魔理沙は道を歩いていた 果てしなく続く道を歩いていた 道は地平線の彼方まで続いていた 地平にいたるまで、一切なにもなかった 気が付くとそこは草原だった 魔理沙は右を見た 何もなかった 魔理沙は左を見た 何もなかった 魔理沙は後ろを見た 何もなかった ただただ平坦で単調な草原が永久に繋がっていた 非現実的だった 風が吹いた 草原が波打った 強い風だった 魔理沙は帽子を吹き飛ばされないよう 反射的に手を頭にやった 帽子がなかった 両の手が手ぶらであることに気が付いた 魔理沙は懐を確かめた 八掛炉がなかった スペルカードがなかった 風は永久に魔理沙の頬を撫でた 魔理沙は歩いた 道はどこまでも続いていた 太陽が傾き、沈み、そしてまた顔を出した 魔理沙は何かがおかしいことに気が付いた 何かが以前と違うことに気が付いた それは見えなかった だが確かにあった いつの間にか いや、おそらく最初から 魔理沙のすぐそばにそいつはいた そいつはだんだんと巨大化していった 魔理沙の一歩ごとにそいつは膨張した 魔理沙のひと呼吸ごとにそいつは肥大した ひと時も待ちはしなかった ただただ、そいつは、膨れ続けた 魔理沙は怖くなった 視界にはなんの変化もあらわれなかった だがそいつは確かに居た 周囲を見回してもいっさいなにも見当たらなかった だがそいつは確かに居た 魔理沙は自分の知覚が異常なのではないかと疑った だがそいつは確かにいた 魔理沙は怖くなった そいつはだんだんと巨大化していった 太陽が傾き、沈み、そしてまた顔を出した 魔理沙は何かがおかしいことに気が付いた 何かが以前と違うことに気が付いた そこは人の手が加えられた道だった 砂利が敷き詰められていた その道は、曲がりくねって木々の間へ消えていた 気が付くと魔理沙は森の中だった 森の中の道を歩んでいた 魔理沙は右を見た 鬱葱と生い茂る木々がどこまでも続いていた 魔理沙は左を見た 鬱葱と生い茂る木々がどこまでも続いていた 魔理沙は後ろを見た そいつは確かにそこにいた 前よりも巨大化していた 何も見えなかった だがそいつは確かにそこにいた 魔理沙は叫んだ 狂ったように叫んだ 叫んで走り出した そいつから逃れるために 道はどこまでも続いていた 太陽が傾き、沈み、そしてまた顔を出した 魔理沙は何かがおかしいことに気が付いた 何かが以前と違うことに気が付いた 鳥居があった 魔理沙はそれをくぐった 鳥居以外には何もなかった 気が付くと魔理沙は神社にいた 鳥居以外には何もなかった それでも魔理沙はここが神社であると思った 魔理沙は右を見た 何もなかった 魔理沙は左を見た 何もなかった 魔理沙は後ろを見た そいつは確かにそこに居た 「どうしたの?」 不意に声がかけられた それは霊夢だった 霊夢が魔理沙に語りかけていた 「変なやつがついてくるんだ」 魔理沙は訴えた 「そう」 霊夢はそれだけ言った 魔理沙は訴えた 霊夢は無表情だった 魔理沙は訴えた 霊夢はそいつに気づかなかった 魔理沙は訴えた 霊夢はいつの間にかそいつと置き換わっていた 魔理沙は叫んだ 霊夢だったそいつは何も聞いていなかった 魔理沙は叫んだ 霊夢だったそいつはもう何も聞いていなかった 魔理沙は右を見た 相変わらずやはりそこには何もなかった 魔理沙は左を見た 相変わらずやはりそこには何もなかった 魔理沙は後ろを見た そいつは確かにそこにいた 魔理沙は走った 鳥居は遥か彼方に消えていった 魔理沙は走った そこには何もなかった ただそいつだけが そいつだけがただ巨大化し 肥大し ふくれあがり 魔理沙はいつ自分が飲み込まれるのか気が気ではなかった 魔理沙は部屋にいた 魔理沙は湖にいた 魔理沙は香霖堂にいた そいつはやはりそこにいた どこまでも追いかけてきた 大勢と出会った 知らないやつもいた 誰もそいつに気づかなかった そいつがそのまま大きくなっていけば とりかえしのつかないことになるのに 誰もそれに気づいていなかった 誰もそれに気づいてくれなかった 魔理沙はそこにいた 視覚できなかった なにもなかった そこにはなにもなかった だがそいつがいた そいつは確かにそこにいた 魔理沙とそいつ以外の何もそこには存在しなかった 魔理沙は右を見た そいつは確かにそこにいた 魔理沙は左を見た そいつは確かにそこにいた 魔理沙は後ろを見た そいつは確かにそこにいた 魔理沙は狂ったような叫びを上げ 頭を抱え かきむしり ふりまわし 叩きつけた そいつは無慈悲にそこにいた 魔理沙の一歩ごとにそいつは膨張した 魔理沙のひと呼吸ごとにそいつは肥大した ひと時も待ちはしなかった ただただ、そいつは、膨れ続けた もうやめてくれ、もういやだ!お前は何なんだ!なんでそこにいるんだ! お願いだ!消えてくれ!消えろ!いなくなれ! そいつは無慈悲にそこにいた 魔理沙は 「うわああああああああ!!!!!!」 魔理沙は叫んで飛び起きた そこは図書館だった パチュリーが安楽椅子の上で目を見開いて魔理沙を注視していた 小悪魔が何事かと怯えていた 魔理沙は右を見た えんえんと続く棚と図書で満たされていた 魔理沙は左を見た えんえんと続く棚と図書で満たされていた 魔理沙は後ろを見た そいつは消えていた パチュリーが尋ねた 「な、何よ魔理沙、一体」 魔理沙は怯えた声で答えた 「こ・・・こわいゆめをみただけだ」 パチュリーは安堵の溜息を漏らし、やや怒ったように言った 「こ・・子供じゃないんだからそんな事で大声出さないで」 魔理沙は紅魔館を後にした 「イヤな夢だった・・・」 氷精や門番の声も、もう耳に入らなかった。 魔理沙は右を見た 紅魔湖があった 魔理沙は左を見た 遠く人里へ続く山稜が見えた 魔理沙は後ろを見た そいつは確かに― 魔理沙はベッドで横になっていた 知らない部屋だった 洋風なところを見るに紅魔館だろうと思った 魔理沙は右を見た 壁だった 魔理沙は左を見た 窓の外は夕暮れだった 魔理沙は無理な姿勢をして後ろを見た 鳥居があった 草原が波打っていた でありながらそこには何もなかった そいつが確かにそこにいた 魔理沙は獣の断末魔のような悲鳴を上げた ドアが勢いよく開け放たれた 咲夜と美鈴が飛んできた 「どうしたの魔理沙!」 咲夜が叫んだ 「草原が!鳥居が!あいつが!」 魔理沙は叫んだ 魔理沙は訴えた 魔理沙はしまったと思った 咲夜も美鈴もそいつには気が付かなかった 魔理沙は縛り上げられた 暴れるからという理由で縛り上げられた 魔理沙は永遠亭へつれていかれた 竹林があった 魔理沙は右を見た 竹林がどこまでも続いていた 魔理沙は左を見た 竹林がどこまでも続いていた 魔理沙は後ろを見た そいつは確かにそこにいた 「幻覚?」 ならいいと思った 月の頭脳は何もないと言った 彼女もまたそいつには気が付かなかった そいつは確かにそこにいた 太陽が傾き、沈み、そしてまた顔を出した 魔理沙は何かがおかしいことに気が付いた 何かが以前と違うことに気が付いた そこはもう幻想郷ではなかった 同じような光景がどこまでも続いていた 何もなかった そいつがいた それでありながら何もなかった 矛盾していた だが確かに何もなかった 何もないにも関わらずそいつがいた 「おまえはなんなんだ」 魔理沙は消えそうな声で言った そいつは問いかけに応えなかった ただそいつはそこにいた そいつは確かにそこにいた 魔理沙は見た そいつの中を見た そいつが肥大する原因を理解した そいつは無限に肥大する情報系で そこでは無数の魔理沙やその他の幻想郷の住人たちが 飽くなき虐めを受け続けていた 魔理沙は紅魔館勢に取り巻かれ褒め殺しにされていた 魔理沙はひんむかれてひんひん泣いていた 魔理沙は部屋のガラクタを全て捨てられていた 魔理沙は押されるべきところを押されないで放置されていた 魔理沙は洋食しか食べさせてもらえなかった 魔理沙は霊夢に徹底的にいじめられていた 魔理沙はヘタレていた 魔理沙はアリスに刺されていた 魔理沙はチキンブロスにされていた 魔理沙は家から出られなくなって観察されていた 魔理沙はボンテージを着せられていた 魔理沙は実はちゆりでいつの間にか消えた 魔理沙は失明していた 魔理沙はお人形にされていた 魔理沙は霊夢を喰らった 魔理沙は「キャー」と叫んでバカにされた 魔理沙は最強に強まったマジックアイテムを衝動買いしていた 魔理沙は数独問題集を簡単に解いていた 魔理沙はキノコの毒でしびれて死んでいった 魔理沙は剥製にされていた 魔理沙は咲夜をおねえちゃん呼ばわりしていた 魔理沙は火葬されかけた 魔理沙はお尻をひっぱたかれて泣いた 魔理沙はアホ毛に群がられて墜死した 魔理沙は辛いものを全身に浴びたうえでアリスに舐め上げられた 魔理沙はアリスが噴出した牛乳を顔面にもろに浴びた 魔理沙はパチュリーにカンテラで後頭部を殴られて殺された 魔理沙はラングだった 魔理沙はスペアリブになった 魔理沙はJAS○ACに詰め寄られた 魔理沙は苛性ソーダと塩酸を浴びて妖怪扱いされた挙句霊夢とアリスに刺された 魔理沙は・・・ 「まだ・・・続くのか・・・」 魔理沙はすべてを目の当たりにしていた ひたすら虐め続けられる自分を、自分たちを 目の当たりにして絶望していた そしてそいつは確かにそこにいた 「そうだ。スレが続く限り永遠に」 そいつは スレ住人たちだった こうして幻想郷の女の子を虐めるスレは4スレ目に入り 変態的なスレ住民たちはますます活気づき 魔理沙は膨れあがる恐怖のスレッドにおののいたのである おわらない