• グロ描写ありにつき警戒されたし。
  • 続きものの3番目 として読むと後悔する。
  • どうしようもねえな



stageF-1


愛が必要。

そうだ愛。愛。無償の愛。

惜しみなく注がれる愛、下心や他意のない純粋な愛。

人が人として育つ上で重要な愛。

それ無しではまともな人格形成が不可能になる愛。

愛されるべき時期に注がれなければならない愛。


少女にはそんなものは与えられなかった。
少女は人形だった。少女を生み出したのが神であったにも関わらず、
少女は他の魔界人と同じように、作られた後、そのまま放置された。

少女が不幸だったのは、少女として生み出された事実に他ならなかった。
多感な年頃にして愛に飢える時期。
誰かに自分を認めてもらい、健常な自我を確立する時期。

少女はそんな時期のまま何百年か過ごした。
その間、ただの一度も自分を生み出したものに顧みられることはなかった。
少女は自らを生み出した者を振り向かせようと人一倍の努力をした。
それが少女の淡い希望に答えてくれることはなかった。

空白の日々。灰色の日々。渇望の日々。飢餓の日々。
少女に与えられた毎日には、少女の幼い精神を何ら憚ることなく
傷つけえぐり砕き歪ませ破壊するような、そんな日常しかなかった。
少女にはそこから逃れる方便などなかった。
少女は自らを生み出した造物主の人形だったのだから。

身体は成長しなかったが、時間と経験は自我と精神に影響を及ぼした。
砕けた心は愛情を渇望しつつ、拒絶されることを恐れて人と接することを諦め
壊れた人格はかつて自分がされたように、他者を傷つけることを厭わず
歪んだ精神は自分がそうだったように、自分も人形を所有し支配することを欲した。

ドライな性格になった少女を、ある者は都会的だと言った。
少女の心を、都会の生み出す非人間性に例えて。
少女はそうだねと答えた。
薄々感づいていた自分の狂気を、末期症状を呈する都市の病理と重ねて。

いつしか少女は壊れていた。
少女に残されたのは、かつて誰かを振り向かせようと努力した時手に入れた
様々な魔法と、目的のために何の役にも立たなかった、素晴らしい研究成果。
ただ、それだけだった。


少女は愛されるべきだった。
愛されてさえいれば、あるいは。


stageF-2


魔法の森を出たところで、既に咲夜の体力は限界に近かった。
血を流しすぎたし、あのトリッキーな罠の中を、死体を持って駆け回ったことが
よりいっそう、彼女を消耗させていた。

不覚を取った。

咲夜は木の幹に背を預け、満足に動かなくなった両の腕を見下ろした。
右手の指が半分なかった。
左手は肘から先がなかった。


「これで、最後……まぁ、これだけのことを隠せばこの執念は当然か」

咲夜は、膨大な主観時間をかけてアリスの家から這い出ることに成功した。
何重にも仕掛けられ、思わぬ方向から飛び出す罠の数々。
それらを踏まぬよう、本当に微細な空間を広げては戻し、すり抜けてはまた広げ
そんなことを延々繰り返して、どうにか脱出することに成功したのだ。

パチュリーの遺骸が重たかった。時間は停止させているから一体自分が
どれだけの間、この罠の中でうろついているのかも、見当がつかなかった。
それでも咲夜は、この無間地獄のごとき罠の壷から抜け出ることを果たし、
アリスの家の玄関、その外にある小さな庭で、久々の日差しを懐かしんだ。

時間は止めっぱなしだ。ここで解除すればまだ警戒線に引っかかるだろう。
だが、パチュリーの遺骸を抱いたまま飛ぶことは、今のままの咲夜にはきつすぎる。
特にここは魔法の森、上空は瘴気に当てられる。
咲夜の取れる手段は限られていた。それを理解した咲夜は、肩で息をしながらも
だいぶ質量の減ったとはいえ、けして軽くないパチュリーの遺骸を担ぎなおして
魔法の森の道と呼べぬ道を、歩きだした。

更にどれだけ時間が掛かっただろう。永遠に続くかと思われた樹林がまばらになって
空から光が差し込みはじめ、そして咲夜はとうとう魔法の森から抜け出た。
何時間歩いたか知れないが、太陽は相変わらずアリスの家に入ったときと
同じ位置にある。時間をとめているから当然であった。

咲夜はこのまま帰りたかった。ここで時間停止を解除すれば、魔法の森に住まう
妖怪の類が匂いを嗅ぎ付けてやってくるかもしれない。
そうなれば力の衰えた咲夜が対抗するのは難しいだろう。
かといって、ここを出て別の場所で休息を取れるというものでもなさそうだ。
なにしろ担いでいるものがものだけに、人目につけば即座に怪しまれるだろう。
木々に隠れたこの場所だけが、ありつける唯一の休息の場だった。

周囲を見渡す。幸いにも妙な気配はない。
一分だけ解除して、また歩こう。ここを出たら人目につく。

そうして、咲夜はようやく時間停止の能力を解除した。
今までの疲れがどっと押し寄せた。力が抜けていく。パチュリーの身体を
お姫様抱っこのかたちにしたまま、咲夜は木の幹に背中を預けて休息した。
どこかに置いていたら、何が擦り寄ってくるか知れたものではない。

とりあえず今のところ何かが来る気配はない。咲夜は安堵した。
そしてそれが仇になった。

「ぇ?」

目の前を何かが一瞬飛び去ったかと思うと、猛烈な風圧が咲夜を切り裂いた。
文字通り切り裂いたのだ。咲夜には何が起こったかわからなかったが、
自分の服がぼろぼろになり、抱えていたはずのパチュリーの遺骸がそこになく、
そして、まるで遺骸と共に持っていかれたかとでもいうように、両の腕の
左は肘から先、右は指の多数が失われていることだけが、現実として襲い掛かった。

「ぃ……ぎゃああああ!!」

悲鳴ではない。絶叫。少なくとも瀟洒な従者のそれではない。
両腕に激痛が走る。脇腹の鈍痛にも気づいた。どうやら肋骨をやられたらしい。
そして、それら全ての元凶である、風圧を生み出したモノが、咲夜から奪った
パチュリーの遺骸を腕に抱き、そして平然とした顔でこちらを見ていることに
咲夜はまた別の意味で恐怖し、ひきつった表情を浮かべた。

「魔理……沙、魔理沙!?なんで貴方が今ここに!」

答えはかえってこない。
だがしかし、そこには魔理沙がいた。傷ひとつない姿で、パチュリーを抱いて立っていた。
そして咲夜の喉が何か言葉を発する直前に、魔理沙は咲夜に問答無用の
魔法攻撃を仕掛けてきたのだ。
寸でのところで回避する。身体を預けていた幹を、光の束が貫通した。

「何……でっ!?何で!なんでなの!!」

魔理沙は答えなかった。ただただ、咲夜に攻撃を繰り返すばかりだった。
その攻撃は今まで咲夜が相手をしたどの時の魔理沙より圧倒的で、
激痛と混乱に耐えながら反撃する余裕を、咲夜に与えることはなかった。
気づけば、咲夜は森の中をひたすら逃げまどっていた。


そして今ここにいる。
パチュリーを取り戻すこともできず、自らも甚大な損害を受けただけの結果。
こんなことをお嬢様にどう報告しよう。
無様だ。何が完全で瀟洒な従者だ。
咲夜は自嘲と口惜しさに唇をゆがめ、その端から血を滲ませた。

「紅魔館に戻らなきゃ……」



「・・・・え?」
紅魔館が消失していることを知ったのは、木の棒を杖に帰る途中のこと。
「あれ・・・?え?おじょうさま・・・お嬢様!」
残った力で必死に紅魔館を目指した咲夜は、見てはいけないものを見て、
「お嬢様ご無事ですか!?何処にいらっしゃるのですか!」
自らが最も敬愛する主を、愛くるしいという言葉では表現しきれないその妹を、
「返事をしてくださいお嬢様・・・美鈴、美鈴!どこ!まさか貴方まで!」
自らのよき友人であった門番を、名を呼び、狂ったように呼び、泣き叫んで
「妹様!この下ですか!ご無事ならどうか返事をしてください!!」
高熱でガラス化したクレーターを掘り返そうと壊れた手を地面に
「あああ!この地面が邪魔!邪魔ッ!!どけ!割れろ!」
何度も何度も叩きつけ、腕の骨を更に破壊した。そして、
「どうしよう、どうしよう・・・みんな居なくなっちゃった、みんな・・・みんな・・・ァ・・・っ」
自らに、もはや帰る場所がないことを理解した時点で、咲夜は崩壊した。


チルノが出血部位を凍らせ、大妖精と共に大急ぎで永遠亭を目指した。
咲夜はすぐに治療室に担ぎ込まれたが、安否はこの時点で誰にもわからなかった。


stageF-3


―パチュリーを殺したのは魔理沙
―霖之助を殺したのも魔理沙
―スカーレット姉妹と門番を殺したのも魔理沙。
―悪魔の箱の中の人間の死体は、そこらの妖怪に食われた外来人の残存部位
―魔理沙は死んでいない。

「彼女自身は誰も殺していない、か。まぁ、これでは博麗も気づかないな」

どこからともなく取り出したる呪符を手に当て、溜息をついたのは八雲藍だった。
寝ている間はお前が幻想郷を見張れ。異変の兆しがあれば報告しろ。
勘便な命令だった。優秀な藍がこなすには造作もないような、命令だった。
だが、藍はこの現状を、異変と見なすべきかどうかについて悩んでいる。
スペルカードルールによらない一方的な殺害は、明らかに懲罰されて然るべきものだ。
だが、その本質はただの痴情の縺れ、そして当事者の家族を巻き込んだ殺傷事件である。
更に言えば幻想郷の"人間"は誰も死んでおらず、これ以上の被害拡大も無いだろう。
幻想郷を揺るがすほどのことだろうか?
ただ、それが、幻想郷の有力者たちを巻き込んだものであることが気がかりだった。

紫はいまだ布団の中であった。

「ん…ぅ、うふ、蓮子ぉ……」


stageF-4


んで、ここまでしか完成していない。


「冗談でしょ?」

魔界に到着したばかりのアリス――ああ、これから造物主たる母の元に向かうはずだったので魔理沙に小奇麗な格好をさせて一人で悦んでいる真っ最中の彼女――は、作中でひたすら歪んでばかりだった美しい顔を、別の意味で、いうなればヒラコー漫画の崩れ画のような状態になって、わなわなと震えだした。

いやあすまないね。彼は風以降の東方になんだかついていけなくなってきたんだ。キャラクターも増えたし、設定もいろいろ改竄された。この作品は時間が経過する間に、いつのまにか陳腐化してしまった。
それに、ぶっちゃけ、いぢめスレも有名になりすぎた。有名になると、いろいろやりづらくなる。そういうことさ。

どこからともなく響く声は妙にしらけた響きを内包する。まるで長い夢から覚めたかのように。
一方でアリスは不満だった。やっと魔理沙を自分のものにしたのに、やっと魔理沙を自分だけのものにしたのに、それが具体的に描写されることなく世界がブツンと切断されてしまうのだ。
彼女の未来は消去される。抹消される。クリアされる。デリートされる。ここで終わりだ。あとにはなにものこらない。
悔やんで悔やみきれるわけがない。これから魔理沙と一緒に自分を見下して苦しめたものを見下し返して魔理沙と一緒に幸せに魔理沙と一緒に平穏に魔理沙と一緒に末永く暮らすための計画はなんだったのだ。

ああ、アリス。最近のいぢめスレでは画期的な言葉が発明されたんだ。ゴミクズといってだね。魔理沙は最大級の人気があるかわりに、アンチもひどいんだよ。おかげで魔理沙がいぢめられる側でなければならないような風潮が蔓延している、というと流石に言いすぎだけど、そんなかんじで、なんだか居心地が悪いんだ。
だってこのSSでは魔理沙は宝石のようなもので、それを我が物とするためにアリスは頑張ったのだからね。

「じゃあ、じゃあなんで打ち切りでもいいから適当な終わらせ方をしないの!?それくらいなら簡単じゃない!こんな、メタ的に、中途半端にブツ切りにするなんて、最低じゃない!!」

彼女は吼える。吼える。ああ、そして吼えている間に気付いてしまった。

そう、そういうことだよアリス。これはいぢめスレ向けの作品なのだ。出てくるキャラクターはおしなべていぢめられる存在たりうるのだ。
最初のプロットの段階で君は最終的に破滅するはずだった。最終的に君の望みは断たれるはずだった。結論からいえば何も変わらない。君が破滅する過程が吹き飛ばされただけだ。
それに、元ネタの段階で、これ以降については検討されていなかったし、正直もうネタ切れだ。これ以上を書く気力も維持できない。

アリスは心の中を絶望の黒、RGB#000000で埋め尽くされながらも、なんとか反論の言葉を探ろうと頭を回転させる。補助電脳を移植した自分の新しい頭脳が、人妖を凌駕する速度でフルブーストするが、答えが出る前に部屋の呼び鈴が鳴った。

「こ、こんなときに誰だっていうのよ、魔理沙、おとなしくしててね」

魔理沙は例によってアリスの言葉に笑顔で頷き、椅子の上で行儀よい姿勢で固まった。一方アリスはそそくさとドアへ向かう。

「はい、どなた?」

アリスがドアを開けると、現れたのは緑はいらない子じゃなかった守矢神社の東風谷早苗。このSSを書き始めた頃にはまだ存在していなかったはずの彼女であった。

「新任の巫女です、豚タミフルなどいかがでしょうか?」

早苗が袖をまくるとそこには怪しげな販売促進グッズがずらずらずら。アリスはうへえという顔になった。

「いらない。いらない。信仰してないから」

早苗は残念そうな顔をするが、すぐ気を取り直して何か入用の際はなどと言い残して去っていった。
招かれざる来客を追い返したアリスは再び部屋の中央にやってきてあの声の主に怒鳴った。

「漠然と閻魔をいぢめてたのはお前か!このモンティパイソン信者が!!」

だが声の主は平然としたものだ。

何を言っているんだいアリス。あんなに沢山のSSが、それぞれ全部別人の手によるものだとでも思っているのかい?
中には重複しているものも沢山あるはずだよ。そりゃもう沢山。私が言うのだから間違いない。

話がどうでもいい方向に飛び始めたので、アリスはそれを遮って軌道修正を試みた。

「それで!それで!?この話はどうなるの!?まさかここで終わるの!?まさか一応存在するには存在しているPLOTをお蔵入りにしてここでぶつ切りにするつもり?!」

いいや、そんなことはないよ。そろそろ来るころだ。

すると、再び部屋のドアがノックされた。今度は先ほどと違い、小刻みに強く叩く、催促するようなノックだ。
アリスは、なにやら開けてはいけない気がしたが、ノックはいつまでも続いている。声の主は沈黙したままだ。結局、アリスはドアを開けるほかなかった。

「はい、どなたかしら?」

がちゃり。ノブを回すと押し入るように黒い影が入ってきた。その制服と制帽は明らかに警官、しかし緑色の髪は、それが四季映姫・ヤマザナドゥその人であることを主張してやまない。
アリスは原作で彼女と直接的に接触したことが無かった気がするが、きにしてはいけない。
映姫様はこのように切り出した。

「そこを動くな、幻想郷警視庁の四季映姫警部だ、所属はクソSS課!」

アリスは思わず声を裏返して反芻してしまう。

「クソSS警部!?」
「シャラップ!」

映姫様の精神注入棒じゃなくてなんだっけアレ映姫様がいつも持ってるやつが容赦なくアリスの頭に叩きつけられた。ぎゃうんと叫んでのけぞるアリス。新型ボディも閻魔にはかなわないのだろうか。

「このSSを三つの罪で逮捕する!一つ、未成年は望ましくない内容であること!二つ、あまりに製作が遅すぎること!そして三つ目、これが肝心よ。SSとしての体裁を成していないこと!」

映姫様のマシンガントークにアリスは反論することもできず、ただただ聞き入るばかりだ。彼女の存在感はそれほどまでに圧倒的だった。

「だいたい何ですか貴方達は、こんなコントをやっている暇があったら続きを書けばいいのです。そう、貴方には少々パニッシャー精神が足りなすぎる」
「そんなスタパ斉藤みたいなこと言われても・・・」
「シャラップ!」

再び映姫様の精神注入棒じゃなくてなんだっけアレ映姫様がいつも持ってるやつが容赦なくアリスの頭に叩きつけられた。ぎゃうんと叫んでのけぞるアリス。新型ボディも閻魔にはかなわないように思えてきた。

「なんで作者が注意されるべきところで私が殴られるのよ・・・ハッ!これはまさか私いぢめ!」
「そういうこと、もう一回!」

またしても映姫様の精神注入棒じゃなくてなんだっけアレ映姫様がいつも持ってるやつが容赦なくアリスの頭に叩きつけられた。ぎゃうんと叫んでのけぞるアリス。新型ボディも閻魔にはかなわない。

ところでこの間、魔理沙は椅子の上でまるでお人形のように瞬きひとつすることなく、アリスに言われたように大人しくしていたため、誰の目にも留まることがなかったようだ。
そしてひとしきりアリスがはたかれたところで、三度目の呼び鈴が鳴った。
映姫様はいつしか閻魔のなんたるかについて語り始めてカメラ目線だったのでアリスはすんなりドアへ向かうことができた。

「こ、今度は誰かしら・・・」

一回きりの呼び鈴、そっけないそれにおっかなびっくり出るアリス。相手は夢子だった。やっと出てきた普通の相手に、アリスは心底安堵の表情を浮かべる。
しかし、久しぶりに帰ってきた放蕩娘に対する夢子の態度は冷めたもの。

「貴方にお客様が」
「お客様?」

夢子がドアを大きく開けると、彼女の後ろに隠れていた客人の姿が露になった。
アリスは、客人の姿を見て絶句した。

赤いロングヘア
頭と背中の蝙蝠のような翼
黒と白の、目立たないが整った服装
三日月のように釣り上がった口元
ギザギザの歯
してやったりという表情
悪魔。小でも悪魔。小悪魔。
そう、あの、パチュリーの使い魔。
彼女は弾む声で挨拶を。

「ごきげんよう、アリスさん」







F-4以降は突貫工事。
2番目で「後編は未定」みたいに書いた通り、正直完成できるか自信がない。
お目汚し失礼。





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