・前回(4回目)うpしたものの改訂版  改訂前のものも念のために下に追加しておいたので比べてみてください ・急いで継ぎ足ししたからおかしなところがたくさんあると思う  以前うpしたものも含めて後できちんと書き直すよー ・しかし、今のところ王都とか大陸とかファンタジー物で通してきたのに、  突然大名行列とか「月夜ばかりと思うなよ」とか世界観ごっちゃになりすぎですな 以上を想定して書いた。 ※これはあくまでサンプル例である。本シナリオではないことを注意すること。  製作物の権利云々などはスレのルールに則ります。 ——————————————————————————————————————— 委員長 「嬉しいけど、残念ながら私は普通の家の子よ」 主人公 「そうなの?」 委員長 「ええ。それを言うなら……」 ●きゃーきゃー(なくてもオッケー)  ……最後の言葉は聞き取れなかった。  遠くから飛んできた悲鳴にかき消されたせいだ。 主人公 「な、何、今の声?」 委員長 「良いタイミングね」 主人公 「えっ」 委員長 「——お嬢様のお出ましよ」  ○○ちゃんのその言葉がまるでスイッチだったかのように、一気に廊下が爆発した。  ……いや、爆発したってのは比喩で、魔法が暴発したとかそういうことじゃあないんだけど。 ●きゃーきゃー(なくてもオッケー) 主人公 「な、なんなの? これっ?」  鼓膜を劈くような歓声。  歓声というより、ほとんど怒鳴り合いに近い。  っていうか、実際に押し合い圧し合いの大喧嘩になっているんだけど! 委員長 「こっちよ、主人公ちゃん」  ○○ちゃんに腕を引かれ、人の波に逆らって廊下の端っこへと向かう。  こういう事態に慣れているか、彼女は迷いのない動きで隙間を縫って上手く抜けていく。  おかげで、周りの人たちと強くぶつかることもなく、人口密度の少ない場所まで出ることが出来た。 ●階段(なかったら廊下で) 主人公 「もう、一体どうしたっていうの……」 委員長 「ほらほら、階段を上がって。そこからならよく見えるわ」 主人公 「え? え?」  押されるがまま2段ほど上ってみると、確かに人の壁に囲まれていた廊下の一部分がよく見えるようになった。  さきほど私たちが歩いていた場所に妙な人だかりが増えている。  人だかり……というか、それはまるで何かを警備しているガードマンのようにも思える。 主人公 「……ねえ、何が始まるの?」  ○○ちゃんが私の質問に答えを返す前に—— 主人公 「……あ……」  ——その人は現れた。 ●使いまわせるような【お嬢】のスチルとかあるといいかもしれんね 委員長 「……あの方は楽士専攻の3年生、××先輩。お家も代々楽士を輩出してきた名門というお話よ」  黄色い声が飛び交う中、そっと囁くようにして耳元に○○ちゃんの息が吹きかかる。 委員長 「つまり、私なんかよりもよっぽどお嬢様らしい本物のお嬢様ということ」 主人公 「本物の……お嬢様……?」  遠目にしか見えない上に何故かそっぽを向いていて、××先輩の表情はここからじゃよく見えない。  確かに、彼女の周りに漂っている雰囲気はお嬢様って感じがするんだけど……。  私の中で勝手に作られていた、淑やかで、清楚で、ふわふわしたお嬢様像とはちょっとかけ離れていた。 親衛隊 「はーい、危ないでーす、あまり押さないでくださーい」  ふと、その××先輩をガードするように囲んでいる女の子たちの腕に腕章のようなものが取り付けられていることに気付く。 主人公 「……あの子たちは?」 委員長 「××先輩の親衛隊を気取っている1年生。あの方に憧れる子は多いの」 主人公 「親衛隊って……すごいね」  いわゆるアイドルってやつなのかな。  当たり前のことだけど、畑とカカシに囲まれて育った私とは住む世界が違うみたいだ。 委員長 「慕われている本人は騒がれることに嫌気が差しているみたいで  よくあちこち逃げているところを見かけるんだけど、結局いつもああやって彼女たちに掴まっているの」 主人公 「ふうん」 委員長 「それだけ親衛隊の包囲網と情報力と人海戦術は優れているということね」  それって……どんな組織なんだろう、一体。 委員長 「まあ、親衛隊といっても彼女たちが勝手にそう名乗ってやっているだけであって、  実際のところは、ただの非公式ファンクラブといった感じかしら」 主人公 「そうなんだ……」 委員長 「噂では親衛隊の中にも、裏で暗躍する凄腕の隠密部隊が存在しているなんて話も耳にするけど……」 主人公 「お、おんみつ?」 委員長 「ええ」  真剣な顔で頷く○○ちゃん。 委員長 「月夜ばかりと思うなよという捨て台詞で、掟を破り里を抜けようとした者を容赦なく切り捨てるという、伝説の隠密が……」  ……いや、これは彼女お得意の冗談のつもりなんだろうな、きっと。 ●階段(なかったら廊下で) 主人公 「まるでお祭騒ぎだね」 委員長 「まるで、じゃなくて、実際彼女たちにとっては毎日がお祭みたいなものよ。  憧れの××先輩のお姿が間近で見られるんですもの」 主人公 「○○ちゃんも××先輩のファンなの?」 委員長 「いいえ。私はあまりそういうことに興味はないから。どちらかというと、  ああやって追いかけるよりも、こうして遠くからみんなの様子を観察している方が面白いわね」 主人公 「へえ……」 ●使いまわせるような【お嬢】のスチルとかあるといいかもしれんね  少しずつ××先輩の姿が近づいてきた。  きゃあきゃあと黄色い声を上げて慕ってくれる周囲の人間には目もくれず、  早く終わってくれと言わんばかりの雰囲気で、すたすたと先を歩いていってしまう。  と。 主人公 「あれ?」  遠目でしか確認できなかった××先輩が目の前を横切る瞬間。 ●フラッシュバック?  人垣の合間から微かに見えたその横顔が、とても見覚えのある人の顔に思えた。 主人公 (今の……村に来てた楽士のお姉さんに似てたような……)  あ、いやでもあれって、私が今の自分の腰ぐらいまでの身長しかなかった頃の話で、あの人はもう立派な大人だったし……。 主人公 (うーん?)  他人の空似?  ……どうしよう、ちょっと気になる。  再度確かめてみようにも、××先輩の足は速くてすぐに見えなくなってしまった。  せめてもう1回……。 委員長 「主人公ちゃん?」 主人公 「ごめん、すぐ戻るから待ってて!」  階段を下りて、××先輩を熱く見つめている人たちの壁に潜り込む。 ●真っ暗 主人公 「ううっ」  せ、狭い……。  けど、この集団自体が××先輩の後を追いかけているみたいで、どうにか進行方向に進むことはできそうだった。  人並みを掻き分けながら、軽く跳ねて前方を見る。  あと……もうちょっと……! 主人公 「わっ!?」 後輩 「きゃっ」  上ばかり気にしていて、足もとがお留守になっていたせいか。  私は、何か小さなもの……いや、人にぶつかって、危うく倒れ込んでしまうところだった。  すんでのところで巻き込んでしまった女の子の腕を掴む。 主人公 「ごめんね、大丈夫?」 後輩 「っ……全然大丈夫じゃ……」  キッと強く睨みつけてきた女の子は、次の瞬間、慌てたように前方を振り返り、 後輩 「ああもう! ××先輩が行っちゃうじゃないのっ!」  私を置いて人波の中に潜りこんで行ってしまった。 主人公 「え、ねえ、ちょっと……わっ、わわわっ!」  その小さな背中を追いかけようとした私も、後ろから来る人波に攫われていく。  これじゃあ××先輩の顔を確かめるどころじゃないよ……。  何とかして脇に避難しようとしていた私の腕を誰かが強く引っ張った。 委員長 「こっちよ」 主人公 「あ、あれ……○○ちゃん?」  引かれるがままにするすると列から外れ、難なく元いた位置まで戻ってくることができた。 ●廊下 主人公 「……すごい」 委員長 「コツさえ掴めば、あれぐらい簡単よ」  にこにこ。  ……うーん、計り知れないな。 委員長 「急に走り出していくからびっくりしたわ」 主人公 「あ、ごめん。ちょっとさっきの××先輩が気になって」 委員長 「気になる? 主人公ちゃんもファンクラブに入りたいのかしら?」 主人公 「いや、そういうのじゃなくて……」  うーん、なんて説明したらいいんだろ。  考え込む私を見て、○○ちゃんは大体の事情を察したのか、 委員長 「××先輩ならまたすぐに会えるわ。同じ学園の生徒なんですもの  それよりも荷物、重いでしょう? そろそろ寮の方へ向かいましょうか」 主人公 「……うん、そうだね」  また会えるよね、きっと。  私たちはそのまま階段を降りて、未だ興奮冷めやらぬ廊下を後にしたのだった。 ——————————————————————————————————————— ・ここから下が改訂前のもの  上のお嬢が親衛隊に嫌気が差している=ちょい冷めた感じがするのに対し、  こちらは満更でもないご様子で高飛車なイメージがあるかも?  あんまピリピリしてるとコメディにならんから、ボツって正解だとおもー。 ——————————————————————————————————————— 委員長 「嬉しいけど、残念ながら私は普通の家の子よ」 主人公 「そうなの?」 委員長 「ええ。それを言うなら……」 ●きゃーきゃー(なくてもオッケー)  ……最後の言葉は聞き取れなかった。  遠くから飛んできた悲鳴にかき消されたせいだ。 主人公 「な、何、今の声?」 委員長 「良いタイミングね」 主人公 「えっ」 委員長 「——お嬢様のお出ましよ」  ○○ちゃんのその言葉がまるでスイッチだったかのように、うるさいほどだった周囲の喧騒がゆっくりと止んでいく。  それは引いていく波の様子によく似ていた。 主人公 (……何が始まるの……?)  わけがわからずきょろきょろしているのは私だけ。  周りの人たちは慣れた様子で、みんな揃って廊下の真ん中を開けるように移動している。 委員長 「この学園で平穏無事に過ごすためには、覚えておかなくてはならないルールがあるわ」  私の手を引いて、○○ちゃんも同じように廊下の端に隠れる。 主人公 「ルール?」 委員長 「食堂は必ず年功順に使うこと」 主人公 「しょ、食堂?」 委員長 「お手洗いで先輩方と鉢合わせたときは必ず下を向いて部屋の隅に控えること」 主人公 「え、それって急いでる場合はどうすれば……」 委員長 「阿部先輩には近づかないこと」  誰?  ちんぷんかんぷんになっている私をそっと振り返り、悪戯っぽい笑みを浮かべる。 委員長 「そして……あれを見て」  言われたとおり、彼女の視線の先を辿ってみる。  さきほど私たちが歩いていた場所に妙な人だかりが増えていた。  人だかり……というか、それはまるで何かを警備しているガードマンのようにも見える。 委員長 「あの集団に目をつけられるような行動は控えること」 主人公 「なん……なの、あれ」  ○○ちゃんが私の質問に答えを返す前に。  水を打ったような静けさの中—— 主人公 「……あ……」  ——その人は現れた。 ●使いまわせるような【お嬢】のスチルとかあるといいかもしれんね 委員長 「……あの方は楽士専攻の3年生、××先輩。お家も代々楽士を輩出してきた名門というお話よ」  囁くようにして、耳元に○○さんの息が吹きかかる。 委員長 「つまり、私なんかよりもよっぽどお嬢様らしい本物のお嬢様ということ」 主人公 「本物の……お嬢様……」 ●廊下 親衛隊 「どいたどいた〜っ!」  大名行列の先頭に立つ女の子たちが、しんと静まり返った廊下で声を張り上げている。 主人公 「……あの子たちは?」 委員長 「ああ、××先輩の親衛隊を気取っている1年生ね。あの方に憧れる子は多いの。  先輩もまんざらではない様子だから、ほとんど公式ファンクラブみたいなものらしいわ」 主人公 「ファンクラブって……」  田んぼとカエルに囲まれて育った私とは、当たり前だけど全然世界が違うなぁ。  と。 主人公 「あれ?」  大名行列が目の前を横切る瞬間。 ●フラッシュバック?  人垣の合間から微かに見えた××先輩の横顔が、とても見覚えのある人の顔に思えた。 主人公 (今の……村に来てた楽士のお姉さんに似てたような……)  あ、いやでもあれって、私が今の自分の腰ぐらいまでの身長しかなかった頃の話で、あの人はもう立派な大人だったし……。 主人公 (……うーん?)  他人の空似?  ……どうしよう、すごく気になる。  訊いてみようにもこの人だかりじゃ無理だよね。  せめてもう一回ぐらい見えれば……。 主人公 「んー」  背伸びをしてみる。  ……見えない。  親衛隊と廊下の端で××先輩を熱く見つめている人たちの壁で、完全に遮られてしまっている。  じりじりとカニ歩きをしながら、軽く跳ねてみる。  あと……もうちょっと……! 後輩 「ちょっと、あなた」 主人公 「え?」  気が付くと、必死に背伸びしている私の前に小さな何か……いや、人がいた。 後輩 「そんなにジロジロ見て、××さまに失礼じゃないの」  わ、しまった。そんなに目立ってたかな。 主人公 「ご、ごめんね」 後輩 「……ふん」  小さな女の子は鼻を鳴らしていってしまった。  ……あ、ええと、今のってもしかして目を付けられちゃった? ルール違反しちゃった?  恐る恐る周りを伺うけれど、みんなは××先輩の姿に釘付けのようだ。  彼女が小声で注意してくれたおかげか、誰も私のことを気にしている人なんていなかった。 委員長 「……主人公ちゃん」  後を追ってきた○○さんに手を引かれ、急いで元いた位置まで戻る。 委員長 「急にいなくなるからびっくりしたわ」 主人公 「あ、うん、ごめん」  なんか謝ってばかりだな、私。  それにしても、さっきの人……やっぱりちょっと気になる。 委員長 「荷物、重いでしょう? そろそろ寮に行きましょう」 主人公 「……そうだね」  まあ、同じ学園なんだからまた会えるよね、きっと。