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<p>８月２０日午１０時００分、胤河製薬学園都市支店近くのとある公園 </p>
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<div>精神的に疲れ果てた木山が、公園のベンチに座っている。 </div>
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<div>意識ははっきりしているのに、彼女の感覚からは現実感が失われていった。 </div>
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<div>公園の喧騒はその耳に届かず、楽しげな光景もその目には映らない。 </div>
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<div>代わりに彼女の脳を埋め尽くすのは、“既視感”のある幻想。 </div>
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<div>――「木山せんせい、お誕生日おめでとう」 </div>
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<div>かつて教室で、教え子からお祝いされた声――ではない。 </div>
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<div>大きくなった子供達からの、飛行船を使ったサプライズ。 </div>
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<div>悪夢のような事件はすべて解決した。 </div>
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<div>黒幕たる科学者を、レベル５の女子中学生が打ち倒して。 </div>
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<div>そう、木山は教え子を助けることが出来たのだ。 </div>
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<div>（ああ、自分は今入院しているのだったな） </div>
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<div>瞬間、公園の風景は消えて病院へと変貌した。 </div>
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<div>変化は木山自身にも及ぶ。 </div>
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<div>やつれていた表情は明るく、トレードマークだった隈も消えている。 </div>
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<div>そんな彼女に。 </div>
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<div>目を覚ました教え子達の、優しい言葉が次々と投げかけられた。 </div>
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<div>――「先生、早く良くなってね」 </div>
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<div>――「私たちも頑張るから！！」 </div>
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<div>――「待ってるからね先生」 </div>
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<div>――「僕も！」 </div>
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<div>そして。 </div>
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<div>飛行船を利用した巨大モニターに、枝先絆理(えださきばんり)の笑顔が大きく映る。 </div>
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<div>――「ありがとう、木山せんせい。……大好きだよ！」 </div>
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<div>思わず零れる涙。 </div>
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<div>それは、確かに存在した光景。 </div>
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<div>「…………っ」 </div>
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<div>夏の眩しい太陽が、強引に木山を覚醒させる。 </div>
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<div>病院も、飛行船も、教え子の笑顔もみな消えた。 </div>
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<div>儚い幻想を留めようとして、木山はベンチから立ち上がる。 </div>
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<div>だが、何度目を凝らしても現実は変わらない。 </div>
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<div>（夢……いや妄想や幻覚の類か？） </div>
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<div>（なのにこんなにも既視感があるなんて、酷い話だ） </div>
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<div>一度覚醒すれば、彼女の優秀な頭脳は即座に現状把握を開始する。 </div>
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<div>今の自分が木原数多に捕らわれた人間であり、魔術という得体の知れない存在と戦っていること。 </div>
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<div>行方不明の幻生が生きており、彼を殺そうとして失敗したこと。 </div>
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<div>（そうだ、私は――） </div>
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<div>今から少し前、幻生が姿を消した後。 </div>
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<div>鍵のかかった室内に入ることが出来なかった木山は、諦めてその場から出てきた。 </div>
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<div>途中で会社の人間とすれ違ったりもしたのだが、一切喋ることなく。 </div>
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<div>（製薬会社の職員に報告したところで、彼らは何も知らされていないだろう） </div>
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<div>仮にこの事を報告するとして、その対象となるような人物は１人だけ。 </div>
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<div>忌々しい部隊のリーダー。 </div>
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<div>（あの男には、伝えておくべきなのか……？） </div>
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<div>（馬鹿な） </div>
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<div>一瞬浮かんだ考えを、木山は心の中で一笑した。 </div>
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<div>（私が無断で幻生と接触した理由を、どう説明するつもりなのだ） </div>
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<div>（まさか、殺しにいったところ逃げられました、など言えるわけがない） </div>
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<div>（それに……） </div>
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<div>あの時、幻生は木山に向かってこう言った。 </div>
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<div>――「また会いに来なさい、待っているから」 </div>
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<div>嘘とは思えない。 </div>
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<div>かつての研究の師である彼は、純粋に木山との再会を待ち望んでいるように見えた。 </div>
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<div>ならば、こちらが望まなくてもまた会うことになる。 </div>
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<div>そこまで考えた木山は、再びベンチに倒れこむように腰を下ろした。 </div>
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<div>途端に先ほどの自分の様子を思い返して憂鬱になる。 </div>
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<div>（いったい、私はどうしたんだ？） </div>
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<div>（覚悟を決めていたはずなのに、ああも臆する事になるなんて） </div>
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<div>（復讐の気持ちは、所詮口先だけのモノでしか無かったのか） </div>
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<div>思考を投げ出した木山の脳を、強烈な違和感が支配する。 </div>
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<div>そんなはずがない、そこで逃げるようならあんな事件を起こすはずがない。 </div>
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<div>無関係の学生１万人を巻き込んだ、『幻想御手(レベルアッパー)』事件など。 </div>
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<div>少なくとも、幻生を許せないという気持ちは今も変わらず彼女の胸にある。 </div>
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<div>では、なぜあの時怯んだのか。 </div>
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<div>（自問するまでもない。私はあの質問に恐怖した） </div>
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<div>彼女が恐れたのものは、幻生から問われた研究者としては当然の質問。 </div>
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<div>「脳波のネットワークを利用した演算機器――そのアイディアを教えたのは、一体誰かね？」 </div>
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<div>そのアイディアの出所を聞かれた事だ。 </div>
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<div>何故なら、彼女は――。 </div>
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<div>（私は、どうやってあの悪魔的なヒラメキを得たのか“全く分からない”） </div>
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<div>（複数の脳を繋ぐ電磁的ネットワーク） </div>
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<div>（『学習装置』を使って整頓された脳構造） </div>
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<div>（私は、どうやってこの発想を形にした？） </div>
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<div>（そして何より） </div>
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<div>（何故私は、幻生から聞かれるまでそれを疑問に思っていなかった？） </div>
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<div>とある世界の９月３０日、第７学区の窓の無いビル </div>
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<div>木山の状態をモニタリングしていた『人間』が、ほんのわずかに興味を示す。 </div>
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<div>「ふむ、ようやく違和感に気づいたようだ」 </div>
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<div>そう呟くのは、とある世界の学園都市統括理事長、『人間』アレイスター。 </div>
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<div>生命維持槽のビーカーに逆さまで浮きながら、アレイスターはとある歪んだ世界をモニター越しに見つめている。 </div>
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<div>「気づいたところで、どうすることも出来ないのだが」 </div>
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<div>彼が監視しているのは、何十年も前に“統括理事長アレイスター”が行方をくらました世界。 </div>
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<div>最も近い概念でいえば、平行世界（パラレルワールド）がそれに該当する。 </div>
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<div>通常なら観測も関与も不可能な別次元の空間だ。 </div>
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<div>ならば何故、今こうしてアレイスターは別世界を監視できるのか。 </div>
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<div>事の発端は、およそ１か月前の８月２８日。 </div>
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<div>とある世界規模の魔術が展開された事から始まった。 </div>
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<div>その日、上条刀夜という１人の父親が。 </div>
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<div>理由もなく、原因もなく、理屈もなく、理論もなく、因果もなく、目的もなく、意味もなく、価値もなく。 </div>
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<div>“運悪く”完成させた大規模魔術。 </div>
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<div>その名を、『異界反転（ファントムハウンド）』と言う。 </div>
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<div>全く別のとある魔術（エンゼルフォール）が“同時”に展開された所為で、アレイスター以外の人間は気づかなかった。 </div>
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<div>その場にいた神裂も、土御門ですらも。 </div>
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<div>だがそれも無理はない。 </div>
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<div>この世界において、『異界反転』は１人の人間にしか影響を与えなかったのだから。 </div>
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<div>（人類でたった１人、木山春生がそれに該当した） </div>
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<div>（彼女にしてみれば、堪ったものではないのだろうが……） </div>
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<div>（こちらのプランにとっては僥倖と言わざるを得ないな） </div>
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<div>『異界反転』の魔術は、この世界の８月２８日にいる木山春生を、別世界の７月２７日へと弾き飛ばした。 </div>
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<div>アレイスターがいない代わりに、木原数多を始めとする人材が魔術と戦っている世界へと。 </div>
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<div>すなわち、教え子を助けたという事実が存在しない世界だ。 </div>
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<div>それだけではない。 </div>
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<div>木山の脳からは、こちらの世界での記憶が都合よく一部消滅している。 </div>
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<div>７月２７日以降の記憶と、アレイスターのプランに関わる記憶――例えば『妹達』についてだ。 </div>
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<div>前者は世界を渡った時に自動的に消えたが、後者は違う。 </div>
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<div>姿を変えて存在している“あちらのアレイスター”が、意図的にその記憶を抹消した。 </div>
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<div>（実に興味深い） </div>
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<div>そして“こちらのアレイスター”は、自分のプランを進めながら別世界の監視を行った。 </div>
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<div>（木山春生を通じて観測したあちらの世界は、実に突拍子もない状況を見せてくれる） </div>
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<div>（あの『猟犬部隊』が、禁書目録を有して魔術サイドと戦っているとは） </div>
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<div>また、アレイスターにとっては世界間の時間差も好奇心を刺激した。 </div>
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<div>（この世界と、あちらの世界では半月から１か月ほどのズレが生じている） </div>
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<div>（その時間の差が不安定に変化しているのは、この魔術が中途半端に完成したからだろう） </div>
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<div>観測した瞬間ごとに、あちらの世界との時間差は異なっている。 </div>
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<div>ただし、こちらがより先の時間軸を経過していることは間違いない。 </div>
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<div>そして今、向こうの世界での重要人物がこちら側で死亡したところだ。 </div>
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<div>（さて、こちらでは君の死が確定したぞ木原数多） </div>
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<div>（あちらにいる君は、どんな結果を見せるのかな？） </div>
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<div>（この『異界反転』に、あちらで気づけるものがいるとしたら） </div>
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<div>（それは君以外に考えられないのだがね） </div>
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