2010年度1年生懇親キャンペーン第2話後半(ナツミ視点)

意味が分からないけどそう言い表すしかなかった。目の前にいる少女は私と瓜二つの外見だった。違うのは髪の色だけ。というよりも私を元に作られた精巧な人形がそこにいるようだった。
「あなたのこといろいろと見ていたけど、そんなに自由な訳じゃないんだね。」
聞き覚えのある声。私を襲った時のあの声。
「あなたは、誰?」
「フフッ♪」
彼女は笑うだけだった。その態度にいらだちを感じていた。
奥の陰から谷島が現れた。脇にもう一人、おそらくアイオロスと思われる人物がいた。
ワーディング。
「・・・来たようだな。」
「これはどういうことなの。教えて!!」
谷島は黙ったままだった。その仮面の奥に隠してあるもの、彼が隠している秘密を知りたくなった。だから<止まらずの舌>を使った。
「そんなに知りたいのか?なら、教えてやろう。」
うまくいったみたいだ。饒舌にしゃべっている。
「俺はかつてこのサンプルの研究をしていた。こいつは元々はジャーム化した人格と普通の人格を見分ける判別法を作るためのサンプルだった。だが、オルクス/キュマイラのその能力を上手く使えないかと上の方々は悩んでいた。複製体が開発できないかと研究していた。そのチームに俺はいた。」
その情報は知っている。莫大な研究費用と年月をかけた。しかし、それは
「上手くいかなかった。その実験でおまえのようなまがい物が生まれてしまった。」
えっ・・・!?私が、作りもの?
「なにを言っているの?私が作りものなわけないでしょ!?」
だって私は生まれたときから天涯孤独でUGNの施設にいて、UGNとしての訓練を受けて・・・。
「なにも知らないようだな。おまえはクローンとしては出来損ないだった。だが、おまえにはこいつと違って情報処理能力に優れていた。だからローザが引っ張りだしておまえを子飼いとして育てた。」
「嘘よ!!私が作りものな訳ないわ!!全部でたらめよ!!」
これは罠。谷島が私のことを陥れようとしているんだ。
だが、頭の中にある記憶が蘇った。
それは、私が谷島と初めて出会ったとき。それも今ここにいる仮面の男ではなく、写真で見た爽やかな印象の男性の話。
数年前。私が覚えている一番最初の記憶。私は彼に出会っている。
「アイツが自分に都合の悪いことをおまえに言わないさ。」
「ローザ様がそんなこと」
するわけない・・・。そう信じているのに心の奥底でそれを否定する自分がいる。そもそも谷島が今言っている言葉は<止まらずの舌>で私が吐かせている言葉だ。
頭の中で記憶の欠片が繋がっていく。UGNの施設にいた時、初めての任務に参加した時、それでも幼少期の記憶が思い出せない。
何で幼少期の記憶がないの?どうしてUGNが正義だと感じるの?任務のために飛ばされるのは何故?ねえ、任務に振り回されているって感じたことはないの?どうして答えられないかわかる?それはオマエが

ツクリモノだからだよ。


「あなたは何でそんなことを言うんだ!!」
竜之介君が叫んだ。けど、谷島はただ笑っているだけだった。
「わかったようだな。そう、おまえはまがい物なんだ。フハハハハ。」
私の心に最後の一撃を喰らわせて、彼は姿を消した。
「意外と脆いのね。」
無垢なる凶鳥が嘲笑っていた。私には反論する気力が無かった。
「あなたはこんな奴に従っていていいのか?こんな悪逆非道な奴に従っていいのか!?」
「どうして?私はこの女が憎いだけよ。私が研究施設にいる間、あいつは自由に飛び回っていたのよ。」
「だからといってあの男の言いなりになってもいいのか!?」
あいつはただ笑うだけだった。
「君がそういう態度ならしょうがない。だが、」
彼はいったん言葉を遮った。それはあいつに想いを告白するようだった。
「妄想だって言われてもいい。笑われてもいい。それでも僕は、あなたを守る!!」
「さあて、始まるか。」
アシュレイのその言葉を最後に戦闘が始まった。
(敵:無垢なる凶鳥+ハト2体とアイオロス+ハト2体がそれぞれ5m先にいる。)
私はただ幸せでいたかった。それが作られたものだとしても。でも、それは目の前で崩れ落ちた。憎むべき人は?真実を告げた谷島?それとも真実を隠したローザ様?
違う。
私が憎むべき対象は真実そのもの。
無垢なる凶鳥。
私は彼女が憎かった。あいつさえいなければ。あいつさえいなければ私は私でいられたのに。あいつが私の存在を否定する。あいつが私が人であることを否定する。その姿、その存在が私にとって不快だった。
私の心に目覚めた憎悪の炎。私の手ではそれを消すことは叶わなかった。
<幸福への導き>
ただ、自分自身を慰めるために、そのためだけにやっていた。みんなが強くなるのはそれがただ漏れているだけ。誰かのため?そんなものじゃない。何も見えなかったし何も見たくなかった。
(戦闘内容:行動値の遅さから相手全員→こちら全員の順番。ナツミと夏常さんが暴走状態。1ターン目でハト消滅。そこから無垢なる凶鳥を集中攻撃だが、イージスの盾+波紋の方陣で通らない上に彼女の回避が高くて当たらない。<妖精の手>使っても当たらないって・・・)
「すまない、約束を守れなくて。」
竜之介の一撃があいつの胸を貫いた。貫いた腕を放すと、重力に逆らうこともなく彼女の体は崩れ落ちた。
「あなたは何者なの!?教えてよ!!」
その問いにあいつが答える訳なかった。
「あなたは私が憎いの?」
鳥のさえずりのようなかわいい声。あの一撃を受けても尚、あいつは立っていた。
「憎いわ。あなたがいると、あなたがいると私が私でなくなるのよ!!」
「そう、なら私を殺していいわ。」
彼女の性格が変わっていたことに私は気づいていなかった。私の中の憎悪の炎が彼女にナイフを突き立てようとする。
<波紋の方陣>
思いがけない方向からの波動によって私のナイフは止められた。
「いいかげんにしろ。」
風弾の射手が静かに語る。だが、あいつはその言葉を遮って
「いいのよ。あの子がそう望むのならいいわ。」
そう言って、私に<ハンドリング>でナイフを送った。
迷うことなんてなかった。ナイフを握り直して、あいつに向かって走り出していた。
それを理樹と竜之介が止めた。
「離してよ!!なんであの女の味方をするの?」
「そんなことをして本当にいいのか?」
「どうして?彼女を殺さないと私という存在がないの。あの女がいると私は私でなくなるの!!」
「たしかにそうかもしれない。でも、今彼女を殺したらあなたはきっと後悔する。」
意味が、わからなかった。私にとってあいつは私の存在を否定するもの。ただそれでしかない。
「どうして後悔するの?それはあなただけの考えでしょ。」
説得が失敗したと悟ったのか、理樹は私の後頭部を叩いた。気絶することはなかったが、しばらく立てなかった。
「こんなことがあってもおまえはFHにいるのか?」
夏常さんが風弾の射手に話していた。
「ああ。」
「ならしょうがないな。その悪行を止めるためにおまえを殺す。」
「フッ。だが、今日のところは引き上げさせてもらおう。」
その言葉とともに風弾の射手の姿は消えた。
帰り道。
私はとぼとぼと家に向かっていた。その後ろに無垢なる凶鳥がついてきた。
お互いに話す言葉もなく、ただ歩いていた。
どうしよう。
殺そうなんて気力はもう私にはなかった。家に着いても黙ったまま向かい合って座っていた。
「あなたの名前は?」
わからない、と言われた。
「あなたは何者なの?」
わからない、と言われた。
「私も自分がわからない。自分が何者なのか、これからどうすればいいのかわからない。」
「自分が無いのなら、新しく作ろうよ。」
自分の心の中で何かが弾けた。何でこんなことで悩んでいたのだろう。
「・・・そうね。」
短い一言。
でも、私を決意させるには十分だった。
「そうした方がいいのかも。」
しかし、決意を口にしたものの心の中に蟠りがまだ残っていた。それを振り払うように明るく取り繕って、
「それなら生活の準備をしなきゃね♪でも、名前がないと何かと不便ね・・・。」
ふと、花瓶にあった霞草が目に映った。
「そうね、加純って名前でいい?」
向こうはこくりと頷いた。
「よろしくね、加純。」
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