☆『HUGっと!プリキュア』が案の定、バックレました


 『HUGっと!プリキュア』が案の定、バックレました。

 このコーナーでも何度かお届けした通り、何週かが経過して、基本的な設定がわかった時点で、このお話が物語としてきちんとした結末を迎えるのは至難の業だ、という予想を私は立てました。

 というのも。

 ジョージ・クライを倒してハッピーエンドという形で話を進めようとすると、何をどうしても、タイムパラドックスが発生し、物語が根本から崩壊するからです。にも関わらず、アニメはこの終わり方をしましたね‥‥みなさん、本当に納得していますか? 物語の途中で提示された謎や伏線は本当に皆さんの中で解決しましたか?
 私がこのコーナーで立てたHUGプリの終わり方の予想は

①絶望的なまでの困難を乗り越えて、きちんと物語として完結する。
②感情論に話を持っていき、視聴者が論理的思考から離れている間に物語を終わらせる。
③気が付くと、どこからか全く新しい敵が現れて、その敵を倒したところで終了‥‥視聴者が「そもそもの敵との戦いの理由って何だったの?」と我に返ったときには、すでに次のプリキュアの物語が始まっている‥

 『キラキラ☆プリキュアアラモード』は③の終わり方をしましたね。②はプリキュアではありませんが朝ドラ『あさが来た!』が、この終わり方をしたので紹介したと思いますが‥‥今回はこのパターンでした。
 本来であれば、この他に「計画的に作られたプロットに従って、普通に物語として完結する」がある筈なのですが‥‥シリーズも15作目になって、目新しさと物語としての蓋然性の両立が難しくなっている模様‥‥

 「ジョージ・クライを倒してハッピーエンド」が成立しないのは何故なのか?
 物語では、未来でクライアス社?にプリキュアが敗北し、キュアトゥモローがアスパワワを使い切って過去の世界へ逃げてくる(しかも終盤の回想シーンでは他のプリキュアは単にミライクリスタルを奪われたのではなく、殺されてしまったことを連想させている)ところから始まります。そして、彼女たちが敗北した原因はクライアス社がどうというよりも、未来がトゲパワワで覆いつくされてしまっていたからである、という展開を見せます。
 もし、ジョージ・クライを倒してハッピーエンドなら、その後の世界がトゲパワワで覆いつくされるという事実そのものが消滅したことになります。もしそうなら、未来でプリキュアが敗北することは絶対になく、はぐたんが未来からやってくるという最初の物語が存在しなくなるのです。はぐたんが未来からやってくるという事実が消滅していない、ということはエールたちの頑張りに関わらず未来の地球はトゲパワワで覆いつくされ‥‥クライアス社やジョージ・クライの動向に関わらず、世界は破滅していることになります。
 いやもう、全然、ハッピーエンドになってないし。

 そう考えると、はなたちが暮らしている現在と、はぐたんやジョージ・クライがやってきた未来が連続した時間軸にある、という考え自体が間違っているのではないかという発想にたどり着きます。
 そう「パラレルワールド」。
 表立っては出てきませんが、これがHUGプリの重要なキーワードであるような気がします。
 「パラレルワールド」と言われるとええ~と思うかもしれませんが。
 「パラレルワールド」を別の言葉で言い換えれば「無限の可能性」。
 そう「何でもできる、何にでもなれる」と主張し続けたHUGプリは、そもそもがパラレルな未来へのアクセスをテーマにした物語であるとも言えるのです。
 で、はなたちが暮らす現在とはぐたんたちがやってきた未来がパラレルな時間軸にあるとすると。
 はなたちが活躍したことにより、とりあえず彼女たちの時間軸の世界は破滅から救われたのかもしれません。これは連続した時間軸の物語だと考えた時のカオス感よりは一歩前進。ただ、この場合はもっと明確に、はぐたんたちがいた世界は破滅から何ら救われていないのですね。
 いずれにしても、ジョージ・クライを倒し「現在」を救った後で、「未来」を救う戦いをしなければ、HUGプリは物語として完結しないはずなのです。
 が。
 未来でエールたちが戦うべき敵とは‥‥当然、すでに倒されてしまったジョージ・クライやクライアス社ではなく、世界をトゲパワワで覆いつくしてしまった人類の悪意そのもの、ということになるのですね。
 このラストバトルをどうするか‥‥それが私的には最大の関心事だったのですが‥‥見事にバックレてしまいましたね。

 ちなみに、ラストバトルがそこに設定されていたことを思わせる数々の伏線があります。
 まあ、初期に明かされた基本設定もそうなのですが。
 ジョージ・クライがラストバトルの最中に、どうも未来のはならしき女性が移った写真を持っていましたね。また、ラストシーンではどうやらはぐたんが未来からやってきたはなの娘であったらしい展開も‥‥そしてよく見ると、はなたちのその後を描いた物語で、クライアス社の面々がはなたちの周囲に関係者として登場してくるではありませんか。
 これらを鑑みると、クライアス社とは、そもそもはなたちの周囲にいた人々作った会社なのではないか、と思えるのです。すると、もしかしてジョージ・クライははなの未来の旦那さまだった?という可能性も浮上します。
 そう考えると、色々な謎が符合していきます。
 ます、そもそもクライアス社がプリキュアをつくったのではないかという話‥‥オシマイダーを作り出し、それをプリキュアに浄化させることで世界のトゲパワワを減らしていこう‥‥というのが本来のクライアス社の目的であったという予想。ジョージが何度も「はなが犠牲になる」と言っていた意味‥‥ジョージがはなの旦那さまであった場合、はなが犠牲になったことで彼が未来に絶望したのだとしたら? そしてはぐたんを捕まえようとしたのも、はなに続いて娘の「はぐみ」も犠牲になる‥‥のを防ぐためだとしたら? はなたちの時代で時間を止めようとしたのも「はなが犠牲になる」未来を拒絶するためだとしたら?
 おそらく、本来はHUGプリはそういうお話としてつくられたのではないでしょうか?
 ただ、そうすると、どうしても「真の敵」は悪意で行動する一般の人々となり‥‥一部の視聴者(それも、ネットで大騒ぎする人たち)に喧嘩を売ることになるのですね。それを考えに考え抜いた結果‥‥バックレた、としか考えられないのですが‥‥
 はぐたんが、どうやら未来から来たはなの娘らしい、というのもはなたちの現在とはぐたんの世界が別の時間軸であることの傍証ですね。遠い未来のことであるなら、未来がトゲパワワで覆われていたとしても、それがはなたちのせいではない可能性もありますが、はぐたんがはなの娘であるならば、はなたちはプリキュアであるにも関わらず世界がトゲパワワで覆われるのを放置したことになります。或いは防げなかったのか。その結果を知っているジョージに「未来は変えられる!」と啖呵をきったところで‥‥「君たちが未来を変えられていないからこそ、私は今、ここにいるんだが?」としか返答しようがないわけですが‥‥そして未来のはなたちが世界がトゲパワワに覆われるのを防げなかったのに、中学生のはなたちが未来へきたところで世界を覆うトゲパワワを浄化できるわけがないわけで‥‥やはり物語は破綻してしまうのですね。

 ちなみに、はなの暮らす現在とはぐたんが来た未来が別の時間軸にあったと考えても、色々矛盾する設定があったりするのですが、それはおそらく、この物語がパラレルワールドにアクセスすることにより、何度も周回を繰り返した上で始まった物語である、と考えれば解決します。
 おそらく、最初は中学生のはなたちはプリキュアにならず、大人になってからクライアス社の技術によりプリキュアになったのでしょう。作り物のプリキュアなので出来ることは少なかったけども、そこに希望の光として現れたマザーの力‥‥それこそが「無限の可能性」の扉を開く力、つまり「パラレルワールド」の扉を開く力であり‥‥その力を研究する中で、ジョージは例の本を作り出す‥‥そして、世界がどうあがいても救えないと判断したとき、マザーの力を呼び出して、その本をパラレルワールドのジョージに渡す‥‥を繰り返していたのではないかと思われます。
 ついでに言うと、マザーの力がパラレルワールドにアクセスするもの、というのを傍証するのが、その「マザーの力」を受けついだはぐたんが、他のプリキュアを呼び寄せるという展開であったのかも知れません。
 ジョージがミライクリスタルを集めていたのは物語の初期では「時間を止めるため」と説明されていますが、ラストバトルの最中に「時間を止めたのは私ではない」と言い出します。ドクタートラウムが時間を止める装置を作っていたのだからどこまで本当かはわかりませんが、逆に、そのことによって、時間を止めるためだけならミライクリスタルがなくてもよい、ということが明らかになります。
 では、何故ミライクリスタルが必要だったのか?
 ミライクリスタルを集めることで「マザーの力」を発動することができるから、とは考えられないでしょうか?
 ジョージとの戦いで本が破壊されたのも、悪のアイテム(未来を知るのはよくないかもしれないが、そもそもそれで悪のアイテム呼ばわりされたらたまったものではないのだが)を破壊した、わけではなく、もう周回を繰り返す必要のない真の平和が来た(はなたちの世界限定ですが)という証なのかもしれません。ただ、本当はその後で、はぐたんたちの世界を救わなければならないんだけども‥‥

 いずれにしても、ジョージは本当はそんなに悪い奴ではなかったんじゃないかと思われるのですが‥‥

 物語の中で主張してきた「何でもできる、何にでもなれる」という主張は素晴らしかったのですが‥‥

 この終わり方‥‥納得できないなぁ‥‥


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最終更新:2019年02月01日 07:54