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彼岸伎涅槃

1ターン目

突然の状況の変化と、与えられた情報。
それらを処理しきれず、彼岸伎涅槃は軽く混乱していた。
とりあえず、落ち着くためにも、近くにあった民家に隠れ、現在の状況を確認をすることにした。
「現在位置は……地図と景色を比べるに、この位置。田ですね」
口に出して現在の状況を整理することで、少しでも落ち着こうとする。
だが、口に出して気が付く。声が言葉になっていないことに。
自分の意志とは裏腹に、意味の無い音しか出なかった。
(これが、あのキタノと名乗った男の言っていたことですか)
ためしに、床に文字を書いてみようとする。
埃と土で汚れた床には、意味の無い記号を書くことはできたが、やはり文字を書くことはできなかった。
(なるほど。まぁ、こうして思考はできる事ですし現状は問題ありませんね)
そう結論付けると次に、配られた荷物の確認をする。
デイバッグから出てきたのは、地図とコンパスと腕時計、食料と水、それにショットガンと弾丸だった。
(このショットガンが武器ですか。十分に‘当たり’の部類に入る武器ですね)
もっとも、ショットガンなど使ったことはない。持ってみて使い方は大体分かったが、いざという時のために試し撃ちをしておいたほうがいいだろうか。と考える。
(……いえ、止めておいたほうがいいですね。弾はあまり多くないですし、発砲音を聞き付けられたら厄介な事になるでしょうから)
一通りの確認を終え、次の行動を思案する。
(武器が使い慣れないショットガンだけ、というのは少し心細いですね。弾数も少ない……できることなら、普段から使い慣れている刃物が欲しいところですが)
考えて、地図を見る。刃物がありそうなのは、ここから程近い、住宅地と商店。どちらも川を渡ることになる。先ほど見た限りでは、川は昨夜からの雨の所為で流れが速くなっていた。
それに、この二ヶ所は物が多そうなので他の参加者がやってくる可能性も高い。
ただ刃物が欲しいなら、今隠れているこの家にも、探せば包丁の一つくらいはあるかもしれない。
(……しかしどうせなら、この終わってしまった島の散策もしてみたいんですよね)
涅槃にとって、滅んだ場所、死んだモノは敬うべき存在であり、数少ない興味の対象である。そもそも、関西にいるのも滅亡している様子が見たいから、というそれだけの理由である。だから、現在の復興しつつある状況は彼にとってあまり望ましくないのだが、それは別の話。
(……では、川を渡って商店に行きますか。多少は危険かもしれませんが、まぁ大丈夫でしょう。弾丸は濡らさないように注意しなければなりませんね)
一通り、考えるべきことに結論を出したので行動を開始するため、確認の際に並べた荷物を纏め始める。纏めている途中で、一つ重要な事を思案し忘れていたことを思い出す。
(そういえば、人と会ってしまったらどうするべきでしょう……死は望むものですが、できればもっと良い状況で死にたいですね。人の死を見るのも嫌いでは無いですし、とりあえず、会ったら攻撃しますか)
簡単に結論を出し、一応いつでも撃てるようにショットガンを構えると、川に向かって移動を開始した。
この後どうなるのか、今の段階では誰にも分からない
―――続く(かもしれない)

2ターン目

「開始2時間で死者4名ですか……予想よりも多いですね」
キタノからの放送を聞きながら涅槃は一人呟く。当然、その言葉は意味をなさなかったが、誰かに聞かせるために呟いたわけでも無いので問題はない。
現在、涅槃の入る場所はそこそこ大きな商店の中。当初の予定通り包丁を3本見つけたところである。
長く放置されていたらしく、ほこりを被っていたがまだ十分に使えるだろう。これは大きな収穫だった。
普通なら、喜びたいところだ。だが、ざわついた心が落ち着かない。4人が死んだという事は、単純に考えれば、4人の殺人者がいる、ということだ。死者は望むものだが、殺人者は勘弁してほしい。
もちろん、話はそう単純でも無いだろうが、最悪の場合を想定するなら、そう考えておいた方がいいだろう。
(……殺されたのは螢さんに、輪花さん、肉皮ゴーイングさんに、桐山さんですか。……全員、強力な能力者ですね。少なくとも、一対一で普通に戦って、勝つ自信はありません)
だがそれは、自分以外の参加者も同じ事だろう。ならば、勝てた理由は一つ――武器の性能差だろう。
(先ほどの最悪の可能性と合わせるなら4人、つまり私を除く9人の約半分は殺傷能力の高い武器を持っている、と考えるべきですね)
最悪の可能性を考えるなら、ショットガンは辺りでは無く、普通の武器。全員が全員、銃火器クラスの武器を持っている、と考えるべきかもしれない。だが、さすがにそれは悲観的すぎる。本当にそんな状況なのだとしたら、自分が生き残る術は無いだろう。
(……いけませんね、考えが纏まらない。とりあえず、人に会ったらできるだけ相手の武器を見極めることにしますか。そして、相手の状況次第では、全力で打ってでますか)
そんな、誰かも分からない殺人者に思いを巡らせながら、しかしそれ以上に涅槃は気にかかる事があった。
(……日ごろから、死者に対する敬意の薄い人達ばかりだ。きっと、誰も死者を埋葬していないのでしょうね。できることなら、4人の死体を探して、埋葬したい。全員は不可能でしょうが、それでも見つけられた死体はできるだけ埋葬してあげたい)
こんな極限の状況でそんな事をすれば、殺されす可能性は跳ね上がるだろう。だから、埋葬もせずに行くのは当然の行為だ。とは思う。
(ですが、私は、死者を侮蔑するくらいならば、自分の死を選びます)
死者は崇拝すべきもの。当然、自分の命以上に。それが、幼い頃からの涅槃の考え方だった。その考えは変えるつもりは無い。
少なくとも、死ぬまでは。自分がその崇拝の対象になるまでは。
(さて、そうと決まれば、早速みなさんの死体を探しに行きますか。できるだけ多くの死体を見つけたいものですが、手がかりもありませんし、適当に動くしか無いですね)
ではとりあえず、山へ向かいますか。
そう行き先を決めると、涅槃は歩き出した。
―――生きていたら、続く

3ターン目

まったく、何故こんなことになったんでしょう・・・)
殺した木枯オシャレの死体をバラバラにして庭に埋め終わった後、木枯と殺し合った部屋に戻り、思考を纏めようとする。
(あの時の自分は、どうかしていたとしか思えませんね。なぜあんな、あからさまな罠に自分から飛び込んでしまったんでしょう)
だが一向に思考は纏まらない。元々混乱していたというのに、あんな状況に遭遇してしまったため、混乱はますます増長している。
加えて、肉体的な疲労も大きい。殺し合いによる疲労もあるが、それ以上に埋葬した際の疲れが大きかった。普段とは違い、満足な道具が無いなかで行ったため、埋葬は結構な重労働となった。
精神的な疲労で考えが纏まらず、肉体的な疲労で思考するのも面倒になっている。
(もう、全て投げ出して休みたい……妙案かもしれませんね。このまま考えていても進展があるとは思えません。動くのも疲れましたし、少し休んで回復しますか)
実際、休むには自分の能力は適している。普段は、授業中に寝ても怒られない、程度の能力だが(代わりに出席も貰えないが)こういう状況でなら、安全に休む事ができるだろう。
(身体も心も、完全に疲れきっている。ですが、落ち着きませんね、妙に心がざわつきます。こんな状況で眠れるかは分かりませんが……まぁ、横になるだけでも少しは回復するでしょう)
涅槃はそう考えながらも一応、ショットガンは回収し、弾丸を新たに装填した後、枕元に置いた。
(考えてもみれば、これが無ければ私は死んでいたんですよね。本当に、この武器は当たりでした)
そう思いながらもベッドに横になる。
ここは、幸いにも一番奥の部屋だ。誰かが来るのなら、手前の入口からだろう。
(なら、入ってきたと同時に、そこに撃ち込めば撃退は容易ですね。まぁ、こんな奥まで人が来るとも思えませんが――)
最後に、そんな事を考えながら、涅槃は眠ろうと目を閉じるのだった。

――続く。といいな

4ターン目

3回目の放送が止んだ。雨の音もいつの間にか止んでいる。
涅槃はベットに横たわったまま、ぼんやりと今の状況を考えていた。
(……結局、時計の反応に怯えて一睡もできませんでしたね。頭も身体も、少しも回復した気がしません)
本当なら、このまま休み続けたいところだ。
それでも、今の精神状態ではとでも眠れるとは思えない。それに、残り時間ももう多くは無い。無駄なことに時間を費やすことはできないだろう。
(とは言っても、何をすればいいのかも分かりませんね。下手に動いても殺されるだけでしょうから)
時計の反応は消えたが、近くに人がいることは確実だろう。しかも、その人物は銃を持ち、人を殺した可能性が高い。出歩くのは危険すぎるだろう。
(……いえ、待ってください。殺した人間がいるのなら、当然殺された人間もいるはず。ならば、殺された人間がこの近くにいるのではないでしょうか?)
死滅崇拝。死んだモノには最大限の敬意を払うべきだというのが、涅槃の最大の価値観である。すぐ近くに、打ち捨てられた死体があるかもしれない。それは、涅槃にとっては許す事のできない状況だった。
幼い頃から植えつけられてきた価値観によって、殺人鬼に対する恐怖が少しずつ薄れ始めていた。
(そうです。殺人鬼が近付いたとしても、時計に反応があるのだから、分かるはず。ならば、さっき殺されてしまった人を少しでも早く弔ってあげるべきだ)
放送を思い出す。今の時間で殺されたのは、確か、池谷むじるし、一人だけだった。
(では、池谷君の死体を探しますか。とは言っても、私自身が殺されてしまっては意味がありませんから、できるだけ時計の反応には注意することにしないといけませんね。殺されるくらいなら……積極的に殺しにいきますか)
ベットから起き上がり、荷物を纏めようとする。
身体が重い。だが、そんなことよりも死体を埋葬することの方が大事だ、と無理矢理身体を動かす。
(そういば、可能性は低いですが、さっきの銃撃戦で誰も死ななかった可能性もあるんですよね。まぁ、その場合は殺人鬼から少しでも離れるために、山にでも向かいますか)
そんな思考を続けながらも、動かない身体を無理矢理動かして、支度を終える。
荷物を担ぐと、死闘を演じ、仮の休憩所となった部屋から出る。
自分の体の限界は感じていたが、それでも、崇拝すべきものを崇拝するために、涅槃は動き出す。
そうしなければ、肉体よりも先に精神が死んでしまう気がしたから。もっとも、この考え自体、すでに精神が死んでいる証かもしれないが――それは考えないことにした。
精神が死んでいると認めたら、自分を崇拝しなければならなくなるから。それだけは文字通り死んでも嫌だから。
涅槃は、自分を崇拝しないために、行動を始めるのだった。

――続く。と嬉しいけど続かない気がするなー。なんか死にそうだ

5ターン目

5回目の放送を聞きながら涅槃は、殺された池谷むじるしと、殺した米良夏徒を埋葬するために運んでいた。
埋葬するのは、木枯オシャレを埋めたのと同じ場所だ。一度掘って埋めた場所が近いから、さっきよりは早く埋葬することができるだろう。そんな考えだった。
だが、米良を運びながら、涅槃の心にはある種の自嘲のような感情が芽生えていた。
(これで、この島に来てから殺した人間は二人目ですか。自分で殺しておきながら、それを崇拝の対象とし、埋葬しようとするなんて、一体私は何をしているんでしょう)
ここも、あと2時間すれば禁止エリアとなってしまうため急ぐ必要がある。だがそのために、死体を運んだり、埋葬する手段が雑になってしまっては本末転倒である。
より早く、より丁寧に作業を進めなければならない。よって、無駄な思考は排除するべきだ。少しでも作業に集中するべきだし、そうでなくても考えなくてはならないことがたくさんあるだろう。
なのに、無駄な思考が止まらない。
(しかし、人の崇拝する神も、価値観も全ては自分たちで生み出したもの。ならば、私のしていることも、普通の人の行いとなんら変わらないのだろうか……だが、私の崇拝しているものは”死”という概念そのものであって、個人の死体ではなかったはず。ならば、こんな死体は打ち捨てていくべきではないのか?)
思考が纏まらない。意見が統一されない。
そもそも涅槃には、彼岸伎一族の共通理念である、死滅崇拝が世間一般から見ておかしいという自覚はある。一般的な常識もあし、生きている、使えるモノのほうが、死んでいる、使えないモノよりも価値があるという考えも持っている。
その一方で、死者や滅んだモノは崇拝しなければならない。という絶対の価値観もある。
普段の生活を送る分には、この2つの考えを矛盾せずに受け止め、思考することが出来た。
だが、この殺しあわなけれないけない、特殊な環境の島で、混乱の極みに立たされてしまってい。2人の人間を殺してしまった状況では、この二つの矛盾を抱え込んでの思考は不可能になってしまった。
(あぁ、めんどくさい。思考も、行動も。全て投げ出したくなってきましたよ)
それえも、死体の移動をやめないのは、止めてしまっては、自分の価値観を否定してしまうことになるから。それは、今ある数少ない精神の支えを失うことに等しいから、止める事はできなかった。
(どうせ思考をするなら、先のことでも考えたほうが建設的です。一旦、状況についての思考を止め、これからの行動について考えることにしましょう)
無限に、混乱を続けそうな思考を無理矢理別の方向に持っていこうとする。思考を止めようとしないのは、思考を止めてしまったら、頭が疲れを自覚して肉体が限界を迎えてしまう気がするから。
(……そうですね、先ほどの放送で、山以外の全てが禁止エリアになってしまったみたいです。なら当然、私も含めて生き残った全員が山に集まるということになりますね。遭遇確立も、今までと比べて大分上がることでしょう)
持っている武器を思い出す。ショットガンの弾丸はあと3発。多分、一人殺せるかどうか、といった感じだろう。
拳銃は19発残っているが、リロードに時間がかかりそうなので、実質は一度に5発しか撃てない。そうなると、火力が心もとない。今の自分の状態では、この拳銃を使って上手く人を殺す自信は無い。
(私以外の人達に殺しあってもらい、人が少なくなってから、私は戦闘に参加したいですね。なら、山に行くのはなるべく遅いほうがいいですね。制限時間ぎりぎりまでは、このまま商店のエリアにいることにしますか)
今後の行動を考え終わってしまうと、急に考えることがなくなってしまった。
他にもなにか考えるべきことがある気もしたが、やはり思考が面倒になってしまい、考えるのを放棄し、行動に集中することにした。
今度は、その試みも上手くいった。
もうすぐ、2人の埋葬は終わる。その後の行動で涅槃はどうなるのか、生き残ることはできるのか。
それは、涅槃も他の誰も分からない。

――続く。かどうかは分からない