立憲主義・英文wikiの説明

constitutionalism
<ODE>
[mass noun] constitutional government:
・adherence to a constitutional system of government:
(翻訳) 国制に基づく統治
・特定の統治に関する規約体系を堅持すること

※残念ながら、<Britannica Concise Encyclopedia> には constitutionalism の項目がないため、 英文wikipedia(2013.8.17時点) で代用する。

※注釈: 以下の文章にある、① 記述的(descriptive) とは、 物事のあるがままの状態を客観的に記述すること 、また、② 規範的(prescriptive) とは、 物事の当否を主観的に判別すること 、をそれぞれ言い表わす説明の方法であり、おおむね、① 記述的(descriptive) 部分が 概念(concept ~とは何か)の説明 、② 規範的(prescriptive) 部分が 理念ないし概念構想(conception ~はどうあるべきか)の説明 に該当する。
なお、①記述的(descriptive)とは外的視点(非構成員)によって観測されるものであり、②規範的(prescriptive)とは内的視点(構成員)によって遵守されるものである( H.L.A.ハートの法体系 参照)→後述するように以下の英文wikipediaの説明は、ハートやJ.L.オースティンといった日常言語学派(第二次大戦後のイギリスで隆盛した分析哲学の一派)の思考パラダイムに基づいている。

constitutionalism 
<英文wikipedia>
Constitutionalism , in its most general meaning, is " a complex of ideas, attitudes, and patterns of behavior elaborating the principle that the authority of government derives from and is limited by a body of fundamental law ".
A political organization is constitutional to the extent that it "contain[s] institutionalized mechanisms of power control for the protection of the interests and liberties of the citizenry, including those that may be in the minority".
As described by political scientist and constitutional scholar David Fellman:
Constitutionalism is descriptive of a complicated concept, deeply imbedded in historical experience, which subjects the officials who exercise governmental powers to the limitations of a higher law.
Constitutionalism proclaims the desirability of the rule of law as opposed to rule by the arbitrary judgment or mere fiat of public officials….
Throughout the literature dealing with modern public law and the foundations of statecraft the central element of the concept of constitutionalism is that in political society government officials are not free to do anything they please in any manner they choose; they are bound to observe both the limitations on power and the procedures which are set out in the supreme, constitutional law of the community.
It may therefore be said that the touchstone of constitutionalism is the concept of limited government under a higher law.
Usage
Constitutionalism has prescriptive and descriptive uses .
Law professor Gerhard Casper captured this aspect of the term in noting that:
"Constitutionalism has both descriptive and prescriptive connotations.
Used descriptively, it refers chiefly to the historical struggle for constitutional recognition of the people's right to 'consent' and certain other rights, freedoms, and privileges….
Used prescriptively … its meaning incorporates those features of government seen as the essential elements of the … Constitution."
(1) Descriptive
One example of constitutionalism's descriptive use is law professor Bernard Schwartz's 5 volume compilation of sources seeking to trace the origins of the U.S. Bill of Rights.
Beginning with English antecedents going back to the Magna Carta (1215), Schwartz explores the presence and development of ideas of individual freedoms and privileges through colonial charters and legal understandings.
Then, in carrying the story forward, he identifies revolutionary declarations and constitutions, documents and judicial decisions of the Confederation period and the formation of the federal Constitution.
Finally, he turns to the debates over the federal Constitution's ratification that ultimately provided mounting pressure for a federal bill of rights. While hardly presenting a "straight-line," the account illustrates the historical struggle to recognize and enshrine constitutional rights and principles in a constitutional order.
(2) Prescriptive
In contrast to describing what constitutions are, a prescriptive approach addresses what a constitution should be.
As presented by Canadian philosopher Wil Waluchow, constitutionalism embodies "the idea … that government can and should be legally limited in its powers, and that its authority depends on its observing these limitations.
This idea brings with it a host of vexing questions of interest not only to legal scholars, but to anyone keen to explore the legal and philosophical foundations of the state."
One example of this prescriptive approach was the project of the National Municipal League to develop a model state constitution.
(3) Authority of government
Whether reflecting a descriptive or prescriptive focus, treatments of the concept of constitutionalism all deal with the legitimacy of government.
One recent assessment of American constitutionalism, for example, notes that the idea of constitutionalism serves to define what it is that "grants and guides the legitimate exercise of government authority."
Similarly, historian Gordon S. Wood described this American constitutionalism as "advanced thinking" on the nature of constitutions in which the constitution was conceived to be "a" set of fundamental rules by which even the supreme power of the state shall be governed.'"
Ultimately, American constitutionalism came to rest on the collective sovereignty of the people - the source that legitimized American governments.
(4) Fundamental law empowering and limiting government
One of the most salient features of constitutionalism is that it describes and prescribes both the source and the limits of government power.
William H. Hamilton has captured this dual aspect by noting that constitutionalism "is the name given to the trust which men repose in the power of words engrossed on parchment to keep a government in order."
(omission)
(翻訳)
立憲主義 とは、その最も一般的な意味では、「 統治の権威(ないし根拠)(the authority of government)は、特定の一まとまりの基本法(a body of fundamental law)から派生し、且つ、それによって限定される 、という 原則 を、 精一杯入念に作り上げている、諸アイディア・諸態度そして諸行動パターンの複雑な集まり 」のことである。
ある政治機構が、「一般市民の諸利益と諸自由を、(専ら)少数者のものであるかも知れないものをも含めて、保護するための制度化された権力制御メカニズムを備えている」といえる場合、(その政治機構は)立憲的である。
政治科学者であり憲法学者であるデイヴィッド・フェルマンの説明によれば、
立憲主義 は、 統治権力を行使する政府当局は特定の高次の法による制限に服する、という、歴史的経験が深く埋め込まれている、複雑に入り組んだ厄介な概念 として記述される。
立憲主義は、法の支配(the rule of law)を、政府当局による恣意的な判定や単なる勝手な命令による支配とは正反対のものであり、望ましいものである、と公然と宣明(proclaim)している。
近代的な公法や治世術の基礎を取り扱うあらゆる諸文献を通して見て、立憲主義の概念の中心的要素とは、政治社会において政府当局者(government officials)は、その選択する要求を、どのような態様であれ、無制限に実行できる訳ではなく、その共同体における至上の実質憲法(=国制)(the supreme constitutional law of the community)によって予め定められている権力の諸制限および諸手続きの両方を遵守することを義務付けられている、ということである。
そのため、 立憲主義の試金石 は、 特定の高次の法の下にある制限された統治(limited government under a higher law)という概念 にある、と云われている。
使用法
立憲主義 (という用語)には、 記述的用法規範的用法 とがある (※注釈)
法学教授ガーハード・キャスパーは、この言葉のこうした側面を以下のように捉えている。
「立憲主義には記述的と規範的の両方の含意がある。
記述的 に使用される場合、それは主に、 人々の「同意」権や特定の他の諸権利・諸自由・諸特権に関する憲法的認定(constitutional recognition)についての歴史的葛藤のこと を指している。
規範的 に使用される場合・・・その意味には、 ××憲法典(the ・・・ Constitution)の本質的諸要素と考えられている、統治のそうした諸特徴(those features of government) が組み込まれている。」
(1) 記述的(用法)
立憲主義(という用語)の記述的使用例の一つは、法学教授バーナード・シュワルツによるアメリカ合衆国憲法の権利章典(the U. S. Bill of Rights)の諸起源を追跡した5巻の資料編著作集である。
マグナ・カルタ(1215年)に遡る英国の先行事例を始まりとして、シュワルツは、個人的諸自由と諸特権のアイディアの発生と発達を、植民諸憲章および法的諸合意を通過点として探索している。
そして、そうした物語を推挙するに当たって、彼は、連合期(※注釈:アメリカ独立13邦間に結ばれた連合規約により、1781-89迄存在したアメリカ国家連合の期間。アメリカ合衆国憲法の発効により消滅)の諸革命宣言・諸憲法典・諸文書・司法的諸決定、さらに連邦憲法典(※注釈:1787年起草、88年6月批准、89年3月4日施行のアメリカ合衆国憲法)の成立過程を見定めている。
最後に、彼は連邦憲法典の批准に関する諸討論に注意を向けているが、そこでは最終的に連邦(憲法典)に対して権利章典(を追加すること)を要求する高いプレッシャーが懸っていた。
「一直線」の説明を提示することは非常に困難ではあるが、こうした説明は、国制秩序に関する憲法的諸権利・諸原理の認知と神聖化に対する歴史的苦闘に、生き生きとした描写を与えてくれる。
(2) 規範的(用法)
constitution(憲法ないし国制) とは何か 、という 記述(的アプローチ) とは対照的に、 規範的アプローチ では、 constitution はどうあるべきか 、が述べられる。
カナダ人哲学者ウィル・ワルチャウの提案によれば、立憲主義(という用語)は、「政府(government)は、その権力が法的に制限可能であると同時に(その権力は)制限を受けるべきであり、そして、その権威は政府がそうした諸制限を遵守することに懸っている・・・というアイディア」を表現したものである、という。
この(立憲主義という)アイディアは、法学者達のみならず、国家(state)の法的また哲学的基礎の探索に強い関心を持つ全ての者に対して、その関心に対する数知れぬ苛立たしい疑問をもたらしてしまう。
この規範的アプローチの一例は、あるモデル国家の憲法典を作成しようとしたナショナル自治体リーグ・プロジェクトであった。
(3) 統治の権威(ないし根拠)
記述的あるいは規範的焦点をどう思案するのであれ、立憲主義の概念の取扱いは、すべて統治の正統性(the legitimacy of government)に関するものである。
例えば、アメリカ立憲主義に関する最近の評価の一つは、立憲主義のアイディアは「政府当局の正統な実力行使に承認を与え且つ指針を与える」ものの定義に役立っている、ということである。
同様に、歴史家ゴードン・S・ウッドは、こうしたアメリカ立憲主義を、constitutions(憲法ないし国制) の性質に関する「先進的な思想」であって、(そこでは)constitution は国家の最高権力でさえも舵取りされるべき根本的諸ルールの特定の一セットとして受胎されたものである、と説明している。
最終的に、アメリカ立憲主義は、人々の集合的至高性(the collective sovereignty of the people)-アメリカ政府諸機関に正統性を付与する源-に到達して終わる。
(4) 統治機関に授権し且つそれを制限する根本法
立憲主義(という用語)の最も顕著な特徴の一つ は、 政府権限(government power)の源であり同時に制限であるものを、①記述する(describe)とともに②規約化する(prescribe)こと である。
ウィリアム・H・ハミルトンは、この二重の側面を、 立憲主義 とは「 政府が正常に機能することを目的として、人々が羊皮紙に書かれた正式な言葉の効力に信認を置くこと、に対して与えられた名称である 」と表現することで把握している (※補注)
(以下省略)

※補注: このように、英文wikipediaは、「 立憲主義 とは、 憲法典(という公的に宣明された法文書)の効力に対して人々が信認を与える、という一種の言語行為(speech act)を意味する用語である 」ことを印象的に指摘している。
げんご-こうい【言語行為】
<広辞苑>
J.L.オースティンが提起した言語哲学上の概念
命令・約束・依頼などに見られるように、事実の描写ではなく、言葉を発することが同時に行為の遂行でもあるような言語の働きを指す。
発話行為。
げんごこういろん【言語行為論】speech act theory
<日本語版ブリタニカ>
イギリスの哲学者J.L.オースティンによって提唱され、J.R.サールらによって展開された言語論。
従来の言語論が命題の真偽を主として問題にしてきたのに対し、文の発話は同時に行為の遂行となっていると指摘した。
たとえば「約束する」と発話することは、すなわち「約束」という行為を行うことにほかならない。
このように何かを語ることによって執行される行為を「発話内行為」という。

★ポイント★
立憲主義最も顕著な特徴 は、 (1) それが 何等かの絶対的な真理を意味するものでもなければ
(2) 単なる一個人の価値観の表明に過ぎないものでもなくて
(3) 特定の共同体に所属する人々の暗黙の了解によって継続的に遂行されている、統治に関する①社会的事実の記述(descriptive)であり、且つ、②規範(prescriptive)である慣行(practice)に対して付けられた名称である 、ということである(この点に関して詳細な説明は、落合仁司『保守主義の社会理論』内容紹介参照)。

⇒以下に、日本の代表的な憲法学者の立憲主義に関する論説を列挙していくが、それらが、
<1> 立憲主義を (1) 何らかの絶対的な真理を含意するもの(価値絶対主義→自然法論に基づく大陸法系のパラダイム)ないし として説明する段階に留まっているのか
(2) 特定の価値観を表明するに過ぎないもの(価値相対主義→ケルゼン型の法実証主義パラダイム)
<2> それとも (3) 英米圏で第二次大戦後に急速に発展した(言語行為論を含む)分析哲学に基づく新しい法学パラダイム( ハートの法=社会的ルール説 を踏まえたうえで「立憲主義」を論じる段階に到達しているのか
の区別に留意して読み解いていくと良い。
※結論から先にいうと、 阪本昌成(リベラル右派) および 長谷部恭男(リベラル左派) 以外の憲法学者は全て、(1)自然法論に基づく古い大陸法系の法学パラダイムの段階に留まっている。

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