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 びっくりしたよ、あのときは。まさか吹雪のゲレンデで君が叫ぶなんて、思いもしなかったんだ。そして、きっと君は死んでしまうんだなぁ、そう思ったよ。

うぉ、うぉ、うぉおおおおおおお!

 耳にいつまでも残る叫び声というものがあるんだね。あれから何年も経つというのに、吹雪のゲレンデで仁王立ちになったまま叫んでいた君の凝固した体は見ものだったね。あのときボクはあわててクラウチングスタイルで山を滑り落ちて下界の救急隊の控え室に助けを求め、大急ぎでゲレンデに戻ってみると君はもうそこには居なかった。君はどこへ消えたんだい。あれからずっと君を探し続けているんだよ。まだあのゲレンデのどこかで叫んでいるのかい。
 そういえば、秋にはあのゲレンデは花畑になるんだけど知っていたかい。凄いんだ。コスモスで一杯になるんだよ。見せたかったなぁ、君に…。
えっ、見てるの?そんなはずないよね、そんな有り得ないことを言って僕をおどろかそうったって、そうは行かないさ。僕は愚かで単純で何事も信じやすい人間じゃぁないってことは充分に分かっているだろ。よかった…。
 こうして君と話しているとね、安心出来るんだ。ああ、もちろんひとり言には違いないけど、それでも君との会話は愉しいんだよ。僕がいわゆる心を病んでいて妄想にとりつかれているってわけではないんだよ。そうさ当たり前じゃないか、嘘なんて言わないさ。君を探しているんだけど、どこへ行ったんだんだか…。あれから部屋に閉じこもったきり外出してないんだから、君を見つけ出すことなど出来っこないけどね。
 ほら、ボクの足から根が伸びて畳にびっしり喰い込んでしまってるだろ。歩こうにも歩けなくてね…。