【沈街浮花】空想庭園 > 復讐有我

【次回予告】



その街の名は、《山斬烈槍ランスブルグ》。
その悲劇の名は、《マスカレイド》。

幸福の赤子、流転の少女、鳥籠の楽士、白銀の竪琴。

今日もまた、その不条理な《エンディング》を彼らは破壊し続ける。
その名も――

エンドブレイカー!
―沈める街と浮かぶ花―
第九話 The Garden‘空想庭園’


「私には見えるの。…運命の行き先が」




【同時上映】



その街の名は、《山斬烈槍ランスブルグ》。
その悲劇の名は、《マスカレイド》。

不幸の赤子、非業の少年、無敗の策士、未明の細剣。

今日もまた、その不条理な《エンディング》を彼らは破壊し続ける。
その名も――

エンドブレイカー!
―沈める街と浮かぶ花―
第十話 The Avenger‘復讐有我’


「燃やしてしまおう、私達を生んだ世界など」



【2011.8.8. ON AIR】








【主演キャラクター】


PL 名前 性別 ルーツ ジョブ 武器 備考
yuki シャリフ スカード デモニスタ 大鎌 流浪の少年
ringo クロエ オラクル 魔曲使い おじいちゃん
エイラ ガーディアン 狩猟者 ハンマー 男装の麗人
Chara フラン スカード 魔想紋章士 太刀・魔鍵 お馴染みの
u-kari カラメル イノセント スカイランナー 杖・大鎌 不思議少女






【コメントログのようなもの】


  • リサイクルリサイクル。思えばよくこんなところまできたものです。ということで、今は待機。 -- ban-k@GM (2011-08-05 00:17:35)
  • ルルブはあるもプレイ経験はない紫さんでございますどうも。バイトなくなったから時間はいつでもいいのですよ!できれば10時開始という程度。そんな感じですの、よろしくお願いしますー! あ、相変わらず唐突に予定が入る可能性が…すいませぬ -- u-kari (2011-08-05 14:27:47)
  • わーい、エンブレエンブレっ!と言う訳で毎度おなじみのボクなのである。経験ルルブ共にあり!上級もありまっせ!開始時間は他の皆さまに合わせますー、ではではよろしくお願いします。 -- Chara (2011-08-05 14:43:42)
  • ほとんどはじめましての方しかいらっしゃらないものと思われます、7月からひっそりいる新入生です。TRPG経験自体がほぼなく、ルルブは現在密林さんに発注中です…間に合うと...いいなっ...(拝み) みなさまの胸をお借りするつもりで遊ばせていただきたいです、どうぞよろしくお願いします! 追伸:開始時間はもっと早くてもいける朝型です。 -- yuki (2011-08-05 18:41:29)
  • 今晩は、メンバーも確定しまして改めてGMです。あなたと炎上したい。ということでよろしくお願いいたします。 -- ban-k@GM (2011-08-05 22:48:04)
  • ずいぶんと遅れてしまいました。既存のシャルルさんとほかにだれか連れて行って、現場で決めようかなと思っております -- tomato (2011-08-08 02:16:53)
  • 走り書き。//あのあとどうなった→セシリアとクラウスの再会、クラウスは謝罪。セシリアは結局連れ出されたのが露見するが、事情説明(生き別れの弟が来た)、それを受け現在は半分鳥籠状態。 -- ban-k (2011-08-08 22:09:54)
  • クラウスの動機→セシリアと双子として誕生するも、未来予知の力がある彼女に対して自分は無力。よって流れ着いた孤児院で「自分の知恵で未来を予測する」術を手に入れるべく勉学に励む。それが認められ、引き取られる(続く)。 -- ban-k (2011-08-08 22:13:21)
  • しかし苦しい日々は続く。姉へのコンプレックス、自分を親元から引き離した彼女への復讐心、しかしよく考えれば悪いのは子どもを品物にするような世界なのではないか? と問答の日々。 -- ban-k (2011-08-08 22:15:45)
  • そんな中、軍師としての才を認められ軍に入る。そのうちそちらのコネでセシリアの行方を突き止め、動きづらい軍を抜ける。孤児院時代からの友人であるメイカーに手紙を託し、文通が始まる。…他方、店の規模を拡大していったクラウスは恨まれ、羨まれ、ソーンの餌食に。世界についての問答が暴走、だったらすべて燃やしてしまえ! と今回の事件に至る。 -- ban-k (2011-08-08 22:21:23)
  • …と、ちょっと説明不足だった場所を補完。今日はお疲れ様でした! -- ban-k (2011-08-08 22:22:24)
  • おつかれさまでしたー!カラメルたのしかったー  ううーん、実に好みである。もうちょっとじっくりやってみたかったですのぅ ともあれ実にいいセッションでした! -- u-kari (2011-08-08 23:29:07)








































【Ex.EndBreaker!→≪復讐有我≫Ending and Opeaning】


→エンディングが実に尻切れトンボだったのでちょっとやらかしてみた。口調違ったらすみませぬ。あと無駄に長い。



+ + + + +



■再会する者たち
 柘榴を啄ばむ白鴉亭、通称墓場亭のカウンター席の片隅に、二人の男が腰掛けていた。
 ひとりは、それなりに整った顔をした黒髪の男。薄汚れたコートとそれにつけられた腕章、傍らに立てかけた年季の入った武器を見るに、このあたりの城砦騎士団の一員らしい。にこにこと屈託のない笑顔を、惜しげもなく手にしたグラスの水面に映した。
 もうひとりは、こちらは正真正銘の美形と言って差し支えない、絹のような銀糸の髪をした男。険しい顔つきを多少綻ばせつつ、琥珀色の液体の注がれたグラスを持つ。その手の様からすると、どちらかといえばデスクワークの多い職についていると考えられる。
 店内にはこの二人と、それから、カウンターのもう一端に控える老齢のマスター……通称ガロ爺さんしかいない。とても静かで、表や周囲の店の賑やかさがこっそりと侵入してくるほどだ。
 そんな中で、次のような会話が交わされる。
「全く、このような酒場でたむろしているのか、お前は」
「ええ。ただ、料理もお酒も美味しいでしょう? 普段なら、賑やかなお姉さんもいるんですけど」
「……今日はいないみたいだな」
「そうですね。それ以前に、今日はとても静かですよ。こりゃ珍しい」
「ほう」
 やっぱり普段なら、色々な人種や職種や立場の人がひしめき合っているのですが。そう付け足し、腕章の男は一口、酒を呷った。
「あ……そうでした。どうして今日、自分を呼び出したんです? しかもこんな第三層で。いつもはあなたの家じゃないですか」
「……今更すぎないか、その質問は」
「あはは。いや、すっかり忘れてました。クラウスさんとこうして砕けた話ができたのも久々で」
「お前という奴は……相変わらずだな、メイカー」
 そして、気難しそうな顔の男も、その刺々しさをまた一段階緩ませてグラスに口付けた。
「相変わらずで結構です。それより、クラウスさん……なんだか丸くなりました? 性格的に」
「うるさい」
「……すみません、相変わらずでしたね」
「手紙だ」
「はい?」
「……手紙。手紙の件で、礼を言いたかった。それだけだ」
 それを聞いて……メイカーと呼ばれた男は、えっ、と一瞬目を大きく丸くして、それから、「もう、素直じゃないんですから」とすかさず茶々を入れた。そんなお礼、言われなくともわかってますって。
「だって、俺たちは孤児院以来の仲じゃあないですか」
「……そうだな」
 ああ、そうだった……お前を幾度も罠にかけたっけ、そして二人して先生に怒られたっけ。記憶を反芻しながら、クラウスの側はひとりごちた。
 それから、二人は顔を合わせずに微笑んだ。笑っている、その気配だけで十分であった。



■集う者たち
 ――さて、時は数日前に遡る。
 ランスブルグ第二階層北側、ディースブルグ家の一室に、六名の男女が集っていた。その部屋は不気味なくらいに厳重な封がなされており、例えばドアはあれどもノブはない。そのドアを構成する物質からして、相当に頑丈なものである。熱で以て溶かす以外、迅速にそれを破る手段はないであろう。窓は大きく開け放たれているが、そこから地上までの高さは巨獣一体程度、人間であれば四人から六人を真っ直ぐ縦に並べたくらいだ。そこを行き来できるような手段は室内には見当たらない……たった今、回収され消滅した一本のロープを除いて。
「よっしゃ、これでもう大丈夫だよ。窓、閉めちゃうね」
 この暑い盛りであるにも関わらず、重そうなローブを羽織った上に背中には杖と大鎌。それでもひょいひょい、とアビリティのロープを始末してから部屋の片隅に跳躍してお気に入りのソファにすとーんと腰掛ける。カラメル・カルチノイドは上機嫌であった。
 その隣に腰掛けているのは、シャリフ・ザグルール。ここに来る度、彼は彼のガーディアンであるエイラ・カナファーニーと席の譲り合いをするわけであるが、最近は「交互に座る」ということで落ち着いたようだ。そのエイラは、愛用のハンマーを支えに背後に控えている。
 更にその隣、不審な襤褸布の塊が蠢いている……と、よく見れば、顔があった。前髪で顔の上半分が隠れた、なかなかに不審な外見であった。クロエ・パディントン老その人である。
 そこまでをぐるりと部屋を見回し確認して、最後に、立ちっぱなしのフラン・シャ・ノワールがこの部屋の主に声をかけた。
「メイカーさんから連絡を受けてまいりました。これで、全員です」
「ええ。……改めまして、今日はありがとうございます」
 セシリア――この世界に生れ落ちてより≪終焉≫を視る力を有し、ゆえに、彼女自身だけではなくその双子の弟までも数奇なる運命に巻き込んでしまった、幸福で不幸な女性。ふわりと優雅に一礼すれば、銀色の髪の一房が肩より落ちた。
 そして、上げられた顔は、ほんの少しの緊張感を孕んでいた。
「皆さんにひとつ、叶えていただきたいお願いがあって、お呼びいたしました」
「お願い……?」
「はい。多分、最後のお願いです」
 カラメルのことばに相槌を打ち、今までも彼と私の関係についてのお願いを叶えてもらった上で申し訳ないのですが、と謝罪する。それを制したのは、
「ふぉふぉ。大丈夫じゃ、わしらで力になれるのならのう」
 クロエの、歳も手伝ってか安心させるような笑い声。それからもう一人、重なるように声が続く。
「私も手伝います。きっとシャリフが放っておきませんから」
「エイラ……まあ、乗りかかった舟だ。協力はさせてもらう」
 唐突に話を振られたシャリフであったが、心なしか、楽しそうな顔をしていた。……目の前にいる鳥籠の楽士は、一歩間違えれば、愛する者を喪っていた。だとしたら、アフターケアまで万全に尽くしたい。自分と同じ境遇にさせないためにも。その決意の、現れの一つの形だったのかもしれない。
「……にして、お願いとは何ですの?」
「……」
 フランの確認に、セシリアは安堵してそれから再度緊張したおもむきで、一度深呼吸をする。
「ね、フランさん、あなた……前に私に言いましたよね、『逃げるんですか』って」
「はい。それが、どうか?」
「ええ、とっても重要なことなの。……私の願いは……」



■隠れる者たち
 ――かくして、時はもう一度、メイカーとクラウスが暢気に酒を酌み交わしているその裏へ。
(セシリアさん、大丈夫?)
(ふぉっふぉっふぉ、わしゃ大丈夫じゃー)
(だっかっらっ、あたしはセシリアさんを心配してんだってば!)
(ふふ。私は大丈夫です、カラメルさん)
 ディースブルグ邸、その「関係者以外立ち入り禁止」の領域にある尖塔より、一本のロープが下りてきた。そしてそれを伝い、二人の人間が庭の芝生の上に降り立つ。その下にいた四人と合流し、ひそひそと声を潜めて話をし、それから作戦は次の段階へと動いた。
 セシリアの最後の願いを、叶えるために。
(行こう)
 応、と仲間たちが反応する。隊列は前からうちあわせていた通り、最前列にエイラ、その次はセシリアとその左右にそれぞれシャリフ、カラメル。最後尾はフランとクロエが固めている。エイラはホークアイで少しだけ周囲を再確認すると、至るべき道筋に障害のないことを認め、すたり、と第一歩を踏み出した。
 そこからは全員、速い、速い。さくりさくりと芝を踏み、六人中五人は通い慣れた、残りの一人は知ってはいたものの使うのははじめてのルートを着実に辿っていった。その間、無言……であったのは途中までで。
(……音がするのう)
(?)
 クロエが呟き、セシリアが疑問符を浮かべた。
 そして瞬時に、全員が振り返る……と、その音は明らかなものとなって身体に響いてくる。

 どしん……どしん……どしん……!

(……やはり、ただでは行けないようですわね)
 フランはするり、と太刀を抜く。
(想定内、ってところだな)
 シャリフはすかさず、エイラを見遣った。彼女は彼女で目を細めると、一体だけですね、と呟く。
(王樹です、この前戦ったのと同じような)
(だとしたら……わしらで十分じゃのう)
(……だな。頼んだ)
 そのカラメルのことばが、全体の引き金になって。
 彼女はセシリアの手をぎゅっと握る。それは若干震えていた。無理もない、襲撃者がきたら全員での願いの成就は難しくなる。だが襲撃者の存在自体は想定内のことで、むしろ潔く不意打ちの為に後方から現れてくれて助かったものだ。そのための、隊列だ。
(セシリアさん)
(……はい)
 名前を呼べば、握った手は握り返された。その熱は本物だ――だから。
「――逃げるよ!」
 中列から、二人は飛び出した。
 それと同時に、他の四人は逆方向へ、襲撃者へと向けて飛び出した。



■戦う者たち
 嚆矢となったのは、シャリフの放ったデモンフレイムであった。短い詠唱の後、二方向から闇よりも粘ついた炎が生ける巨木を襲う。闇色だとはいえ、明かりに照らされたのは真っ白で不気味な仮面……この王樹も、どうやら≪荊≫に包まれてしまった代物のようである。
 それに続くのはクロエの、普段からはなかなか想像もつかない朗々とした誘惑の歌声。……と、歌い終えて彼はエイラを見遣る。彼女は無骨な見た目に相違ない無骨なハンマーを振りかぶり、接敵しようとしていた。その走り抜けていこうとした際に声をかける。
「他にも敵がおるじゃろ」
「……わかりましたか」
「手ごたえがあった」
 歌であっても、手ごたえというものがあるのか。感心しつつ、彼女は舌を巻く。
 そうだ、彼女は嘘をついたのだ。
「だって、まさか敵が複数だったら、絶対セシリアは残るって言い出すじゃないですかっ!」
 ドンッ、と樹を横薙ぎに攻撃する音が続いた。バラバラバラっ、と落ちてくるのは木の葉に枝に、硬い果実。当たれば痛いそれをひょいひょいと避け、他方樹のよろけている隙に、フランが満月の一閃をお見舞いした。
「ちなみに、正確には何体ですの?」
「知りたいですか?」
「……あとで、高級な飴を一缶分、贈らせていただきますわ」
「あー……フラン、その必要はないみたいだ」
 暢気で気楽な交渉が前衛の間で繰り広げられているうち、シャリフの表情は苦笑いに変わっていった。
 その視線の先を見れば、いつの間にやら、王樹が二体、増えていたのである。
「ほう。数の上では四対三じゃ」
「じいさん、向こうの猛攻忘れたってんじゃないよな……!」
 それはもう、悲鳴に近い声で。
 知ってか知らずか、王樹たちは反撃を開始する。傷つけられた一体は枝を振るって果実を飛ばし、もう二体は地中経由で足元より根を超高速で這いよらせる。だが、運が味方をしてくれたのか、有効打になりうる果実は既に落ちていたらしくエイラとフランは木の葉のシャワーを受けただけ、シャリフとクロエに巻きつこうとした根もまた弾かれ、あるいは無駄打ちに終わった。
「このまま、時間が稼げれば大丈夫ですわ」
「ああ、それで……あの二人が、辿りつければいい」
 巨大な炎が樹の洞からその内部に侵入し、あるいはそこを抉る様に爪が左右に引き裂き、そこへハンマーの致命的な一撃が、恐れを知らない黒鉄の兵団が突っ込んでいく。とにかく一体一体を集中攻撃し、撃破するという戦法で一致した彼らはひとまず最初の一体をただの枯れ木へと戻すことに成功した。
 戦いは、まだまだ続いていく。

「何だよ、結局こっちにもいたのか!」
 悪態……すかさず、黒い旋風が宵闇を切り裂いた。
 脱出経路から逃走したカラメルとセシリアが巻き込まれたのは、別の闘争。
 ディースブルグ邸の外周にまで、主が買った恨みの≪荊≫は溢れ出ているらしい。白い仮面の亡霊たちが、一体、また一体と二人の前に立ちはだかる。
 乱舞であっけなく引き裂かれる程度の強さではあるものの、量があるとなれば話は別。さてどうやってこの場を切り抜けよう、と考え始めた刹那、悲嘆の旋律がその耳に届いた。何かと思えば……セシリアが持ち出したたった二つのもの、そのうち片方である小さな竪琴を、構えていた。
 音は拡散する。拡散して、多くに遠くに響き渡る。奏でられた悲劇はたちまち亡霊たちの心をかき乱し、その輪郭すら歪ませていく。
「今です!」
「ああ!」
 二人は走った、カラメルがセシリアの手を取って。歳は一回り以上も違うが、先導役はこの街を知り尽くしたスカイランナーの中のスカイランナーによるもの。走る、走る、二人はとかく走っていく……そして、視界に飛び込んできたのは一台の馬車。
「あれだ……おい、開けろ! お姫様の到着だ!」
 その声が聞こえてか、馬車の扉が内側からバン、と開け放たれた。中にいるのは、眼鏡をかけた端正な顔立ちの青年。万が一のためか、傍らには器用にハルバードを積み込んでいる。
「待ちくたびれましたよ、さあ早く!」
「いや、想定外のお客さんがあったもんでね……じゃ、後は頼んだ!」
 カラメルはセシリアの背中に手を当て、大騒ぎをしながら馬車に押し込む。その上でセシリアが振り返るよりも前に、扉をバタン、と閉めた。
『カラメルさん!』
「だいじょーぶ、そのお兄さん、顔は悪そうだけど悪人じゃないから!」
『そうではなくて……!』
「ああ」
 カラメルさんは、どうなさるのですか。
 ……その疑問に、彼女は笑顔を浮かべただけで、また元来た道を引き返していった。
 そうして、馬車は真夜中のランスブルグを奔り出す。



■逃げる者たち
 結局あなたがあの日、ディースブルグ邸を抜け出したことはディースブルグのあの主に露見してしまった。
 ゆえにあなたは、彼の商売道具であったあなたは、「一部の人間」……骨肉を分けた弟にだけ、会うことを許されるようになった。
 でもその目的は、あなたが持つと噂されている「未来を予見する能力」。それで、現在勢いをつけている大商人に取り入る隙がないか、探るよう言われた。
「……どうしてそこまで、ご存知なんですか」
 馬車の中、セシリアは誰に語るでもなく呟きはじめた青年に、ようやく反応を返した。
「さて? ……まあ、私の商売関係の情報網に、そんなことが引っかかってきただけです」
 それで、まあどういった縁があってか、あなたを助けるのに協力してほしいと彼らから申請があって。……だから探ったわけではありませんよ、「偶然」こんな情報が入ってきていただけですから。
 そして、やれ、と言われたら飽くまでやるのが私の信条。……この騒ぎにも関わらず、主がやってこなかったのは、ちょっと貴族階級の友人に客人として来訪してもらっていましてね、丁度今。流石に来客を無碍にはできないでしょうし。
 それから、あなたにそれを……メイドの服を羽織ってもらったのも、いざ検問に引っかかった際、言い逃れできますからね。髪をまとめていただいたのも同様です。
「そもそも、大体の検問はこれでどうにかするつもりではあったのですが」
 ……じゃらり、と鳴った袋に、何枚の山吹色のお菓子が入っているかは知らないが。
「……」
「……まあ、ここまでするのも、彼らの誠意があってこそですよ。そもそも商人は、自分の損になるような話には乗りませんから」
「……」
「そこまで彼らを突き動かしたのは、きっと、あなたが『意志』を見せ付けたからでしょう。……さ、そろそろですよ」

「マスター、会計を頼む」
 うっかり長話をしていたら、いつの間にか二人して潰れてしまっていた。覚醒すれば、もうじき約束の時間。
 マスターはもしかしたら、一晩中グラスを磨いていたのかもしれない。意識を失う前と同じよう、丁寧にそれを取り扱っている。
「会計? ……おや、私は店を閉めていた筈ですが」
「……?」
「ということは、貴方方はお客人ではない。つまり、お代をいただくわけにはまいりません」
 ああ、綺麗に磨けた。そのことに満足した瞳で、マスターはクラウスのことを見ようともしなかった。そうだ、彼にとっては、そこには誰もいないのだ。
「どうぞ、立たれるのならご自由に。そうそう、そこの椅子にも、まさか酔いつぶれたお客人など見えませんから」
「……」
 なんと洒落たことをするのだろう、この人は。……クラウスは後悔した、このような酒場を今日になって知るなど。
 この街に絶望して、だから逃げ出そう。壊して燃やしてしまうのではなく、逃げ出してしまおう。
 そんなことを決め、実行に移す日に。
「マスター」
「……」
「……ハムカツサンド、美味だった」
 彼はそう、代金の代わりに言い残し、最後に、傍らに向かって。
「また会おう。……メイカー、お前の行く道に幸運のあらんことを」
 そんな風に吐いた台詞に対し、「クラウスさんこそ、幸運を」とメイカーが返していたのは寝言か否か、そしてそれをクラウスが聞き取れたか否かは、神のみぞ知る。



■旅立つ者たち
 気づけば、蒼暗い空はうっすらと紅に染まっていて。
 天上の蒼に紅の帯が混ざり、紫の階層を描き出す。それがまた澄んだ青色になり、白へと近づいていく。その全てが、空の色。
 その色と、大地の色がぶつかるのが、地平線と呼ばれるものであろう。
 ……どこまでも続いていくその上に、二人分の、良く似た影があった。
 二人とも最低限の旅装で、残念ながら行き着くあてもない。だが他方、それは気楽な旅であった。今までにない自由を、踏みしめていくためのものであった。
 見送る人は特にはいない。ただ、旅立ちは夜明けと共にと決めていた。その夜明けは、太陽が東の地平線に姿を現したら。
 ……刻一刻と、その時は近づいてくる。二人はただ、目の前に広がる荒野を眺めている。城砦の途切れ目、ここから先では何が起こっても不思議ではない。たとえそれが、死というものでも。
 これが一人なら、どれだけ心細かったであろうか。自分が倒れたことを知る者は誰もいない、屍は野に晒されるのみである。
 しかし、彼らは二人だ。互いに互いを支え、庇い、生き延びていくことができる。
 しかもただの二人ではない。生まれる前から……今は所在の知れない、自分達を捨てた母親の胎内にいたころから、一緒だったのだ。それこそ、血肉で以て結ばれていたのだ。
 そのことが頼もしかった。離れ離れの時間がいくら長くとも、一時期は互いを恨んだことがあろうとも。

「夜が明ける」
 そう、白々と。
「夜明け前が、一番暗い」
 そう、黒々と。
「でも、明けない夜はありません」
 そう、赤々と。
「それが理なのじゃ」
 そう、青々と。
「だから、行っておいでよ」
 そう――二人は、振り返った。

「いや、あの時はカラメルが来てくれて助かったよ。もう、フランも私もばててしまっていてね」
「まさかあの三体に加えて、植木獣が増えた時はどうかと思った……けどまあ、結果オーライだ」
「合流できたのはシャオさんと上手く合流できたから。それより、じじいが本気モードでさ……」
「私の本気はそうそう見られませんからね、特に戦闘の最中という意味では。今も、本気ですよ」
「その方が素敵だと思いますわ。……ね、そう思いますでしょう、セシリアさんにクラウスさん」
 見送りの、あっという間に親しみを覚えてしまった声であった。
 五人――エイラ、シャリフ、カラメル、クロエ、フラン――が、横一列に並んでそこに立っていた。もう少し後ろを見れば、セシリアを運んだのと同じ馬車が待機している。彼女をこの近くに下ろし、それから取って返したのはこういう理由があったためか。彼女は一人で納得し、その判断に感謝した。
「ええ、素敵だわ。……いつものクロエさんも、素敵だけれども」
「……」
 私は残念ながら、普段を知らないからな。クラウスの目が雄弁にそれを語っていて、セシリアがいちいち翻訳する。……まずはこんな距離感から、二人は「姉弟」を再開していくらしい。
「しかし、行くあてのない旅かあ……」
「おやカラメル殿、心配ですか?」
「まあね。じじいはそうじゃないの?」
「ええ。お二人なら大丈夫でしょう」
 そういうもんなのかねえ。カラメルは、「これを旅のお供に」といつもの飴玉を二袋、旅人に渡すクロエを見ながら呟いた。
 それを耳にして、そういうもんだよ、と返したのはシャリフである。俺たちも特に、あてのない旅をしているわけだし。
「それに、何かあったらエイラが守ってくれる。まあ、逆もたまにあるけど」
「なっ……! シャリフの面倒は私が見ます、私の面倒も私が……」
「……今まで、甘いもので何回大変な目に遭いかけた?」
 それについて、エイラは謝るしかなかった。笑い声が七人分、澄んだ空気の中に木霊するのもまた気持ちがいい。
「……あの、どこかで落ち着いたら、必ず手紙を書きます。私か、クラウスが」
「手紙……ああ、もしかして……!」
「はい。あのときいただいた手紙のセット……竪琴と、それだけ持ち出してきたの」
 フランは、そのことが素直に嬉しかった。渡しておいてよかった、と笑顔が自然と表情に浮かぶ。
「皆さんには、お世話になりました。本当、お礼をしきれないくらいに」
 いいってことよ、それが自分らの生き方なんだから――≪終焉を終焉させる者≫たちは、自分たちのあり方を否定しない。
 たとえそれが、彼女たちのような悲劇を生み出したとしても。
 彼らには、超えていけるだけの力があるのだ。
 そしてその力を信じるだけの、希望があるのだ。

 それから、夜は明けた。
 太陽が、今日もまた同じように運行を開始する。
 見送る者も、見送られる者も、彼らは同じ空を見ている。
 それだけではない、同じ空の下を生きていく、生き延びていく。
 ずっと、ずっと――黎明の色彩に染まる天槍の指し示す、東雲の空の世界を。



【冒険結果:成功!】
【生死不明:なし】



【The True End...Thank you for your reading!】








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