ケダモノは、死なず


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前回までのあらすじ

戦場と化した銭湯にて、黒服組織の襲撃を切り抜けた串田龍巳!

次なる敵はヘリコプターにトレーラーとありとあらゆる物に変形・分離が可能な黒服T!

常軌を逸した能力の前に苦戦する串田!

だがその時、串田の身体に限界が訪れてしまった!苦痛で動くこともままならぬ串田!

絶対絶命の危機!果たして串田の運命やいかに?!

 

黒服T「ヒャッハー!」

轟音とともに、黒服Tが変形したトレーラーが突進してくる!

だが限界を迎えてしまった串田は、かわすことはおろか身動きすらままならない!

容赦なく、串田に激突するトレーラー!

空中衝撃波4(SE

激しい衝突!串田の身体はフロントガラスにぶつかった後、前方へと転がり落ちた!

全身血だらけの中、苦悶の表情を浮かべる串田!

と、次の瞬間!

黒服T「左に曲がりますご注意下さい左に曲がりますッヒャッハー!」

空中衝撃波2(SE

串田が顔をあげると、もう一台のトレーラーが同じようにして突っ込んできた!

今度は前方に吹っ飛び、電信柱に激突する串田の身体!

これは決して交通安全スタントマンショーの類ではない!

何トンもあるトレーラーに人が何度も撥ねられては撥ねられ、弄ばれているのだ!

これを地獄絵図と呼ばずして何と言おうか?

だが串田も串田だ。そう簡単には息絶えない。

機関銃で身体をえぐられ血だるまになり、何度も撥ねられ血を吐いているというのに

ボロボロになりながらも必死で起き上がろうとしている!

しかし、疑問もある。黒服Tは本来ならばもっと加速して、ひとえに殺すこともできるハズなのだ。

手を抜いているのか?まさにその通り。

敢えて少しずつ、痛めつけてはなぶり殺しにしようという魂胆なのである!

なんという極悪非道!人間の所業とは思えない!

この人でなし!

黒服T「さーて、そろそろ遊び飽きたことだし、チャチャッとケリつけさせてもらおうかなァ?」

ズタボロの串田を前に余裕の黒服T。2台のトレーラーはギアをバックに入れた。

黒服T「バックします。ピピー、ピピー。」

距離をとり、いっきにエンジンをふかす。今度こそとどめの一撃を加えるつもりだ。

黒服T「覚悟しろやァー!死に、さらせー!」

2台のトレーラーが急発進をした、その時だった!

ピカァァッ(目光るSE

トレーラー2台と串田を、もうひとつの明かりがまばゆく照らしつけた!

何事か?2台揃って急停止する黒服T。串田もその光の方向へと向き直る。

 

もう1台のクルマが、辺りを照らしつけている。

知らぬ間に黒服Tがふたたび分離、変形したものか?いや、そんな気配はない。

何よりもその黒服T本人が、この招かざる客に動揺している!

するとそのクルマのドアが開き、そいつは姿を現した!

ヤツだ!

あの日、街中で串田が遭遇した、ただならぬ殺気を帯びていたあのフルフェイスである!

ゆっくりと姿を現したそいつは、ヘルメット越しに無言で両雄を睨みつける!

胸にはあの日と同様、“杭を打つ者”という意味である『Pile Driver』の文字が刻まれている。

 

黒服T「なんだァー?てめェーは!?」

予想外の乱入者に毒づく黒服T。あと少しで串田をなぶり殺せたのを邪魔されて相当苛立っている。

ビゴゴゴゴゴ(変形SE)

彼は変身を解き、人間の姿へと戻った。ガンを飛ばす黒服T。

一方の串田も血を流しながら、新たなる乱入者から目を離さない。

黒服T「悪いが今、お楽しみの最中なんだ。とっとと消えてもらえねーかなァ?」

すると、謎のフルフェイスは口を開いた。

??「死ね。」

ボイスチェンジャーのかかった声は、冷徹に言い放った。

黒服T「あ゛?てめェー、ケンカ売ってんのか?」

にじり寄る黒服T。

??「ケンカを売る?違うな、目立つ杭を打ちにきただけだ。」

そう言うや、謎のフルフェイスはいきなり黒服Tに先制のパンチを繰り出す!

バゴォ(SE

黒服T「がァッ?!」

不意をつき、黒服Tの鼻っ面を鋭いフックがえぐる!のけぞる黒服T。

そしてフルフェイスは瞬時に回転、鮮やかな回し蹴りを黒服Tに見舞う!

ドガッ(SE

串田は目を疑った!その回し蹴りのフォームに見覚えがあったからだ!

その独特な動きはまさに、彼の因縁の男が放つそれに酷似していたからである!

こいつは、このフルフェイスは一体、何者だァーッ?!

 

黒服T「てっ、てめェー、なめたマネしやがって…!どこの誰だてめェー?!」

??「私はパイル・ドライバー。出る杭は打つ。ゲスは死ね。」

冷徹に言い放つ謎のフルフェイス、改めパイル・ドライバー。

黒い鼻血をたらしながら、こめかみに血管を立たせる黒服T。調子こいた乱入者にいいようにやられ

その怒りは沸点に達しようとしていた。

黒服T「バカにしくさってェー!もう面倒だ、てめェーらまとめて、灰にしてやる!」

ビゴゴゴゴゴ(変形SE)

そう叫ぶと黒服Tは、ふたたび変形を始めた!こんどは垂直離陸戦闘機、ハリアーだ!

串田や謎の乱入者ともども、この周辺一体を空爆し焦土にするつもりである!

黒服T「ヒェーッヒェッヒェッヒェ!」

キィィィィィン(飛行機2SE

だが目の前の光景にまったく動じないパイル・ドライバー!

目の前で人間が飛行機に変わろうとしている事だけでも驚きなのに、微動だにしない。

それどころか平然と腕組みをし、むしろその一部始終を見届けるかのように悠然と立っている!

 

PD「それだけ姿を変えると、さぞ関節に負担がかかることだろう。オイルをさしてやったぞ。」

そう言うパイル・ドライバーの片手には、グリースオイルの缶が!

そしてもう片手には、砂利が入った袋が握られていた!

そう、すべては先ほどの打撃の時!

こいつは打撃の際、黒服Tの注意をそらしながら、グリースと砂利を

黒服Tの関節部分にぶっかけていたのだ!なんという早業か!

粘土の高いグリースに付着した大量の砂利。この異物が、容赦なく黒服Tの関節部分に入り込み変形を阻止!

黒服T「ゲゲェー!しまったァ!関節部分に不純物がーッ!」

関節部分が引っかかり、変形は失敗!

強制的に人間状態に戻らされる黒服T!

ヒジやヒザ、各関節からは負荷がかかったことで火花が散っている!

ビリビリバリバリ(電力危険気味&浪費気味SE

黒服T「アババババババババーッ!」

最大の武器は最大の弱点!黒服Tにとって変形の最中こそが最大の弱点だったのだ!

その様子では関節部分の分解・洗浄をしない限り、当面変形は不可能であろう!

人間体のまま、悶絶する黒服T。そのスキをパイル・ドライバーは逃さなかった!

PD「死ね。」

あっという間に距離をつめるや、黒服Tの胴体を掴むとイッキに抱え上げる!

そして太モモで黒服Tの頭を挟むと跳躍、容赦なく地面へと串刺しにした!

PD「ドリル・ア・ホール・パイルドライバーッ!」

どがしゃーん×3(爆発3SE

その名に偽りなし、杭を打ちつけるかのような強烈な一撃が決まった!

これをただの古典的なプロレス技だと侮るなかれ、頚椎や脳天を直接破壊せしめる単純かつ凶暴なその技は

人間をたやすく死にいたらしめる技として、現実に多くの団体で使用が禁じられているほどの

恐ろしい技なのである!

しかも、それをコンクリートの路上で行うのであるから、その威力たるや暴虐的!

たとえ相手が外道であろうとも、重症は免れない一撃である!

黒服T「がっ…!ギゲオエゴエ…ッ!」

万物に変形可能な黒服Tといえども、この一撃は効いた!

もんどり打ち、身体を折り曲げ激しく痙攣する黒服T!口からはオイル混じりの泡を吹いている!

明らかに健康といえる状態ではないッ!

対照的に、その黒服Tを見下すように立つパイル・ドライバー!

そしてパイル・ドライバーはチラリともう一人の男…串田のほうを見た!

血まみれでうずくまる串田。動いていない。

さすがの串田も出血多量でついに事切れてしまったのか…?いや、違う。

聞き取れないような小さな声で何かつぶやいている!

串田「かげ…や…ま…」

顔を上げる串田。焦点の定まらぬ目が、黒服Tを見据える!

次の瞬間、その目に再び炎がともった!

どんがらどーん(怒り爆発SE

なんという事か!串田の身体に、みるみるうちに活気がみなぎり

今ふたたび殺気を放ちだしているではないか!

限界が来たはずなのでは?たしかに、串田の身体は限界をとっくに超えている。

度重なるダメージとタイムリミットが重なり、本来ならばもう動ける状態などではない!

しかし、極限の状況下、目の前で獲物が第三者に奪われようとしている。

その許しがたい状況が、彼の闘争本能を刺激したのだ!
そう、彼を今動かしているのは、果てのない闘争本能のみ!

敵を倒す。宿敵を超える。敵を倒す。宿敵を超える。

いまや彼の目には、目の前の敵が黒服Tとして映ってはいない!

友であり宿敵である、影山剣の姿としてでしか見えていないのだッ!

串田「影山ァ!」

バシュゥゥゥゥッ(乱舞ダッシュSE

怒りの咆哮とともに信じがたいスピードで突進する串田!

一方の黒服Tは、先ほどのダメージが響きフラフラの状態!串田への対応が一瞬、遅れた!

串田「シャアアアアアアアアアアッ!」

鬼の形相の串田が、最後の力を振り絞り杖を振りかざしたッ!

カァァァァァンッ!!(KO SE

渾身の一撃が決まった!

飛び散る、血ともオイルともとれる、黒い液体!

黒服Tは瞬時に防御のため、ボディを鋼鉄へと変えようとした。だが、その変化よりも早く

串田の杖の刃が彼の上半身をザックリと切り裂いたのだ!

崩れ落ちる黒服T!

黒服T「ガアアアアアアアアアアアアアアッ!」

ズシィィィンッ(ダウンSE)

一方、攻撃を決めた串田の身体も、力なくゆっくりと崩れ落ちた!

かろうじて杖を立て倒れはしなかったものの、いよいよ限界のようだ。

文字通り最後の一撃だったのである。

串田はなんとか呼吸を整えながら、もうひとりの敵…パイル・ドライバーの方を見た。

パイル・ドライバーは無言で串田を見つめる。

と、串田とパイル・ドライバーの注意がそれた、その時だった!

ビゴゴゴゴゴ(変形SE)

もはや死を待つのみ、と思われていた黒服Tが、最後の力を振り絞った!

力なく、小さい小さいボディへと、その身体を変形させていく!

そして残ったのは、見るからに弱弱しいチョロQだった!

黒服T「クッソー!憶えていろよ!こんど会う時こそお前の最後だ!」

必死で出せるかぎりのスピードを出し、住宅街の奥へと走り去っていく。

さすがの串田も、それを追おうとはしなかった。いや、追う力も残ってはいなかった。

動かない身体。獲物を仕留められなかった悔しさで、串田は舌打ちをした。

そして再度、パイル・ドライバーのほうを見た。

依然として無言をつらぬくパイル・ドライバー。

やる気か?やる気なのか?

対する串田は限界を迎えた身体にも関わらず、杖をゆっくりと振りかざす!

そう、串田はこの身体でも、やる気なのだ!

目の前に敵が、闘いがあるかぎり、いかなる状況であっても決して背を見せることはない!

それが串田龍巳という男なのだ!

PD「もう一本、目立つ杭があるようだな…」

ゆっくりと口を開くパイル・ドライバー。

ボロボロの身体に鞭打ちながら、構えたままの串田!

にらみ合ったままの両雄。

パイル・ドライバーの、フルフェイスヘルメットの奥の目が、初めて串田の視界に入った。

この日出会った敵の中で、もっとも冷たい目だった。

そしてその目は再び、ヘルメットの奥へと消えた。

串田は、微動だにしない。

パイル・ドライバーは愛車のキーをポケットからゆっくりと取り出した。

PD「だが今は、まだ打つまでもないか…」

そうつぶやくと、串田に背を向けた。串田は構えをとかない。

この時、串田は初めてパイル・ドライバーの背中に書かれている文字を見た。

そこには『Driver Kills All Riders』と書かれていた。

パイル・ドライバーは愛車のドアの前、背中を向けたまま、最後にひとつ告げた。

PD「忠告しておく。私の前で目立つ杭にならぬよう、気をつけることだな。

  私はパイル・ドライバー。出る杭を打つ者。」

そう言うとドアを閉め、エンジンをかけた。

パイル・ドライバーのクルマは、ヘッドライトで串田を照らしながら

後方へと走り去っていった。

串田もようやく構えをとき、杖を元の状態に戻した。

 

先ほどの闘いの喧騒が嘘のように、静まり返った住宅街。

串田は、懐から注射器を一本、取り出した。痛み止めの注射である。

首下に突き立て、イッキに突き刺した。

全身を襲う激痛が、少しずつ引いていく。

大きく息を吸うと、串田はゆっくり、ボロボロの身体を引きずりながら歩き始めた。

コツーン、コツーン。コツーン、コツーン…

杖の音が静かに響き、やがて奥へと消えていった。

 

Zeta「ほお。Tさんがやられましたか…。それはそれは…」

ここは黒服組織本部の首領室。Zetaが報告を受け取っていた。

相変わらず穏やかな表情のままではあるが、今回の報告はさすがに意外だった模様。

口に入れるハズのガムを指に挟んだまま、一向に口に入れようとはしない。

Zeta「Big4の一角を撃退するとは…まだまだ腕は錆付いてないようで。」

モニタのスイッチを入れるZeta。画面に映し出されたのは、あの夜の闘いの一部始終。

黒服組織はより詳細な串田のデータを集める為、いたる所に隠しカメラを設置していたのだ。

Zeta「だが今回で、ヤツのもう戻る気はない、という意志は確認できたわけだ。

   …それにヤツの身体の限界も。

これからは、今よりももっと笑顔で殺りに行けるな」

Zetaは血だるまのまま街を去る串田の姿を見て、相変わらずの裏のある笑みを浮かべていた。

次にZetaはモニタの映像を切り替えた。

そこに映っていたのは黒服T専用の治療室の様子。

黒服Tが部品ごとにバラされ、分解・洗浄作業の真っ最中である。

関節部分の損傷がひどく、新しいパーツを調達しなくてはいけない、との報告が入ってきていた。

すぐメキシコの部品屋に発注をかけてはいるものの、届くのはだいぶ先だろう。

Zeta「こっちは見積もってあと2~3週間か…」

机の角をコンコンと人差し指で叩くと

Zeta「それとあと、もうひとり…」

モニタ切り替えスイッチを押し、次の映像に切り替えた。

そこにはパイル・ドライバーが映っていた。

Zeta「この乱入者…少し気になるな…」

ようやくZetaは、ガムを指で弾き口に入れた。

噛みながら、モニタの映像を巻戻す。

Zeta「おや?」

と、そこで、ある事に気付いた。

Zeta「…これはこれは…」

ガムを噛むのを止めた。意外なものを見つけ興味深そうなZeta。

巻戻しと再生、一時停止を繰り返す。

彼は一体何を見たのだろうか?隠しカメラに映っていたものとは?

 

あれから数週間が過ぎた。

絶え間なく、人が行き交う。交互にすれ違う、多くのクルマ。

その中にひとり、殺気を放つ者がいる。

コツーン、コツーン…

串田はふたたび、雑踏の中にいた。

傷は癒えた。が、彼に安息の日々はない。

あれからも絶え間なく黒服の刺客は彼を襲い続けている。昼も、夜も。

そのうちの一匹を締め上げ吐かせた情報によると、黒服Tは

まもなく修理を終え、戦線に復帰するのだそうだ。

銭湯につかり疲れをとる日々も、なくなりつつある。

串田はわずかなため息をつき、そして再び、歩を進め雑踏へと消えていこうとした。

 

が、その時。

監視されていることに串田は気づいた。視線を感じ、その方向を見る。

フルフェイスの人物が無言のままこちらを見ている。ヤツだ。

いつからいた?いつから監視されていた?

串田は考えながら、周囲の群衆に目もくれずパイル・ドライバーを凝視した。

目が合う両者。串田の指が、杖をひねりだす。

いついかなる場所であろうと、敵あらば闘うのが串田龍巳。

この場所で、すぐにでも始めようか。

そんな串田の殺気を知ってか知らずか、パイル・ドライバーは無言のまま指さした。群集の奥を。

 

「串田テメー!」「スッゾオラー!」「ザッケンナコラー!」

なにやら罵声が聞こえる。串田がチラリと見ると、奥で人を突き飛ばす音が聞こえる。

黒い服を着た男数名が、こちらへと群集をかきわけながら進んでくるのが見えた。

間違いない。黒服組織の追っ手である。きょう3回目の襲撃だ。

よく見るとその面子にはOだとかQだとかいう、先日蹴散らした双子も混じっている。

と、串田はその群集の方向とは別方向から気配を感じた。

すぐさま振り返る。気配は上からだ。

背後のビルの屋上、人影のようなものが見える。

間違いない。高架下でやったヤツだ。

またヤツらか。懲りないヤツだ。

串田は舌打ちすると、パイル・ドライバーの方を向き直った。

ヤツは無言のまま、まるで健闘を祈るかのようなサインを串田に投げかけた。

退屈そうに、大きく首をひねる串田。

彼は周囲の通行人をはじき飛ばすと、その場で回転、その勢いのまま杖の安全装置を解いた。

バババババッバッバババババ(マシンガンSE)

こうして繁華街は、戦場へと変わっていった。

 

 

おしまい