『InvisibleBlade 第二話「見えない襲撃者」』


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「かのんちゃんには抜けないよ」

うわあああ!背後からの声
サヤシは目を覚ましてじっとこちらを見ていた
いつの間に!さっきまですやすや寝てたじゃん!

「ごごごご、ゴメン!そんなつもりじゃ!」
「いいよ別にぃ~。あぁ~、よく寝た」

まるで猫みたいに柔らか~く伸びをしてサヤシはふにゃっと笑う
緊張感ゼロだ・・・本当にさっきの剣士と同一人物?

「さっきはゴメンね。話の途中で寝ちゃって。まだまだ使いこなせてないなぁ・・・」
「そんな!おかげで助かった!、本当に有難う」

 ・・・?
この刀を使うと消耗するのかな?やっぱり興味あるわ~

「あの・・・」
「ところでかのんちゃん、その箱って何?」

ちょ、色々聞きたいのはこっちなんですけど
なんか微妙に間を外してくるなこの子は
しかもいきなり核心突いてくるし
結構めんどくさい子かも・・・


「あぁ!これはね・・・えっと・・・」
「???」

何て説明したらいいんだろう。知り合ったばっかりのこの子にいきなり
『これは世界を救う鍵となる箱だ!』とか言っちゃっていいんだろか・・・
う~ん・・・それに私自身、これの中身が何なのか全然知らないんだよね

「あのね、サヤシ。実は私も・・・」
「これ蓋が無いね?どこから開けるの?」

ちょ!いきなり開けようとしてるし!
      • そういえば蓋とかないね、コレ

「ええとねサヤシこれはとても大事な・・・」
「わかるよそれは。ふっ飛ばされても大事に抱えてたもんね」

あ・・・やっぱりあの時目が合ったんだ。気のせいじゃなくて

「だから護ろうと思った。命懸けでかのんちゃんが護ろうとするぐらい大事なモノだから」
「サヤシ・・・」

正義の味方?こんな世の中で?なんかカッコいいかも
この子はもしかしたら・・・色々正直に話した方が得かも知れない!

「よく聞いてサヤ・・・!?」

言いかけて私は口を止めた。この音は・・・


ズキューン
かなり遠くから響くその音・・・超高威力の対獣人用ライフル「AKB-48」の発射音!
ちょ、このタイミングで襲撃とか何てKYな!

「サヤシ!伏せて!」

咄嗟に私はサヤシの肩を抱いて勢いよく一緒に前に伏せる
ドゴッ・・・車内に鈍い音が響く

「痛っ!」
「ご、ゴメン・・・」

油断していたサヤシはダッシュボードに思いっ切りおでこをぶつけた
いや、マジでゴメン・・・でも今はそれどころじゃない!
弾丸が風を切る音が近付いてくる・・・これは・・・真っ正面から!

ガシャンッ!ガンッ!ガガガゴッ・・・ガシャーン!

衝撃音と共にフロントガラスが粉々に砕け、破片が私達に降り注ぐ・・・イタタタタ
もの凄い風圧が私達の頭上掠めて
伏せる前までサヤシがもたれていたシートの頭は吹っ飛んで車の天井を突き破り
貫通した弾丸はリアガラスまで粉々に砕いた

発射音から着弾まではそれなりの間があった
これは結構な遠距離から撃ってきているはず
割れた窓と破れた天井から砂混じりの風が激しく吹き付ける

「かのんちゃ・・・」
「シッ!」

サヤシの口を塞いで私は耳を凝らす
私の”能力”超聴力でKYな襲撃者の発する音を聞き洩らさないために


ガチャリ・・・さくっ

風の音に混じってライフルを降ろして砂に立てる音
やっぱりアレはかなりの長物だろうね

「・・・れたかぁ」

声・・・南国訛りの女の声が微かに聞こえる

「今のを避けるとはなかなかやるっちゃね」

私達が避けたことに気付いてる
狙撃用のスコープで見ていた?

「太ってる方も何か”能力”を持ってるっちゃね」

太ってる方?・・・それ私?失礼な!
今すぐ殴りに行きたい衝動を堪えて私は頭をフル回転させる

撃ち抜いた位置から考えて襲撃者は明らかにサヤシを狙っていた
この砂混じりの風が吹く中での精確極まりない射撃・・・
私達が弾を避けたことまで見ている・・・何かおかしい
あの威力の弾丸を放てば反動で着弾までスコープをずっと見ていることなどできないはず

私が思考を巡らせている間、サヤシはそっと鞘を私の座っていた運転席から
手元に手繰り寄せていた


「”見えない刀”は話通り細目の方か。いけ好かん顔しとぅとね」

サヤシと香音の乗っている車から1.5km程離れた砂丘の上に人影があった
豹の皮で作ったマントに紫色の服、柄のタイツに真っ赤なブーツ
180cmはあろう銃身のライフルを砂に立てて仁王立ちしている
細面で整った顔立ち、綺麗に切り揃えたオカッパの髪が風になびく
傾き者・・・そんな表現がしっくりくるド派手なスタイル

その人影・・・生田衣梨奈がハンターギルドの集会所の酒場で
90000000ダークネスのお宝の話を聞いたのは3時間程前の話だった

すでにギルドメンバー達はお宝を探しに出発したという。
出遅れた!

「なんで早よぅ教えてくれなかったと!」
「い、いや、急な話でさぁ・・・」

髭面の酒場のマスターに掴みかかるも後の祭である

「ちっくしょぉおおおおお!・・・イタっ!」

ドンっ
衣梨奈が勢いよく酒場を飛び出そうとしたその時、何者かの胸にぶつかった

「ああっ!エリナ!」
「あーっ!アンタら!」

それはお宝を探しに行ったはずのギルドメンバー達だった


「大の男が8人も居て腰ぬけっちゃね~」

しかしまぁ衣梨奈にとってはラッキーだった
”見えない刀”の能力者にやられてやる気を無くした仲間達を尻目に賞金を総取りできる
更に間抜けなことにお宝の持ち主は未だここから動いていなかったのだ

百発百中の一撃を避わされたことには驚きだが相手も能力者
一筋縄ではいかないだろうとは思っていた

しかしこの状況はいささか手詰まり・・・奴らは車内に身を潜めている
車体を狙って貫通させれば仕留められなくもないが下手をすればお宝も傷つけてしまう。
それにあの車は元々それなりの弾薬を積んでいたはず・・・
誘爆で車体が爆発してお宝が吹っ飛ぶかもしれない。
せめてギルドメンバー達から話に聞いた”見えない刀”の能力者だけでも
初手で仕留めたかったが・・・

辺りが暗くなってきた・・・日が落ちてしまうと車から出てくるのを
待って狙い撃ちというわけにはいかなそうだ
衣梨奈の”眼”でも暗闇の中の獲物は捉えられない
それに・・・

「あーっ!もう!待っとるのとか性に合わん!」

衣梨奈は獲物をじわじわ追い詰める程根気強い性格ではなかった

衣梨奈はサイドカーの荷台にライフルを積み込むとエンジンを掛け
香音達の潜む車へと勢いよく走り始めた


「あーっ!もう!待っとるのとか性に合わん!」
エンジンの音・・・バイク?こっちに向かってる?

どうやら襲撃者は単独、そして短気な性格なようだ
このまま膠着状態かと思ってたけどこれはイケるかもしれんね

「サヤシ!」
「・・・」

サヤシは返事をしない

「サヤシ!ねぇ!」
「・・・」

返事はない

「サヤシ?聞こえてる?」
「・・・」

サヤシはじっと不機嫌そうな目でこちらを睨んでいる
怒ってる・・・?もしかしてさっきの・・・

「サヤシ?どうしたの?何とか言って?」
「・・・だってかのんちゃん黙ってろって」

うぅ・・・めんどくさいわ~この子

「ごめんねサヤシ、ウチが悪かった。だから話を聞いて」
「・・・いいよ」

機嫌直った・・・かな?
いや、今はそれどころじゃない!


「サヤシ、さっき撃ってきた奴がこっちに来るわ。恐らく狙いは”箱”よ!」
「ふ~ん・・・」

まだちょっと不機嫌そう・・・やり辛いわ~

「敵は1人だけみたい、2人で戦えば勝てると思う!」
「・・・ウチだけで勝てるよ」

なんて自信!頼もしいけど・・・あっちは飛び道具持ってるし

「アイツが近付いてきたらいっせーのせで左右のドアから同時に飛び出しましょう」

そうすれば的が分散して奴は混乱するはず

「・・・必要ない」

え?どういう意味?

「かのんちゃんは中に居て」
「ちょ・・・サヤシ!」

おもむろにサヤシは立ち上がると穴の空いた窓から勢いよく飛び出した
ちょ!無謀・・・無謀すぎるよ!
アイツまだそんなに近くに来てないし!


「お~、自分から出てきよったとね!」

砂避けのゴーグル越しに生田衣梨奈は”見えない刀”の使い手を視認した
キーッ、急ブレーキをかけサイドカーを止める。

距離は50~60mぐらい。
ゆっくりライフルを取り出して構えている時間はない。
予備武器の自動小銃を構え、ゴーグルを外し狙いを定める。
距離的にはこの武器で十分だ

「・・・何?」

衣梨奈の”眼”には見える。遠距離の敵の様子まで細かく見える。
それが衣梨奈の能力、超視力”鷹の眼”
百発百中の狙撃を可能とする能力である

しかし衣梨奈は一瞬射撃をためらった。

なぜなら・・・衣梨奈が見たのは”見えない刀”の能力者~細目のガキ
が”柄”を構えて縦に振りかぶる瞬間だったからだ

「アイツ、何しとぅ・・・!!」

衣梨奈の幸運は”鷹の眼”を持っていたこと
そしてここが砂漠で砂混じりの風が吹いていたこと

衣梨奈には見えた・・・風の中に混じる砂の粒子の変化が
横殴りの風を割るように迫る縦の風が

直感が正しければっ!
小銃を捨て、反射的にバイクから飛び退く
とうっ、ハンドスプリング!出来るだけ遠くに飛ぶっ!

衣梨奈は華麗に砂に着地し、後ろを振り返る

ガッ、キィイイイイイイン!という金属音

衣梨奈の直感は正しかった

横付けに止めていた衣梨奈のサイドカーは真っ二つになり
次の瞬間・・・火を吹いて爆発した

「何ね・・・アイツ・・・」

爆風を頬に受けながら”鷹の眼”で衣梨奈は睨む
どや顔で佇む”見えない刀”の能力者を

見えない刀・・・アレはこんなとこまで届くっちゃか
風圧?カマイタチみたいなもんを発生させたのかもしれん・・・
まぁ能力で創り出してる刀とすれば届く、ってのも有り得んことも無いっちゃね
思ったより厄介な奴・・・でも・・・

「面白か・・・面白かよ!」

ライフルも小銃も、他の武器もサイドカーと一緒に吹っ飛んだ
相手は思ったよりかなり強敵

しかぁし!・・・諦めないのが生田衣梨奈の信条である
それに・・・この”眼”を持ってすれば

「見切れんものは無いっちゃ!」

衣梨奈は残された唯一の武器を腰から外し、クルクルと振り回しながら
”見えない刀”の能力者に向かって駆け出していった。