猛暑になると誰もが予測していた夏が来ないまま涼しい七月もすでに終わろうとしていた。私には判っていた。猛暑なんて来ないのだということは。温暖化傾向があるからと言ってそうそう毎年暑いわけがなく、大型台風が七月に日本列島を縦断し太平洋の海水温度が高いから猛暑になるだろうなんて予測は誰でも立てることが出来る。しかし、実際は大型台風が過ぎた後には太平洋の海水温度は見る間に下がっていき、遂には例年より二度も低い状態になってしまったではないか。欧州では熱波が続いていると聞いたあたりから、こりゃぁ、日本は暑くならないな。そう感じていたが、どうも当たってしまうらしい。まだまだ八月九月は先のことだからどうなるか分からないが、たぶん猛暑の夏どころか冷夏となるのさ。
 つまりこれは、はじまるための前段の終わりなんだ。どういうことかって?氷河期の到来の前兆ということさ。欧州の熱波は、北大西洋を温め、万年氷土を解かし、氷河を解かし真水が北大西洋に大量の注ぎ込むことになる。すると海水の比重が低下し、深海へと潜り込む流れが弱まることになり、深層海流のメキシコ湾あたりからの暖かい流れが欧州の海へ供給されなくなり、高緯度の割りには温暖な欧州の気候は一気に寒冷化することになる。今起こっている欧州のこの熱波があと二回か三回繰り返された後には循環は完全に止まる。そして欧州はどの地域よりも早く氷河期へと突入してしまうことになる。文明の終焉だ。それも西欧文明の一巻の終わりがやってくる。
 次に世界を支配する文明はアジアに興る。すでにアジアの文明はインド・中国・ベトナム辺りで急速に進化を遂げつつあるのだ。日本はその西方アジアで興る文明のおこぼれに預かってかろうじて二千年の歴史を継続することだけは可能になるだろう。
 私はその激変する世界を見届けたいと願うから、あと五十年は生きているつもりだが、果たしてそれまでこの故障だらけの命の炎は持つだろうか。持つ!持たせる!持たせなければ!これが、マッキー・ワイの話のはじまりに捧げる序文となる。