『新たなる出会い 鈴木香音 編 後編』


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「愛ちゃん、どうしたと?」
「れいな、聞こえんかったか?心の声を・・・」

それを聞くとれいなの顔が真剣なものになった。

「やっぱり愛ちゃんにも聞こえたと。れいなにも聞こえたということは他のみんなにも・・・」
「うん、この感覚久しぶりやな。れいな、たぶん一刻を争うやよ。」
「そうやね、急いだ方がいいと。店は・・・」
「うちが店番してますよ。」
「のえるちゃんお願いね。」

そういうと愛はれいなの手をつないで心の声が導くまま瞬間移動した。

その頃、香音は廃工場に連れていかれていた。
香音は椅子に座らされて、手足をロープで縛られて声をだされないようにガムテープで口をふさがれている。
本当なら力で縄を抜けることができるのだが、周りを囲まれているので縄を抜けても逃げるのは不可能と考えているのだ。
栄治たちは香音から奪ったカバンを探りUSBを探している。

「おい、見つかったか。」
「いや、ない。持ち物はこれだけのはずだが・・・」

栄治たちの視線は香音に注がれている。
香音は怯えた表情をしている。

「香音ちゃん、USBをどこにやったんだい?」

香音は栄治から顔をそらした。
おびえているのと同時に香音には栄治たちに屈しないという信念が生まれていた。

「こいつ、調子に乗りやがって!」

バチッ!
栄治が香音の顔を叩いた。
その勢いで香音の口のガムテープがはがれた。

「言え!USBはどこだ!」
「言わない!言うもんか!」
「さらに痛い目をみないとダメみたいだな。」

栄治が手を振り上げる。香音は顔を伏せた。

ガシッ!
「女の子に手を挙げるなんて最低やけん!代わりにれいなのパンチをあげると!」

れいなが栄治の顔面にパンチを喰らわせた。
栄治は吹き飛ばされた。

「なんだ、貴様らは!」
黒服の男たちが銃を抜こうとすると・・・

「あんたらにもプレゼントや!」
愛が背後に回り、首に手刀を当て男たちを気絶させた。

その頃、れいなが香音を縛っている縄を解いていた。
「大丈夫と?」
「はい、あなたたちは?」
「あんたの心の声を聞いて駆けつけた正義の味方と。」
「心の声?」
「そう、心の声。ともかく、ここは危険やけん。」
「待ってください、その前に・・・」

香音は倒れている栄治の元に駆け寄った。
「教えて、どうして私を襲ったの?一体、あなたは何者なの。」
「・・・」

栄治は黙ったままだ。
すると香音は栄治に掴みかかった。

「教えて!」
「知ったところでどうする?お前はもうこの世の闇に足を踏み込んだんだ。いずれは死・・・・」

すると栄治は急に苦しみだして倒れた。
「ねぇ、栄治兄ちゃん!どうしたの?」

倒れた栄治に愛が駆け寄り、調べる。
「毒を飲んだみたいやね。たぶん、自殺用として歯に仕込んだみたいやよ。」

その時、愛が一瞬あたりを見回した。
「愛ちゃんどうしたと?」
(いや、気のせいか?)

その時、廃工場の物陰から少女が状況を見守っていた。

その後、愛とれいなは香音を連れて喫茶リゾナントに戻り、事情を聞くことに・・・
「そう、お父さんを亡くしてひとりで東京に・・・」
「はい。」
「なるほど、お父さんの手紙を読んだっちゃけど。香音ちゃんの力って何とよ?」
「ああ、これのことですね。」

すると香音は目の前のテーブルに手を勢いよく振り下ろした。
スルッ!
香音の手はテーブルをすり抜けた。

「これが私の力です。」
「なるほど非物質化ね。ところで彼らが探していたUSBはどうしたの?」
「それは・・・」

香音はいきなりブーツを脱ぎ出して、手を入れた。
中からUSBが出てきた。

「私、触れたものも非物質化することができるのでとっさにUSBをブーツに隠したんです。」
「へぇ、頭いいと。」
「香音ちゃん、それはあーしたちが預かってもいいかな?」
「でも、手紙にあるように父はUSBを芹沢って人に渡すようにって・・・」
「香音ちゃんが知ってる人?」
「いえ、私も初めて聞く名前です。」

それを聞いて、愛は何か考えごとをしている。

「じゃあ、今からその芹沢って人に会いに行こう。」

愛は店をれいなに任せて、香音を連れて銀座のトレゾアという店を訪ねた。
「いらっしゃいませ。」
「あの芹沢さんいらっしゃいますか?」
「芹沢さんですね。少々お待ちください。」

応対にでた女性が奥に行こうとすると奥の部屋からスーツを着た男性が出てきた。
「あっ、先生。お客様です。」
「客?」

男性が愛たちの方に近づく。
愛もその男性の顔を見た。

「!」
「高橋さん、どうしたんです?」
「いや、何でもないやよ。」
「私が芹沢眞一郎です。どなたかな?」
「あの私、鈴木香音と申します。父の手紙でここに来るように言われました。」

香音は手紙を芹沢に渡した。芹沢はそれを読んだ。

「そうですか、わかりました。そのUSBは今持っていますか。」
「はい。」

香音はカバンからUSBを取り出した。

「お渡し願いますか?」
「はい。」

香音はすぐにUSBを渡そうとする。

「ちょっと待ってください!」
「なんだね。」
「その前にあなたの事聞かせてください。そのUSBは普通の品物ではありません。現にこの子は襲われたんです。あなたと彼女のお父さんとの関係を・・・」
「詳しいことは言えないんだが、この子のお父さんとは親しい間柄でね。」
「話すことができないんならそのUSBを渡せません。あなたが正直に言ってくれるまでは・・・」
「そうかね、それは残念だ。だが、それは君のような若い子がどうにかできる代物ではないんだがね。仕方がない。香音さん君は当分このお姉さんに守ってもらいなさい。」
「えっ?」
「彼女、とても強いみたいだし。私のような一介のファッションプロデューサーよりも安全だ。」

愛と香音はトレゾアを後にし、リゾナントに戻った。
愛はカウンターに行かず、二階の「魅惑の水さんルーム」に直行した。

「愛ちゃん、どうしたと?」
「さぁ、芹沢さんに会ってから何やら怒ってるみたいです。」

愛は部屋のドアを怒り任せに閉めた。
「もう、まったく変わってないんだから。最低!」

その夜、トレゾアでは・・・
「先生、よろしかったのですか?」
「川久保君、仕方がないだろう。あの状況ではどんなに言っても愛はUSBを渡さないだろう。頑固なところは相変わらずのようだ。」
「でも、父親なのですから託してもいいのでは・・・」
「父親だからこそ、渡せないというところだろう。あの子は私の事を信用していないんだろう。何か裏があると。」
「でも、あのUSBを持っていることはお嬢さんを危険にさらすことに・・・」

喫茶リゾナントにて・・・
「このUSBは香音ちゃんが持つようにして。」
「えっ?」
「お父さんが必死に守ろうとしていたものを赤の他人が持つわけにはいかない。娘であるあなたが守るんやよ。」
「でも・・・・」

香音は不安な顔をしている。

「大丈夫と。もしもの時はれいなたちが助けるけん。明日には他の仲間も紹介すると。」
「当分の間はあーしの部屋で寝るといいやよ。学校の事もあーしがなんとかするやよ。」
「はい、それとひとつ提案させてもらっていいですか?」

翌日、里沙が朝早くリゾナントを訪れると・・・

「おはよう。」
「いらっしゃいませ!」
「あれ?愛ちゃん、誰この子?」
「リゾナントの新しい看板娘やよ。」
「鈴木香音です。よろしくお願いします。」

香音が学校に行く前と帰った後に店を手伝わせてほしいと提案したのだ。
ずっと愛とれいなのお世話になったままなのは申し訳ないということだった。

「香音ちゃん、そろそろ学校いかんと。」
「あっ、じゃあ行ってきます。」

カバンを持ってリゾナントを出る香音を見て、お客さんがつぶやく。
「ああ、笑顔の天使が行っちゃった。」
「看坂猫で我慢すると。」

「ねぇ、愛ちゃん。昨日の心の声のことなんだけど愛ちゃんは心配するなって電話してきたけど・・・」
「あの子やよ、昨日の心の声。詳しいことは後で・・・」

リゾナントに舞い込んできた笑顔の天使・鈴木香音。
彼女が持ち込んだUSBがリゾナンターの運命を大きく揺さぶることになるとはだれも知らなかった。



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