『InvisibleBlade 第一話「見えない刀」』


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「ヤバいんだろうね・・・これは」

砂埃を上げて疾走する一台のオフロードバイク
正面から照りつける灼熱の太陽、ゴーグルに当たる砂粒
焦げ臭い匂い・・・エンジンが悲鳴を挙げている
でもスピードを緩めるわけにはいかない
なぜなら・・・

「ヒャッハァ!逃げても無駄だぁ嬢ちゃん!」
「絶対に逃がすな。何せ90000000ダークネスの報償が出るらしいからな」
「マジかよ?一生遊んでくらせるぜぇ!」

疾走するバイクの後ろに上がる無数の砂埃
皆、バイクを追う追手の車両が上げる砂埃だ

(やっと正規軍を巻いたと思ったら今度はハンターかぁ)
追手は野卑で屈強な男達・・・”狩り”を生業とするならず者”ハンター”だ
先頭を走るバイク
つまり追われているバイクの主、鈴木香音はこの状況に辟易していた
(ハンター達まで駆り出すなんて”コレ”はよっぽどヤバい代物なんだね)

「おーい!嬢ちゃんその箱を寄こせぇ!そしたら悪いようにはしねぇ!」
「90000000ダークネスってあの箱の中身は一体何なんだ?」
「知るかぁ!とにかくアレを政府に渡せば90000000ダークネスだぁ!」

香音は”コレ”の中身が何であるかを知らない
30㎝四方の小さなジュラルミン箱、重さはまぁ?重い
彼女が判っていることはこの箱が世界を元に戻す鍵だということだけ
必ず箱を持ち帰らねば・・・

リゾナントに

足元が熱い熱い、焦げ臭い
エンジンが煙を噴出している
スピードが落ちてきた・・・ヤバいヤバい

「おーい!止まりなお嬢ちゃん、煙出てんぞ!」

後ろの声が相当間近に迫ってきた
リアシートに積んだラジカセは壊れている
もう”能力”は使えない

神様!

「おいおい、お前何してんだ!まさか子供を撃つ気か!」
追っ手の1人がジープの上から長砲身のライフルを構える
「殺しゃしねぇよ、速度も落ちてきたしタイヤを狙えばっ・・・と」

ズキューン!

弾は外れ、地面に当たり派手な砂埃を巻き上げる

ヤバい!撃ってきた!神様・・・神様・・・

「下手糞ぉ!何してんだぁ!」
「いや、その得物で撃ったらどっちにしてもバイク吹っ飛ぶっしょ。対獣人用ライフルだし」
「箱も吹っ飛ぶかもなぁ」
「ならコイツだ!」

パラララララララ!

サブマシンガン!

咄嗟に香音は”音”と逆の方向にハンドルを切る

「お、避けた」
「やるなあの子」
「勘がいいみたいだなぁ!次は外さねぇ!」

パラララララララ!

また”音”と反対にハンドルを切る

「また避けた」
「まるで読んでるみたいだな」
「畜生!」

そう、私には聞こえるんだよね
普通の人より細かく、繊細に

だから判る・・・エンジンもうヤバいって!

ブスブスブス・・・ガガガガガガガガガッ
変な音の後にエンジンが火を噴いて

私は咄嗟にハンドルを離して”箱”を抱えて

エンジンは爆発して

バイクはバラバラ

私の身体は高く高く宙を舞って

スローモーションみたいに

飛び散る車体と

一面砂の地面が見える

あぁ、これはもうダメかもしれんね・・・
神様なんて居ないんだ

絶望した私は
なぜかふと
別の方向を見る



え?誰か居る?

女の子・・・?こんな砂漠に1人で?

私と同い歳ぐらい
髪の長い
黒髪の
アーモンドみたいなつぶらな瞳と

目が合った

次の瞬間・・・
全身に衝撃

私は顔から

砂に突っ込んだ

うっ・・・ううん・・・私・・・生きてる・・・?
声が聞こえる
男達の声

「なんだテメェ!何か文句あるのか?」
「人のモノ取るのよくないってお爺ちゃんが言ってました」
「あぁ?生意気なガキだなおい!」

うぇ・・・口の中・・・砂まみれ
箱・・・取られた?
ハンター達に絡んでるのは・・・さっきの子?

「お嬢ちゃん、コレは元々そこの子に盗まれた物なんだよ」
「証拠はあるんですか?」
「うるせぇなブチ殺すぞ!その目、気に食わねぇ!」

カチャ
銃を構える音
ダメ、殺されちゃう!

私は叫ぼうとして砂から顔を上げる
同時に音が聞こえる

チャッ、シュッ
何かの摩擦音
そして
キーン!
金属同士が触れ合う鋭い衝撃音

顔を上げて目に入ったのはあの子が
銃を構えた男の前で
何かを斬った後のサムライ?ガンダム?みたいなポーズしてて
でも何も持ってなくて

いや、持ってる
刀の”柄”だけ持ってる
でも彼女は決めポーズ
ポーズはカッコいいよ、うん

何これ?
すごく・・・マヌケな風景
何なのあの子?

あれ?でも何か音がしたよね
あ?そうだ!銃声がしない!?

次の瞬間
あの子の目の前のハンターが構えた拳銃の銃身が
途中から綺麗に半分になって
砂の上にぱふっ、と落ちた

一瞬の静寂・・・

「なっ・・・」
「何だテメェは!」
「コイツ!能力者だ!」

ガチャガチャガチャガチャ!

男達が一斉に銃器を構える

これはヤバすぎる!
「逃げ・・・」
”逃げて”と叫ぼうとした瞬間

キン!キンッ!パン!ぱふっぱふっ
キン!パーン!キン!キン!パ・・・キン!ぱふっ
ぱふっぱふっ
ガガガガガ!キンッ!ぱふっ

金属音、銃声、金属音、砂の音
色んな音がごちゃごちゃに私の耳に飛び込んでくる
そして私は見た

あの子は男達の中心に自分から飛び込んで
まるで舞うように銃弾を避わして
手に持った柄?を振り回す
次々に男達の銃の銃身は
両断されて
地面に落ちる

キンッ!

7~8人の男達の手の中にあった銃
その最後の一つの銃身がくるくると回転して宙を舞い
ぱふっ、と地面に落ちた

カチャッ

同時にあの子が男達の間を擦り抜け
くるっと軽やかにターンして
背中に背負った鞘の中に刀・・・
じゃなくて、柄?を収めた

「あぅ・・・」
「あぁ・・・」

一瞬の出来事
何が起こったのか判らず立ち尽くす男達

「”それ”を置いていくか、全員真っ二つになるか選べ!」

あの子が強い口調で放った言葉で男達は我に返る

「ヒ、ヒイッ!これは差し上げます!だから命ばかりは!」
「能力者・・・アイツ正規軍に違いねぇ!ずらかれ!」
「た、助けて~!」

男達は恐慌状態になり”箱”を投げ捨てて
一斉に乗ってきた車両に走り出す

「待って!置いてかないで!」
「くっそっ!エンジンがかからねぇ!」
「そっちに乗せてくれ!」

砂煙を上げて去っていく車の群れ
助かった・・・?


嘘・・・神様って本当に居るの?

「はいこれ。貴方のモノだよね?」

男達を追い払ったあの子・・・
彼女は私の目の前に来てニコッと笑って
拾った”箱”を差し出した
あ・・・
私は慌てて立ち上がって砂埃を掃って
ピッと姿勢を正してそれを受け取る

「あ、ありがとう・・・貴方は一体?」
「私?私はサヤシ。貴方は?」

あ、いやそうじゃなくてアンタ一体何者なのさ?
まぁいいや、サヤ・・・サヤシ?外国人?

「私は香音、鈴木香音っていいます」
「かのん・・・かのんちゃんか。ところでかのんちゃん・・・」

ふらっと彼女が崩れ落ちて私の胸に飛び込んでくる
ちょ、おい!いきなりそんな・・・

ん?

すぴー・・・すぴー・・・
寝息・・・?
え?・・・えーっ!寝てるよ、コイツ!
完全に脱力してんじゃん!
重いってば・・・

アレから数時間・・・サヤシは未だ起きない
幸いにして先ほどのハンター達がエンジンがかからずに
置いていった車が一台残っていた
中に居れば砂埃は凌げる。屋根窓付きの車で良かった

すやすやすや・・・実に幸せそうに寝ている
幼い顔・・・まぁ私も子供だけど
さっき大立ち回りを演じた人と同一人物とは思えない

でもさっきの・・・ハンター達の銃を次々と両断した力
あれは一体何だったんだろう?
やっぱりこの子も能力者・・・?
そういけば鞘からコレ・・・柄を抜いてたっけ


サヤシは確かにサムライのような構えで”斬って”
いたように見えた。でも柄しか持っていなかった

「見えない刀・・・ってことなのかな?」

気になる気になる・・・一度考え始めるとかなり気になる
私は興味本位でそーっと
彼女の背中から紐を外して側に置いておいた鞘の柄に手をかける

よっ・・・
ふん!ふんっ!

「かのんちゃんには抜けないよ」

うわあああ!背後からの声
サヤシは目を覚ましてじっとこちらを見ていた