彼・彼女の顔が思い浮かんだ ◆Bn4ZklkrUA



「ところで健太郎さん。さっきから何をしてるんですか?」
「おかしいなぁ。いつもなら怪しい場所をどんどん触っていけば隠し扉の一つや二つ、すぐに見つかるものなのにー」
「さすがにそんなに簡単に見つかるようなら誰も苦労しないと思いますけど…」
「それでもこんなに探して、何も出ないのは最初から何も無かったと思うんだけどね」
「それは……」
改めてこの慰霊碑を一通り探索していた二人だが所詮は探索に素人。
しかも片方は闇雲になんでも弄って、罠が発動しようがどうなろうがお構い無しな行動が探索することだと
本気で思ってる自称ベテランだ。
最初から探索には不向きなコンビだったのだ。
何かがあったとしても見つけられるかどうか最初から疑わしいが…。

「それもそうですね……いつまでもここにいるより早く他の人達と合流した方がいいかもしれませんね」
「それもそうかもしれないけど、今から探すとなると大変じゃないかな?」
健太郎は別に殺し合いをしたいわけではないが、接極的に他人を助けたい理由もない。
いい手段があるのなら手伝ってもかまわないかなぐらいの動機はあったが。
「それについて私にいい考えがあるんです。実は私に支給されたアイテムが……じゃん、コレなんです」
余程自分のアイデアに自信があるのだろう。自慢げにバッグからそれを取りだす。
「え~と、それは?」
「なんでも遠くにも声を届ける事ができる機械なんですけど。つまり……」




     ◇       ◇       ◇


「え~と……つまり、それで人を集めるつもりなんですよね?
 でも、それを使用すれば人を呼ぶのは簡単だけど……危ないんじゃないかな?」
「はい、本当はコレを使うのに躊躇してたんです」
躊躇するのも当たり前だ。仮に拡声器を使った場合、殺し合いに乗った参加者も引き寄せる可能性がある。

「でも……こうしてる間にもこの島の何処かで誰かが誰かを殺してるのかもしれない。
 誰かが誰かに殺されてるかもしれない……だから、だから私はそれを止めたいんです!!
 お願いです、健太郎さん。私に協力してください!」
そう言い切るとさくらは勢いよく健太郎に対して頭を下げる。
「えっ、ちょっと、急にそんなこと言われても……」
突然の急展開にさすがの健太郎も慌てる。
「でも、さっきの無敵結界なら誰にも負けないと思うんです。私だけではどうにもならないけど健太郎と一緒ならっ!
 お願いです! 協力してください!!」
再度、健太郎に対して頭を下げる。その真剣さにさすがに戸惑う。
空気の読めない彼でもここで『僕は別に他の人なんて…』と馬鹿正直に言えない。
それにこの島からは出たいが彼自身にはこれといった代案もない。

ならば……と思ったが、ふと、頭に思い浮かんだのはランスの傍若無人の姿である。
確かにこれが上手くいけばランスとも合流できるかもしれない。彼なら女性の声……さくらさんの声に反応するだろう。
まあ、合流したら合流したで自分は邪険に扱われそうだがその辺はなんとか言い包める自信は無くも無い。
だがその時、近くの男剣士が来たら……おそらく乱闘になるだろう。あの人は男はどうでもいいって性格だし。
そうなったらもう自分に止められるかどうか…まずい、それは凄くまずい。大乱闘だ。
その時の情景を想像して青くなる。



「え~と、さくらちゃんがどうしてもと言うなら協力するのはやぶさかでもないけどもう少し慎重に…」
「それは駄目です! こうしてる間にも殺し合いがどんどん進んでします! 例え危険でもそれを止める手段があるのなら
 命を賭けるに値します!」
さくらは正義感が強く、とても頑固な性格だ。この時もこの殺し合いを打開できそうな手段に執着した。
「いや、でも、ほら、僕ら以外の参加者で物凄く危険な人だっているじゃないか。例えば超が付くほどの自己中心的性格で女性とみれば見境が無くて犯して、
 その反面、男には無茶苦茶厳しい鬼畜で、そういう性格な上に無茶苦茶強いから手に負えない外道剣士がいるかもしれないじゃないですか」
「……そこまで酷い人がいるんですか? 嬉々として殺し合いに乗る人はいると思いますが……」
「え~と、それもそうですね。あ、あはははは」
健太郎の言葉にジト目で返すさくら。冷や汗を掻きつつ笑って誤魔化す健太郎。
確かにさくらも帝国華撃団の一員としてさまざまな悪人、怪人と対決したことはあるが健太郎の言い分はまるで子供の想像に出てくる
『ぼくが考えたさいきょうのわるもの』を聞いてるみたいで現実感が無いように思えた。

まあ、幾らなんでもあんなエロゲーにしか存在しないような、超自己中な鬼畜剣士が現実に存在するなんてどんなに説明されても
普通は誰も信じないだろう。
それにそれを納得させようにも説明する健太郎も弁が立つ方でもない。
大体、言葉を重ねて相手を納得させたとしても『どうしてそんな外道剣士の事に詳しいんですか?』と尋ねられたら誤魔化すか、
『僕の知り合いですから』と言わざる負えない。
さすがに下手に誤魔化そうとしたり、馬鹿正直にそんな外道が知り合いですと言おうものなら相手の不信感を買うだろうぐらいは彼も判ってる。
言いよどむ健太郎を余所にさくらの決意は変わらなかった。



「自分でも馬鹿な方法だと判っています。でも、私にはこの首輪を外す知識も技能もありません。
 でも自分にしかできない事でこの殺し合いに抗いたいんです。
 お願いです、健太郎さん。いざという時、必ずあなたを守り切れるとは言えませんが力を貸して……」


「その言葉、偽りでないのなら私も手を貸しましょう」


突然、自分達以外の声が聞こえ……反射的にそちらに剣を向け、身構えるさくら。健太郎もそちらに注意を向ける。
いつからそこに居たのだろうか。近くの森の傍に長身の少女が佇んでいた。
会話に夢中になっていて大声を出していたから聞こえてしまったのろうか。
自分のうっかりさを呪うさくら。
もっとも、健太郎はびっくりしたがそれだけだ。余裕があるのか鈍いのか。
おそらくその両方だろう。

だが少女はそんな二人の動揺を表面上は気にせずに言葉を畳みかける。
「先程の会話からあなた達もこの殺し合いに抵抗しようとしてるとしているみたいですね。なら私達は共闘できるのではないでしょうか?」
「えっ? それって……あなたも殺し合いに乗ってないんですね!」
最初は警戒していたさくらだったが相手も自分と同じこの殺し合いに抗う同士だと知って破顔する。
普通なら初対面の相手の言い分をここまで簡単に信じるものだろうかとも思えるがよくも悪くもさくらは純朴だった。
「はい、最初は人の声が聞こえて合流を考えたのですがあなた達が乗ってないかどうか判らなかった。
 まずはあなた達の会話から判断しようとして気配を消して近づいたのですが……疑ってしまった事を謝罪します」
「そ、そんな! 気になんかしないでください! え~と……」
「神裂火織と言います」
「神裂火織さん……っていうんですか。私は真宮寺さくらと言います」
「それと僕は小川健太郎っていうんだけど、君も協力してくれるってどういう事なのかな?」
「言葉通りの意味です。あなた達はその拡声器使って人を集めようと考えているのですよね? それも危険を承知の上で。
 だが護衛役がいればそういう危険を排除できる。その役を私は引き受けても構わないというのです」
『ま、まずい。まさか女性がもう一人いきなり現れて協力するとか急展開過ぎるよっ!』

さくらちゃんも可愛いけどこの人も別タイプの美人だ。
しかも……さくらちゃんよりおっぱいが大きい。
ランスさん、こんな大きなおっぱいを見たら前後の見境なしに押し倒すだろうなぁ、絶対。
この人もさくらちゃんも真面目そうだから襲われたらまず剣を抜くだろう……
最悪、貞操を守る為にそのまま戦闘に突入するかもしれない。
ランスさん、相手が死んでも嫌みたいな場合以外は無理やりにでも…する人だし、
傍から見たら……それなんて強姦魔?
ああ、どうすれば……



はぁ、やっぱりここは……

「さくらさんの言いたい事はよく判りました。僕も協力しますよ」
「健太郎さん! ありがとうございます」
「でも、さくらちゃんや神裂ちゃんを危険な目に遭わせたくないよ。だからこれは僕が貰います」
そう言うとさくらから拡声器を奪う。
「きゃ、健太郎さん! 急に何をするんですかっ!」
「どういうつもりですか?」
さくらも神裂も健太郎の行動の意味が判らない。
「見ての通りさ。これで人を集めるのは僕一人でするよ」
「何を言ってるんですか! そんなの危険……」
「さくらさんは僕の力を知っているでしょ。なら僕だけで行動した方が都合がいいよ」
「能力ですか? ですがあなた一人でそれを使うなんて無謀では?」
「うん、そうだね。でも都合だけで言ってる訳じゃないんだ。君達にお願いがあるんだ」
お願い? 二人とも首をかしげる
「お願いですか?」
「そう、僕はあの山の上で人を集めるつもりだ。でもさすがに西の街とかまでは届かない。
 だから僕が人を集めている間にそっちは二人に任せたいと思う。その方が効率的だと思うんだ」
「確かに二手に分かれて探索した方が効率的には妥当でしょう。ですがあなたはそれでいいのですか?」
「そうですよ。一人でなんて危険です! やっぱりここは三人で……」
「でも、こうしている間にも殺し合いが進んでいるって言ったのはさくらちゃんだよ。大丈夫、僕は死んだりしないから」
そういうとにっこりと微笑を浮かべる。
「で、でもっ!」
「じゃあ、僕はもう行くよ。人を集めたら西の街に向かうからそこで合流しよう。二人ともお元気で」
尚も喰い下がるさくらを尻目に健太郎は山の方へダッシュした。まるで都合の悪い事から逃げる様に。
「あ、待ってください!」
「いえ、待つのはあなたです。彼の言い分も一理あります。
 可能な限り多くの人を救いたいのであるのなら分散して事に当たるべきです」
確かに言われてみれば二人の言い分も正しい。さくらも多くの人を助けたいのは同じだった。
完全に納得できない。だがここは健太郎の無事を信じるしかない。
「……判りました」
「では、まずはお互いの情報を交換しませんか?」




      ◇       ◇       ◇


「ふう、これでランスさんとさくらちゃん達が出会う事は無くなったね。さて、頂上から呼びかければ人は集まるけど……
 どうしようかな……まぁ、なんとかなるか」

楽観的に、というかお気楽極楽にあっさりとそう締め括る。
自分の能力を過信してる、こういう性格だか、その両方で彼はこの状況でもある意味ブレていない。

さくらちゃんらに呼び止められない内に強引に拡声器を奪い、一人でこれを使用する為に別れる。
彼女たちに護衛よりも二手に分かれて殺し合いを止めに回った方がいいと言い含め、人を集めてさせて後で合流する。
ランスさんとさくらちゃんらを出会わせない為の苦し紛れから出た計画だが中々悪くないかもね。

あ、でもみんなと合流する時はどうすればいいんだろう……

なんとかなる……よね……うん、それは後で考えよう。なるようになるさ!

とりあえず僕だけならこれでランスさん個人へ呼びかけても文句は言われない。
この近くに居るかどうかは分からないけどランスさんを見つける事ができれば僕だけなら言い包められる……
いや、男の顔なんか覚えていないとかでいきなり切りかかられるかもしれないけど。
まぁ、繰り返し説得して、おだてればまだ活路はある。うん、あると思う。多分。
後は他の人と喧嘩になりそうなら上手く割って入れればいいんだけど……。

彼女たちを巻き込みたくない為の苦し紛れの計画。この状況で拡声器を使用するのは危険なのも判っている。
ただ、ランスの事以外は口から出まかせを言ったわけではない。
誰よりも先にランスを確保して自分が他の人の間に立って緩衝材代わりになるつもりはある。
そうする事がこの状況ではベターな手段だと思えたから行動を起こす。
彼はお気楽極楽で空気が読めなくて軽薄な所もあるが完全にどうしようもない訳ではないのだ。
もっとも、後でさくら達と合流する時にランスをどう扱うかまで考えが及んでいなかったが…。



【G-7 西北部 一日目 黎明】


【小川健太郎@ランスシリーズ】
【状態】一ダメージ程の怪我
【装備】支給品の刀@不明、スコップ、拡声器
【道具】支給品一式 ランダムアイテム(一つはスコップ)
【思考】基本:なるようになるさ!
1:美樹ちゃんに怒られない内に帰りたい。
2:さくらちゃんみたいないい人がランスさんに…されるのはできれば避けたい。
3:山の頂上で拡声器を使いランスさんを確保したい。その後は…なるようになるさ!
4:人を集めたら西の街で合流する。



      ◇       ◇       ◇



(あそこは話を合わせるしかありませんでしたが……これからどうすればいいのでしょう?)

急激な展開に内心戸惑っていたのは神裂火織も同じだった。
最初に殺そうとした相手、それが自分の想像以上に手練だった上に本気で殺そうとしたのに仕留められなかった。
このゲームで優勝を目指すにはただ殺して回るだけでは駄目だと悟り、
確実に倒せそうな相手、そして確実に仕留められる状況を見極めてから殺害する戦術に切り替えた。

他の参加者を探すべく、地図にある大きな墓標らしきものに足を運ぶ。
森に姿を隠れつつ建物を観察してみれば建物の傍で二人組の男女がなにやらウロチョロしてしていた。
あれで探索してるつもりなのだろうか。傍から見ていても素人なのは判った。
さて、あの二人をどうすべきか思案していると袴の少女の方が珍妙なかっこうの青年になにかを懇願している。
会話の内容に耳を傾ければ、大声を出せるアイテムを使って人を集めるというではないか。
……正直、他の参加者がどうなろうが知った事ではない。
だが、危険を承知の上で人の善意を信じ、人を救う為に死地に飛びこもうとする勇気ある行為……でも……
自分は元の世界に帰る為に優勝すると決意したのだ。
あの子の元へ急いで駆け付けると決めたのだ。
それだ。この状況を利用すればいいだけのことだ。彼らに協力する振りをして集団に混ざって気を窺えばいい。
人を集めるというのならその状況を利用して臨機応変に動けばいい。
そうと決まれば彼らに声をかけ、協力を持ちかけた。
彼らの信用を勝ち取る為に協力を約束した。
相手はそれを疑う事もせず拍子抜けするほど簡単で信じてくれた…信じたというより疑っていないと言うべきか。
だが……

「無敵結界…ですか。それが彼の自身の源なのですね」
「ええ、あれは凄かったんです。傷一つ付いてなかったんですから」
「あなたもいったいどういう状況で彼を攻撃したのですか? 二人とも味方同士の様に思えたのですが…」

まさか、あそこで彼が独断専行するとは思いませんでした。
確かに彼女…さくらの言う事が正しければ私達がいる必要はありません。
さくらから聞いた範囲では一見、無敵に近い様に思えますが……少なくとも事前情報も無しに襲撃していたら苦戦は免れませんでした。
しかし、能力による自信もあるのでしょうが、彼もまたこの殺し合いを止める為に危険な手段を取る事を厭わない人間ですか…
「では情報交換も終わりましたし私達も街に行きましょう」
「そうですね、私達も頑張らないとっ! 行きましょう神裂さんっ!」
「ええ……」
私はこれまでの行動を一部を除いて嘘偽りなくさくらに伝えた。
最初に出会ったのはあなた達だという部分以外は……。
無論、自身がある男を襲撃した事も伏せる。
嘘はいつかばれる。だが、嘘がばれるまで集団の中に紛れて力を温存するのもいいかもしれない。
せめて、もう少し人数が減ってくれれば…そして私はあの子の元へ…。



(なんだろう……まるで火織さんって……昔のマリアさんに似ている様な…)
小川健太郎がランスの為(?)に単独で行動した様に、真宮寺さくらが神裂火織を疑わなかったのにも理由がある。

マリア・タチバナ

帝国華撃団の副隊長であり、同じ帝都を守る仲間。厳しさの内にも優しさがあり、隊長である大神やみんなの信頼も厚い。
でも、今でこそ大神さんやみんなと打ち解け合っているが、昔は他者に対して礼儀正しいが何処か距離を取ってる様な…人との交わり
避ける様なスタンスを取っていた。
火織とはこの島で出会ったのが初めてであり、まだ出会って間もない間柄だ。
それにさくらも人物眼が優れている訳でもないし、火織の容姿がマリアに似ている訳でもない。
ただ……それでも雰囲気が似ている様に思えるのだ。
理性的だけでは割り切れない何か。他人に距離をおき、どこか自分に対して捨て鉢というか…

(でも付き合いにくいってだけで、この人も悪い人じゃないみたい)
いきなり誘拐同然に呼び出され、見知らぬ者同士、殺し合いを強制させられたが健太郎さんも入れてこれで
殺し合いに抗う人間が三人目。まだ首輪を外す見通しもここから脱出する方策も立ってない。
だが、この不利な状況で同じ志を持った者同士が団結する事が出来たのは大きな前進に思えた。
少なくともこの時のさくらはそう思えた……。


【G-7 巨大な墓の下 一日目 黎明】


【真宮寺さくら@サクラ大戦】
【状態】健康
【装備】エクスカリパー@FFV
【道具】支給品一式
【思考】基本:この島の平和は私が守る!
1:大神さん、私に力を!
2:西の街を探索する。
3:二人とも何を考えてるかわからないけど、悪い人じゃないみたい。
※火織と情報交換をしました。一部、嘘があります。


【神裂火織@とある魔術の禁書目録】
【状態】全身に軽い打撲
【装備】秋水@ONE PIECE
【道具】支給品 ランダムアイテム
【思考】基本:この殺し合いで優勝する
1: 一刻も早く優勝して元の世界に帰る
2:しばらく集団に紛れて力を温存する
3:彼女らの様な善人もこの島にはいるのですね…
※参戦時期は小説の一巻の上条戦後です。
※さくらと情報交換をしました。

※巨大な墓の下は健太郎とさくらが探索したつもりですが
 素人の探索なので見逃しがある可能性があります



BACK NEXT
039:聖剣の少女騎士 投下順 041:七転八刀
039:聖剣の少女騎士 時系列順 041:七転八刀

BACK 登場キャラ NEXT
017:最強の聖剣 小川健太郎 041:七転八刀
017:最強の聖剣 真宮寺さくら :[[]]
014:この闇の先には―― 神裂火織 :[[]]


タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2010年10月28日 22:24