『電波的な彼女と彼女』


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『電波的な彼女と彼女』

  • 作者 伊南屋
  • 投下スレ 1スレ
  • レス番 575-579 585-587 602-604
  • 備考 電波 TS

575 伊南屋 sage 2006/12/13(水) 09:24:19 ID:HnrrQztF
 柔沢ジュウは不良少年だ。周囲はそう認識しているし、自分でもそう思っている。
 それは何も考えずに済む、楽な生き方を選んだ結果だ。それは逆に言えば、そういった生き方をしなければ深く考えすぎてしまうジュウの性格の裏返しなのだが。
 ただし、取り敢えず今、大切なのは別な部分だ。
 つまり、今大切なのは、柔沢ジュウが不良少年であるという事実。
 そのことなのだ。

『電波的な彼女と彼女』

 土曜日の朝、目を覚ましたジュウはベッドから身を起こした時、違和感を感じた。
 何だろう、何かが足りない。
 未だ眠気で、働きの鈍い脳では、何が足りないのか分からない。仕方なく、ジュウはいつものように思考を停止させた。
 顔でも洗えば思考がクリアになって、何が足りないのか分かるかも知れない。そう考えて立ち上がり、洗面所に向かうことにする。
 やけに体が軽い。しかし、どこか頼りない感じもする。
 体調が良いんだか悪いんだか。今日はとことん変な感じだ。
 そんな事を思いつつ洗面所に入る。

 そこに、少女が居た。

 ボーイッシュな少女だ。
 単純にボーイッシュと言えば、ジュウには二人心当たりがある。
 一人は身長も高く、スラリと伸びた肢体と、短く切り揃えられた黒髪が特徴のクールビューティ。円堂円。
 もう一人は自らの従者の妹。竹を割ったような真っ直ぐな性格が少年のような少女。堕花光。
 しかし、そこに居たのはそのどちらでもない。
 そして、初めて見るその姿は、嫌と言う程見覚えがあった。
 身長は高くなく、それこそ自分と同年代の女性の平均程度ではなかろうか。
 こちらを見つめ返す、その強気な視線は光に似ているかも知れない。ただそこに若干、母親のような苛烈さも若干見て取れる。
 目を引くのは髪の毛だ。やや短めの髪は円ほどは短くはないと言った程度。
 そして、その髪は金色に染められていた。
 そこでようやくジュウの思考は現実に焦点を合わせた。
 茫然と佇むジュウの見つめる少女。
 そんなジュウを、やはり茫然と見つめ返すその姿。
 それは、鏡に映った自分の姿だった。
「マジかよ……」
 呟く声は、いつもより数段高かった。

 事態がハッキリしてしまえば足りない物も自ずと分かって来る。つまり、男には在るが、女には無いもの。それが足りない物の正体なのだろう。
 一応、“足りない物”の確認はしておくべきか。



576 伊南屋 sage 2006/12/13(水) 09:26:08 ID:HnrrQztF
 恐る恐る、手を股間に伸ばす。そっと下着越し、無論自分のトランクスの事だ。兎に角、下着越しに触れてみる。
「……ああ」
 思わず嘆く。無い、やはり無い。
 今まで、あっても嬉しいとは思わなかったが、無いなら無いで寂しいものだった。
 それにしてもどうしたものか。幸いにして今日は休日なので時間はある。
 だからと言って時間を掛ければどうなると言うわけでもない。
 完全に八方塞がりだ。
 頭を抱える。何から考えねばならないのかすら分からない。
 そんな時だった。玄関のチャイムが鳴ったのは。


「じゅ~ざ~わく~ん。あ~そび~ましょ~」
 ドアの向こうで雪姫の声がする。
 ジュウは迷う。出るべきか否か。
 迷って、決めた。出る。そして、助けを求めよう。素直に助けてもらおう。
 縋るような気分でアパートのドアを開ける。
「あ、ジュウくんおは――」
 ドアの向こう。待ち構えていた雪姫が固まった。
「お、おはよう」
 自分で何度聞いても慣れない声でジュウが挨拶する。恥ずかしさで顔が赤くなっているのが容易に分かった。
「ジュウくんが……」
 真っ青な顔で雪姫が身を震わせる。そして、近日中に響き渡る声で絶叫した。
「ジュウくんが女の子を家に連れ込んでるーー!!」
「違ぁう!!」
 ジュウも、絶叫で返した。
 しばらく後、管理人に大声について注意されるのだが、それはまた別のお話。


「というわけは……ジュウくんなの?」
 訝しげな視線で雪姫が指差す先にはジュウ。
 ジュウは小さくなった顔を前に傾げる事で肯定を表した。
「成る程……」
 取り敢えずの納得をしたのか、雪姫は大仰に頷いた。
「しかしまあ、なんというか……」
 ずいっ、と迫られジュウは顔を赤くする。それをみて雪姫は更に何かを考え込む。
「な……なんだよ」
 身を軽く引きながらジュウが訪ねると、雪姫は溜め息を吐いた。
「ジュウくんさ……可愛いよね」
「は?」
 唐突の言葉に呆気にとられるジュウ。それを無視して、雪姫の指がその頬に添えられる。
「ジュウくんの体、確かめて良いかな?」
 自分の体を確かめる?
 その意を計りかね、しかしすぐに答えに至り、ジュウは困惑する。
 ――確かめるっていうことは、例えば実際に見たり、触ったりするって事なんだろう。
 しかし、良いのだろうか。自分は男で雪姫は女で。つまりは異性な訳で、それなのに肌を晒すって言うのは。



577 伊南屋 sage 2006/12/13(水) 09:27:55 ID:HnrrQztF
 いや、今の体は女だから関係ないのか? でも心は男な訳で、こうして間近に雪姫の顔が迫っていることに、添えられる指に自分はドキドキしていて――
「えい」
「ひゃあああ!」
 前置き無く、体が縮んだ事でダボダボになったTシャツを捲られ、ジュウは存外可愛らしい悲鳴を上げてしまった。
 無論、ブラジャーなどしているわけなど無く、形の良い、若干小振りな胸がふるん、と揺れた。
 それを見て初めて気付く。
 自分の確認が、精々下着越しに“無い”事を確かめただけだったことに。
 自分のものながら、初めて見る胸の膨らみに目を奪われる。
 見つめながら考える。ジュウは“在る”事を確かめていなかった。
 つまりは取り敢えずは確認された胸と、まだ確かめてはいない、女性器の存在を。
「ふむ……どれどれ」
 雪姫の指先が乳房に触れる。
「ひんっ!」
 また可愛らしい悲鳴。それはやはりジュウのものだった。
 未知の感覚に思わず声を上げていた。指先が触れた部分が熱を持って痺れる。
「本物だね……」
 言って、雪姫は指先を離し今度は下へ。ジュウにも、すぐに意図が分かった。
「な、ちょっ。タイム! ストップ、ストップだ!」
 制する腕を避わし、他の部位同様に小造りになったウェストでは緩すぎるトランクスが下げられる。
 露わになったのは、極薄い茂みに覆われた、自らの秘部。
 ああ、やはり無い。そう思ったのも束の間。ジュウの視線と思考は、その茂みに囚われる。
 男として生きる限り拝むことのない、女性主観で茂みを見下ろす。
「“無い”ね……でも、代わりに“在る”のかな?」
 伸びる腕は下半身。太股の内側へ。
 囚われたままのジュウの思考は抵抗など考えもしなかった。
「ひぅ……」
 再三、悲鳴。
 男には一生賭けても分からない感覚を、ジュウは今、感じた。
 触れる雪姫の指先は恐る恐る、やがて大胆にしっかりとそこへ触れてくる。
 触れる力が増す度、感覚も明瞭になっていき、それが快感だとはっきりと分かるようになっていく。
 そうなると、生理反応が起こるのが人体のセオリーだ。
「……濡れた」
「え……?」
 雪姫の呟きに、ジュウが反応する。
「ジュウくん、気持ち良いの?」
 問われて、詰まる。
 確かに気持ち良かった。しかし、それを言葉にするのは当然躊躇われる。
 ただ、この場合沈黙こそが肯定だった。
「そっか」



578 伊南屋 sage 2006/12/13(水) 09:30:18 ID:HnrrQztF
 つ、と真っ直ぐ伸ばした指先が入り口に当てられる。
「続き、したい?」
 続きとは、触れるだけだった指先を中に挿入すると。そういう事だろう。
 ぐ、と浅く指先が沈められる。それだけで、秘部を中心に熱いものが広がった。
 正直、欲しいと。そう思った。
 しかし。
「だ、ダメ、ダメ、ぜったいにダメだ!」
 慌てて雪姫の指先を払いのける。
「ダメだ。それは、間違ってる。オレは男で、今身体は女だけど、根本的にはやっぱり男だ。だから、これは間違ってる。間違ってるんだ」
「ふぅん……」
 ヤバい、怒らせたか?
 黙り込む雪姫に不安になる。
 だけど、良いのだ。やはり、あのまま続けるのは間違ってる。
「やっぱりジュウくんみたいだね」
「は?」
 今日一体何度目だろう。ジュウは呆気に取られた。
「ジュウくんはさ。楽に生きようとしてるのに、そうしたがらないんだよ。今だって、流されちゃう方が楽なのにそうしなかった。そういう所でやっぱりジュウくんなんだなあって思った」
「……試したのか?」
「そういう訳じゃ無いよ。あれは可愛いかったから思わず悪ノリしちゃっただけ。でも反応みてジュウくんなんだなって、そう感じたんだよね」
「オレの話を信じて無かったのか?」
「正直、最初は全く。話を詳しく聞いて半分くらい信じる気になった。それで今ので八割かな?」
「まだ、八割なのか」
「仕方ないよ。やっぱりこんな状態は現実離れし過ぎてるからね。完全に信じるのは正直、ちょっと難しいかな?」
 申し訳なさそうに言う雪姫を見て、ジュウは気の抜けた溜め息を吐く。
「実際、そんなもんか……オレだってまだ信じられない。いや、信じたくないってのが正解か」
 だけど、と置く。
「それとは別に、さっきみたいなのは止めてくれ。正直、保たない」
「うん、ゴメン」
「……そういや」
「ん?」
「お前、そんな風に思ってたのかオレの事」
 ――楽に生きようとしてるのに、そうしたがらない。
 雪姫はそう言った。
「……知った風な口利いちゃったね」
「そんなことねえよ。案外、的を射ていると思うしな」
 言ってジュウはもう一つ思う。
 それに、人に理解されてるって言う感覚は案外、悪くない。
 それは言葉にしないでおいた。
「取り敢えず、どうするか考えなきゃね」
 そう言って、雪姫はジュウを再び見る。今度は真摯な瞳で。
「まずは……服かな?」
「え?」



579 伊南屋 sage 2006/12/13(水) 09:31:42 ID:HnrrQztF
「流石にそれはマズいよ。男物のダボダボTシャツにパンツだけってのはね」
 言われて気付く。確かに、今の自分の格好は際どい。
「自分の服じゃサイズ合わないだろうし……仕方ないかな」
 雪姫は、至って真面目な顔で言った。
「私の服貸すから、それ着て」
「は?」
 ジュウもはや癖のようになった間抜けな声を上げて、やはり呆気に取られるしかなかった。

 続

585 伊南屋 sage 2006/12/14(木) 23:26:36 ID:/lVOO1FV
「ああ……」
 激しく鬱。真逆、こんな格好をする日が訪れようとは。
 鏡に移る自分は服を着ていた。それによって、女であることを更に明確にしている。
 沈む思考をなんとか働かせ、ジュウはここに至るまでを回想していた。

 ――あれから、一度決めてからの雪姫は実に迅速だった。一旦家に帰り、紙袋を抱えるとすぐに戻って来た。
 紙袋の中には女物の衣服が数着。全て雪姫の服だと言っていた。それを差し出し、雪姫は着替えるようにと言い、部屋にジュウを残し出て行った。
 それだけならまだ良かった。
 雪姫が持って来た服は、いわゆるレディースに寄った物ではなく、デザイン自体は男物と大差ないものが多かったからだ。
 これを着ればボーイッシュ少女が一人出来上がる寸法だ。
 別に、それは良い。別にその服に着替えるのは耐えられる。
 問題は、それ以前。先に着るものにある。
 つまり、下着の存在。紙袋には数着の衣類と共に、女性用下着が入っていた。
 ぶらじゃーとぱんつ。
 頭の中で発音を思い浮かべる。今までの人生でそれを、パンツは兎も角としても、一体何度口にしたことがあるだろうか。恐らくは相当少ないはずだ。
 そう断じられる程に馴染みの薄いものだった。
 加えて、確認こそしていないが服がそうであるように、下着も雪姫の着た物ではないのだろうか。
 そんな考えと同時、下着姿の雪姫が脳裏によぎる。
 ――無理だ、絶対に無理だ。いや、むしろダメだろう。
「なあ、雪姫。この下着なんだが……」
 ドアの隙間から顔を覗かせ、待機していた雪姫に声を掛ける。
 気付いた雪姫は、ジュウが何か言うより早く部屋に入ってきた。
「下着の着け方が分からないの? じゃあ教えてあげるね」
「いや、ちょ……待て、違うって!」
 完璧に誤解だった。しかし、雪姫はこちらの意図などお構いなしに話を進める。
「じゃあまずは脱いで」
 言うが早いか身ぐるみを剥がされる。
「ブラジャーはね。こうやって……」
「うひゃぁ!」
 胸に触れられ、ブラジャーが着けられる。
「こうしてこう、分かった?」
 抵抗虚しく、鮮やかな手際で下着を着せられてしまったジュウは、鏡に映る自分を見て大切な何かを失った気がした。
 何というか男として大切な何かを。
 しかし、この身体、変に敏感ではないだろうか。
 軽く触られただけで電流が流れたようになってしまう。



586 伊南屋 sage 2006/12/14(木) 23:28:40 ID:/lVOO1FV
 恐らくだが、流石に着替えだけで感じてしまうほど女の身体は繊細かつ敏感では無いと思う。
 となると、やはりこの身体が異常なのか。
「なにボーっとしてるの? 早く着替え終わらせようよ」
「ん、あぁ……」
「じゃあはい、コレ」
 言って渡されたのは、紙袋の中から見つけた時に、絶対に着るまいと決めていたデニム地のミニスカートだった。
「……どうしたの?」
 動かないジュウを見て雪姫が首を傾げる。
「いや……」
 コレは勘弁してくれないかと言おうとして、躊躇う。
 雪姫は自分の為にこの服を用意してくれたのだ。ここで拒否するのはその厚意を無にする事になるのではないか。そう思うと断るわけには行かない。
 もっとも、それは考え過ぎな感があるが、ジュウはそうは思わない。義理堅さが裏目に出た結果の決断。
 ジュウは仕方なく、黙ってスカートを受け取ると、渋々ながら着替えを始めた。

 そして現在。鏡の中には女物の服に身を包んだ自分が居る。それを見ているとやるせない気分になってくる。
 何が一番辛いかと言ったら、服が似合ってしまっている事実が辛かった。
「うん似合う、似合う」
 言って微笑み掛ける雪姫。そこには何の裏も見れず、それが単純に思い付いた感想だと分かる。だが、それがまた辛い。
 かのロシア文豪も言っていた。思わず言っただけに余計重大なのだ、と。
 なんの世辞もなく言ったと言うことは、それが客観的事実である何よりの証だった。
 激しく鬱、再び。
「しかし、私の服がここまで似合うなんてね~」
 落ち込むジュウを無視しての、雪姫のその言葉はジュウにある事を思い出させた。
 雪姫の服。そう、雪姫の服なのだ。
 そして、自分は何故、着替え中に雪姫を呼んだのだったか。
 思い出して硬直する。再度よぎる、雪姫の下着姿。
 意思は淫らな妄想に耽る。
 身体は女でも、心は限りなく男のジュウであった。
 そして、精神は肉体に作用する。妄想に耽る思考は身体にも変化をもたらした。
「……っ!?」
 しまった、とジュウは思う。何だかんだでこの身体に慣れ始めていたのかも知れない。
 男の身体なら股間の膨張を恐れ、そうそう淫らな妄想には耽らない。しかし今はどうだ。
 その恐れは無く、実際見た目に変化はない。
 だが、それでも変化はあるのだ。見た目には現れないだけで、明らかな変化が。



587 伊南屋 sage 2006/12/14(木) 23:29:56 ID:/lVOO1FV
 身体に、さっき雪姫に与えられた熱がぶり返してくる。疼きは下半身を中心に広がり、秘部を濡らした。
 躯が興奮を訴える。
「どうしたの?」
「えっ!? い、いや。何でもない」
 悟られてはならない。ジュウは必死に取り繕い笑顔で返した。
 しかし、変なところで勘が良い。雪姫は顔をジュウに寄せ、鼻を鳴らす。
「ん~? えっちな匂いがするよ?」
 そんな事が分かるのか。
 下に恐るべきは女の勘か……いや、絶対に違う。
 これは単に雪姫の嗅覚が異常なのだ。そうでなければ、自分の中の女性像が壊れてしまう。
「どれどれ」
 雪姫がスカートを捲し上げる。
「うわっ!」
「……あ~、やっぱり濡れちゃってるね。沁みになってる」
「あ……いやコレは……あぅ」
 もはや言い訳は利かず、ジュウは口を噤んでしまう。
 顔を真っ赤に紅潮させ俯く。
 それでも疼く体は収まることはなく、ジュウは太股をもじもじさせる。
「ねえ、ジュウくん……いや、“ちゃん”かな?」
 雪姫が、蕩けた様な笑顔をジュウに向ける。
「確かに我慢しちゃう所がジュウちゃんらしいんだけどさ、全部我慢しなくて良いと思うよ?」
 その甘言は、ただでさえ異常事態に疲弊しといたジュウの心を揺るがした。
 良いのだろうか? 耐えなくても自分は良いのか。
 分からない。なんでこうなったのか、これからどうなるのか。不安に揺れる心は脆く、甘えるに易い言葉に傾く。
「あ……ぅあ」
 目尻には涙。気丈に振る舞えど、やはり不安は消えてなどくれない。耐える心は軋みを上げて、歪みを曝す。
「ふ……っう」
 限界だった。
 意地で固められた堤防は決壊し、感情の奔流が溢れ出す。
「大丈夫……せめて今だけは忘れさせてあげる。気持ちよくして、何も考えられなくしてあげる」
 雪姫の顔に浮かぶ笑顔は、慈愛に満ちていた。そう見えた。
 それが錯誤でも、偽りでも構わないと、ジュウは思った――。

 続

602 伊南屋 sage 2006/12/17(日) 21:45:35 ID:+wZjnwjD
 体の芯が甘く痺れている感覚に、ジュウは陶酔していた。
 自らの内側を弄る雪姫の指先は、どこまでも優しく。彼女の言葉通り、ジュウの不安を忘却させてくれた。
 ただ快感に耽る。意識的にそうする事でジュウは他を考えないようにする。
 水音、吐息、衣擦れ、唇から漏れる声。それが聴覚に届く全てだった。
 最初は違和感が先にあった女性としての性感は、今やそれが当然と受け入れられる。
 入り口をなぞる指先も微かな悦びを与えるだけ。それに対する抵抗は既に無くなっていた。
 深くまで挿れすぎないように気を使っているのだろう。緩やかな指遣いは最早、物足りなくすらあった。
「ゆき……ひめ」
 掠れ声をジュウが零す。常ならば野太いその声も、体が女になった今は艶を帯びた、切なげな少女のものだった。
「ジュウちゃん……」
 応え、雪姫が唇を近付ける。ジュウは瞼を閉じ、桜色の唇は薄く開き、その行為を受け入れた。
 柔らかく口が塞がれる。甘美な感触はジュウの心を更に麻痺させ、甘く締め付ける。
 暖かな温もりに溺れる。鼻腔から微かにそよぐ互いの呼吸すら、ジュウの疼きを増す一因になった。
 不意に、ジュウの下唇に濡れた感触が滑る。雪姫が自らの唇で甘噛みし、隙間から舌先でジュウの唇を舐めていた。
 熱を持った塊が掠める度に、そこを中心に切ない疼きが広がる。本能的な接触への願望が肥大化していく。
 ジュウは自ら唇を開き、雪姫の舌先を導く。しかし雪姫は、それには従わずひたすら唇への愛撫を続ける。
 確かにその愛撫は心地良い。しかしそれだけだ。充足感には程遠い。ジュウが求めるのは充足感。雪姫の愛撫は生殺しだった。
 我慢できず、ジュウは自ら舌を雪姫の中へと侵入させる。舌を絡めとり、口腔で深く繋がる。
「ん……ちゅ、ふむ……んふっちゅ……ぴちゅ」
 唾液を流し込み、舌で絡め、飲み込む。互いの唾液の混ざった、甘い蜜にジュウの理性はどろどろに蕩かされる。
 より深く繋がる為に、舌を差し伸ばし絡める。貪欲に蠢く舌は、更に淫らな音を口の端から漏れさせる。
 重ねられた唇から微かに唾液が零れ落ちる。顎を伝うそれは跡を残し流れていった。
 互いの舌がうねり、どちらのものかも解らなくなるほど激しく絡まる。
 小さな歯をなぞり、歯茎をくすぐり、頬の内側を撫でる。



603 伊南屋 sage 2006/12/17(日) 21:47:10 ID:+wZjnwjD
 その間にも雪姫はジュウの秘口への愛撫は止めていなかった。口付けに昴ぶっているのは雪姫も同じか。慰める指遣いは一層熱心なものに変わっている。
 ジュウの体もそれに反応し、はしたなく其処から涎を垂らし、ひくついていた。
 身体の反応はそれだけに留まらず、ジュウの小さな胸の頂きは桜色の芯を堅く尖らせている。
 その事に気付いた雪姫は、空いた片手を其処に向かわせ、つんと凝り立った乳首を無遠慮に摘み上げた。
「んんんっ!」
 唇は重ねたまま、ジュウはくぐもった悲鳴を上げる。
 それでも、より強く捻られる刺激に耐えられず遂に唇を放した。
「くぁっ……雪姫、いた……い」
 涙目でジュウは訴えたが、それに返って来た雪姫の反応は小さな笑みだった。
「本当に痛いだけかな?」
 言って、下半身の愛撫をしている指を、膣中で曲げてみせる。同時、再び乳首がぎゅっと摘まれる。
「痛いの、気持ち良いんじゃない? 乳首虐める度にえっちな汁、零れてきてるよ?」
 雪姫の言葉にジュウは答えない。
 ただ顔を真っ赤にして俯くだけだ。
「それに――」
 雪姫が今までで一番強く、指先に力を込める。
「んはぁぁああっ!」
 鋭すぎる刺激にジュウが嬌声を上げる。
「今、アソコがきゅぅうって締まったよ? 気持ち良いんでしょ?」
 最早、ジュウにそれを否定する事は出来なかった。紅潮した顔で、ただ頷く。
「ふふ……痛くされて感じるなんて、ジュウちゃんはMなのかな?」
「そんなことっ……!」
「これでも?」
 雪姫の唇がジュウの胸元に近付く。薄く開いた唇は頂きを挟み、それに歯を立てる。
「――っ!」
 甘噛みではない、強い噛み方。しかしジュウの身体は顕著に反応を見せる。
「……ほら、また締まったよ? それに涎も溢れてきた。……これでも否定する?」
「くっ……」
 否定など出来る筈がなかった。事実、自分は痛みと同時に快感を覚え、身体ははしたなくその快感を訴えているのだ。
「ふふ……可愛い」
 再び、口付け。雪姫の柔らかい舌が潜り込み、ジュウを内側から愛撫する。
 頭の中に響く水音。まるで母の胎内で羊水に浸かっているような安心感に包まれる。
 ――どうでもいっか。
 そんな考えがよぎる。全て投げ出して、雪姫に甘えて。
 そんな風にしたい衝動に駆られる。マゾだからなんだというのか。それでも良いじゃないか。



604 伊南屋 sage 2006/12/17(日) 21:49:01 ID:+wZjnwjD
 麻痺した思考は簡単な結論だけを弾き出す。疲弊した精神はそれを疑問になど思わず、受け入れる。
 堕落。
 堕落していく。
「ちゅ……ぱ、んむっ。は……ぁ、ゆき……ひ、めぇ」
 蕩けた瞳で雪姫を見つめる。それだけがジュウに見える全て。そうであるかのように。
 雪姫の指が、深く膣中に沈められる。内壁を引っ掻くように曲げ、ジュウの快感を引き出す。
「んぁっ! あはぁ……っ!」
 ひくひくと身体が痙攣し、ジュウの絶頂が近い事を知らせる。
 雪姫はそれを感知し、更に愛撫を強め、絶頂へ更に近付ける。
「雪姫、雪……ひめ、ゆきひめぇ……っ」
 がくがくと身体を揺らし、与えられる快感に身を投げ出す。
 最後とばかりに、雪姫は胸を、膣を強く刺激する。
 それで、容易くジュウは昇り詰めた。
 頭が真っ白になる。膣を中心に全身に快感が広がり身体は言うことを聞かなくなる。
 背を弓なりに反らし、白い喉を晒しながらジュウは不規則に荒い呼吸を吐く。
「あ……あはっ、うぁ」
 何かを言おうとするが言葉に出来ない。ただ白痴のように不明瞭な声を出すだけだった。
 ジュウは強い絶頂にただ驚いていた。
 女性の絶頂は男性のそれの、およそ八倍であるという。
 ジュウがそれを知る由もないが、ジュウはそれを体感した。
 ただ、身を焦がす快感に陶然となりながら、呼吸を整える。
 やがて、快感に伴う熱が引き意識もはっきりしていく。
「どうだった?」
「ゆ……きひめ」
 虚ろな表情でジュウは雪姫を見る。笑みを浮かべる雪姫は優しくジュウの身を抱き締めた。
 温もりに、ジュウは不思議なまでの安堵を覚える。
 ――大丈夫、なのか。
 なんの保証が有るわけでもない。しかし、雪姫の声を聞いているとそれだけで大丈夫な気がしてくる。
 ――じゃあ、大丈夫なんだろうな。
 安心感。そして絶頂直後の倦怠感。それの板挟みに、ジュウは強い眠気を感じる。
「大丈夫だから……今はおやすみ」
 耳元に微かに届く雪姫の声。
 それを遠くに聞きながら、ジュウは深い眠りに沈んでいった。

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