「あれ?咲夜さん、まだ仕事ですか?」
午前1時過ぎ、美鈴が話しかけてきた。
「そうよ。お嬢様の雨傘がちょっと破けてたのよ。」

お嬢様が日常で使う道具の管理、修繕も私の仕事の一つ。
この日は就寝前のチェックで、傘布に小さな穴が開いているのを見つけた。

「日光や雨はお嬢様にとって天敵だからね。傘の類には特に気を使わないと。」
私は傘のチェックには特に気を使っている。
この雨傘も、雨水が一滴たりとも漏れないように念入りに修理しないといけない。

「なんというか・・・咲夜さんって本当、マメですよねぇ。」
「あら?このくらいメイドなら当たり前よ。
 うちの妖精メイドは当てにならないしね。私がしっかりしないと・・・」
「でも頑張りすぎて体を壊したりしないで下さいよ。
 うちの妖精メイドは当てにならないんですから。」
そして美鈴は「おやすみなさい」と言った後、寝室へ向かった。

傘布を張り替えようとした時、骨の根元がぐらついている事に気付いた。
特に問題はないような気もしたが、お嬢様は物の扱いが少々乱暴だ。
万が一があってはいけないと思い、一応そこも直しておいた。
最後に、防水スプレーを吹きかけて終了。

そんなふうに、つい熱が入って遅くなってしまった。
結局、傘の修理が終わったのは2時すこし前。
私は美鈴の言葉を思い出し、少し反省した。
とは言っても、時間は私の手の中にある。
そこまで気にすることもなく、寝床に着いた。






翌日、曇り空。
昼食を終えた私は午後の仕事の準備をしていた。
しかし中庭を見ると、お嬢様がいる。

またか、と私は思った。
最近のお嬢様は私に内緒で館を抜け出し、神社へ出掛けることが良くある。
しかも見たところ、傘を持っていない。
曇りなので日傘も雨傘もいらないと思われているのだろう。

私は修理したばかりの雨傘を持ち、飛び出していった。
「お待ち下さい!どこへ行かれるのですか?」
案の定、館から抜け出そうとするお嬢様を門の前で呼び止めた。

「う、うん。ちょっと霊夢のとこに遊びに行こうかなって。」
「それならば私もお供致します。」
「いや、いいよ。子供じゃあるまいし。神社に行くのにそんな危険もないでしょ。」
「ですが、何が起こるか分かりませんし・・・」

「本当、咲夜はおせっかいね。
 いい?、どこに行くにもあなたと一緒なんて、
 まるで私が一人じゃ何も出来ないみたいじゃないの。
 心配のしすぎは、夜の王である私への侮辱と思いなさい。」
「そんな・・・私はただ・・・」

「咲夜、私の言うことが聞けないのかしら?」

強い口調で言うお嬢様。
こう言われては、私は大人しく従うしかない。

「分かりました。ですが念のため、これをお持ち下さい。」
お嬢様は雨傘を受け取ると、神社へ飛び立っていった。



夜になった。しかし、お嬢様はまだ帰ってきてない。
しょうがないので、パチュリー様と妹様には先に夕食を取って貰った。
お嬢様の分は鍋に保存して、後で温めなおすことにした。

「大丈夫よ、きっと向こうで馬鹿騒ぎしているだけ。」
「だといいのですが・・・」

それから一時間ほどして、お嬢様が帰ってきた。
と言うより、霊夢に抱えられて来た。

聞いた話によると、子鬼の挑発を真に受けて飲み比べをしたらしい。
結果は両者ノックダウン。普段飲む量の数倍近くの酒を飲み干したとか。

霊夢に礼を言ったあと、酔い潰れたお嬢様を抱えて屋敷に入った。
「お帰りなさいませ。おゆはんの準備が出来てますが、いかがなさいますか?」
「うーーーん。ご飯なんて食べられないよ。」
「分かりました。では、お水とお薬を用意しますね。」

それからお嬢様のお体を洗って、寝床へお連れした。
鍋のご飯は皆の夜食にでもしよう。
そう言えば何か忘れているような・・・そうだ、傘がない。
明日、朝一番で取りに行かなくては。






それから数日後、その日も曇り。
夕方、館の裏口のあたりでお嬢様とばったり出くわした。

「お嬢様、まさかお出掛けですか?」
「ち、違うよ!ちょっと外の空気が吸いたくなっただけ。」
「はぁ、そうですか。」

「そうだ、咲夜・・・廊下の掃除、やっておいてくれる?」
「廊下・・・ですか?午前に掃除したばかりですが。」
「あれじゃ不十分なのよ。悪いけどやり直して。」
「は、はい。分かりました。」

しぶしぶモップを手に、廊下へ向かう。
しかし、既に掃除を終えているので廊下は綺麗になっている。
特に汚れているようでもないが。

「咲夜、今夜のレミィのご飯はいらないわよ。」
不意にパチュリー様に声を掛けられた。

「どういうことですか?」
「さっきレミィが、新しい遊びを思いついたから巫女のとこに行くとか言ってたわよ」
      • やられた。廊下の掃除をしろと言うのも、こっそり抜け出すための作戦だろう。

窓の外を見る。いつの間にか分厚い雨雲が空を覆っていた。
「急に雲行きが怪しくなったわね。あの子、傘はちゃんと持ったのかしら。」
私は急いで玄関に向かう。
このあいだ霊夢から返して貰った雨傘が、そこにあった。

「お嬢様!」
それを持って神社へ飛び出した。嫌な予感がする。



先程のやり取りから数十分ほど。お嬢様はまだ神社に着いてはいないだろう。
天候が怪しくなった時点で引き返しているならいい。
もしくは雨が降り出す前に神社に着ければいい。
しかし、もしも道中で雨に降られたなら・・・
傘のないお嬢様はひとたまりもない。

お願い・・・まだ降らないで・・・
祈るような気持ちで全力で飛ぶ。
しかしそんな願いも空しく、雨粒が私の首筋に落ちた。
「あ!あああ!!」
一瞬、雨粒の落ちたところが火傷するような錯覚に陥った。
まるで、私が吸血鬼になったかのように。

雨は次第に強くなっていく。
お嬢様を呼びながら、目を皿のようにして下を見る。
お嬢様がまだ神社に着いていないのなら、雨に降られて落下している可能性は十分にある。
もしもそうなら、それを見逃すわけにはいかない。
私が見つけなければ、他に救いはない。

そうしていると、下の森の中に何か黒いものを見つけた。
もしかして・・・お嬢様の翼!?
そう思って近付いて見たが、違う、ただの使い古しのマントだ。
ほっと胸を撫で下ろすと、再び神社への道を行った。



「本当に助かったわ。あなたは私の恩人ね。」
当のレミリアは博麗神社にいた。
神社の石段のところで雨に撃たれ、動けなくなっているところを霊夢が助けていたのだ。
濡れた体を拭いて貰い、服まで貸して貰って炬燵で暖をとっている。

「あんたの口から『恩人』だなんて、面白い冗談ね。」
「いやいや本気だよ。雨が降り出した時はどうしようかと思った。本気で感謝してるわ。」
「あらあら、そんなこと言うから、いつの間にか外は凄い豪雨じゃない。」

雨は激しさを増して、雷まで鳴り出した。
「困ったなぁ、これじゃ帰れないねぇ。明日まで降り止まなかったら、どうしようかしら。」
そう言ってレミリアは霊夢に擦り寄る。
「やっぱりいつものあんたね。」



「お嬢様っー!お嬢様っー!!聞こえていたら返事をしてください!」
日の暮れた森の上を、大声を出しながら飛び回っているのだから
当然、野良妖怪どもが寄って来る。
この一刻を争う時に、そんな奴らに時間はかけられない。
少々無茶な戦いをしなければならない。
焦りで弾幕の避け方まで雑になっていく。

そうしている内に、ついに神社が見えるとこまで来てしまった。
最早こうなっては二つに一つしかない。
つまり、無事に神社へ辿り着けたか。
それとも、どこかで見落としてしまったか。

鼓動が早くなる。背筋に嫌な感触が走る。
「レミリア?来てないわよ。」
もしも霊夢がそう答えたら、どうすればいいのだろう?


境内に降り立つと、母屋から騒がしい声が聞こえてきた。
私はたまらず、雨戸を開けて上がりこむ。

      • そこには霊夢に覆い被さるようにしてじゃれているお嬢様がいた。
「お嬢様!!ご無事ですか!!!」
思わず歓喜の声を上げた。

お嬢様はびっくりして、一瞬固まっていたが・・・



「・・・ちょっと、なんであなたがここに来てるのよ?」
不機嫌そうな声で言った。

「え・・・?」



「あ・・・その、お嬢様が神社に向かったと聞いて・・・雲行きが怪しくなったので・・・」
「咲夜、さっき言ったよね?『廊下の掃除をしろ』って。
 ちゃんと終わらせておいたんでしょうね?それにしては随分早いみたいだけど。」
「いえ、まだです・・・」
「そう、私の命令を無視してここに来たのね。『分かりました』って言ってた癖に!」

「す、すいません・・・」
自分でも聞き取れないくらい小さな返事しか出来なかった。

「早く帰って仕事しなさい。今度こそ言うこと聞かなかったら、酷いわよ?」
私は知っている。この喋り方のお嬢様に逆らってはいけない。

「あの・・・でしたら傘・・・」
「早くしろ!咲夜!!」
せめて雨傘を渡そうとしたところへ、追い討ちをかけられた。
私はそのまま逃げ出すように神社を後にした。

「少し暖まっていったら?」と霊夢が言ったような気がする。
そう言えば、雨が異様に冷たい。



「ちょっと、いくらなんでも酷いんじゃない?」
咲夜が去った後、霊夢がレミリアを責めていた。

「よく分からないけど、あいつ、あんたが心配で来たんでしょ?」
「これも私の立場上、しょうがないのよ。
 私と咲夜は友達でもなければ、家族でもない、主君と家来。
 聞き分けのいい主君なんて、ありえないじゃない。
 咲夜には悪いけど、私の命令が最優先でいて貰わないと。」

「そんなものなのかしら?」
「まぁ、霊夢には分からないことだろうけどね。」
「・・・・」
それでも霊夢はいまいち納得しきれない様子だった。

「それより霊夢、そろそろ酒盛りの時間じゃない?」
「はいはい、分かったわよ。」



「咲夜さん、どうしたんですか!?」
門の前で美鈴に呼び止められた。
私は雨に降られて全身ずぶ濡れだ。
「うん、ちょっと・・・ね。それより、お嬢様は今夜は遅くなるみたい。」

「傘、持っているじゃないですか。なんで差さなかったんですか?」
「だってこれはお嬢様の傘だから・・・。私の傘は持って行くの忘れちゃったし。」

「怪我までしてるじゃないですか!毛布と包帯を持ってきますね。」
「ううん、これくらい平気よ。それより私にはまだ仕事が残ってるから・・・」

怪我は行きに野良妖怪に襲われた時のものだが、そんなことはどうでも良かった。
それよりも、早く廊下の掃除をやらなければ。
『今度こそ言うこと聞かなかったら、酷いわよ?』
お嬢様の言葉を思い出す。

体を流し、着替えを済まし、簡単に傷の手当てを終えて、すぐに仕事に取り掛かった。
パチュリー様と妹様のご飯も作らないといけない。
とにかく時間が欲しい私は、何度も時間を止めながら廊下にモップを掛けていった。



深夜になって雨が止んだ。
しかし、お嬢様はまだ帰ってきていない。
私はいつも通り、お嬢様の日用品のチェックをしながら帰りを待っていた。
本当は神社まで迎えに行きたいが、行ったらまた怒られてしまいそうだ。

それにしても既に春先だと言うのに、いやに冷える。
体の芯まで凍えるようだ。
そうだ、お嬢様に温かいスープでも作っておこう。






次の朝、快晴。
今朝の私はなんだか体がだるいし、熱もあるようだ。
昨日は少し無理をしたかも知れない。



お嬢様は私が眠っている間に帰っていたらしい。
今は自室で寝息を立てている。

パチュリー様が言うには、帰ってきたのは明け方。
昨夜は一晩中飲んでいたが、空が白んできたので急いで帰ってきたのだとか。
こんなことなら『厨房にスープがあります』ってメモ書きの一つでも置いておけば良かった。
これも美鈴への差し入れにしておこう。

「ところで咲夜、なんだか顔色が良くないみたいだけど、大丈夫?」
パチュリー様がそれなりに心配そうに言う。
「私は大丈夫ですよ。いざとなったら時間を止めて休憩しますから。」
「そう?だったらいいけど・・・ああ、そうだ、これ。」
そう言うとパチュリー様から籠を差し出された。

中には服が入っていた。
「昨日レミィが着ていた服と、霊夢から借りた着替えよ。
 洗濯しておくように言え、って言われたわ。
 特に借り物の服は大事に扱いなさいって。」

「分かりました。すぐにやっておきますね。」
「それと、10時半に起こせとも言ってたわ。全く、あんたも大変ね。」
私は苦笑でそれに答えた。

いつもなら洗濯は朝の掃除の後だけど、前倒しすることにしよう。
この天気なら、洗濯物もすぐに乾くだろう。
そう思って洗濯場に行こうとしたところで、軽く眩暈がした。



「う、ん・・・」
咲夜に起こされることなく、ひとりでに目が覚めた。
放っておけば昼過ぎまで寝てしまうかと思っていたので、意外に短い眠りだ。
一体どれくらい寝ていたんだろうと、時計を見ると・・・
「え?もう昼の1時?」

急いで部屋着に着替えて図書館へ向かう。
パチェはちゃんと咲夜に伝えていたらしい。
それからテラスに行くと、中庭で洗濯をしている咲夜がいた。
それにしても、随分とのんびりした洗濯だ。

「ちょっと、咲夜!」
中庭は日光が強いので、テラスから怒鳴りつける。
「あ 、 お 嬢 様 、お は よ うご ざ い ま す 。」
嫌に間延びした返事が返って来た。

「おはようじゃないわよ、もう昼過ぎじゃない!!
 10時半に起こせって言われてたんでしょ?どういうことよ!?」

咲夜はびっくりした様子で時計を覗き込む。
しかし、その動作さえスローだ。

「す 、 す い ま せ ん 。 お 嬢 様 。 ま さ か 」
「もういい。あなたと話しても時間の無駄よ。」
やはり間延びしていた咲夜の言葉を遮って、中に入った。
一体、何なんだ?咲夜が私にあんな態度をとるなんて、今までなかった。
あいつ、まさか昨日のことを根に持っているのか・・・?



最悪だ。
まだ10時前のつもりが、いつの間にかこんな時間になっていたなんて。
お嬢様は相当怒っていたのか、かなり早口で私を叱っていた。
さっきまでの眩暈に加えて、絶望感で重力を感じなくなる。

しかし今はとにかく、少しでも早く洗濯を終わらせて謝りに行かないといけない。
もう体調が悪いなどと言っている場合ではない。

時間を止める。眩暈がした。
時間を止める。吐き気がした。
時間を止める。耳鳴りがした。
時間を止める。目の前がぼやけた。
時間を止める。気を失いかけた。
時間を止める。バランスを失って倒れこんだ。

なのに、いつまで経っても洗濯は終わらない。
時計を見ると、もう2時半だ。
時間が異常に早く流れているような気がする。

もし、このまま日が暮れてしまったらどうすればいい?
洗濯も満足に出来ないメイドなんて、お嬢様はどう思うだろうか。

見捨てられる・・・?
いや、もう既に見捨てられているのかも知れない。
昨夜からお嬢様の逆鱗に触れ続けてきた。

お嬢様から引導を渡されるくらいなら、その前に消えてしまいたい。
私の世界が崩壊していくような気がした。



「咲夜さん!」
いつの間にか、美鈴が私の肩を掴んでいた。
「大丈夫ですか!?もうフラフラですよ!」
「なんか・・・私・・・駄目かも知れない・・・」
流石にもう「大丈夫」なんて言えなかった。

「待って下さい!今すぐパチュリー様を連れてきますから!」
そう言うと美鈴は信じられない速さで館に駆けて行った。
本当に、今まで見たことがないようなスピードだ。

それから10秒もしない内に、美鈴がパチュリー様を連れてきた。
どういう訳か、パチュリー様まであの超スピードで駆け寄ってくる。
何か話し合っているようだが、早口すぎてとても聞き取れない。

2人の動きはどんどん加速していってる。
更には他のメイド達までやって来て、目にも留まらぬ速さで動き回る。
奇妙な夢でも見ているのかと疑いだした頃、目の前にお嬢様が現れた。
しかしあまりに速すぎて、まともに顔を見ることすら出来ない。

次の瞬間、太陽が沈んだ。
私の周りの人たちは、もう加速しすぎて消えてしまった。
今度は急に明るくなった。
朝が来たのか、と理解した頃には既に太陽は再び沈みかけている。

とりあえず立ち上がろうとしたが、体が全く動かない。
本当に、指一本動かすことさえ出来ない。
私はもう訳が分からなくなった。

しかし視界が闇に覆われて、代わりに奇妙な光が見え始めたので
自分に何が起こっているのか分かった。

しばらくして私は死んだ。



夕方の4時。
「お嬢様、ちょっと来て貰えますか?」
いつになく真剣な表情の美鈴がいた。
美鈴に中庭へ連れて行かれると、パチェやメイド達が咲夜を囲っている。

「咲夜・・・?どうしたの・・・?」
咲夜はまるで蝋人形のように固まっている。
瞬き一つしないし、話しかけても全く反応がしない。
「触っちゃだめよ。」
揺すってみようかと思った私をパチェが制した。

「一体、何が起きたのよ?」
そう言えば、昼過ぎに咲夜を見たときも何だか様子がおかしかった。

「咲夜さん、死んじゃったんですよ。」
吐き捨てるように美鈴が言った。

「死んだって・・・咲夜が・・・?」

「正確に言うとまだ生きてるわ。と言うより、もう永遠に死ねない。」
訳が分からないパチェの言葉のせいで、私はますます混乱した。

「死因は過労よ。昨日、帰って来た時点でもう咲夜の体は弱りきっていた。
 それなのに休むどころか、何度も時を止めてまで働いていた。
 連続して時を止めるのは、咲夜が思っていた以上に負担が大きい。」

続けて、咲夜が固まっていることの説明が入る。
「咲夜があんまり無理をするものだから、体が自分自身の時間を遅らせていたのよ。
 少しでも死期を遅らせようとする生存本能ね。
 そしてその時間は、死に近付くほど遅くなる。
 つまり、死は永遠に来ない。
 咲夜は時空の彼方で死んで、私達から見れば咲夜だけ時が止まったように見える。」

しかし私はその説明を理解するどころか、咲夜が死んだことすら受け入れられない。
「ねぇ、パチェの魔法で何とかならないの・・・?」
「仮に咲夜の時間を元に戻せたとしても、普通の死体しか残らないわ。
 どうしても埋葬したいなら、やってみるけど・・・」

咲夜の頬に触れようとした私を、再びパチェが制する。
「今の咲夜に触ると、あなたの時間まで止まるわよ。
 そうなれば、どこに行くのか見当も付かない。」

「嘘・・・嘘よ・・・どうして・・・」
項垂れる私に、美鈴が雨傘を差し出した。
「咲夜さん、ずっとお嬢様のこと想い続けていたんですよ。
 どんなに報われなくてもお嬢様の為にって・・・頑張りすぎでしたけど・・・」

ずっと使っている雨傘なのに、傷一つ付いてなかった。
持ち主の癖に、そんなこと今まで気が付かなかった。






数百年後、曇り。
朝起きてすぐに中庭に向かった。

あの日のままの姿の咲夜がいる。
一方、私は流石に成長していて、咲夜と同じくらいの背丈になった。

彼女の周りには薄いバリアが張られている。
誰かが迂闊に咲夜に触らないように、
また咲夜が埃で汚れないようにパチェに頼んで作って貰った。
術者が死んでも永続的に効果の続く代物だ。


咲夜の目をじっと見つめる。
今にして思えば、咲夜は私が考えていた以上に私に尽くしてくれていた。
私から感謝の言葉なんて殆どなかったのに。



ありがとう・・・咲夜。

分かってる。もう遅いよね。

ゴメンね・・・咲夜。





  • おおお… -- 名無しさん (2009-04-04 22:42:14)
  • 咲夜さん… -- 名無しさん (2009-04-25 22:02:02)
  • 俺的にはストレートに死ぬほうが好みなんだが
    よいssだ -- 名無しさん (2009-04-25 23:30:48)
  • つーか時間凍結(?)解除して埋葬してやれよ -- 名無しさん (2009-04-26 13:34:52)
  • そのまま美しい姿を残してやるのもいいジャマイカ -- 名無しさん (2009-04-26 18:43:14)
  • 過労死寸前のグロッキー状態ですが -- 名無しさん (2009-04-27 12:41:04)
  • この作者は映画「タイムマシン」を鑑賞したとみた! -- 名無しさん (2009-04-27 21:03:55)
  • 素晴らしい! -- 名無しさん (2009-05-31 01:28:35)
  • しかし結局レミリアイジメに見えてしまう。
    ナンデだ? -- 名無しさん (2009-06-19 16:56:37)
  • 私は死んだ。ザ・ワールド(笑) -- 名無しさん (2009-07-19 18:21:43)
  • とりあえずおぜうさまが酷いな
    従者の気持ちも分からずに、カリスマ(笑) -- 名無しさん (2009-07-19 21:55:30)
  • \いい話/
    普通に埋葬すれば良いのに…(ノ_・。) -- 名無し (2009-12-31 15:44:04)
  • 数百年…美鈴がどんな姿か気になる所。ババァとか言われてたら俺死んじゃう。 -- 名無しさん (2010-01-01 03:30:25)
  • おぜうさま、もう少し従者に気をつかいましょう。
    あと多分、美鈴はおぜうさまに怒ってるな。 -- 外道 (2010-01-01 12:50:16)
  • これは・・・とても記事にはできません・・・・・
    -- 射命丸文 (2013-06-26 16:24:49)
  • これはよい… -- 名無しさん (2015-08-11 18:03:59)
  • ふへーーーー -- 名無しさん (2015-09-23 20:31:33)
  • 咲夜さんを死なせるとかマジないっす! -- 名無しさん (2015-09-23 20:32:20)
  • レミリア優しすぎワロター -- 名無しさん (2015-10-08 00:57:56)
  • え、これって咲夜は人の何億倍も長い時を生きているってことじゃないの⁇ -- 名無しさん (2016-12-12 01:33:27)
  • コールドスリープやんけwww -- カッスやなw↑ (2016-12-26 00:16:53)
  • かりちゅま☆うーっwww -- キリライター (2016-12-26 00:18:32)
  • 他の人のも作ってー(死ぬやつよろ)www -- 残酷な天使のライト (2016-12-26 00:20:56)
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