『新たなる出会い 鈴木香音 編 前編』


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「じゃあ、香音。少しの間、家を空けるから閉じまりには気をつけるんだぞ。」
「はーい、わかってます!パパも取材気をつけてね。」
「ああ、行ってくる。」
「行ってらっしゃい!」

少女は笑顔で父を送り出した。
少女は鈴木香音。愛知県に住む小学6年生。
母はすでに病気で他界して、ジャーナリストをしている父とふたりで暮らしている。

そして父がいない家の中で香音は自分の部屋のベッドの上で雑誌を読んでいた。
「あっ、しまった。炊飯器のスイッチいれるの忘れてた。階段まで行って降りるの面倒だな。そうだ、力を使っちゃおう。」

香音はベッドの上に立って何やら準備体操をしている。

「よし!」

すると香音の体がベッドに吸い込まれていった。

ガタン!
香音は部屋の真下のキッチンに降り立った。
香音の力は非物質化。体の原子の構造を変えて、壁をもすり抜けることができるのだ。

プルルルル!
家の電話が鳴り始めた。
香音は受話器をとった。

「はい、鈴木です。えっ、病院?」

電話を受けて、香音は急いで病院に向かった。

「鈴木香音さんですね。残念ですが、さきほど・・・」
現れた医師に促されて、部屋に入ると・・・・

「パパ・・・どうして・・・どうして・・・」
目の前にはすでに息をしていない父の姿があった。

「さっき笑顔で出かけたばかりじゃない。どうしてよ、どうしてよ!」
香音は父の遺骸にすがりついて泣き続けた。

その後、警察の説明によると父の運転していた車が対向車と衝突したというのことだった。
即死ではなかったために病院に搬送されたがすでに手の施せない状態だった。

後日、親戚の手伝いもあって父の葬儀は無事済ませた。
親戚の人たちは香音を引き取ろうといってくれたのだが、香音は・・・

「みなさんのご厚意はうれしいです。でも、私両親の思い出が詰まったこの家を離れたくはありません。」
「でも、香音ちゃんひとりじゃあ・・・」
「大丈夫ですよ。香音ちゃんの面倒は僕たちがしますから。」
「栄治兄ちゃん。」

香音の近所に住む青年・栄治。父親同士が仲良く、家族ぐるみでの付き合いをしていた。

「それに心配なったらいつでも来てくれていいから。私、おいしい料理でもてなすから。」
「そう、じゃあ栄治さん。香音ちゃんの事よろしくお願いします。」

そしてさらに時がたち、弁護士と名乗る人から父の残した遺言状が届いた。
父がいつの間にそんなものを用意していたのかわからなかった。

とりあえず香音は遺言状が入っている封筒を破り、中を見た。
「香音へ・・・
この手紙を読んでいるということはお父さんはもうこの世にいない。
お父さんは今命をかけてあることを調べている。しかしそのことでお前の命も狙われるかもしれない。
だから、この手紙を読んだらすぐにお父さんの書斎にある金庫の中からUSBを取り出してくれ。お前の秘めた能力を使えば、できるはずだ。
そして東京に向かうんだ。そこで銀座のトレゾアという店に向かって芹沢という人に会うんだ。その人はお父さんの親友だから、信用できる。
あとは彼の指示に従ってくれ。お父さんがそばにいれなくてすまない。愛している・・・」

(パパ、私の力の事を知ってたんだ。でも、何なのパパまるで自分が死ぬ事を分かってたみたい。)

ガサッ、ガサッ!
誰かが外にいる。
香音は窓からこっそり外を見た。そこには栄治の姿がある。

(あ、栄治兄ちゃんだ。どうしたんだろう、こんな時間に。)

よく見ると、栄治以外に黒服の男が数人いた。

「間違いないのか?あの男の娘の元に手紙が届いたというのは。」
「はい、さきほど男が家をたずねました。」
「おそらく我々が仕留めた弁護士だろう。荷物や事務所を探っても何もなかったから。おそらくこの家だろうとは思っていたが・・・」
「どうしますか?」
「栄治、お前はあの娘と親しいだろう。今から家に訪ねて、中に入れてもらえ。」
「それでUSBの在り処を知って、娘はどうします。」
「秘密を知っているかもしれない。殺せ。」

その話は香音のところまで聞こえていた。
とっさに香音は物陰に隠れた。

(そんな、栄治兄ちゃんは悪い人?)

ピンポーン!
「香音ちゃん、栄治だよ。ちょっと開けてくれないかな。」

ピンポーン!
再びベルが鳴らされた。
すると黒服の男が・・・・
「もういい、かまわん。無理やりでも聞き出す。」

バーン!
ドアが強く叩かれている。破られるのは時間の問題だ。
香音は急いで父の書斎に向かった。

「パパの金庫は確か・・・あった!」
香音は金庫を見つけるや否や力を使い、金庫の中に手を入れた。
そして手を金庫から抜くとUSBが握られていた。

バコーン!扉が破られた。
「書斎は二階です。」

栄治の声が聞こえた。彼は家に何度も来ていたからここにはすぐ来る。
幸い、手紙を読んで出発の準備をしていたから財布の入ったカバンを持ったままだ。
香音はUSBをカバンに入れて、机に立って窓の外を見た。

「誰もいない。でも、ちょっと高いかな。」
でも、ためらっているわけにはいかない。

「仕方がない。えーい!」
香音は壁をすり抜けて、二階から降り立った。

「おい、何か音がしなかったか?」
表を見張っている男たちがこちらに向かってくる。

香音はすぐさま、その場を離れた。

何とか、名古屋駅にたどり着いた香音はすぐさま新幹線で東京に向かった。
名古屋駅にたどり着くまで襲われやしないかとドキドキしながら向かっていた。
新幹線に乗っても誰が襲ってくるか冷や汗を流していた。

そして東京駅に到着した。
香音はすぐさま、近くでタクシーを拾った。
「銀座のトレゾアまでお願いします。」
「はい。」

タクシーは出発した。
なんとかタクシーに乗れて、香音はほっとしている。
しかし、香音は東京に来たことがないのですぐには気付かなかったがタクシーは銀座に向かっていなかった。

「運転手さん、方角が違うんじゃ・・・」

キー!
タクシーが人通りのない所で急停車した。
「きゃあ!」

すると後部座席のドアが開き、男が無理やり入ってきた。その男は・・・
「栄治・・・兄ちゃん。」

香音は栄治を見て、おびえている。
「探したよ、香音ちゃん。東京について油断したね。」

突然、タクシーから拘束具がでてきて、香音の体を固定した。
香音は何とか逃げようとするが、外れない。

「無駄だよ。僕たちと来るんだよ。」
「いや、離して!」
「あまり騒がれると困るね。」

栄治がハンカチを取り出すと香音の口にあてた。
「んー!んー!」

香音は抵抗するが意識が次第になくなっていく。

(誰か、誰か助けて!)

その頃、喫茶リゾナントでは・・・
愛がテーブルを拭いていた。

(誰か、誰か助けて!)

「誰かが助けを呼んでる。」



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