○○(あ、電話だ。)「もしもし」
設楽「俺だ。」
○○「あ、設楽先輩。」
設楽「おまえ、明日暇か?」
○○「明日ですか? 明日は暇です。」
設楽「よし。」
○○「?」
設楽「……いや、クリスマスイブなのに寂しい奴だな。」
○○「………」
設楽「うちの大学がはばたきホールでクリスマスコンサートを開くんだ。来るか?」
○○「わぁ、いいんですか?」
設楽「いいから聞いてるんだろ。明日迎えに行くから、準備して待ってろ。ちゃんと正装しろよ。」
○○「はい!」
○○(今日は設楽先輩とのクリスマスイブ。そろそろお迎えに来るころかな?) 「は〜い。」
設楽「用意できてるか?」
○○「はい。」
設楽「それじゃ、行くぞ。」
:
設楽「……どうだった?」
○○「クリスマスコンサートって聞いてたから、静かなイメージだったのに……すごい熱気で圧倒されました。」
設楽「学生オケだからな。やりたい放題のお祭り騒ぎだ。」
○○「それに……あんなに本格的だなんて思いませんでした。みんなプロみたい。」
設楽「音大生だからってプロに劣るわけじゃない。実際プロオケのヘルプに入ってる奴もいるし。」
○○「そうなんだ……」
設楽「まぁ、かなり危ない曲もあったけどな。指揮者がフラついて一瞬音がバラバラになって。無理に立て直そうとするから、こっちがハラハラした。」
○○「……」
設楽「なんだよ。」
○○「設楽先輩、楽しそうだなって。」
設楽「そういうおまえは楽しくなかったのか?」
○○「もちろん、楽しかったです。」
設楽「ならあいこだ。」
○○(……あいこ?)
設楽「……あ。外、雪が降ってる。」
○○「ホントだ。ホワイトクリスマスですね!」
設楽「この程度じゃすぐやむだろ。」
○○「もう……」
設楽「………車は先に帰したし、せっかくだから歩くか。」
○○「え?」
設楽「ホワイトクリスマスなんだろ?」
○○「設楽先輩……」
設楽「寒くないか?」
○○「大丈夫!」
設楽「じゃあ、行こう。」(タッチ)何キョトンとしているんだよ?
○○「……?」
設楽「エスコートくらいさせろ。せめてプレゼントを用意したかったけど、急だったからな。」
○○「それは、わたしも……」
設楽「おまえはいいんだよ。今、ここにいるだけで。」
○○「でも……」
設楽「俺は他に何もいらない。」
○○「設楽先輩……」 (タッチ)嘘じゃないぞ。
設楽「だからおまえにはせいぜいいい気分で帰ってもらうさ。後悔されないような。」
○○「後悔なんて……」
設楽「いいからほら、手。それと……メリークリスマス。」
○○「……メリークリスマス、設楽先輩。」 (こうして、高校生活最後のクリスマスイブは終わった……)