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<p>皆さまへ<br />
在日コリアン青年連合(KEY)の姜晃範と申します。<br /><br />
延坪島が砲撃を受けてから2週間が経ちました。<br />
韓国軍は砲撃の前から西海上で軍事演習を実施し、砲撃のあった後は、さらに強<br />
化されています。<br /><br />
朝鮮半島は依然として高い緊張を強いられていますが、軍事力による解決が現実<br />
的でなく、望ましい結果を生み出さないことは言うまでもありません。<br /><br />
この緊張状態を対話によって緩和し、朝鮮半島にいち早く平和体制が築かれる<br />
ことを私たちは願っています。<br />
その願いを、私たち在日コリアン青年の立場から声明文として表現しました。<br /><br />
小さな声ではありますが、世論形成の一助とできれば幸いです。<br />
よろしくお願いいたします。<br /><br />
--(以下、声明文)-----------------------------------------------------<br /><br />
【声明文】延坪島砲撃に際して―<br />
対話による朝鮮半島の平和構築を求め、在日コリアンへの人権侵害に抗議する<br /><br />
去る11月23日、韓国が西海上の南北軍事境界線と定める北方限界線(NLL)付<br />
近にある延坪島に向け、朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)側から砲撃が<br />
あり、その一部が島内に着弾した。韓国政府によると民間人2名を含む死傷者が<br />
でたことをはじめとして、甚大な被害が発生している。今回の砲撃について北朝<br />
鮮政府は、韓国の実弾射撃訓練を含む軍事演習に対する中止要求が無視されたこ<br />
と、そして演習の中で自国の領海に向けた砲撃があったことを理由として挙げて<br />
いる。しかし、死亡者を生み出した今回の軍事行為は、いかなる理由があったに<br />
せよ正当化することはできない。また、このような行為は、国際社会からの一層<br />
の孤立状況を生み出しかねず、朝鮮半島を取り巻く問題をより複雑化させるだけ<br />
である。私たちは、今回の砲撃に強く抗議し、北朝鮮政府によるこれ以上の軍事<br />
的挑発及び軍事力行使を慎むよう切に求める。<br />
一方で、この砲撃に対し韓国軍も砲撃によって応戦したとされる。また、その<br />
直後の11月28日からは、西海上で米国の核装備原子力空母まで投入しての韓米合<br />
同軍事演習が行われた。韓米両政府のこうした対応は、問題の解決を生むどころ<br />
か、むしろ緊張を高め、対立・不信・衝突の原因となる。私たちは、このような<br />
軍事的対応にも反対し、対話による解決を求める。<br /><br />
朝鮮半島の非核化及び地域の安定化に向けた六者協議は、2008年以降から開催<br />
されていない。外交的進展が見られない中、今年3月26日に西海上で韓国哨戒艦<br />
が沈没し、その真相を巡って朝鮮半島南北のみならず、朝中ロと韓米日間の冷戦<br />
的対立状況がより鮮明になった。11月には、北朝鮮政府がこれまで示唆してきた<br />
ウラン濃縮の事実を明らかにし、その濃縮施設を公開した。このような朝鮮半島<br />
の非核化と安定に逆行する流れが進行する最中で引き起こされた今回の事態は、<br />
軍事演習をはじめとした「抑止」政策の危うさ、加えて米国が掲げていた「戦略<br />
的忍耐」の綻びが表面化したものであるといえるだろう。ここに至っては朝米が<br />
直ちに前提条件なしに対話のテーブルに歩み出ること、そして、六者協議の再開<br />
に向けて周辺各国がそれぞれの役割を果たすことが必要である。<br /><br />
南北関係は8月末頃から対話の兆しが見られていた。10月には北朝鮮に向けた<br />
人道支援が進められ、同月30日には韓国の現政権下で2度目となる南北離散家族<br />
再会事業が開催された。また、中断している金剛山観光の再開についても協議が<br />
進められていた。私たちは期待を持って南北の対話の動きを見つめていただけに、<br />
非常に残念な思いで今回の事態を受け止めることとなった。韓国政府は今回の砲<br />
撃を受けて、対北強硬路線を改めて打ち出している。しかし、強硬な態度は事態<br />
をさらに悪化させるだけであることは目に見えており、私たちは韓国政府に対し<br />
て一貫した粘り強い対話路線に転換することを求める。<br /><br />
また日本社会においては、北朝鮮への敵意をことさら煽る報道が溢れ、安易に<br />
北朝鮮の崩壊を叫ぶような暴論も頻繁に聞かれるようになった。さらにその矛先<br />
は、私たち在日コリアンへも向けられている。11月24日、菅直人首相は今回の事<br />
態を受けて、朝鮮学校の高校無償化適用プロセスを停止するよう指示をした。日<br />
本政府は、「外交上の配慮はせず教育上の観点から客観的に判断すべき」として<br />
いた自らの見解からも明らかに矛盾した行動を取り、在日コリアンに対する差別<br />
と偏見を生み出し、子どもの民族教育権を奪う暴挙に出ている。そもそも、高校<br />
無償化の対象から朝鮮学校を排除することは、すでに国連人種差別撤廃委員会か<br />
ら重大な懸念が表明されているとおり、明白な人権侵害である。4月の無償化施<br />
行から8ヶ月が経過した11月5日、ようやく適用の対象にされることが事実上決定<br />
した矢先の停止措置に、私たちは大きく落胆した。この矛盾に満ちた日本政府の<br />
方針に、私たちは怒りをもって強く抗議し、直ちに朝鮮学校無償化手続きを再開<br />
することを求める。<br /><br />
今回の事態は、朝鮮半島及び東アジアにおいて、冷戦構造はいまだ解体されて<br />
おらず、いつまた市民の命が奪われるかもしれないという危機的状況にあるとい<br />
うことを世界に示した。この状況に対し、今こそ、東アジアの真の平和体制構築<br />
に向けて、関係各国がどのような行動をとるべきかが問われている。<br />
朝鮮半島を巡る対立状況は歴史が幾重にも積み重なってつくられてきた。今回<br />
の砲撃事態の問題の根は、長らく続く南北分断とそれを生み出した帝国主義と冷<br />
戦構造にあり、その状況を解消していくプロセスは地道な対話によるほかない。<br />
そのプロセスを南北双方が主体となりながら周辺各国がともに進め、朝鮮戦争終<br />
結と平和体制の構築に向けて努力することをあらためて強く求める。同時に、国<br />
家のはざまで苦しめられてきた在日コリアンが差別と迫害に脅かされることのな<br />
い社会の実現を切に求める。<br /><br />
2010年12月7日<br />
在日コリアン青年連合(KEY)<br />
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