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隼の邂逅◆s4XqtzJIBg



破壊隼の剣を入手したリンディスの行動は迅速だった。
悪魔のしっぽが自分についている事にも気付かず、他の参加者を全力で索敵する。
その単純な行動が身を実を結んだのはほんの数分後であった。
闇夜が消える境界線。町外れの一角に、見据える軍服の男の影。

「はあああああっ!」

余計な言葉など一切かけず、全力で斬りかかる。
だがそのリンディスの一閃は、迷いなき攻撃ではない。
『最強の目』を有する軍人―――否、王であるキング・ブラッドレイには避けることなど容易いものだ。

「やれやれ……連戦かね。年寄りを労わるつもりのない若造どもめ」

不機嫌そうに眼帯を懐に仕舞うブラッドレイに、違和感を覚えるリンディス。
この男……人間ではないのか?
その身体から発する気は、鍛えられているという言葉では軽すぎる鬼気である。

「わたしは人間だよ。多少混ざっている物はあるがね。ここを壊せば死ぬ、全力できたまえお嬢さん」

脳天と心臓を指すブラッドレイに、リンディスが噛み付くように襲い掛かる。
リンディスの脳裏には、【皆殺しにして生還する】という目的しかなかった。
故に行動は散漫となり、本能と知性を融合した高度な剣術と体術を用いるブラッドレイには一歩譲る。
全ての攻撃を回避され、逆に痛打を積み重ねられる。
戦場は徐々に町外れから市街地中心へと移り、障害物も増えてくる。
二刀流のブラッドレイにとっては、不利な戦場だ。

「狙ったわけではないだろうが……ね!」

「く…… !? そ、その剣は……」

「ようやく気付いたかね。そう、君の剣と同じ物だよ」


閉塞空間でも飄々と有利を保つブラッドレイの右手に持つ剣は、リンディスのそれと同じ形状。
レイピアにも似た細剣であり、流麗な軌道で敵を追い詰める。
もう一方、左手に持つ剣は、異形の蛮刀。非幾何学的な形状のそれは、
時折旋風を巻き起こしながら、強大な威力でリンディスを攻める。
その二本を時に持ち替え、時に交差させながら、ブラッドレイの猛攻は勢いを増し始めた。

「二刀流と言うのはね、お嬢さん。二本の剣が同じ器でないと案外隙が多い物なのだよ」

「…はあッ!」

「そう、今君がついた隙のようにね。しかしそれは罠だ」

意図的に生じさせた罠に踏み込んだリンディスに、ブラッドレイが返しの刃を入れる。
致命傷とまではいかなくても、リンディスの動きを制限するダメージを与えた。

「……!」

「悪あがきは……!?」

もはや恥も外聞もなく剣を振り回すリンディスの一撃をとっさに交わすブラッドレイの目に、信じられない
出来事が見えた。粉々に砕かれる民家。先ほどの武士との戦いの中でも何度も見た光景だったが、
その質が違う。『吹き飛んだ』あの武士の攻撃とは違い、『砕かれている』のだ。
『最強の目』を持ってしても見抜けなかった驚愕の威力。
これを幾度もスレスレで避けてきたと思うと、ブラッドレイの背中に冷や汗が走る。

「ありえん……!」

「ありえてるでしょうがッッ!」

リンディスの攻撃に気合が乗る。
ブラッドレイの狼狽を勝機と見たか、リンディスは勝負に出た。
ロンダルキアはハーゴン神殿でしか存在できないはずの兵器、破壊隼の剣。
それは持ち主の力量に関わらず、強大な力を振るう剣を越えた剣だった。
外見は同じでも、隼の剣とは比べ物にならない一撃が、放たれる。

「……ならば!」

「え!?」

ブラッドレイが、稲妻の剣を投擲した。
破壊隼の剣の一撃の軌道を読み、的確にそこに放り投げる。
稲妻の剣とて、店売りはしていない至玉の一品。
だがそれを簡単に砕く破壊隼の剣の威力、恐るべしというべきか。
いや―――恐ろしいのは、それによって起こる現象を予測していた、ブラッドレイだ。


「風が―――!?」

「ぬん!」

破壊された稲妻の剣から、溜め込まれた『バギ』の魔力が暴発する。
魔術としてはあまり使えず、その威力を制限された力も暴走する事で、その真価を発揮していた。
突風で、リンディスの手から破壊隼の剣が離れる。
逆風に乗り、一気に距離を詰めるブラッドレイの隼の剣が煌く。
だがリンディスもさるもの。その突出した幸運のステータスは、
飛ばされた剣が逆の手に収まる事を許した。当然、リンディスは迫るブラッドレイを迎撃する。
ブラッドレイの顔が曇る。これは予想外だった。だが、もはや退けない。
未だ、最強の目には特別リンディスの力が優れているという『筋肉の張り』は見えない。
ならば、あの剣こそが超常的な破壊力を生んでいると考えるのが妥当。
隼の剣では勝ち目は皆無―――。

(よいではないか)

ブラッドレイは、それでも心を自ら折る事をしない。
死が目前に迫っても戦う事こそ、ブラッドレイのホムンクルスとして、
そして自覚があるにせよないにせよ「一軍の王」としての矜持。
今、二本の剣が激突する。


ガッキィィィィィン!!

「……え?」

「……ぬうううううっ!!!!」

リンディスの疑問の声と、ブラッドレイの勝鬨の声が重なる。
箸を割るがごとく隼の剣を圧し折るはずだった破壊隼の剣は、まったく互角のつばぜり合いを演じていた。
リンディスもブラッドレイも理解できるはずもなかったが……破壊隼の剣は、
一度リンディスの手を離れた事により、その効力を失っていたのだ。
剣を滑らせるように進め、一撃を放つブラッドレイ。その斬檄はリンディスに今度こそ致命傷を与え。
彼女が手を離した破壊隼の剣―――今やただの隼の剣になったそれを、空手となった左手に握り。
ブラッドレイが、トドメの双斬・四連撃を討つ。

「……」

言葉ないまま倒れるリンディスのつけた悪魔の尻尾を、ブラッドレイが切り払う。
いかな呪いのアイテムでも、尻の皮ごと切り離せばその効力と装備判定を失うのだ。
このアイテムから、良くない気が彼女に流れ込んでいたのは目が捕らえていた。
ブラッドレイは倒れたリンディスを脇に持ち上げ、どこかへ連れて行く。
その目には、何故か希望の光が差しているように見えた。





「……生き、てる」

「おはよう、お嬢さん」

目を覚ましたリンディスが、自分の傷痕を見る。的確に治療されていた。
同時によみがえる、戦闘の記憶。
目の前の壮年の軍人は、いきなり襲い掛かった自分を介抱してくれたというのか。
それどころか、頭の中に響いていた声もなくなり、圧迫するような恐怖感も解消されている。

「あ……ありがとう」

「礼を言われるようなことはしていないし、するつもりもない。
 何故君があのようなバーサーカーになっていたのか、それを聞きたいのだよ」

バーサーカー。
狂戦士、確かにそうだ。自分はただ生き残るために、人を無差別に殺そうとしていた。
リンディスは記憶を捻り、必死で思い出す。

―――そうだ、自分はこのゲームの主催者と契約を結んでいた。

洗いざらい全て話し、うつむくリンディス。
自分がした事が、未だに信じられない。まるで悪夢のようだった。

「だが、全ては君が選んだ事だ。君はその罪から逃れられないし、逃れるべきでもない」

「っ……!」

「今、もう一度選びたまえ」

ブラッドレイが、隼の剣の片方を放り投げる。
目の前に落ちたそれをおずおずと握るリンディスに、非常な言葉で問う。

「契約を続行し、再び私を襲うか。それとも、人間としての矜持を選び、自ら命を絶つか」

それは、どちらにせよ彼女に死を宣告しているような物だった。
リンディスは少しだけ考えて、微笑んで遺言を残す。

「ごめんなさい、お爺様……」

隼の剣は、リンディスの喉元に向けて突きつけられた。






キング・ブラッドレイが、無人の街を通り抜ける。
彼にとって人間とは、支配すべき存在であり、唾棄すべき愚郎。
ホムンクルスとして新生した時から頭にこびり付く『憤怒』がざわめく。
ホムンクルスのプライド、人間としての矜持。
それらとは違う、もう一つのブラッドレイの誇りを、あのロワという女は踏みにじったのだ。

「鍛え抜かれた戦士同士で殺し合い、最強の者を決めるというなら納得はしよう」

「だが、その聖域に土足で踏み入り、手前勝手なバランスとやらを弄るだと?」

「鍛え鍛えし剣士を無礼るなよ、女郎……!」

憤怒が、臨界点に達する。
天秤を動かす神気取りで、この戦いをゲームと呼ぶ主催者共。
いいだろう、今は貴様らの前で踊ってやる。

「だが……最後の一人になった私を前にした時がその天秤の砕けるときだ。戦士の本分を篤と教えてやろう」

ブラッドレイが燃える。
今、彼は王ではなく、一介の戦士になりきったのだ。

「……それにしても、この島にはまともな剣士はいないのか?」

ぼやきながら歩くその姿は、あるいは『父親』のようにも見えた。



【C-4 草原 一日目 黎明】

【キング・ブラッドレイ@鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST】
【状態】疲労(大) ダメージ(小)
【装備】隼の剣@DQ2、隼の剣@DQ2
【道具】基本支給品×2、ランダムアイテム(個数、内容ともに不明)
【思考】基本:『お父様』の元に帰還するため、勝ち残る。
 1:とりあえず人を探す。
 2:介入してきた主催者への怒り。
【備考】
 ※『最強の眼』を使用している間は徐々に疲労が増加。





リンディスは、震えていた。
恐怖にでも、戦いへの欲求にでもない。
ただただ、自分の情けなさを恥じて震えていた。
ブラッドレイが、自刃しようとした自分の突き出した剣を素手で止め、言った言葉を思い出す。

『人間よ。矜持を破られ、ただ死ぬのは戦士ではない、ただの葦だ。
 お前がその今にも消えそうな命を捨てるのは勝手だ。
 だが、ここに招かれている以上、お前もまた剣を取り得る剣士だろう。
 ―――生き残り、再びわたしの目の前に立ってみるがいい。
 わたしはまだ、お前と決着がついたとは思っておらん。』

『剣士としての本当の貴様を、見せてみろ。戦って死ね、人間!』

「……キング・ブラッドレイ」

再戦を願いながらも、一切の容赦をせず自分の全てを奪っていった最強の目を持つ男。
その男に対し、どういう感情を抱けばいいのか?
リンディスにはまだ、答えが出ない。


【B-5 村/一日目/黎明】

【リンディス@ファイアーエムブレム烈火の剣】
【状態】瀕死(最低限の治療済み)、疲労(極大)
【装備】なし
【道具】なし
【思考】基本:???
     1:???




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