運動、食事、骨格筋、糖代謝、Sirt3

研究紹介 私たちの研究チームは“運動と食事による健康づくり”を念頭に骨格筋を対象にして研究を行っています。 骨格筋は体重の約半分を占める人体最大の器官であり、筋肉が衰えて血液中の糖や脂質を代謝する能力が低下すると、糖尿病や高脂血症といった生活習慣病が引き起こされます。筋肉の栄養素代謝能力に影響を及ぼすのは運動と食事です。 例えば、運動不足になると、筋肉はエネルギーを使わないので栄養素を代謝する力が衰えます。また、高脂肪高カロリー食品の過剰摂取により、血液中に栄養素がだぶつき、勝手に筋肉の中に入り込んできます。すると、筋肉は自ら栄養素を積極的に代謝するのをサボり始め、いざというときに栄養素を代謝できなくなります。 逆に、スポーツ選手のように運動と食事の管理をきちんと行えば、筋肉の代謝能力は高まり、生活習慣病を予防することもできます。 私たちの研究チームは、運動と食事がどのようなメカニズムで筋肉の代謝能力に影響を及ぼすのかについて実験動物を用いて研究しています。具体的には以下のような研究を行っています。 1. 運動によって骨格筋の糖代謝能力が高まるメカニズム 毎日、身体を動かしてトレーニングを行うと骨格筋が血液中の糖を代謝する能力が高まります。 しかし、そのメカニズムには不明な点が残されています。最近、NAD依存性脱アセチル化酵素であるSir2という遺伝子が長寿遺伝子として大きな注目を浴びていますが、Sir2の一種であるSirt3という遺伝子は骨格筋に発現しています。 そして、私たちは運動を続けるとSirt3の発現が高まり、Sirt3が筋内で増えることを明らかにしました。現在、運動によるSirt3の増加が骨格筋の糖代謝能力を高める可能性について検討しています。 2. 日常生活活動やスポーツ活動が骨格筋の糖代謝能力を維持するメカニズム 日常生活活動の大部分は“立つこと・歩くこと”によって成り立っています。そして、私たちの研究データによると、“立つ・歩く”という筋活動がわずか数時間失われるだけで骨格筋の糖代謝能力は著しく低下します。基本的な生活活動によって、私たちの筋における糖代謝能力は維持されているわけです。一方、球技のようなスポーツ活動では、日常生活とは違って筋肉を“激しく”動かします。このような高強度運動は短時間行うだけでも糖代謝を向上させることを私たちは明らかにしてきました。現在、私たちは、日常生活における“立つこと・歩くこと”、さらに、スポーツにおける“激しい筋活動”がそれぞれ異なるメカニズムによって糖代謝を調節する可能性について検討を行っています。 これらの研究から、生活習慣病予防のための適切な運動・食事処方やサプリメントを考案することを目標としています。

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最終更新:2010年11月19日 09:25