美鈴は図書館に入るとすぐにパチュリーに尋ねた
「小悪魔はいますか?」
「いいえ、いないわ。多分部屋で寝てるわ」
「そうですか」

パチュリーの目の前に袋を置く

「なにこれ? 図書館に汚れたものを持ち込んでは困るのだけれど」
「これを見て、どうするかは全てパチュリー様にお任せします」

パチュリーの言葉には一切答えず、それだけを言って美鈴は図書館を出た
しかし図書館を出ても門には戻らず、美鈴は図書館の扉の前にはりつきそこから動こうとしなかった

パチュリーは土のついた袋を開ける
中にはバラバラになったなにかの装置の破片が散らばっていた。それを掻き分ける
「これは・・・・・・銀の矢? まさかこれでレミィを・・・」
矢先に編みこまれた術式を見て、これがレミリアを襲ったものだと瞬時に理解する
さらに手がかりはないかと掻き分ける
「これは・・・・・・・・本?」
袋の一番奥に小さな本が入っていた







一方、小悪魔は自室で歓喜していた
「出来ました、出来ました! 出来ました!!」
完成した液体をフラスコから瓶に詰め替える
「ほら見て下さい、お嬢様。完成です9日目にしてようやく」
棺の中のレミリアに蓋越しに語りかける
「あとはこれを皆さんに順々に飲ませえていき、私の願いを・・・私を好きになるように命じれば・・・」
思い通りのまま、と言葉を続けようとしたその時

コンコン

「ヒッ!」
不意に扉がノックされて、小悪魔は飛び上がる
「驚かせてごめんなさい。あなたに聞きたいことがあるの」
部屋には入らず外からパチュリーが呼びかける
「わかりました、着替えたらすぐに伺います」
部屋を簡単な整理整頓だけして、パチュリーの方へ向かった




机の上には小悪魔があの時使った土のかぶった布袋があった
しかし彼女自身、別段驚いてはいなかった
「なんですか、これ?」
初めて見ますと言わんばかりに、尋ねる
「レミィを襲った凶器よ、多分」
「こ、これがですか?」
浅ましい演技だと自分でも思いながら小悪魔は知らぬふりをする
だが

「これ、あなたのでしょ?」

その言葉に一瞬心臓が止まる
「何を根拠にそれが私のだと仰りたいんですか?」(落ち着け、きっとパチュリー様のハッタリ。あの中に私に繋がるものは・・・)

「この本、あなたが書いたものでしょ?」

“それ”を見た瞬間、小悪魔の頭が真っ白になる





あれ? なんで“それ”がパチュリー様の手にあるの?

「この袋から出てきたわ」

そんなわけない、その本は昨日まで私が続きを書いていたのだから

「驚いたわ、あなたこんなにも卑猥な文章を書くのね」

どうして私の“日記帳”がそこにあるの?

「あなたの犯行動機はこれ? だれかに愛されて必要とされたかったの?」

あはははははは 私馬鹿みたい

「ごめんなさいね。いつも近くにいたのに、気付いてあげられなくて」

最初からこの計画は失敗する運命にあったんだ、なにもこんな直前で壊れなくてもいいのに

「だれもあなたのことを嫌ってはいないし、みんなあなたのことをちゃんと気にかけているの。それだけはわかって」

パチュリー様が何か言ってるけど、全然耳に入ってこないや・・・

「小悪魔? 聞いてるの小悪魔?」

でも、ようやくこの不安から開放される。この9日間は心臓が張り裂けそうなほど痛かった

「ねえ、小悪魔!? ちょっと小悪魔!!」

咲夜さんのナイフがまだ一本、ポケットにある。うん、それで自殺しよう。名案だ

「あなたなにを!!」

あれ、パチュリー様? なんでこちらに走ってくるんですか? 喘息持ちなのに? ちょっと、掴みかからないで・・・











咲夜は昨日しでかしてしまったことに対して、自己嫌悪に陥っていた
(あの時、美鈴が止めに入らなかったら。私はどうなっていたのかしら・・・・)
そう思い廊下を歩いている途中、メイドに呼び止められた
聞けば、美鈴に頼まれて花壇の手入れを手伝っていたら妙なものを見つけたとのこと
さっそく花壇に向かい、そのメイドに尋ねた
「それはどこに埋まっていたの」
「あそこの穴にありました」
「あそこ?」
あの場所はなにか引っかかる
事件の起きた翌朝、美鈴が作業していたことと、その場所を思い出す
(あの場所ってまさか・・・・・・)


「咲夜さん!!」
廊下の窓から美鈴が体を乗り出して名を呼んだ、その口調から非常事態だと察する
「美鈴、何があったの!?」
「いいから図書館にきてください!!」
隣にいるメイドをほっぽりだして、窓から廊下に入り咲夜は美鈴のあとを追いかけた


二人が図書館に飛び込んだとき
腹から血を流して、うずくまるパチュリーがいた
小悪魔がその二人に気付きナイフをむけて怒鳴った
「どうして裏切ったんですか!!はじめから私のことを!!」
(なにを言ってるのこの子は?)
咲夜がその言葉を疑問に持ち思考を巡らせる間に
美鈴が小悪魔との間合いを一瞬で詰めて掴みかかる

「愛されて無いって分かってます!! 歓迎されてないことも承知してます!!」

目に大粒の涙を浮かべる

「でも・・・少しは見てくれたって・・・・・気にしてくれたっていいじゃないですか!!」

その言葉が遺言となった
美鈴の振り下ろされた渾身の一撃で小悪魔は消滅した
「早くパチュリー様を!!」
美鈴のその言葉で咲夜は思考を中断し、パチュリーに駆け寄る
苦悶の表情を浮かべながらもパチュリーは咲夜に訊いた
「こ、小悪魔は?」
「美鈴が殺しました」
「ふ、ふ・・・・悪魔に『死』という概念は無いわ。戻るべきところに戻っただけよ・・・・・・・」
口の端から血の泡がぶくぶくと沸いてくる
「傷にさわります、しゃべらないで!!」
「わたしね・・・・この傷が癒えたら、またあの子をこっちに呼び戻そうと思うの・・・・・あの子、をあんなに、も追い詰めたのは多分私だ、から・・・」
血を吐きながらも懸命に話す。腹部の出血は止まりそうに無い
咲夜に小悪魔の日記帳を差し出して、がくりとパチュリーの体から力が抜けた

「ここではろくな治療ができません! 早く医者に!」
「わかったわ!!」
パチュリーを担ぎ大急ぎで永遠亭に向かった




永遠亭に駆け込むと状況を察した永琳がすぐに手術の準備をして治療に取り掛かった
手術が終わるまでの間、永遠亭の縁側に二人は座っていた

温かな日が差し、のどかで平和そのものの竹林が二人の目の前に広がっていた
二人の数日、張りっぱなしの緊張はここに来てようやくほぐれた

ゆっくりできない状況なのに不思議と二人はゆっくりしていた

気の抜けた美鈴が小悪魔の日記帳をパラパラとめくる
「すごい内容ですね・・・見てくださいよこれ、私と咲夜さんが濃厚に絡みあう描写ですよ」
「いちいちそんなの見せないで」
本を閉じて咲夜に渡す、本には若干パチュリーの血がついていた
「小悪魔の動機はこれかしら?」
「じゃないですか?・・・とんだ愛憎劇でしたね・・・・ところでパチュリー様が助かる見込みは?」
「あの薬師が言うには『諦める覚悟もしておきなさい』だって・・・・」
「そうですか・・・・・」
美鈴はごろりと縁側に寝転ぶ

咲夜が昨日ことを切り出す
「美鈴・・・・・昨日は本当に・・・・・・」
「謝るのなら私ではなくフランお嬢様に」
早口で美鈴が制した
「私どうかしてたわ。妹様にお嬢様の姿を重ねて、妹様をお嬢様の代用品のように扱おうとしていた」
「いいんです・・・誰かに縋らないと生きていけないのはみんな同じなんですから。それに少し、わかる気がします。私もあのお二人はどこか似ていると思っていましたから」

穏やかな風が二人を包む
空に浮かぶ雲を眺めながら美鈴が切り出す

「もしもパチュリー様が駄目だった場合。咲夜さんは人の道に戻ってください。里のハクタクなら悪いようにはしないはずです。フランお嬢様はご成人なさるまで私が傍にいますから」
「馬鹿言わないで、パチュリー様は助かるし、お嬢様も生きているわ。小悪魔の動機を見るかぎりじゃ殺すとは考えられないわ」
その言葉に美鈴は返事ではなく笑うことで同意した
そして「さてと」と言い縁側から起き上がる
「パチュリー様のこと、よろしくお願いします。私は先に帰りますね。フランお嬢様一人ではいささか心配です」
「ええ、よろしく。迷わないようにね」

小さく頷いて、美鈴は竹林の中に入っていった





迷いの竹林は成長の早い竹が密集し目印になるものは無いため、その名のとおり迷いやすい地形をしていた
「なんとか、帰れそうですね」
ここに来たことはほとんど無いが、なんとか迷わずに出られそうだと感じた
道なりに進みどれだけ経ったろうか、美鈴は背後に違和感を覚えて振り向く

「どうして付いて来たんですか? パチュリー様のことをお任せしたはずですよ、咲夜さん」

名指しで呼ばれ、観念したように竹やぶの間から咲夜が姿を見せた

「流石は気をつかう程度の能力かしら、気配を消すのはそこそこ自信があったのよ?」
「気配は消すんじゃなくて、周りに溶け込ませるのが正解なんですよ」
「あら、アドバイスありがとう」

咲夜はにっこりと微笑む

「パチュリー様、一命を取り留めたそうよ。しばらくリハビリは必要らしいけど」
「それは良かったです」

しかし嬉しそうに笑う咲夜とは反対に美鈴は笑っていなかった
原因は咲夜の手にある数本のナイフ。臨戦態勢なのは見て明らかだった

「どうも今回の事件、納得がいかないことがいくつかあるの。答えてくれない?」
「良いですよ。私の答えられる範囲でなら」

「じゃあ単刀直入で訊くわ。今回の事件の主犯はあなたでしょ、紅美鈴」

咲夜がそう言った直後、二人の時間が一瞬だけ止まる
サラサラと竹同士がすれあう音だけが二人の間を満たした

「いつから気付いたんですか? 私が共犯、いや小悪魔を利用した黒幕だって」
「小悪魔が犯人だとわかった時点でよ。もし内部犯の犯行なら二人以上いると思っていたから」
「なぜ二人以上だと?」
「小悪魔が最後に言った『裏切った』って言動が気になったというのもあったけれど、それだけじゃないわ」

咲夜は自分の推理を話し始めた

「もし小悪魔が単独犯だった場合。事件のあった夜、小悪魔はお嬢様を無力化させて何処かに隠し、さらにその上で凶器の隠滅を図ったことになる」
「そうですね」
「私はもの音がした直後、少し時間はかかったけれど現場に駆けつけたの。そのあとすぐに図書館に向かい犯人の小悪魔とパチュリー様に合流して現場に向かった。変じゃない?」
「どこがですか?」
「私が現場に駆けつけるまでの間に、お嬢様を担ぎながら凶器をどかに隠し、なおかつ私よりも先に図書館に到着する。いっぺんに全部をこなすなんて不可能よ、私じゃないんだから」
「ふふふ。言われてみれば・・・・・」
「そこで質問。あなたはあの夜何をしていたの?」
「だから、小腹が空いたから厨房に・・・」
「ダウト」
「うわぁっ!」

美鈴の首筋スレスレをナイフが通過する

「こう考えるのが普通じゃない? 共犯が居たと。お嬢様の運搬と証拠である凶器の除去。この二つの役割を分担した者がいる」

再び美鈴に向かいナイフが投げられる
今度はなんとかタイミングを合わせて、帽子を使いそのナイフを足元に弾き落とす

「紅魔館でそれが出来たのは紅美鈴、その場に居なかったあなただけよ」
「なるほど。ですがそれだけじゃ私は容疑者なだけです、決定的な証拠じゃありません。もしかしたら小悪魔が外部のものと手を組んだかもしれない」
「それは無いわ、小悪魔は外に知り合いはいない。それにあなたは私の前で堂々と凶器を隠したじゃない?」
「あ、バレてました?」
「事件のあった翌日、あなたは私の前で肥料といって袋を埋めたわね。それが小悪魔の作った凶器だったんでしょ?」

今日メイドが掘り起こして凶器を発見した花壇の位置とその時美鈴が袋を埋めた位置が全く同じだったのを咲夜は知っていた

「あちゃ~あのメイド、咲夜さんに報告してたんですか? だれにもしゃべるなって釘をさしておけばよかったですね」

美鈴は両手を上げて『降参』のジェスチャーをする

「そういえば小悪魔がですね、どういう経緯か忘れましたが事件のおこる日、私に向かって『羨ましい』と言ったんですよ。皮肉ですよね、他人を羨む行為こそ最大の自己否定だというのに」

「認められたいと願っていながら」と口元を押さえてクスクス笑う

その動作を気にも留めず咲夜はさらに質問する
「なぜこんなことを?」
「お嬢様が邪魔だったからです」
「それは目的でしょ。動機じゃないわ」
「もう良いでしょう? 咲夜さんの勝ちなんですから」

言って美鈴は足元に落ちている先ほど咲夜の投擲したナイフを拾う
「犯人はトリックがバレたら自殺するのが定番でしょ? 知ってますか? パチュリー様の怪我は死のうとした小悪魔からナイフを奪い取ろうとして揉み合いになって起こった事故なんですよ」
それを首にあてがう
「待ちなさい!!」
咲夜は時間を止めて美鈴からナイフを奪い取る
パチュリーを永遠亭まで運ぶ途中に何度も時止めを多用したためナイフを取り上げるのが精一杯だった

時が動き出した瞬間、咲夜は美鈴に首を掴まれて地面に押し付けられた

「知ってましたか? 『自殺する~』なんて言うやつほど自殺しないものなんですよ? 折角のすばらしい推理が台無しですね」
咲夜を見下してケタケタと笑う
「思えばあれは偶然でした。事件のよる、所要があって廊下をうろついていると。お嬢様と小悪魔が対峙していました。当然お嬢様に勝てるはずも無く、今にも殺されそうになった時に
私の足元に小悪魔の作った対吸血鬼用の矢が転がってきたんです。お嬢様は私にとって邪魔な存在でした。気付けばその矢を拾い、お嬢様の背後に立ち。わき腹にそれを突き刺していました」

美鈴は自分の視点から全てを語りだした

「その場でお互いの利害が一致して、お嬢様とその凶器は私が預かることにして。小悪魔はアリバイを作るために急いで図書館に戻らせました
皆さんが合流し図書館を出て現場に向かうのを確認してから小悪魔の部屋にお嬢様を、凶器の処理はあなたの言ったとおりです。そして後日、小悪魔から全ての計画を教えてもらいました」

だからこそ花壇の花を進んで提供した、お互いがお互いを疑いあうという作戦にも協力した
事件の現場を見に行ったのは、証拠の隠滅のためよりも『咲夜の私物らしきものを見つけた』という事実が重要だった

「本当は彼女の計画が完遂するまで見守るはずだったんですけどね、こちらも予定外のことが起きまして」

昨日、自分がフランにしてしまったことを思い出す
フランとの関係の修繕のためには今紅魔館で起きている事件を解決させて館内の治安の安定と邪魔者を排除する必要があった
だから凶器の入った布袋をメイドにわざと発見させて。その中に隙を見てくすねた小悪魔の手帳を忍ばせた

「咲夜さ~ん。あなたがフランちゃんに手を出さなければ。もしかしたら明日にでもお嬢様は無事に帰って来たのかもしれませんよ?」

そこで咲夜の目の前が真っ白になった




「邪魔者は全て消えた。これでフランちゃんは私のモノ」
それからしばらくして紅魔館に美鈴は戻ってきた
(ここからが本番。昨日のことを謝らないと)
そう思い廊下を歩を急がせてフランの居る地下室へと向かう、だが地下室まで向かう必要は無かった

「え・・・・・・」

途中の廊下にフランが座っていた
その目に光は無くうつろで、ただぼうと日の光を受けないよう気をつけながら窓の外を眺めていた
美鈴があげた声に気付いたのかフランはゆっくりと美鈴のほうを向いた
生気の宿らない目が美鈴を捉える

「ねえめーりん。あいつは何処? 咲夜は何処? パチュリーは何処? 小悪魔は何処? なぜメイドは私を見ると逃げ出すの?」

ここ最近の紅魔館の目まぐるしい環境の変化はフランの心を確実に蝕んでいた
そして昨日の咲夜と美鈴の一件で彼女の心と体は完全に決壊した

「今日起きてからずっと頭が痛いの・・・・・・ご飯もね、何を食べても胃が受け付けずに全部吐いちゃうの・・・・」

体を壁にもたれてなんとか立ち上がる
「うっ」
立ち上がるとすぐに口元を押さえてその場に蹲った

「・・・ウグ・・・・げぇ・・・ッ・・・」

胃液すら出尽くしたのか、口からは涎だけが糸を引き絨毯に滴る
美鈴が近づこうとすると途端、生気を取り戻したフランの目に射すくめられて、足が止まる
「近づくな」と殺気の篭った目が語っており、美鈴が近づくのを拒んでいた


美鈴はふと考えた
こんな時、姉のレミリアならどうするのかと

きっと「殺せるものなら殺してみろ」と言わんばかりの不遜な顔で近づいて、あの子の目の前にたち、優しく抱きしめて「愛しているわ」の決まり文句。そしてみんなが万々歳。偉いね~お嬢様

(ああ・・・・)
その光景を頭に思い描いて
(それは最悪ですね)
廊下にツバを吐き捨てた

そんなまやかしに誰が騙されるのだろうか?

今ここでこの子を抱きしめても、そんなのは抱きしめる側の自己満足でしかない。相手の意思を捻じ曲げる行為に等しい


昨日は独占欲が暴走して、傷つけてしまったが
自分がこの子と築いていきたい関係はそんな一方的なものではない
あの子が望んだから抱きしめて。あの子が望んだから見守って。あの子が望んだから叱る
お互いに支えあい、与え合う関係
フランを愛し、フランに愛される関係
それこそが彼女が最初に掲げた理想だった
『調教』という間違った手段を使ってでも、美鈴はそんな彼女と関係を築きたかった

だからあんな間違えを繰り返すつもりは無かった



腹は括った
美鈴は自分の帽子を取り、靴を脱ぎ捨てた
理由は二つ、敵意が無いことをアピールするためと靴音でフランの神経を逆撫でしないため
一歩、また一歩とフランに近づく
フランが手を突き出して「壊すぞ」と無言で脅しても動じない。自分は殺されてもおかしくないことを昨日彼女にしたのだから
ここに来て初めて美鈴は言葉を発する
「まず昨日のことを謝りたい、なんの非も無いあなたに私は取り返しのつかないことを仕出かした」
また一歩、近づく
そしてようやくあと一歩でフランに触れる距離まで来た、だがこれ以上は近づかない
「許してもらおうとは思わない。でも、もしあなたが私を許してくれるなら、そこからまたあなたとやり直したい」
しゃがんで、フランと同じ目線になり手を差し出す

フランの手が美鈴を受け入れてこの手を掴むのか、掴まずに美鈴の急所の目を握りつぶし殺すのかは、本人のサジ加減

フランは美鈴の手を取った。取って強く握った

「戻りましょうか、地下室に」
「うん」
弱弱しく、しかしはっきりとフランは頷き返事をした




地下室に戻り、フランの体を綺麗にしてから
二人はベッドで横になっていた
枕は美鈴が使いフランには腕枕をしていた
腕枕をしながら頭を撫でると気持ち良さそうに目を閉じて美鈴の胸にすり寄ってくる

自分が大事にされているのだと実感できているらしい

もちろん着衣のままで、やましいことはなにもしていない


フランが落ち着いたのを確認してから、美鈴は紅魔館で起きていたことを包み隠さずフランに教えた
もちろん自分が犯人だということも、動機がフランを独り占めしたかったことも
それを聞かされて「そうなんだ」とだけ、相槌を打った。彼女自身それにどう反応していいのかわからないという様子だった

「私たち二人になっちゃいましたけど、いいですか?」
「・・・・・うん、めーりんが居てくれるなら。私はそれでいいよ」
「そうですか、ありがとうございます」
美鈴はフランを抱きかかえた

(これで終わり、お嬢様は永遠に仮死状態のまま、パチュリー様なら戻ってきたらすぐに殺せばいい、咲夜さんも部屋に監禁してあるからすぐに殺せる、小悪魔も現れることはない、紅魔館自体が無くればメイドは全て出て行く)


もう二人の関係を邪魔するものはいない、このまま快楽に任せてどこまでも二人で堕ちていけばいい
美鈴は心の中でだけ小さく笑った
(うん、これは素敵なバッドエンドだ・・・・・)

美鈴はフランを抱きしめる腕の力を緩める


フランの顔をじっと見る
「どうしたのめーりん?」
(もしかしたら、今なら・・・・)
試しに美鈴はフランに口付けをせまる

が、フランは顔を本能的にプイッと背けた
「ごめんなさい・・・・・」
思ったよりもフランのトラウマは深い

「いいんですよ。無理矢理しようとしてあんなことをした私が悪かったのですから」
接吻のためだけに毒を飲ませたことを美鈴は後悔する


「もうめーりんとキスできないかもしれない」
「気にしないでください」
申し訳無さそうに俯くフランの頭を美鈴は優しく撫でる



気が付くと少しずつフランを目がうとうとしはじめる
添い寝での温もりを噛み締めながら目を閉じようとしていた

(私もここで目を閉じてしまおう、そうすればもう全部終わるんだから)


まどろみのなか、二人の意識はどこまでも落ちていった
もう後戻りできない道を二人は共に歩み始めた


end













  • わーお・・・これは素敵なバットエンドですねえ。気に入りましたこの作品。長文お疲れさまでした。

    -- J (2009-10-24 18:01:21)
  • すげええええええ!!!!
    神か!?
    このバッドエンドは素晴らし過ぎるぞおおおおおお!!!!! -- 名無しさん (2009-11-18 16:44:28)
  • ハッピーエンドよりも素敵なバッドエンドだな -- 名無しさん (2010-05-16 22:27:40)
  • 綺麗だ。とにかく綺麗だ -- 名無しさん (2010-05-23 22:48:43)
  • ゎたみ -- 名無しさん (2014-08-16 10:07:57)
  • なんだっけなこういうの


    メリーバットエンド? -- 名無しさん (2016-05-15 03:14:50)
名前:
コメント: