☆『ダメ質問にダメ回答する悲劇』


 少し前、某アンケートフォームで以下のような質問が出ていました。

 「引退後、指導者になるよりタレントになる人が多いスポーツは何だと思いますか?」

 まあ「思いますか?」と質問しているわけなので、あくまで主観で答えればいいだけ‥‥と思いきや、これ、とんでもないダメ質問です。

 私がアンケートフォームで一番イラっとするダメ質問は、クイズの出題をしてくるやつなのですが‥‥出題してくる以上、どこかに正解を書かないと意味ないと思うんですけどね‥‥アンケートフォームでやることじゃない。 というか、そんな質問、サイトの管理者が採用しなければいいのに‥‥見つけるたびにイラっとします。

 で、上記の質問の何がダメなのかというと。

 シンプルに、引退後にタレントになる人が多いスポーツは何だと思いますか? なら、主観で答えるだけなので別に構わないのですが、この質問では「指導者になるより」と、指導者になった数とタレントになった数の比較を要求してきています。
 で、選択肢として挙がっていたのが(全部ではないですが)、以下のスポーツ

①野球
②サッカー
③ボクシング
④フィギュアスケート
etc

 「引退後に指導者になった人の数」と「引退後にタレントになった人の数」の比較を要求している以上、「引退」の基準となる「現役」が何なのかという分母の定義が必要になってくるわけですが‥‥
 その競技の経験者をすべて「現役選手」とした場合、野球とサッカーの分母がとんでもなく大きくなってしまいます。 当然、指導者となる人の数も膨大になり、そもそも野球とサッカーがこの質問の選択肢にあること自体がおかしな状況になると言えます。
 では、プロとして活躍した選手、というのが分母だとした場合、フィギュアスケートが選択肢にあることが不適切な状態となります。 フィギュアスケートで現在プロと呼ばれているのは競技スケーターではなくショースケーターのことであり、タレントとして活動している人も多くは現役のプロスケーターです。 ショースケーターを引退した人で‥‥と質問しているわけではないですよね、当然。
 では、プロかアマかに関係なく、オリンピックなどの国際大会に日本代表として出場したことのある選手、を分母とした場合はどうでしょうか? この場合、ボクシングの立場がおかしなことになります。 国際大会で日本代表として出場するボクシング選手はアマチュア限定で、プロはそうした大会に出場することができません。 しかし、村田選手が例外なだけで、アマチュアで活躍した選手がプロでも活躍‥‥という状況になっていないのがボクシングという競技。 そして、プロで活躍したボクシング選手は、結構な確率でタレントになっている気がしますが、アマチュアで活躍したものの、プロでは無名だった選手がタレントになっているかというと‥‥ちょっと思いつかないんですが‥‥でも、質問者はプロで活躍したボクシング選手を念頭に質問をしている、と考えるのは私だけでしょうか?

 結局、分母をどう設定しても、選択肢に入っているスポーツのいずれかが不適合となってしまうという‥‥質問者も、ちゃんと考えて質問しろよ‥‥というか、こんな質問、採用するな~!


 でもまあ、アンケートフォームの話であれば、イラっとするだけで済むのですが、こういったダメ質問が、TVの法律相談なんかでも見られ、それへの弁護士の回答が質問のダメな部分に言及していないために視聴者へ誤解を与えかねない状況になっていることが、ままあるのです。

 例えば、20年くらい前ですがフジテレビの「ジャッジ」という番組で、創業以来継ぎ足して続いていた秘伝の焼き鳥のタレを壺ごとダメにした客が秘伝のタレに店主がつけた高額の賠償金を支払わなければならないか、という質問に対し、パネルで表示された回答は「支払わなくてもよい」でした。 タレが創業以来続いたものであるかは法律上は考慮されることがなく、原材料費と壺の代金を弁償すればよい、という判断。 ただ、補足として、その秘伝のタレが失われたことにより、実際に店舗の売り上げが減少したことが確認できれば、一定期間については、その売り上げの減少分をタレを台無しにした人が全額弁償しなくてはならない、とのことでしたが‥‥しかし、パネルに表示されているのは「支払わなくてもよい」で、テロップで表示されたのも「支払わなくてもよい」の文字だけ。 当時、私は「これ、絶対都合よく誤解する人が大勢出るよな‥‥」と不安になったものでした。 ちなみに、このときゲストだったベッキーのコメントがムカついたので、以来彼女のことが大嫌いになり、例のゲス不倫騒動では、一切同情する気にはなりませんでしたね。 まあ、関係ないけど。

 結局、質問の中に、回答すべきポイントが複数あり、それぞれに正反対の解答がつく場合、どちらか一方への回答がメインになってしまうために、こういった状況が発生してしまうのですね。


 最近では、半年くらい前、NHKの「生活笑百科」で、社員たちが繁忙期であるためお盆を前半と後半にわけて休んでいる中、アルバイトである相談者が、直前にお盆期間をフルに有給で休むことが可能か、という内容の相談がありました。
 で、弁護士の回答は「可能である」だったわけですが‥‥

 違うだろ~ 違うだろ違うだろ 違うだろ~!

 確かにアルバイトであっても、一定上条件を満たせば、有給休暇を取得することは可能で、その日数も、相談者の場合は、お盆期間をフルに休むに十分な日数に達していました。
 でも。
 繁忙期などで、有給を使われると業務が正常に行えなくなる、などの特別な理由がある場合、やむを得ない理由である場合を除き、雇用者は労働者に対し、その期間内での有給の取得を拒否できるという規定もある筈です。
 勿論、他の社員たちが自分たちの休暇の日程をずらしてくれれば相談者がお盆期間をフルに休むことは可能かもしれませんが、社員たちでさえお盆期間をフルに休むことが許されていないのに、相談者だけが特別扱いされる理由はないわけで。 また、有給を申請するのがお盆の直前であることもネックで。 すでに休みの予定を入れている社員たちは、新幹線や飛行機、宿の予約を済ませているわけで、お盆という特殊な期間に直前に別の予約をするのは普通に無理と思われ。
 なので、正しい解答としては「アルバイトであっても、相談者の場合には、お盆期間をフルに休むだけの有給を取得することは可能である。 ただし、今回のケースでは、申請が直前であり、他の社員が休みをずらすことが現実的に不可能な状況であり、繁忙期であることから、そのような状況下で、相談者が有給を取得することを会社側は拒否できると思われます。 来年度以降であれば、他の社員と休暇の日程を調整することは理論上可能ですが、相談者だけがお盆期間をフルに休むということは、同僚の理解を得られないと思われるため、実際には困難であると思われます」だと思うのですが。

 ダメ質問には、気を付けた方がいいと思うのですが‥‥

 この番組のせいで、日本のあちこちで、不毛な争いが発生していないことを切に願います。



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最終更新:2018年03月08日 12:40