国体とは何か① ~ 『国体の本義』と『臣民の道』(2つの公定「国体」解説書)

大日本帝国は、万世一系の天皇皇祖の神勅を奉じて永遠にこれを統治し給ふ。これ、我が万古不易の国体である。
而してこの大義に基づき、一大家族国家として億兆一心聖旨を奉体して、克く忠孝の美徳を発揮する。これ、我が国体の精華とするところである。

~ 文部省刊『国体の本義』(昭和12年(1937)5月)


<目次>

■1.戦後日本の国家論不在

◆1.国家の基軸・国民のアイディンティティーの確立に向けて

戦後日本においては、民間から散発的な日本人論は出るのだが、国家論となると殆どタブーの扱いとなってしまっていることが夙に指摘されている。
しかし、戦前の日本では「国体」という言葉の意味内容を巡って喧々諤々の議論、時には政争までもが行われていたのであり、今や戦後長く日本を覆ってきた自虐史観から解放されつつある我々は、日本国家の基軸・日本国民たるアイディンティティーの再確立のために、この戦前の国体論の成果の検討に進むべき時であると思う。

◆2.戦前の「国体論」を再検討する

◇1.現在流通している「国体」の定義

【国体】こく-たい
広辞苑
①[漢書(成帝紀)「通達国体」]国家の状態。 くにがら くにぶり
②[漢書(王莽伝上)「以明国体」]国家の体面。国の体裁。折りたく柴の木(中)「-にしかるべからず」
主権 または 統治権 所在 により区別した 国家体制 。「-の護持」
【国体】こく-たい
ブリタニカ国際大百科事典
一般的には 国柄 国風 を意味し、この用例は漢籍や古代日本にも見られる。
しかし中国や西洋に対して 日本の優越を示す根拠 として、国生み神話に基づく 天皇の神聖性 とその 君臨の持続性 を内容とする意味で用いられるのは、19世紀以降 水戸学に始まる。
維新以後も、一般の論説のほか、 教育勅語 や新聞紙条例、 治安維持法 などの法令にも 国家体制の正当性を示す言葉 として 登場 するが、 意味内容は明確ではない
またその使用には論争性が当初から伴われ、福沢諭吉や加藤弘之ら明治初期の啓蒙思想家からの批判や、明治末期から大正期の穂積八束の憲法解釈に対する美濃部達吉の批判が代表的なものである。
昭和初期 には 左翼勢力 や美濃部の 天皇機関説 に代表される リベラル への 弾圧の根拠 としてその神話的解釈が一層強調され、その傾向は 国体明徴 や文部省の 『国体の本義』 に頂点をみる。
敗戦および新憲法制定を通じて、統治の正当性根拠としての役割は終焉した。
補足説明 このように、「国体」は明治維新以降、日本国家の正統性を示す言葉として頻繁に用いられたが、その意味内容が必ずしも明確ではなかったため、昭和初期に美濃部達吉(憲法学者)の天皇機関説を巡って「国体明徴」問題(1935年)が起こり、その結果1937年になってようやく文部省よりその公定解釈を示す冊子『国体の本義』が刊行された。

◇2.現在流通している『国体の本義』の説明

【国体の本義】
こくたい-の-ほんぎ
広辞苑
1937年文部省が発行した国民教化のための出版物。記紀神話にもとづき 国体の尊厳 天皇への絶対的服従 を説き、 社会主義・共産主義・民主主義・個人主義・自由主義 排撃
【国体の本義】
こくたいのほんぎ
ブリタニカ国際大百科事典
文部省編。1937年5月刊行。35年頃から高まった「国体明徴」「教学刷新」の意義を明らかにし、その精神を国民に徹底させることを企図した。
神話と古典に依拠して、 国史 の諸過程を「 肇国の精神の顕現 」としてとらえるとともに、 西洋近代思想 激しく排撃 している。
45年占領軍により『 臣民の道 』とともに 発売禁止 となったが、49年にはアメリカでJ.ガントレットの英訳が刊行され、今日にいたるまで研究材料とされている。
補足説明 結論から先に言うと、上記の説明は、 『国体の本義』 内容説明 としては 歪曲された完全に間違ったものである
但し、大東亜戦争開戦の僅か4ヶ月前の昭和16年(1941)8月に 『国体の本義』 実践編・注解編 との触れ込みで文部省教学局(文部省の外局)から刊行された 『臣民の道』 内容説明 と置き換えると、凡そ 正しい説明 になる。
つまり、戦時体制下で刊行され 戦争目的を肯定し国民の戦意を高揚させるための時局論 的色彩の強い 『臣民の道』 の内容を、 国体の公定解説書 として刊行された 『国体の本義』 故意に投影 した説明となっているのだが、戦後長く『国体の本義』に関して、そして「国体」論自体に対して、こうした歪曲された内容説明が流通し続けてきた。
当ページは、
昭和10年代に政府の公定「国体」解説書として刊行された2つの冊子『国体の本義』及び『臣民の道』の実際の内容を紹介し、その異同を解説する、と共に、
これらの異同の背景を為す政治的変動及び、それらを思想的に準備しあるいは理論づけた民間の国体論に関しても説明すること、更には
『国体の本義』で示された思想評価と西洋保守思想の対応関係を確認すること、を目的とする。


■2.国体論を巡る思想・政治状況(見取り図)

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■3.『国体の本義』(昭和12年(1937年)5月、文部省刊)

◆1.『国体の本義』全文URL

http://www.j-texts.com/showa/kokutaiah.html
『国体の本義』(文部省)は、戦後まもなく発禁処分となり再刊もされなかったのでamazon出品の中古品は5,000~8,000円台と高額であるが、現在はネットで全文を読むことが出来るようになった。
なお、2009年末に産経新聞出版から刊行された佐藤優氏著『日本国家の真髄』(月刊誌『正論』に2008年10月~2009年9月まで掲載分を単行本化)に『国体の本義』の全文が掲載されており、かつ難語や引用の和歌・詔勅の現代語抄訳が完備され、佐藤氏の秀逸な内容解説が為されているので、佐藤氏の展開する持論(日本国憲法擁護や、大川周明・北一輝の擁護、新自由主義への一方的な反対etc.)に対する違和感を割り引いても非常にお勧めである。値段も高くない。

◆2.『国体の本義』の内容

佐藤優氏によれば、「『国体の本義』は、欧米のキリスト教文化圏の人々にも理解できる記述をしている。西欧思想、哲学の伝統を踏まえた上で書かれた水準の高い思想書である。このレベルの思想を理解していれば、二十一世紀の日本人が、アメリカ人、イギリス人、ドイツ人、ロシア人、中国人などと議論しても、決して負けることはない。」
また、新田均氏によれば、「『国体の本義』の編纂過程で、編纂委員の一人であった和辻哲郎から「特に根本的規定等に於て現代の日本インテリゲンチャを納得せしめる様論述し得るか否かは相当重大なる問題と存候、この点特にご配慮願上候」といった意見が表明された」等、当時の日本を代表する学識者の意見を広く聴取して内容が練り上げられている、とのことであり、私見でもやはり、なかなか文句の付けようのない内容であると思う。

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◆3.『国体の本義』の論旨と、西洋近代思想の対応関係

さらには、意外なことだが、西洋保守主義(バークの伝統保守主義、及びハイエク・ポパーらの新保守主義)による啓蒙思想批判との対応関係において、『国体の本義』が批判し、または評価している内容が、そのまま「啓蒙思想の主流たる大陸合理論(=批判)」「啓蒙思想の傍流たるイギリス経験論(=評価)」に対応しているという注目すべき結果が得られた。



『国体の本義』の刊行時点(1937年5月)では、ハイエク・ポパー・バーリン等の思想はまだ殆ど発表されていなかったはずであり、『国体の本義』編纂グループは独自にハイエク・ポパーらが第二次世界大戦末期及び戦後に指摘した内容と大部分で重なる、的を射た西洋思想(啓蒙思想)批判に到達していたことになる。
さらには、『国体の本義』の内容を読み進めれば分かるはずだが、そこでは、①アトム的個人主義と並んで、②共産主義・社会主義・無政府主義、そして③ナチス・ファッショの全体主義・偏狭的民族主義までも、鋭く批判されており、ここでもハイエク・ポパーらの西洋思想批判が先取りされている。

※なお、個人主義・自由主義・合理主義に関してのまとめページ
「個人主義」と「集産主義」 ~ ハイエク『隷従への道』読解の手引き
リベラリズムと自由主義 ~ 自由の理論の二つの異なった系譜
国家解体思想の正体

◆4.『国体の本義』原文

◇1.目次

国 体 の 本 義
一、本書は国体を明徴にし、国民精神を涵養振作すべき刻下の急務に鑑みて編纂した。
一、我が国体は宏大深遠であつて、本書の叙述がよくその真義を尽くし得ないことを懼れる。
一、本書に於ける古事記、日本書紀の引用文は、主として古訓古事記、日本書紀通釈の訓に従ひ、又神々の御名は主として日本書紀によつた。
目  次
 緒言(1) ※数字は何ページ目を示す
第一 大日本国体(9)
 一、肇国(9)
 二、聖徳(21)
 三、臣節(32)
 四、和と「まこと」(50)
第二 国史に於ける国体の顕現(63)
 一、国史を一貫する精神(63)
 二、国土と国民生活(85)
 三、国民性(91)
 四、祭祀と道徳(101)
 五、国民文化(114)
 六、政治・経済・軍事(126)
結語(143)

◇2.緒言

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◇3.第一 大日本国体

※省略

◇4.第二 国史に於ける国体の顕現

※省略

◇5.結語

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■4.『臣民の道』(昭和16年(1941年)8月、文部省教学局刊)

◆1.『臣民の道』全文URL

http://binder.gozaru.jp/shinmin0.htm
『臣民の道(文部省教学局)』は、戦後まもなく発禁処分となったオリジナル版の他に、2000年に左翼系の出版社から復刻版が刊行されている。復刻版の方は「国体、八紘一宇、報恩感謝。これが戦前の皇国史観教育です。是か、非か―ご自身の目と心で、ご判断下さい。」という内容解説が付されている。
どちらもamazon出品の中古品で4,000~5,000円台と高額である。
現在は『臣民の道』もネットで全文を読むことができる。

◆2.『臣民の道』の内容

第二次近衛政権の策定した基本国策要綱(1940.8)に基づき進められた東亜新秩序構想、さらに、
日独伊三国同盟(1940.9)結成・日本の枢軸国参加による日米開戦の接近を意識した総力戦体制の要請
に応える国民教化策の一環として文部省外局として設置の教学局が編纂した『臣民の道』は、『国体の本義』とは正反対に、

(1) 個人主義・自由主義・功利主義・唯物主義といった西洋思想のほぼ全面的な否定・拒絶
(2) 一方で、ナチズム/ファシズムへの共感表明
(3) アジア的普遍主義(汎アジア主義)の強調
(4) 英米を始めとする欧米支配の旧秩序の破壊と、日本など枢軸国の主導する新秩序の樹立

が強く謳われ、その実現のために

(5) 天皇への絶対随順(「臣民の道」の実践)

が要求される構成となっている。

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◆3.『臣民の道』原文

◇1.目次

序言
第一章 世界新秩序の建設
一、世界史の轉換
二、新秩序の建設
三、國防國家體制の確立
第二章 國體と臣民の道
一、國體
二、臣民の道
三、祖先の遺風
第三章 臣民の道の實踐
一、皇國臣民としての修練
二、國民生活
結語

◇2.序言

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◇3.第一章 世界新秩序の建設

▲1.世界史の転換
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▲2.新秩序の建設
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▲3.国防国家体制の確立
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◇4.第二章 国体と臣民の道

▲1.国体
※省略

▲2.臣民の道
※省略

▲3.祖先の遺風
※省略

◇5.第三章 臣民の道の実践

▲1.皇国臣民としての修練
※省略

▲2.国民生活
※省略

◇6.結語

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■5.小まとめ

以上から、昭和10年代に文部省から刊行された2冊の公定「国体」解説書の比較を通して、当時の 日本を巡る2つの思想潮流 日本主義 アジア主義 )の対応関係、時期による両者の政治的な優劣関係をまとめる方向に進めればよいと考える。
また、『 国体の本義 』の内容の読解を糸口として、戦前の日本に存在した「 日本型保守主義 」の 中核的内実 を見出し得ると考える。

◆1.『国体の本義』と『臣民の道』の内容の異同

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◆2.日本主義とアジア主義

◇1.現在流通している「日本主義」の説明と、『国体の本義』

【日本主義】 にほん・しゅぎ
(ブリタニカ国際大百科事典)
明治から第二次世界大戦敗戦まで における 欧化主義・民主主義・社会主義などに反対 し、 日本古来の伝統や国粋を擁護しようとした思想や運動 をいう。
一定の思想体系をなしていたとはいえず、論者により内容が相違する。
明治 の支配層が推し進めた 欧化主義への反発 として三宅雪嶺や高山樗牛らによって唱えられ、政治的には 欧米協調主義への反対、国権や対外的強硬策の強調 となって現れた。
大正や昭和 になって日本の資本主義の高度化が階級対立を激化させ、 社会主義やマルクス主義が流入 すると、これら諸思想の 対抗イデオロギー として機能し、 天皇を中心とする皇道や国体思想を強調 した。(cf.神国思想)

◎補足説明

「日本主義」という用語は、上記の説明の様に、先ず
明治期の国粋主義・ナショナリズム的思想傾向(明治期の日本主義)と、
昭和初期の社会主義・マルクス主義等への対抗思想(昭和期の日本主義)
の時期的に異なる二つのケースを区別しなければならない。
更に、昭和初期には、「日本主義」という言葉が、現在の「民主主義」「自由主義」「保守主義」などの言葉のように通俗化してしまって、
ただ単に日本の文化や歴史を誉めそやしたり、他国・他民族に対する優位性を主張したりする傾向
をも、幅広く「日本主義」と呼び習わしていたので、例えば大川周明など明らかなアジア主義者も、日本を賞賛していることから、やはり「日本主義者」に数える場合がある。
しかし、本ページで用いる「日本主義」は、その意味をもっと狭く
日本を、支那など東アジア諸文明とは別個の、一国一文明の国・民族と考え、その独自性を重視する立場
と捉えている。
つまり「アジア主義」と対比される意味での、「純正-日本主義」である。
国体の本義 』は、②昭和初期の社会主義・マルクス主義等への対抗思想(昭和期の日本主義)、として文部省によって編纂・刊行された 「純正-日本主義」の立場に立つ公定「国体」解説書 である。

◇2.現在流通している「アジア主義」の説明と、『臣民の道』

【大アジア主義】だい・アジア・しゅぎ 
Pan-Asianism  
(ブリタニカ国際大百科事典)
欧米列強のアジア侵略に抵抗するため、アジア諸民族は日本を盟主として団結すべきであるという考え方。明治初期以来、種々の視角から展開された。
植木枝盛は自由平等の原理に基づきアジア諸民族が全く平等な立場で連帯すべきことを説き、樽井藤吉や大井健太郎は、アジア諸国が欧米列強に対抗するために連合する必要があり、日本はアジア諸国の民主化を援助すべき使命があると説いた。
明治20年代になると、大アジア主義は明治政府の大陸侵略政策を隠蔽する役割をもつようになった。1901年に設立された黒龍会の綱領にもみられるように、その後の大アジア主義は天皇主義とともに、多くの右翼団体の主要なスローガンとされ、これに基づいて満蒙獲得を企図する政府・軍部の政策が推進された。
日本人の大アジア主義的発想は、第二次世界大戦前・戦中の「大東亜共栄圏」構想を支えた。
【大東亜共栄圏】だい・とうあ・きょうえい・けん
(ブリタニカ国際大百科事典)
第二次世界大戦を背景に1940年第二次近衛内閣以降45年敗戦まで唱えられた日本の対アジア政策構想。その建設は「大東亜戦争」の目的とされた。
東条英機の表現によれば、大東亜共栄圏建設の根本方針は、「帝国を核心とする道義に基づく共存共栄の秩序を確立」しようとすることにあった。
しかし実際は、東アジアにおける日本の軍事的・政治的・経済的支配の正当化を試みたものに他ならなかったといえる。
第一次近衛内閣当時の「東亜新秩序」は日本・満州・中国を含むものに過ぎなかったが、南進論が強まるにつれて、インド・オセアニアにいたる大東亜共栄圏構想に拡大された。大東亜省の設置と大東亜会議の開催は、このような方針の具体化に他ならない。

◎補足説明

「アジア主義」・「大アジア主義」という用語も、また意味が広いが、
本ページでは、これを、Pan-Asianism(汎アジア主義)つまり、
アジア全般あるいは東アジア(インド文明圏を含むか否かで更に分かれる)地域を、西洋文明と根本的に対立する地域・文明圏(東洋文明)と一括して捉え、アジア(あるいは東アジア)の諸民族は、日本を盟主として団結し、欧米列強の植民地支配を打倒せよ、と呼びかける政治的・思想的立場
と捉えている。
こうした立場は、幕末期の攘夷運動に既にその萌芽が見られ、明治期の西郷隆盛の征韓論(西郷の持論は、韓国・支那と盟約を結んで欧米列強を排除することにあったが、それが歪曲されて韓国侵略を目的とする「征韓論」と呼ばれ続けている)、その影響を受けた頭山満・内田良平ら在野右翼による辛亥革命への援助、更に昭和期に入って、大川周明の東西文明対抗史観に基づく『大日本二千六百年史』その他の著書の刊行などによって民間に広く流布していたが、英米との協調を重視する政界・経済界の中枢からは警戒されていた。

しかし、1930年代の不況と世界経済のブロック化の進展に押された石原莞爾の満州国建設、さらに近衛政権下で勃発した支那事変の泥沼化によって、日本が東アジアへの軍事的関与から抜け出せなくなり、支那を援助する英米との戦争が避け難くなった状況下で、日本の戦争目的を肯定するイデオロギーとして、遂にこの「汎アジア主義」が日本政府によって援用されるに至った。
『臣民の道』 は、そうした 日本の戦争目的を肯定し、来るべき英米との総力戦への国民の参加・動員を求めた政治的パンフレット である。

◇3.保守思想・革新思想との関係

下図に示す様に、 日本主義 保守主義思想 と、また アジア主義 革新主義思想 と各々親和性が高いと思われる。(なお図の説明は、保守主義とは何か を参照)


■6.参考図書

◆1.『国体の本義』を理解するための図書

佐藤優氏著『日本国家の真髄』(月刊誌『正論』に2008年10月~2009年9月まで掲載分を単行本化)

佐藤優氏に関しては、産経新聞出版の『正論』から、新左翼の『情況』まで幅広く執筆活動を行っており、右派系雑誌では「大東亜戦争」、左派系雑誌では「太平洋戦争」などと左右の読者で巧みに用語や説明を使い分ける器用さが気になるが、大変に博識であり、かつ愛国的な人物であることは間違いないと思う。
ただ、私見では、佐藤氏は元々の左翼思想(マルクス主義への強い関心と共鳴)から外務省時代に次第にナショナリズムに目覚めて、所謂「両翼(nationalism + socialism = national socialism すなわち国民社会主義)」的な立場に発展したタイプと思われ、それが大川周明や北一輝に対する佐藤氏の肯定的評価に反映されていると思う。
しかし、保守主義とは、「両翼(右翼+左翼の融合形)」では決してないのであり、その点は確りと留意すべきだと考える。
(参考)保守主義とは何か

予め指摘しておくと、上記のように日本主義かアジア主義か、という観点から見ると、大川周明への強い共鳴に端的に現れるように佐藤優氏は国家改造主義者であり、戦前の革新右翼(アジア主義者)に近く、それゆえに若干奇妙な解釈が入る場合もある(例えば『国体の本義』は「君民共治」を明文でもって否認しているにも関わらず、佐藤氏は日本国憲法の国民主権を擁護する立場からこれを屈折して解釈している)のだが、それにも関わらず『国体の本義』の内容が強い説得力を持っていることが重要である。革新右翼に近い国家改造主義の佐藤優氏すら絶賛する内容であれば、当然に現在の私たち普通の日本人にとっても十分に通じる内容と考える。「国体」を語ろうとする者には必読の図書である。

◆2.『臣民の道』を理解するための図書

佐藤優氏著『日本国家の真髄』

東西文明対抗史観に基づき、日本を盟主とする東洋世界と英米に代表される西洋文明の必然的な衝突、そして日本の持つ東亜解放の使命、を大東亜戦争戦争開戦直後にNHKラジオ放送で冷静かつ論理的に説いて好評を博した大川周明の『米英東亜侵略史』を、大川に共鳴する佐藤優氏が解説。
私自身はこの立場にはかなり批判的(大川の様に東西文明の必然的対立を煽ると、今度はそれが欧米側の黄禍論を刺激して「東西文明の対決」が自己実現してしまうため)だが、汎アジア主義の内在的論理を掴む上で非常に参考になった。

◆3.日本主義・アジア主義を理解するための図書

竹内好 (著)『日本とアジア』

先ずアジア主義の総合的理解のためにお勧めの本。
著者・竹内好(たけうち・よしみ)氏は戦後の左翼論壇をリードした進歩的文化人の一人であり、その主張の要旨は「太平洋戦争(大東亜戦争)は、①英米との間では通常の帝国主義戦争であり日本が一方的に罪を負う必要はないが、②中国との間では明白に日本の侵略戦争であり、日本は中国に未来永劫に渡って謝罪し続けなければならない」とすることに尽きる。
同書は「中国の近代と日本の近代」(1948年)、「近代の超克」(1959年)、「方法としてのアジア」(1961年)など竹内氏の戦後まもなくから1960年代までの主要な著作が集められており、毛沢東の大躍進政策の絶賛・中共と違って徹底的な思想革命・国家改造に進めない日本への苛立ちなど現代の目から見て、ある意味で新鮮?な戦後左翼(中共シンパの戦後のアジア主義者)の論調が愉しめるお得な一冊でもある。
明治以降のアジア主義を概括的にまとめた評論や、北一輝や近衛文麿の支那との関わりについての評論も参考になる。
井上義和 (著) 2008.6刊日本主義と東京大学―昭和期学生思想運動の系譜

前記のように「日本主義」という用語には種々の意味合いがあるが、昭和初期にマルクス主義を始めとする西洋近代思想の圧倒的な思想的影響に歯止めを掛け、日本本来の国体を明徴すべきとした「純正-日本主義」の立場を最も端的かつ自覚的に示して政治的行動に至った日本主義者の系譜を実証的に追った貴重な一冊。amazon書評も参照。

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内容精査の必要なページ
単なるアジテーションではなく確りしたロジックに基づいた問題の検証が求められるため当面ペンディングとする


必要なページだが内容が大幅に不足しており正式ページと認めるのは時期尚早。

表現規制は反日問題ではなく「表現の自由」の制限に関する憲法問題であるのにその点を論理的に説明出来ないまま一方的なアジテーションに走ってしまっている。

TPPを賛否両面から考察したページ作りが必要であるのに一方に偏ったアジテーションに終始している。

以上は内容が 無責任に過激 なせいで管理者によって 閲覧禁止になってしまった ページ。

以上は同様の懸念があり、 今後閲覧禁止になりかねず早急な改善が必要 なページ。
■ 反日主義者・その他

興味深い内容を含むが現状では論理的な説得力が不足しており偏った印象を閲覧者に与えかねないため保留とする。

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