【fuku0311.txt】の続きです       ゆり表現あり キャラ崩壊ありです


昼、門の前で暇そうにあくびをする美鈴と対比するように館の廊下を歩く咲夜は焦っていた

レミリアが居なくなり早一週間
咲夜、美鈴、パチュリー、小悪魔の4人だけがレミリアが居なくなったことを知っており、このメンバーだけでレミリアを探していた
捜索するための人手は欲しいが、主人が不在だということを外部に知られたくは無かったため妖精メイドにもこのことは明かさなかった
外部の知られれば手伝ってくれる者よりも、ちょっかいを出してくる者のほうが多いだろうと判断したからだ
「レミリアはどうした?」と訊かれたときは「体調が悪くてしばらく寝込んでいる」と言って誤魔化した
妹のフランにも要らぬ心労をかけたくないという周囲の配慮で、このことは伏せられていた



咲夜はレミリアが行きそうな所をさり気なく聞き込んで回ったが、手がかり一つ得られなかった
(いっそ、外部に公開して情報の提供を・・・いやそれだと・・・)
紅魔館の廊下を歩きながら、思案する咲夜に声がかかる
「あの、咲夜さん?」
「小悪魔じゃない? どうしたの?」
「顔色が悪いようですがちゃんと寝ていますか? ちょっと心配になりまして」
連日の捜索とレミリアの安否の不安で、心身ともに咲夜の体への負担は大きかった
ほとんどの捜査が空振りで、この時咲夜は徐々に紅魔館内部も疑う気持ちが芽生えつつあった
「そういえば、あなたに聞きたいのだけれど」
「はい」
「お嬢様のいなくなった日の夜に美鈴がどこに居たか知らない?」
小悪魔の赤い髪を見て、現場で拾った赤い髪のことを思い出した
「あの・・・・もしかしてそれって・・」
「違うわ。情報の整理よ勘違いしないで」
「そうですか、私はその時は図書館に居たものでなんとも・・・ですが最近はよく夜中に館内を出歩いているという話しならメイドの方から聞いたことがあります」
もちろん、そんな話など無い。小悪魔は咄嗟に嘘をついた。それにより咲夜の美鈴に対する疑心をより強いものにさせるように誘導する
しばらくその場で考え込む咲夜
「わかったわ。悪かったわね、変なこと聞いて」
「いえ、お役に立てればいいのですが」
そう言って二人は別れた
咲夜の背中を小悪魔は満面の笑みで見送った



次に咲夜が目指す場所は地下室。ノックをしてから入室する
「失礼しますね、フランドールお嬢様」
「あ、咲夜だ」
咲夜の手には紅茶の入ったポットと菓子の乗った皿
事件の起きた翌日から、咲夜はここに30分ほど通うようになっていた
レミリアが居なくなったことは教えてはいないが、さりげない会話の中にレミリアに繋がる手がかりになる情報はあるかもしれないと思ったからである
「咲夜の淹れた紅茶はおいしいね」
「お褒めに預かり光栄です」
実はまだ、もう一つだけ咲夜がここにくる理由があった
(やはり、似ていらっしゃる・・・)
姿は違うはずなのに、さすが姉妹といったところか。表情や動きにどこか重なるところがある
フランと一緒にいると、なぜか咲夜はレミリアが傍に居てくれるような気がした
これがレミリアの従者として最低の行為だとしてもやめることは出来なかった
この一週間咲夜の癒しはここにしかなかった。なにか縋れる存在が欲しかった
だから、ついこう呼んでしまった
「あの“お嬢様”」
お嬢様とは本来レミリアを指す言葉、それを思わず妹に使ってしまった
「・・・・・・・・・・・ん、ああ。何?」
それが自分に向けられた言葉だと理解するのにフランは数瞬の時間を要した
「紅茶のおかわりはいかかがですか?」
「うん、お願い」
「かしこまりました。“お嬢様”」
咲夜のその声にもう躊躇いは無かった



フランとの時間を過ごし地下室を出て紅茶を片付けるために厨房に向かう途中、休憩中の美鈴と遭遇した、その手には花壇の花が数束抱えられていたい
軽く会釈して通り過ぎようとするその美鈴を咲夜は呼び止めた
「その花はなに?」
「小悪魔が新薬をつくるのに必要だから欲しいと言われまして・・・」
主の不在の緊急事態に何をのん気なことをしているのかと、咲夜は怒りを通り越して呆れる
「本当にお嬢様を探す気があるの? あなたからはお嬢様を気遣う態度が全く見られないわ、あなたこの事件に絡んでるんじゃないの?」
怒りを露にしてそう言うと、美鈴も言い返す
「失礼なこと言わないでください、私だってお嬢様の身を案じています! 私が事件に絡んでる? 馬鹿なこと言わないでください!」
「じゃあ、あの日の夜あなたは何処にいたの?」
「うっ・・・・」
そこで美鈴が口ごもる、フランの目を洗うための道具を探していたときのことを咲夜は言っている
その態度から咲夜は小悪魔の嘘の証言が本当のことだと確信してしまった
「やっぱりあの時私が見たのはあなただったのね・・・・・一体なにをやっていたの?」
口調がどんどん強さを増してくる
咲夜にこれ以上フランとの関係を詮索されたくは無かったため、美鈴は真実を語りたくは無かった
「小腹が空いたので、厨房にあるものをつまもうかと・・・」
それにより事態はドロ沼化する
「嘘おっしゃい!!」
咲夜が即座に否定する
「厨房からあの場所までどれだけ離れていると思ってるの!? その日の夜に美鈴が自分の部屋に居なかったことも私は知っているのよ!」
レミリアの衣服を発見した後、パチュリーと小悪魔を呼びに行くのと同様に美鈴の部屋にも訪れていた
これはプライベートなことなのであえて訊かないでおこうと思ったが我慢の限界だった
「現場にはあなたのと思われる髪の毛も見つけたの!! この意味も説明してもらおうかしら!?」
「そんなのそこら中に落ちてるじゃないですか! 私だって現場で拾ったんですよ、銀の小さな塊を。あれは明らかに咲夜さんのナイフの破片でした!」
美鈴は咄嗟に現場で拾った銀の破片のことを思い出した
「変な言いがかりはやめなさい! じゃあ見せてみなさいよ!!」
「捨てましたよ、そんなのとっくに!!」
「なんで捨てるのよ!! 大事な手がかりだったのかもしれないじゃない!!」

「やめなさい。二人とも」

それをいさめたのはパチュリーだった

「非常事態だからこそ纏まらなければならないのに、こんなことで揉めてどうするの?」
「しかしパチュリー様、美鈴の最近の態度は目に余るものがあります」
「なっ!」
再び美鈴の眉が吊りあがる
「だからいちいち喧嘩しない。美鈴、あなた小悪魔に用があるのでしょう? 行きなさい」
「え、えっと・・・・・・じゃあ、失礼します」

少し困った表情をしながら美鈴は一礼して、その場から離れた
「さてと」と言いパチュリーは咲夜の方を向く

「美鈴だって門番の仕事が終わってから外に出て探しに回っているのを知っているでしょう?」
諭すように、パチュリーは優しく言った
「それはそうなのですが、でも・・・もう限界なんです」
申し訳無さそうに顔を伏せる咲夜
「限界?」
「毎日毎日夢を見るんです」
「夢?」
パチュリーが訝しげに尋ねる
「夢の中でも、私はお嬢様をお探しているんです・・・」
咲夜の頭に中にはレミリアを探す事しかなかった、だから夢の中もそれしかなかった
「そしてお嬢様を見つけるんです・・・ですがお嬢様はもうその時には亡くなっているんです」
咲夜は片手で顔を覆い壁にもたれ掛かった。瀟洒を嗜む彼女には本来有り得ない行動だった

永遠亭で液体の満たされた瓶に詰めにされたレミリアを
白玉桜で干物のように干からびたレミリアを
博麗神社で霊夢に討伐された直後のレミリアを
人里で磔刑にされたレミリアを
マヨヒガでスキマに放り込まれて永遠に帰ってこられないレミリアを

これらはまさに悪夢だった
「もう限界なんです! もう一杯一杯なんです! まだ一週間しか経っていないのに、どうしてこんなに辛いんですか!?」
レミリアと出会ってからこれまで時を共にして、咲夜は何時の間にかレミリアの存在に依存しきっていた。そのことを本人が自覚していなかったにも関らず心の根は深かった

パチュリーは咲夜を心配そうに見やる
(妖怪ならまだしも、人間の咲夜にこれ以上の肉体の酷使は危険ね)
彼女はそう判断した
「咲夜、あなたは今から明日一日休みなさい。いいわね?」
「しかし、それでは・・・」
「只でさえ人員が少ないのにこれ以上減っては厄介だわ、瀟洒なあなたならどうすることが最良の選択かわかるわね?」
少し強めにパチュリーは言った
戸惑いながらも咲夜は同意した
「はい・・・わかりました、申し訳ありませんが、すこし休ませてもらいます」
誰かに話して少しだけ気が楽になったのか、咲夜の顔色は幾分かはマシになっていた
しかし足元はおぼつかず、ふらふらとした足取りで自分の部屋のある方へ向かった
床に紅茶のポットを置き忘れていたのにも気がつかなかった





図書館では美鈴が小悪魔を探していた。広大な図書館、その書棚を一列一列見て回る
そして小悪魔を見つけた、美鈴がいつか見た日記帳に何か書き込んでいるところだった。姿を確認して声を掛ける
「やっと見つけました」
声を掛けられて驚いたのか、慌てて日記帳を書棚に押し込む
「頼まれていたものを持ってきましたよ」
美鈴は花壇で取った花や草を渡す
「わざわざすみません」
「魔法薬のほうは完成しそうですか?」
興味深げに尋ねられ小悪魔はにっこりと微笑んで返した
「はい、順調です。素材はこれでそろったので明日か明後日には完成するはずです」
「そうですか、では私はこれで。完成するのを楽しみにしていますね」
「ありがとうございます、頑張りますね」

用が済み、踵を返し図書館から出ようとする

(完成の暁には、あなたも私の虜にしてさしあげますよ・・・)

「ん? なにか言いましたか?」
「いえ、何も」
空耳かな?と首をかしげながら美鈴は図書館を後にした




美鈴が出て行った後しばらくしてパチュリーが戻ってきた
いつも読書をするテーブルにつき、大きく息を吐く
すかさず小悪魔が紅茶を出す
「お疲れ様です。どうぞ、砂糖は大目にいれておきました」
「ありがとう」
短く礼を言い、カップに口をつける
「甘いのもたまには良いわね、疲れが取れるわ」
「そう言っていただけると、淹れたかいがあります。お部屋で少し休まれてはどうですか?」
「私はいいのよ、ここで頭を使ってレミィが居そうなところを考えているだけだから。あなた達みたいに外を動き回っているわけじゃないわ」
パチュリーは先ほどの咲夜とのやりとりを思い出していた
「小悪魔、あなたも大分やつれたわね?」
「え、そうですか?」
「自覚が無いの?」

小悪魔は何時バレるかもしれないという不安と恐怖に苛まれながら今日まで過ごしてきた、その心労は想像にかたくない

「あなたまで潰れたら、本格的にレミィ探しが難航するわ。カップは自分で片付けるからあなたも休みなさい」
「しかし・・・」
「いいから、自分の体も大事になさい」
結局、パチュリーに強く押しきられ小悪魔はすごすごと図書館の奥にある自室へと戻っていった

小悪魔がいなくなるとパチュリーは幻想郷の地図を広げた
「レミィがいそうなところは・・・」
たったの四人で一人を探す、その行為を無謀と知りつつも。パチュリーはやるしかなかった
幻想郷中に呼びかけたらもしかしたらレミリアは見つかるかもしれない
だが、もしそれでレミリアが見つかってもプライドの高い彼女がそれを良しとしないだろう
レミリアは誇りに殉ずる吸血鬼であることをパチュリーは長年の付き合いで知っていた




小悪魔は自室に入り鍵をかける
そしてベッドの下に隠してある棺桶を引っ張り出して蓋を開ける
そこは、小悪魔の作成した対吸血鬼用の矢によって仮死状態にされたレミリアが入っていた
傍から見るとまるで眠っているようだった

棺桶に頬杖をつきながら動かないレミリアを眺める
「もう少しで薬が完成しそうなんです。試験も成功したのであとは必要な量を作るだけです。で、その第一号はお嬢様にしてあげますね」
小悪魔にとってこの話しかける行為は日課となっていた
「お嬢様はいいですね、いなくなっても必死に探してくれる方たちが沢山いて。私のように替えのきく存在とは大違いです」
うれしそうにレミリアに微笑みかける表情が段々と暗くなる

「私はずっと嘆いていました、愛情という存在の不確かさを」

「長い間、私は愛されたいと願いながら。心のどこかでそれが実現することを恐れていました」

「どれだけ愛し愛されていても必ず生きている以上心は移ろいます。その人の心が自分から離れていくことが堪らなく怖かった」

「私には誰かを繋ぎとめられるだけの魅力も存在感もありませんから」

自嘲気味に小悪魔は笑う

「だから決めました、裏切られることのない究極の愛を手に入れると」

「それは暴力や権力で相手を無理矢理縛り付けるわけでも、ましてや魔法やマインドコントロールを施して権利を奪い操るわけでもありません」

答えは原始の生物の中にあった

「『刷り込み』というのをご存知ですか? ヒナが卵から孵る時に最初に見たものを親だと思いこむような現象のことを指します。それは本能です、決して誰かに強制させられているわけではありません」

「本人にとってそれは生まれながらにして当たり前のこと、そのことを疑い疑問に思うことなどありえません」

「もしそれを後天的にその人に植え付けることができたら素晴らしいと思いませんか? たとえば“私のことが好きになるように”とか?」

「その人の性格を捻じ曲げるわけでも、洗脳されたわけでもなく。相手はそのことに苦痛も感じず、その人が好きだということになんの疑いも持ちません」

「つまり日常は壊れずそしてだれも傷つかないんです。素敵だと思いません?」

言って再び表情に明るさを取り戻す、その顔は安らぎに満ちていた

「嗚呼、早く完成させなければ・・・それも時間の問題ですが」

部屋の隅には光を拒絶するほどの、まるでコールタールのようなドス黒い液体の入った大き目のフラスコが弱火で煮られていた






美鈴は門番の仕事を終えて、フランに会いに来ていた

「別の仕事が入ってしまい。すぐに行かなければなりません、おやすみを言いにだけここに来ました」
「今日も行っちゃうの?」

美鈴は門番の仕事が終わったら、レミリアを探しに行くことを事前にした四人の協議で取り決めていた

「はい、すみません」

地下室から出て行こうと美鈴が振り返り一歩踏み出す

「?」

服に違和感を感じて後ろを向く
帰ろうとする美鈴の服の後ろをフランが掴んでいた
「最近みんな変だよ? なにが起きてるの?」
フランも今の状況が非常事態であると薄々感じ取っていた
不安そうな表情で美鈴を見上げる、美鈴の前だからこそ自分の感情を素直に見せていた
美鈴はフランの方を向き直り、屈んで目線を合わせる

「大丈夫ですから、何かあったときは私が必ずやお守りしますから。そのための門番です」
任せろ、と言わんばかりに美鈴は自分の胸を強く叩く
フランの方が明らかに美鈴よりも強い。お互いそのことを十分理解していてなお美鈴はこの言葉を選んだ

言葉の直後フランは何も言わずに美鈴の胸に飛び込んだ、美鈴は拒絶することなく彼女を受け入れる
子を守る親鳥のように美鈴は優しく抱きとめた
抱擁はしばらく続く
「少しは落ち着きましたか?」
「うん」
フランにとって美鈴の腕の中は安らぎを感じることのできる場所だった

(あなたは私のモノ・・・だから誰にも渡さない。だから誰にも触れさせない)
美鈴は心の中でずっと前から誓った言葉をなんども復唱した





地下室を後にして、玄関を出て、門に立つメイドに軽くあいさつをして外に出る

「どーせ見つかりっこないのに・・・・」
ため息をつき、自分だけにしか聞こえない声で面倒くさそうにそうつぶやいた


翌日
咲夜が目を覚ました時、時刻はすでに夕刻前だった
パチュリーに言われたとおり、部屋で休もうとしてベッドで横になったがどうも寝付けなかったため
アルコール強めのワインを飲んで横になったらいつの間にか眠っていた
「まさか24時間以上寝てるなんて・・・」
それほど肉体を酷使していたのだと痛感する。だが体の疲れが取れた気が全くしなかった
「よりによってまたあの夢を・・・」
レミリアが殺されてそれを自分が発見する夢
その悪夢は咲夜の希望に徐々に揺らがせて、確実に削り取っていった


気が付くと地下室の前にいた
手にはいつもレミリアが月を見ながら楽しむ茶会のためのセット一式が入ったバスケットがあった
地下室の扉を開けて中を見るとフランがベッドで眠っていた
時間という概念を奪われた彼女は自分の体内時間に従った生活サイクルを送っているため眠る時間も不規則である
バスケットを部屋の中央のテーブルに置く。中には紅茶と茶菓子が一式、レミリアの好きな銘柄のワインとそれに合うつまみが入っていた
(私は何をしているんだっけ?)
フランの寝顔をそっと覗き込む

ソウダ、おじょうさま ヲ オコサナクチャ

フランの体を優しく揺する
「お嬢様、起きてください、お嬢様」
安眠を妨害されて不愉快なのか、声を濁らせながらフランが起き上がる
「寝てるんだから無理に起こさないでよ、めーり・・・あれ、咲夜だ?」
なぜここにいるのかわからずにフランは首を捻る
「お着替えをお持ちしました」
「え?あ、ありがとう・・・」
普段レミリアに接するように咲夜はフランに接する、ゆえにフランに手渡したのは
「ねえ、これお姉様のだよ?」
レミリアが普段使用している洋服だった
「いいんです」
べったりと張り付いた笑顔に気圧されてフランは渋々その服を着る
「よくお似合いです」
咲夜はフランではなく、フランの中に写るレミリアの姿を見ていた

マダ、ドコカ チガウ・・・ワカッタ カミガタ ダ

フランが瞬きをした間に、いつの間にか自分は椅子に座らされていた。真後ろから咲夜の声がする
「この髪、少し切りましょうか? 肩ぐらいに長さを揃えたら素敵になると思うんですが?」
“レミリアと同じ髪型になれ”咲夜はそう言っていた
フランもここまでさせれれば流石に咲夜の様子がおかしいことに気付く
今の状況から脱出しようと、体を動かそうとする
「困りますわ。じっとしていてくれませんと、髪と間違えて大事な血管を切っちゃいます」
銀のナイフが首にあてがわれ、フランの体が硬直する
吸血鬼とはいえ、銀で首を切られては冗談では済まない

フランは今の感覚が美鈴に関節を外されて遊ばれていた時と同じものを感じていた
この感覚に陥ると、相手の言いなりになるようにフランの体は美鈴によって教え込まれていた

「言う通りにするから・・・・・・・・・イジワルしないで、お願い」
怯えた声で懇願する
咲夜は言い知れぬ征服感に背筋をゾクゾクと振るわせる
「どうか怯えた顔をしないで。十六夜咲夜、この身は全てお嬢様のモノ。危害が及ぶことなど万に一つもございません、ですから」
フランの髪を強引に掴み、引っ張る
「痛ッ!」
フランの声など耳に入ってはおらず、嬉々としてナイフを髪の添える
膝の上で拳をつくりこの恐怖を耐えることしか今のフランにはできなかった



「なにしてるんですか? 咲夜さん」

ドスの利いた声が地下室に静かに響く
いつの間にか美鈴が扉の前にいた。いつもどおり、門番の仕事を終えてフランに会いに来ていた
表情はいつものまま
しかし部屋の空気が僅かに薄くなったような感覚に二人は囚われていた




「お二人で美容院ごっこですか? 楽しそうですね」

フランはどうしていいのか分からず固まる

「お引取り願いましょうか、咲夜さん?」
「・・・・」
咲夜は無言でナイフを仕舞い、美鈴の横を通り過ぎる。途中、二人が目を合わせることは一度も無かった

咲夜が部屋から出ると美鈴はフランに目を移す
フランはこれで助かったと思った

「めーり・・・」
「いつからですか?」
「え?」
「いつから今日みたいに咲夜さんとちょくちょく会っていたんですか?」
「ちょっと待って、何のこと?」

美鈴は不安そうな表情のフランを無視してその横を通り過ぎて彼女の机の引き出しを勝手に開ける
開けて中から首輪と長めの鎖を取り出す
椅子に座るフランの前に戻って来てその首に首輪をまわす
「ぐっ」
ベルトはいつもより穴一つ分キツく絞めた。さらにひもの代わりに鎖を取り付ける

美鈴は本気で怒っているのだとこの時フランはようやく理解した

鎖を強引に引き、お互いの吐息がかかるほど近くまで引き寄せる
顎に手をあてて、強制的に自分のほうを向かせて呼びかけた
「確認をとりましょうか? あなたは誰の“モノ”ですか?」
咲夜との出来事でフランの気持ちは異常なほど不安定になっていた。少しでも早く美鈴に甘えて安心したかった
「・・・・私は、めーりんの“モノ”です」
それを聞いて美鈴は満足そうに微笑む
咲夜の件を許してもらえたんだとフランは思い、抱擁を求める

しかし美鈴は彼女を突き放した
「きゃぁ!」
突き飛ばされ小さく悲鳴を上げて、尻餅をつく
ついさっきまでフランが座っていた椅子に、今度は美鈴が腰掛けて靴を脱いだ
「舐めて下さい」
フランの前に自分の素足を出した

足をマッサージさせることは何度かあったが、舐めさせるのはこれが初めてだった

フランは恐る恐る美鈴の足を両手で支えると、足の甲に口付けをするように舌をそえた
舌を這わせた跡が唾液でぬらぬらと光る
足首を噛み付くように舐めまわす
脛を舌でなぞる
しかし、途中でフランの動きが止まる
美鈴の足の指を見つめ、彼女は困惑していた
「どうしました? 止まってますよ?」
「う、うん・・・」
意を決して美鈴の指を口に含む
「ん・・・・チュゥ・・・・チュッ・・・・んふ・・・・」
指を飴玉を舐るように舌を転がす、前歯で爪を刺激する
舐めながらフランは美鈴の顔色を伺う
美鈴はフランを見てはいなかった

(あのくそメイドあのくそメイドあのくそメイドあのくそメイドあのくそメイドあのくそメイドあのくそメイドあのくそメイドあのくそメイド)

咲夜に対する憎悪だけが胸中を占める

(私がこの子の体とメンタル面にどれだけ気を配って今日までやってきたのか知らないで・・・・)

美鈴に自分を見てもらいたくて、必死に指に何度も口を吸い付ける
次第に卑猥な水音に変わっている
「んちゅ・・・・・ちゅぽ・・・・・・・・ねえ、美鈴。気持ち良い?」
美鈴の目が一度だけこちらに向けられ、フランはそれがうれしくてにこりと微笑みかける
そしたら舐めていない足の方で肩を蹴り上げられた

「ぐっ!」

「だれが休んでいいと言いました? 早く続けてください」
倒れたフランを鎖で足元まで強引に引きよせる

フランがレミリアの洋服を着ているのが気に入らなかった、ところどころレミリアの影がちらつく
自分の知らないところで咲夜と会っていたのが気に入らなかった、自分以外の者の匂いが付くのが許せなかった

「ごめん、なさい」
謝るフランを一瞥し、美鈴は再び壁を眺めはじめた
「あなたは情けない顔をして、よだれを垂れ流して舐めてばいいんです」
言われるがままに、フランは子犬のように足を舐め始めた

どれほどこの行為を続けたのだろうか
顎の痛みも忘れて美鈴の足に自分の唾液を垂らし、指に舌を丹念に這わす
「チュッ・・・・・・はふ・・・・・・ジュル・・・・・んん・・・・・ふぅ・・」
次第に美鈴の関心がフランに戻り始めていた
「いいですよ、その調子」

唇を自らの唾液で濡らし、涎を垂らしながら懸命に奉仕する彼女に美鈴は劣情を覚えた

美鈴の片方の足が戯れにフランのスカートの中に進入しようとする
「ゃぁ・・・」
小さく声を漏らしフランは足を硬く閉じて拒み、足から口を離し首をふるふると振り必死に拒否の意思を伝える
美鈴は噛み切れない肉を噛んだようなふうに顔をしかめた
「チッ」
そして小さく舌打ちした、その音にフランの体がビクリと震える
次の瞬間、美鈴の足の親指が喉の奥目掛けて突っ込まれた
「ウグッ」
それでもフランは指を舐めるのを続けた

フランは気が付けばこの行為に没頭していた
「もしかして感じてるんですか?」
口内をイジメながら美鈴は興味深げに訊く
「・・・よくわかんない」
フランの頬は赤く染まっていた。この子は火照っているのだと美鈴にはわかった
「もう一度訊きますね、 私の指は気持ちいいですか?」
コクリとフランが目を閉じてうなずく。美鈴は満足そうに頬を緩ませる
「この変態」
空いているほうの足で再び蹴り上げる
「ぐふっ!」

椅子から立ち上がり、腹を押さえてうずくまるフランの首輪の鎖を引き。ベッドの方へ向かう
フランは立ち上がろうにも重心をずらされてうまくいかず、つまずき何度も転びながら美鈴に引きずられる
途中で美鈴に抱きかかえられてベッドに放り投げられた

柔らかな足場に転がり、フランの体が自然と丸くなる
だが美鈴はそれを許さず、強引に腕を引き彼女をこちらに向かせる
美鈴の手には中身の入ったワインボトルがあった。バスケットに入っていたものを勝手に拝借した
フランに馬乗りになり膝で両手を押さえて、片手で口を開かせてそこにボトルの先を突っ込む
「んんっ!!」
気道を確保する要領で、喉を無理矢理開かせる

彼女の意思とは関係なく恐ろしい速さでワインが彼女の胃に流し込まれる

胃の中には他のものは無かったため、胃は急激にアルコール分を吸収しはじめる
フランの頭は真っ白になり、意識が朦朧としだす

その瞬間を美鈴は見逃さず、すかさず肝臓を手加減無しで力一杯殴りつける
「!!!!!」
喉から歪な空気を吐き出して、フランは気を失う
それをつまらなそうに眺める美鈴
「なに白目むいて泡ふいてるんですか? 早く起きてください」
頬をペチペチと叩いた後、以前のように関節を外して、気付けとして無理矢理引っ張る
ビクンッと体を一瞬だけ痙攣させただけで、それ以外の反応は無かった
「チッ!」
二度目の舌打ちをする美鈴
「完全にトんでますね。まあマグロでもいいや・・・・本当はもう少し体が出来上がるのを待つ予定でしたが・・・・・・」
言って、無理矢理着せられたであろうレミリアの服を脱がす
「こうしてみると、これからお嬢様を犯してるみたいですね」
服を脱がせてその肢体をながめる。ごくりと生唾を飲んだ
下着を剥ぎ取ろうと手をかける

その瞬間顔面を強打した

「ぶっ!!」
美鈴は痛みで顔面を押さえる、何が起きたのかわからない
フランの方を見たが、彼女はまだ気を失っている
美鈴は自分の拳を見る、うっすらと血がついていた

(ああ、なんだ・・・・・・)

そこでようやく理解できた

(私は自分で自分を殴ったんだ・・・)
最後の最後で自分の理性が働いたことを思い出した

さっきまでのフランの様子を思い出す

あの子は抱擁を求めいた、自分に抱きしめてほしいと目で何度も訴えかけていた、それを知っていながらあえて無視していた
独占欲だけが先走っていた


自分の愛してやまない存在をこの手で傷つけた。心と体の両方を
これ以上地下室にいるのが怖くなり、気を失ったフランの服をいつもの服に着替えさせると逃げるようにその場を後にした








次の日の朝、美鈴は花壇の手入れをしていた

昨日のことを思い出すたびに、何度も自分を殴り飛ばしたい衝動に駆られた
(私はなんてことをしてしまったんだろう・・・・・・・)
ここに来る前にこっそりとフランの様子を見に行った。その時はすやすやと寝息を立てていた。大事には至ってはいなさそうなので、それだけが救いだった

あの子から向けられた真摯な気持ちを自分は踏みにじった
「とにかく謝ろう」
それしか無かった

ふいに、手入れを手伝っていた妖精メイドが声をかける

「美鈴さん、ここも掘るんですか?」
「はい、お願いします」

(でも、そのためにはまず。この件を先に解決しないと・・・)

スコップで穴を掘っていたメイドが途中硬いものにぶつかる感触が手に響き、不快そうな声をあげる
「なんだこれ?」
「どうしました?」
美鈴も近づく、掘った所から袋が出て来た
「なんでしょうね、これ?」
メイドは首をかしげ、美鈴は神妙な面持ちになる
「あの・・・・・・もう、戻っていいですよ。ご苦労様でした」
「はぁ?」

わけが分からないまま、メイドは館の中に戻っていった
「・・・・・・」
土を払ってから袋を担ぎ、美鈴は図書館へと向かった