「「事故の原因をわかりやすく言うとどうなるのでしょうか?そもそも今海底でパイプがどういう状態になっているのかさっぱりわかりません」」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら
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(6月17日、光清さんからの質問)
回答:
わかりやすく簡潔にという事で…。
事故は、以下の流れで起こりました。
・井戸の底にセメントなどを入れて安心してしまったBP。「セメントがふさいでるから、ガスも油も溢れないはずだぞ!」でも実際には井戸の中でガスが漏れてました。しかし、海底付近の栓を締めていたので気づきませんでした。
・次の作業に移るため、海底辺りで締めていた栓をオープン。潜んでいたガスが噴出した!
・ガスは地上では凄いボリュームになります。これがどこかから引火。爆発。炎上。
・井戸の底には非常事態に自動的に閉まる「BOP(暴噴防止装置)」というものがありますが、何故か機能しない!
・石油掘削施設、沈没。海底と船をつなげていたパイプが横たわり、この割れ目や端からガスと油が流出
・油が海中に流れ込まないよう、横たわっているパイプを根元(BOPの真上直)で切断!その上に、タンカーへと繋がっているキャップを被せて、油を回収中!だけど、キャップとパイプの隙間から、結構な量の油が漏れ続けてるよ。
&blanklink(6月18日現在の井戸付近の様子){http://www.bp.com/liveassets/bp_internet/globalbp/globalbp_uk_english/incident_response/STAGING/local_assets/images/Containment_Contingency_Option_large.jpg}
以上です。さて、このページは技術的に検証するのが目的でもありますので、ここからは技術について細かく書いていきます。
英語が読める、専門用語がある程度わかる方は、こちらをどうぞ。私は、多少内容について言いたいこともありますが、まぁ、コレが今最も公式な情報なのでしょう。
http://energycommerce.house.gov/documents/20100614/Hayward.BP.2010.6.14.pdf
from http://energycommerce.house.gov/index.php?option=com_content&view=article&id=2043:chairmen-send-letter-to-bp-ceo-prior-to-hearing&catid=122:media-advisories&Itemid=55
細かな事故原因については最終報告を待つべきでしょうが、これまでの各種証言や情報からかなりの部分が推察できます。
では事故原因を説明する前に、「そもそもどうやって深海で井戸を掘っているのか」を簡単に説明してみたいと思います。
用語も、幾つか簡素化しますので、より正確な情報を知りたい方は、以下の資料等をご覧ください。
(参考 http://www.nmri.go.jp/main/etc/kaisetsu/0015.html)
では、深海掘削の方法を説明する為、大型研究船「ちきゅう」を例に使いましょう。この船は、科学調査船としては世界で始めて、石油開発に使われる「ライザー掘削」を採用した船です。(ちなみに、ちきゅうは、サンプル採取などの科学調査用としては石油開発施設より優れた部分もあります)
#image(http://www.scopenet.or.jp/main/products/scopenet/vol24/wn/image/wn_g01.jpg)
(http://www.scopenet.or.jp/main/products/scopenet/vol24/wn/wn1.html 様より拝借)
噴出防止装置と書かれているものが、話題になっているBOPです。そして光清さんの質問であったパイプとは、この図の中のライザーパイプと、ドリルパイプの事です。図では少し判り辛いですが、ライザーパイプはBOPまでしか繋がっておらず、地下には伸びていません。以降は、ケーシングという鉄の管が埋められています。
井戸を掘るときには、この二つのパイプの間を循環する、「泥水(でいすい)」というものでコントロールする事がキーとなります。
この泥水はたいした優れもので、「その重さで、地層から吹き出そうとする油やガスを抑え込む機能」「熱を持ったビット(ドリルのこと)を冷やす機能」「堀屑を船の上にまで運んで、井戸の中を綺麗に保つ機能」「井戸の壁に泥の膜(マッドケーキと言います)を形成し、井戸を内側からある程度支える機能」等、多種多様な役割を果たします。
***色々書きましたが、ここでは「井戸の中というのは、泥水というものを使って高圧を保っていなければ、ガスや油が地層から入り込んできて、暴噴してしまう」という事だけ覚えてくだされば十分です。
次は、井戸の中がどういう構造になっているかについて説明します。
数千メートルもの深さを掘る分けですから、補強をしてやらなければ井戸は壊れてしまいます。この補強に入れるのが、ケーシングとライナーと呼ばれる鉄の管です。最初は太いものを、そして段々と細いものを入れて、何重にも井戸を補強していきます。
(参考になる図:&blanklink(ケーシングとライナー){http://www.japt.org/html/iinkai/drilling/seikabutu/fukaboriiin/Image8.gif}。外側の5つはケーシング(海底まで繋がっているもの)で、内側の細い2つがライナー(先っぽにだけ継ぎ足すように入れるもの)
(http://www.japt.org/html/iinkai/drilling/seikabutu/fukaboriiin/fukabori.html様より借用)
参考図を見てお気づきかと思いますが、ケーシングとケーシングの間に、隙間が出来てしまいますよね。この部分を埋めるのが、セメントです。この部分がしっかりと埋まってなければ、何時ガスや油が隙間を通って海底へ、そして地上へ上がってもおかしくはない状況が生まれるわけです。
***ここでは、「セメントというものがしっかり入っていないと、油やガスは地上へ噴出してしまう事になりうる」という事が肝となります。
井戸の掘り方については、以上で十分かと思います。それでは、事故原因の話へと移ります。
事故当時。
(作成中)
&counter(total)
(6月17日、光清さんからの質問)
回答:
わかりやすく簡潔にという事で…。
事故は、以下の流れで起こりました。
・井戸の底にセメントなどを入れて安心してしまったBP。「セメントがふさいでるから、ガスも油も溢れないはずだぞ!」でも実際には井戸の中でガスが漏れてました。しかし、海底付近の栓を締めていたので気づきませんでした。
・次の作業に移るため、海底辺りで締めていた栓をオープン。潜んでいたガスが噴出した!
・ガスは地上では凄いボリュームになります。これがどこかから引火。爆発。炎上。
・井戸の底には非常事態に自動的に閉まる「BOP(暴噴防止装置)」というものがありますが、何故か機能しない!
・石油掘削施設、沈没。海底と船をつなげていたパイプが横たわり、この割れ目や端からガスと油が流出
・油が海中に流れ込まないよう、横たわっているパイプを根元(BOPの真上直)で切断!その上に、タンカーへと繋がっているキャップを被せて、油を回収中!だけど、キャップとパイプの隙間から、結構な量の油が漏れ続けてるよ。
&blanklink(6月18日現在の井戸付近の様子){http://www.bp.com/liveassets/bp_internet/globalbp/globalbp_uk_english/incident_response/STAGING/local_assets/images/Containment_Contingency_Option_large.jpg}
以上です。さて、このページは技術的に検証するのが目的でもありますので、ここからは技術について細かく書いていきます。
英語が読める、専門用語がある程度わかる方は、こちらをどうぞ。私は、多少内容について言いたいこともありますが、まぁ、コレが今最も公式な情報なのでしょう。
http://energycommerce.house.gov/documents/20100614/Hayward.BP.2010.6.14.pdf
from http://energycommerce.house.gov/index.php?option=com_content&view=article&id=2043:chairmen-send-letter-to-bp-ceo-prior-to-hearing&catid=122:media-advisories&Itemid=55
細かな事故原因については最終報告を待つべきでしょうが、これまでの各種証言や情報からかなりの部分が推察できます。
では事故原因を説明する前に、「そもそもどうやって深海で井戸を掘っているのか」を簡単に説明してみたいと思います。
用語も、幾つか簡素化しますので、より正確な情報を知りたい方は、以下の資料等をご覧ください。
(参考 http://www.nmri.go.jp/main/etc/kaisetsu/0015.html)
では、深海掘削の方法を説明する為、大型研究船「ちきゅう」を例に使いましょう。この船は、科学調査船としては世界で始めて、石油開発に使われる「ライザー掘削」を採用した船です。(ちなみに、ちきゅうは、サンプル採取などの科学調査用としては石油開発施設より優れた部分もあります)
#image(http://www.scopenet.or.jp/main/products/scopenet/vol24/wn/image/wn_g01.jpg)
(http://www.scopenet.or.jp/main/products/scopenet/vol24/wn/wn1.html 様より拝借)
噴出防止装置と書かれているものが、話題になっているBOPです。そして光清さんの質問であったパイプとは、この図の中のライザーパイプと、ドリルパイプの事です。図では少し判り辛いですが、ライザーパイプはBOPまでしか繋がっておらず、地下には伸びていません。以降は、ケーシングという鉄の管が埋められています。
井戸を掘るときには、この二つのパイプの間を循環する、「泥水(でいすい)」というものでコントロールする事がキーとなります。
この泥水はたいした優れもので、「その重さで、地層から吹き出そうとする油やガスを抑え込む機能」「熱を持ったビット(ドリルのこと)を冷やす機能」「堀屑を船の上にまで運んで、井戸の中を綺麗に保つ機能」「井戸の壁に泥の膜(マッドケーキと言います)を形成し、井戸を内側からある程度支える機能」等、多種多様な役割を果たします。
***色々書きましたが、ここでは「井戸の中というのは、泥水というものを使って高圧を保っていなければ、ガスや油が地層から入り込んできて、暴噴してしまう」という事だけ覚えてくだされば十分です。
次は、井戸の中がどういう構造になっているかについて説明します。
数千メートルもの深さを掘る分けですから、補強をしてやらなければ井戸は壊れてしまいます。この補強に入れるのが、ケーシングとライナーと呼ばれる鉄の管です。最初は太いものを、そして段々と細いものを入れて、何重にも井戸を補強していきます。
事故を起こしたリグの持ち主で操業者でもあるトランスオーシャンの報告資料を見てみましょう。これは、事故直前の井戸の様子です。
#image(http://www35.atwiki.jp/gomdwhtragedy/pub/WellFigure.JPG )
(http://energycommerce.house.gov/documents/20100614/Transocean.DWH.Internal.Investigation.Update.Interim.Report.June.8.2010.pdf 11ページ)
参考図を見てお気づきかと思いますが、ケーシングとケーシングの間に、アニュラスという隙間が出来ています。この部分は、適宜『セメント』によって埋めます。この部分がしっかりと埋まっていなければ、何時ガスや油が隙間を通って海底へ、そして地上へ上がってもおかしくはない状況が生まれるわけです。
***ここでは、「セメントというものがしっかり入っていないと、油やガスは地上へ噴出してしまう事になりうる」という事が肝となります。
井戸の掘り方については、以上で十分かと思います。それでは、事故原因の話へと移ります。
事故当時。
(作成中)
&counter(total)