おまえという花をおれは見るに耐えないのだ
春に咲けない腹いせか
夏に輝かぬ恨みか
おまえの散り際のみっともないのが
通りかかるだけのおれの眼に
正視させることを拒むのだ
どうしても目を逸らさせてしまうのだ

おまえという花が美しく散れないことに苛立ってしまうのだ
サクラの花のように儚く散り行く大胆さもない
まったく惨めなおまえの姿は
自分を見るようでたまらないのだ
どうにかして美しく散ってはくれまいか
その分厚い葉の無骨さがおれの指のゴツゴツを見るようでたまらないのだ
花とも樹木ともつかぬ半端な茎がおれの立ち姿に似ていて殴りたくなるのだ

加えて言えばおまえは花であるようで花ではないのがしゃくにさわる
花弁が色付くというならまだ許してもいい
おまえは雨降る灰色の季節に紛れて萼ごときに夢を託したのが間違いだ
散るに散れぬ大生際の悪さはまるで小悪党のそれだ
頼むからもう少し綺麗に散ってはくれまいか
それが出来ぬならせめて茂る葉の下に隠れてはくれまいか
智ある老人が静かに身を庵に閉ざすようにはいかないものか

その時だったろうか俺にお前が聞こえるともなく呟きかけてきたのは
俺は毎年青い空の泪の季節に繰り返し予行練習をしているのだと
いずれ大地に帰る練習を毎年毎年繰り返し俺は練習できるがお前はどうだと
俺はお前を笑えるがおまえは俺を笑えないと思うがどうだと
夏に鮮やかな緑があるのに誰も振り返らぬことをお前は知っているかと
陽の当たらぬ冬に足蹴にされて折られる俺を知っているかと
薄汚れた紫のくちびるから漏れるのは命の吐息だったろうか

そして
俺は
もうすぐ明ける梅雨の最後の篠つく痛い雨の中
薄汚れた紫の萼片を掌に掬い
力いっぱいに握り締めた
お前の命を抱きすくめようと
わざとらしく佇んで