1スレ423


※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

  • 作者 伊南屋
  • 投下スレ 1スレ
  • レス番 423
  • 備考 紅

423 伊南屋 sage 2006/10/31(火) 08:09:13 ID:0skTBNNt
 暖かな日差しの中、目を細めながら隣を歩む女性(ひと)を見る。
 長い髪をそよ風にたなびかせ、彼女は微笑んで空を見た。
「綺麗ですね」
 見上げる空はどこまでも蒼く、雲一つない。
 それを綺麗と形容したのは極自然な感情だと思う。
 自分も視線を高くに向け、紅真九郎はそんな事を考えていた。
 街の中央に程近い自然公園。
 今日は崩月夕乃と一緒にここを訪れていた。
 所謂デートだ。なんの芸もないが、二人ならどこだって構わない。そう思えるから公園を選んだ。
 数ヶ月前から二人は付き合い始めた。
 口に出すのは躊躇われるが、ひょんな事から二人は付き合う事になった。
 公園の遊歩道を二人は歩いていた。手は互いに重ねられ、指を絡め繋いでいる。
 繋ぐ手は暖かく、不思議な安心感を与えてくれる。
 それは幸せとも言える安らぎ。
 穏やかな日常。真九郎が求め、憧れたもの。
「夕乃さん」
 真九郎は真っ直ぐ夕乃を見つめ言葉を紡ぐ。
「好きだよ」
 夕乃は少し頬を赤らめながら。
「はい、私もです」
 そう、笑って言った。
 今この瞬間のなんと幸せな事か。愛する人と想いを通わせる。簡単なようでいて難しい。
 ふと、夕乃と付き合い始めた頃の紫を思い出した。
 泣きに泣いていた。どうして自分では駄目なのかと。どうして夕乃なのかと。
 紫は真九郎という好きな人と、想いを通わせる事が出来なかった。そうしたのは自分だ。
 自分が一人を選んだから。自分が他を選ばなかったから。選択の痛みを、真九郎は知った。
 その事で悩みもした。
 しかしそれも、今は過去の事だ。
 悩む代わりに一つだけ決めた。
「ねえ夕乃さん」
「なんですか?」
 真九郎は瞳を空に向けながら言う。
「一緒にいようね」
 夕乃は握る手に力を込めて言った。
「……はい」

 高い空、その下を二人は歩く。
 穏やかな日差しに照らされ、ほんの小さな幸せを感じ。
 ずっと一緒にいると、そう信じ。

 歩む道は、まだ長い。
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。