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偽りと正当◆Wf0eUCE.vg



――――外道衆。

この世とあの世の狭間を流れる三途の川に棲み、遥かな昔から人間界の蹂躙・支配を目的としながら人々を苦しめてきた魑魅魍魎の衆を人々はそう呼んだ。

そんな凶悪な力で外道の限りを尽くす外道衆から人々を守るべく、300年もの昔から代々家臣である侍を率いて戦い続けた一族がいた。
それが志葉家であり、その十八代目当主こそ、この男。志葉丈瑠である。

丈瑠は一人、街道を歩いていた。
フラフラと道をゆく足取りは頼りなく、由緒正しき志葉家当主としての威厳は感じられない。
それどころか、その目には生気というものが感じられず、まるで、生きる目的を奪われた抜け殻のようにも見える。

唐突に、殺し合いという舞台に放り込まれたものの反応としては、あるいは正しい反応だったのかもしれないが。
彼の場合はそれ以前の問題だった。

彼には誰にも明かせない。いや、正確には誰にも明かせなかった真実(ひみつ)があった。
彼の有様は、その真実に起因する――――。


先代の志葉家当主、志葉雅貴は先の外道衆と戦いにおいて、致命傷を負いながら外道衆の長、ドウコクを封印し絶命した。
だが、その「封印の文字」は不完全であり、封印の完成を託すべく次代の当主は、出産を直前に控えた妻の腹の中。
「封印の文字」を受け継ぐ志葉の不在。
その事実を決して外道衆に気付かれるわけにはいかなかった。
故に、次代の当主が成長し「封印の文字」が完成するまでの”時間稼ぎ”が必要だった。
そこで、決戦を前にし秘密裏に妻を逃がした雅貴は、一計を講じていた。
外道衆の目をそらす影武者の立案である。
そして、そのために用意された、影武者こそが志葉丈瑠の真実(しょうたい)だ。

年端もいかぬ頃、目の前で朽ち果てる実父よりその使命を託された丈瑠は、殿様の影となる宿命を背負いその宿命を受け入れた。
そして、その使命を忠実に全うすべく、志葉の当主足らんと己を鍛え上げ、敵の目を欺くべく三途の川より湧き出る外道どもと戦い続けた。

誰に打ち明ける事も叶わない。周囲の全てを欺き続ける偽りだらけの影としての人生。
それでも、誰を巻き込むでもなく、父から託された使命を全うできるのならば、それでも構わなかった。
己一人ならばそれもよかったのだ。

だが、その願いはかなわず、志葉に仕える侍が戦いの激化に伴い招集された。
当然、己は彼らが使えるべき本来の当主ではなく、彼らが命を預けるべき存在ではない。
だというのに、真実を打ち明けることもできず、仲間たちに懸ける必要のない命を懸けさせ続けた。
己を殿と信じ命を預け共に闘う仲間たちを、欺き、騙し、嘘をつき続けてきたのだ。
その苦悩はいかばかりか。
それを測り知る者は、事実を知る家老の日下部を除き彼の周囲には存在しない。

そして、運命の日は訪れる。
正当なる志葉の血を引く姫が「封印の文字」を完成させ表に現れたのだ。
封印の文字の完成に、姫の台頭。志葉の悲願ともいえる日。
それは影として喜ぶべき事態なのだろう。

決まり切ったことだった。
その実、彼は志葉の正当な後継者どころか、侍ですらないのだ
本物が現れた時点で、偽物たる影はお役御免だ。
何より、仲間たちを欺き続けた自分に、共に闘う資格など有るはずもない。
そう思い、丈瑠は志葉家を後にした。

行くあてもなく、丈瑠は一人さまよう。
そして考える。
己になにが残るのか。

偽物であるが故。
偽物だからこそ。
誰よりも殿であろうと有り続け。
何よりも殿であろうと努め続けた。
殿であることに己の全てを捧げ続けた。

そんな自分から”殿”であることを取ってしまえば、一体何が残るのだろうか?

なにもない。
本当に、びっくりするくらいに何もない。
なんて、空っぽでつまらない人間なのだろう。

それでも、何かないかと、必死で己に残されたモノを考える。

「…………剣だけか」

結局、残ったのは己の肉体のみ。
シンケンレッドとして、長年外道衆と戦い続けたこの剣の腕だけだった。

そう、気付いた瞬間、呼び出されたのがこの場だった。
青年の命を奪った、ロワという名の女。
殺し合えという言葉。
道を外れた外道の所業。

いいだろう。
戦えと言うのならば戦おう。
そう心に決めた。

戦いの果てに朽ちる。
それもいいだろう
どうせ、己には戦い以外に何もないのだから。
その先に待つのは修羅道か、はたまた外道に落ちるのか。

腑破十臓。
あの修羅も、こんな気持ちだったのだろうか。

覚悟を決めた丈瑠は戦いの準備をすべく、支給された刀を取り出し手に取った。
だが、その刃を目にした瞬間、丈瑠は思わず動きを止めた。
いやそれは正確ではない。
手にした刀には”刃などなかった”。
あるのは柄と鍔のみ、肝心の刀身がどこにも見当たらない。
どう考えても戦える刀ではない。
いやそれ以前に、これは刀と呼べるのか?

思わず丈瑠は肩を落とす。
当然だ。
こんな刀では戦えない。
唯一残された戦いすら奪われた、そんな気がした。

本当に何もなくなった。
力の抜けた丈瑠はその場に倒れこみ、夜空を仰いだ。
虚ろな目で星を見上げ、することもなく、ただ考える。
意味もなく道端に倒れこむなど、そんなことをするのも初めてな気がする。

自分は何か。
己の価値は。
どこに向かうのか。
何をなすべきなのか。
己を振り返るために目を閉じて様々な事を考える。

そして戦いを思う。

なぜ戦うのか。
何のために戦うのか。
何のために戦ってきたのか。

父のため?
志葉のため?
世のため?
人のため?
義のため?
姫のため?
平和のため?
忠義のため?
使命のため?
仲間のため?
自分のため?

理由は一つではない。
そのすべてが本当で。
そのすべてが真実だ。
そこには嘘などありはしない。

そして共に闘ってきた仲間を思う。

彼らは一体、何のために戦っていたのだろう?
侍としての使命のためか。
志葉へ誓う忠義のためか。
はたまた、外道を憎む義の心故か。
その理由は正しくも、それだけではないのだろう。

彼らは己を恨んでいるのだろうか。
姫とうまくやっているだろうか。
そんなことばかりを思う。

そして最後に己を思う。

己に残ったモノは本当に戦いだけだったのだろうか?
偽りの影としてだったとしても、殿して家臣たちと有り続けた日々は、己の中に何も残さなかったのだろうか?

ゆっくりと目を開き、立ち上がる。
そして片手に持った柄を両手で握りしめ、上段に構えた。

「はっ…………!」

気合とともに全力で振り下ろせば、僅かな風切り音が鳴り響いた。
刃の無い刀では、当然のごとくなにも斬れない。
だが、確かに断ち切れた気がした。

斬れたのは己の迷いだ。


――――戦おう。

再び強くそう思う。
その理由は変わり始めていた。

考えども答えは出ない。
だけど、戦いの果てに答えがあるそんな気がする。
これまでの、殿として生きた己に恥じぬ戦いを――――。


伝説の刀鍛冶、四季崎記紀が造りし十二本の完全変体刀が一振り、誠刀『銓』。
それは「誠実さ」に主眼を置いた刃なき刀。
秤は天秤を意味し、敵ではなく己を斬り、己自身を測る刀。
自分を試し、自分を知る刀である。

誠刀の名の通り、この刀を手にした丈瑠は己を見つめ直した。
もしこの刀に刃があれば、丈瑠はまた違った道を歩んでいただろう。

新たな決意と共に丈瑠は道を行く。
その足取りは先程と違い、力強い威厳のあるものだった。
決意に問題はない、とりあえず当面の問題は、

「…………どうやって戦うか、だな」

柄だけの刀を握り締め、丈瑠は一人ごちた。

【G-2 市街/一日目/深夜】

【志葉丈瑠@侍戦隊シンケンジャー】
【状態】健康
【装備】誠刀『銓』@刀語
【道具】支給品 ランダムアイテム(個数内容ともに不明)
【思考】
1:争いを止めるため戦う。



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