………まったくお前らときたら」
ステ「溜め息をつきたいのはこっちだ!!」
元春「しょうがないぜよ、そんな煮え切らないお前らに
陰陽道に伝わるとっておきのまじないを教えてやる」
イン「おまじない?」
元春「どんな理不尽な展開だろうと灰燼に帰す、最高の術式さ」
ステ「……とりあえず、言ってみろ。言った後でどうするか判断する」
元春「こまけぇこたぁ、いいんだにゃああぜるばいじゃんんんんんっ!!!???」
ボーボーボー
イン「とーおきーやーまにーひーはおーちてー」トオイメ
ステ「……………………」トオイメ
「不幸だ…………」
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----------------- 完-------------------
-----------------第一部 『ロンドン編』 完-------------------
第一部『ロンドン編』 エピローグ
超教皇級の馬鹿口調
クワガタ
原子崩し
窒素装甲
AIM剥奪
くぎゅ
フレ/ンダ
アックア
だぞー
だにゃー
かつての痴女服
ロシア最強の女
元第二王女(未婚)
おばあちゃん
ALL CREARED!
……WHAT'S THE NEXT TRADEMARK PHRASE?
#right(){うん? 『続く』けど?}
大変こざかしい真似をして申し訳ありませんでした
ではあとがき(笑)のようなものを少し書き捨てていこうかと思います
どうぞ読み飛ばしてください
ここまで読んで下さった方はもう御承知でしょうが、
このSSは要するにステインが相思相愛の癖につまんないことでウジウジして、
いろんな人に説教してもらっては距離を詰めていく、というのが本筋になります。
の割にあちこちに脱線するのは>>1にシリアス、ギャグ、ラブなどどれか一つの
作風に絞って作文するだけの能力が無いからです。
今後も8割方アホみたいにテンション高いギャグで行きます。
また>>1は上条さんとインさんの関係も実は好きで、
これを乗り越えようと思ったらステイルは相当なハードルを越えなきゃいけないだろうなあ、
と思ったのも彼の受難の原因の一つです。
まあ時間軸を原作時点に設定してしまえばいくらでも攻略難易度は上げられるんですが。
ラストまでのプロットはほぼ完成しており、後は肉付けしていくのみですが
このペースでは後2カ月はかかる見込みとなります。
学園都市編はロンドン編よりもさらにギャグ中心になるので、
気長に、気楽にお付き合い頂ければ幸いです。
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