【ムエタイを軸とした宗教国家】
アフガニスタンの辺りに存在した宗教王国。ムエタイという独自の格闘技を主軸としたムエタイ教という宗教を権威とした王政が敷かれている。四千年の歴史を誇り、独自の宗教教義の下、地球連邦を含めた他国と距離を取ってきた異質の王国であり、部外者にしてみれば、中東の秘境として位置づけられていた。ハイパーボレアとタラーブルス自治州と隣接し、国土の北に海を持つ。
■ムエタイの業/ムエタイ教
ムエタイとは現地の言葉で「高貴な/神の」という意味の言葉。現地で宗教儀式として行われる格闘技にも同様の名称が見られる。イフシード大陸北部で信仰されているスーフィーに近い信仰といえるだろうか、身体的な運動の末に神との合一を図るものである。国民の99%がムエタイ教の信徒であり、他教徒は国境付近に少数存在するのみ。
▼ムエタイ教において、鍛錬は己を高める道
健全な身体には健全な精神が宿るというのを地で行くような教義を持ち、日頃からの鍛錬が往生する道であると教義に定められている。そのため、ムエタイ王国内の企業は定時に終了後、2時間ほど鍛錬の時間を設け、自社所有の鍛錬場で職員の鍛錬を援助することが義務付けられている。また、後述のシュピアード山で修行をすることが信徒の夢であり、シュピアード休暇なる3年もの有給休暇が正式に採用されている。兵役については徴兵制を採用しているが、一日中鍛錬ができるならと志願するものも多く、慢性的に兵員の供給が需要を超えている状態であり、ムエタイ王国が強大な軍事力を持つ一因となっている。
▼ムエタイ王国でのムエタイの地位は決して盤石ではない
ムエタイ王国でムエタイという格闘技が珍重されるのようになったのは、王朝が分家筋に変わったムエタイ暦1000年頃と言われる。それ以前のムエタイ技は分家筋の一流派にすぎなかったが、王の流派となったことで全国に普及した。ムエタイ教の普及前には国土の各地に民間宗教が存在し、ムエタイ教が各地の神や神話を吸収しながら教義化していったため、普及が容易に行われたとも言われているが、それと同時に地域による教義の差が発生する結果となり、王の権威を認めない異端のペシート派も発生することとなった。ムエタイ教は支配の根幹であるため、過去には他教徒の排斥も行われたが、機甲暦の導入後は他教徒の減少に伴い、その動きは見られない。
■王家・ブロワ家
ムエタイ王国の王家を脈々と受け継いでいる家柄。ムエタイ教の教義に「汝より強き者に従え。」とあることを大義に王家を存続させている。毎年聖地シュピアード山の麓で行われるムエタイ競技会の優勝者と王が戦い、挑戦者が勝利した場合は挑戦者が王位を受け継ぐことになっているが、必ず王家が勝つため、脈々と王家が続いている。というのも、この国でスターゲイザーに覚醒するのは王家のみであり、その能力を使って大抵の技を避け得るからである。王家の民族系統は不明。現地の民族は褐色系であり、現地民と混血を繰り返しているにも関わらず、生まれてくる子供は常に色素が極端に薄い。「ブロワ」という家の名は北方系とも言われているが、現地で「神の使徒」を意味する「バルフ」が鈍ったものとの説もあり、研究者の中でも意見がわかれている。
■異端派・ペシート派
ムエタイ教の異端派。王の権威を否定し、革命の中心勢力になったと言われる。本流が最高神とするブラフマーではなく、シヴァを崇拝する。破壊こそが全てだと説き、ムエタイの作法である「己と一体と為さば、刀を使わんことも止むことなし。」といおう一節(これが、ムエタイガーディアンの正当化の理由ともなっている)を曲解し、身の丈に合わない大剣や銃を振り回す。
■ムエタイ王国の地理
滅亡時点での人口は2000万人。面積は65万平方km。国土は山がち、少ない平地も砂漠が多く、少ないオアシスに多くの人が密集して暮らしていた。民族的にはアフガン系80%、イフシード系12%、フェニキア系6%、その他2%。
●王都・ナックモエ
首都のナックモエは周囲の砂漠が嘘のように水があふれた土地である。王家は神の恩寵だと主張していたが、科学的な理由はわかっていない。
●修業の場・シュピヤード山
ムエタイ技の修業の場。国内の最高峰。ナガプルが最初に降り立った地と言われ、ムエタイの修行者が多く訪れる。低層の密林に生息する猛獣との戦いや高層の薄い酸素の中での登山が強靭な肉体を生み出す。近衛兵団の入団条件の一つに、この山を一人で登り切るというものがある。
■ムエタイ王国の歴史
ムエタイ王国建国の歴史を語った書「スサーヤ」によれば、ムエタイ王国はムエタイ歴0年、旧暦紀元前2000年頃にブラフマーの子孫、ナガプルが戦乱下にあったこの地域をまとめて建国したとされる。確かにその頃のものとみられる「シャボルティー遺跡」ではある程度計画的に造られたとみられる城塞跡やブラフマーと見られる神を描いた絵画などが発見されているが、彼らが用いた絵文字(古ムエタイ文字と呼ばれている)はまだ解読されておらず、この遺跡が本当にムエタイ王国の原型となったものかはまだわかっていない。また、この遺跡からは第一次大戦直後に、ガーディアンのエンジンと思われるオーパーツも発掘されている。
世界滅亡時の気候変動で人口は激減したものの、奈落兵器の直撃を受けなかったためか、なんとか国家の体を維持し、秘密裏に各国のガーディアンの残骸を回収しては研究していたという。この頃の記録はムエタイ王国滅亡時に王家側が焼き払ったため、憶測の域を超えない。
今から9年前、機甲暦54年の8月に先王が死去し、幼いアリサが即位する直前にクーデターで滅亡、今でも現地では革命政府と反革命組織の小競り合いが続いている。なんでもこの革命にはディスティニーが絡んでいるとの噂も……。
新政府(国名をマータイ共和国という。マータイはムエタイの英語読み)は連邦に加盟しているが、ディスティニーとの黒い噂も絶えない
■ムエタイ王国の政治体制
ブロワ家を王家とした立憲王政が取られている。形式上は民主的な議会や内閣制度が整えられているが、何分宗教権威をも兼ね備えた王の「意見」の重さは絶大なものであり、憲法上は何の権限も持たない(宰相から委任を受けた場合には政治権限を持つことが可能となっている)にも関わらず、かなりの部分で意見を通していたと言われる。
強大な軍事力を持つが、文民統制はしっかりしており、指揮権限は宰相が持つ。一方で王家は私兵としてかなり強大な近衛兵団を有していた。
■ムエタイ王国の外交
長い歴史を持つためか、強固な宗教国家であるためか、非常に排他的であり、他国の宇宙進出を神への冒涜であると批判し、大戦期も中立を貫いた。
●レムリア王国
レムリアとは友好関係を築いていた。なんでもレムリアの魔法がスサーヤなどに書かれている神の技に酷似していることから、レムリアを神の使徒と崇めていたとかなんとか。
●敷島皇国
国土の高度が高いという共通点に目をつけ、技術や人員を供与することで、敷島独特の歩行戦車の技術を奪取しようとした。最新の各国ガーディアンの技術の一部も敷島経由で流入している。
●ラーフ帝国
表向きは敵対関係にあるが、王家同士の繋がりも噂され、詳細は不明。
●地球連邦
地球連邦のことを神の怒りに触れた逆賊であるとしてひどく嫌っており、未加盟。度重なる加盟要求も突っぱね、その度に国境地帯での小競り合いを繰り返しているが、持ち前の軍事力で乗り切ってきた。連邦と縁がなかったため、クラッシャーバトルには未参加。参加権があったら万年優勝だったのに!と惜しむ国民も多く、革命の遠因となったとも言われる。
第二次大戦が勃発した際に、国境地帯への進駐の許可を連邦軍が要求した際には、会議は紛糾したが、ハイパーボレアの脅威の前にいつも通り突っぱねるわけにはいかなかったのか、(表向きは)代償もなく、進駐を認める結果となった。会議の終局間際に担当の外交官が急遽本国に送還となり、結局会議をまとめたのは王本人であったという。条約締結後、王の様態が急変したというのは連邦の陰謀だったのではないかという噂も絶えない。
■ムエタイ王国の経済
高地が多いため、農業には不向き。高地での牧畜、ティラネウス海での漁業が中心。穀物や野菜はフェニキア共和国から輸入している。一方で地下資源は多く、ALTIMAの自給率は120%。独特に発展したガーディアン技術を中心に高い工業力を持つ。
地球連邦が地盤を固めた機甲暦30年頃から10年程の間、地球連邦未加盟を貫くムエタイ王国と地球連邦は断交状態にあり、経済制裁として、食糧の一切の輸入が禁止されていた。結果として都市の貧困労働者が飢餓に喘ぐこととなり、排他的な態度を貫く王政への支持は大きく落ち込んだ。機甲暦40年頃からはALTIMAの輸出の代償として食糧輸出が解禁されたが、国内で広がった格差は消えることがなかった。
■ムエタイ王国出身の著名人
●ナターシャ・ベルム
年齢:18 性別:女 身長:158cm 体重:44kg 瞳:碧
口調の特徴:オレっ娘。勝ち気な様子。
近衛兵団の隊長。滅亡時の階級は伍長。近衛隊長は少将相当なのだが、如何せん任命する権限のある人間がいないので伍長のまま名乗っている。アリサの乳母子。年齢的には二ヶ月ほど妹になる。近衛兵団の隊長になったのは王国滅亡後で、前隊長であった兄が死去したから。ただ、兄は病弱であったため、実際に隊を取り仕切っていたのは彼女だった。頭はそんなに良くないため、作戦などは参謀任せ。実際の作戦もノリと勢いで解決しようとする。
「わるいけど、そこのお嬢さんはオレのもんだから、返してもらうよ。」
「ヤークトヴァイシャ、ナターシャ出る!待ってろよ、アリサ!」
「あ?なんで動かなくなったんだ?まぁなんとかなるだろう!」
⚫︎チーム・トリムルティ
サンデラ、ルピシア、ウル、アルの4人で構成されたガーディアン部隊。悪化する地球連邦との関係を鑑みて、機甲暦42年に結成された。革命後は近衛兵団と合流し、アリサの護衛に回った。現在は2世代目。1世代目の面々は新人の訓練の教官として活動している。
基本の戦術としては、クラッシャー級の2人が素早さで敵を撹乱しながら、アグネアの矢の大火力で焼き切るというものである。最も陣頭指揮を執るアルが定石通りの戦術を苦手とすることから、実際に型通りに戦闘が進むことは稀。しかしそれ故に高い撃破率を誇っている。サンデラによるとアルと組んだ戦闘は大変だが、楽しいとのこと。共和国政府からは「悪魔の三柱」として恐怖されている。
ウル「いけるか?アル?」
アル「大丈夫、お姉ちゃん。サンデラさんとルピシアさんは敵をK2番地点まで誘導してください。アグネアの矢で一気にいきます。」
サンデラ「了解!アルちゃん張り切ってんねぇ。」
ルピシア「わかった。行くね。」
▼サンデラ・ラシード
クルーザーを駆る少女。16歳。明るく単純な性格。しかしながら、常人ではあまりに強いGに立っていることも難しいはずのクルーザーの中で平然と機体を動かしている実力は折り紙付きである。戦闘になると夢中になってしまい、敵地の奥深くまで突撃してしまうことがままあり、ルピシアやアルから窘められている。何事も形から入るタイプであるため、服装はザ・軍人。ムエタイするには邪魔だろうと周りが言っても譲らない。将来の夢はアリサのお嫁さんになること。
▼ルピシア・サディ
サンデラの相棒。16歳。無口で何を考えているかよくわからないと言われるが、サンデラとの息はピッタリ。個性の強いトリムルティの調整役でもある。ボケが3人なので大変だとのこと。サンデラに付き合わされて無茶な戦場に引きずり込まれることも多いが、案外満更でもない。実はトリムルティ一の戦闘狂。敵機を撃破する際には満面の笑みを浮かべるというが、誰も実際見たものはいないため、定かではない。
▼ルル・シーク
1世代目のヴィマナ乗り。シーク家は元々戦車乗りの家系であり、DLSを用いない操縦系に幼い頃から慣れ親しんでいるため、DLSが馴染まない大火力の砲撃機の操縦手に抜擢された。彼女自身はヴィマナを一人で操縦していたが、操作手順が煩雑であることや、陣頭指揮の困難さなどを鑑み、娘たちに継承する際に複座仕様に改修した。厳しい側面もあるが、娘や生徒のことをしっかり考えている優しい人物。
▼ウル・シーク
シーク姉妹の姉の方。17歳。妹思いの良い姉であるが、妹のこととなると周りが見えなくなってしまうことがある。それ以外の時は基本クールで、隊長である妹を陰ながら支えている。メンバーの最年長でもある。カレーが大の好物で、ほっとくと週に5回ぐらいはカレーを食べている。
▼アル・シーク
シーク姉妹の妹の方。16歳。姉の推薦で部隊の隊長となった。操縦はあまり得意でない(本人談)。定石破りの戦法を得意とし、どんな不利な状況からでも起死回生の一手を打ってみせる。人呼んで軍神・アル・シーク。メンバーの最年少でもある。戦場では的確な判断をするがガーディアンを降りると途端に頼りなくなる。可愛いものが好き。
●ルドルフ・カーチス
海軍軍令部部長。陸軍に対する海軍の遅れを憂い、積極的な軍備拡張策をとった。対地球連邦徹底抗戦派の一人であり、予算を軍に融通せず、地球連邦との融和路線に舵を切ろうとする王家には強い反発を抱いていた。
マータイ共和国初代内相。
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