注意

このSSはフィクションです。
現実の人物や団体、イベント等その他固有名称とは一切の関係がありません。関係ないってば。





























「そういえばレミィ、明日灯火が来るわよ」

夜半のお茶会を楽しんでいた際、そんな話題がパチュリーから飛び出した。

「何の事かしら」
「冥界が今度鎮魂の儀式を執り行うらしいわ、それに伴って幻想郷中を灯火が練り歩く。
 その一部に紅魔館が入っている。それだけのことよ」
「鎮魂の儀式?何それ面白そう」
「そうでしょうね、許可を求めに来た妖夢にも同じ事言ってすんなりOK出していたものね」
「そうだっけ?」

そんなことあっただろうか、良く覚えていない。

「ああ、だから今日はこんなに慌ただしいのか」
「その通りにございます」
「咲夜、その火が来るのって明日なのよね、一体何をやるのかしら」
「ただ通過するだけですわ」
「通過するだけ?その程度のことのためにこんなにばたばた準備しているの?」
「お嬢様、儀式や儀礼というものには必ず何かしらの意味があるものです。
 それを理解していただければこの状態もご理解いただけるかと」
「回り道ねえ、つまりどういう事なのよ」
「つまりはその灯火は歓迎されるようなものではないという事よ」
「パチェ?」
「明日来る灯火は彷徨える魂魄の道標となるもの。
 霊魂を引き寄せ、冥界に連れて行くための行進よ」
「…それが何で歓迎されないのかしら、すっきりして良い事じゃない」
「その魂魄は冥界の不祥事によって発生したものであってもかしら」
「どういう事?」
「ここしばらく冥界の門が開きっぱなしになっていたでしょう?
 そこから随分な数の悪霊がこちら側に流れ込んできていたらしいわ」
「なるほどね、自分らで拡散したものを回収しに来るのか、それは確かに迷惑ね」
「最近は対応をしたようだから洩れないようになってはいるらしいけど、
 こっちに来てしまっていた奴らの対応が遅れていたみたいね。」

それでその灯火とやらで回収していくと言うことか。
確かに迷惑だがやって貰わないと困ることね
…ん?でもちょっと待て。

「咲夜、それでなんでこんなにどたばたしているの」

考えてみれば不思議な話だ。迷惑なだけで害があるわけではない。
それなのに何でこんなに厳重な準備活動が行われているのか。

「…快く思わないものも多くいると言うことです」
「どうして」
「拡散したのは悪霊です。お嬢様ほどの能力を持つお方にとっては取るに足らない存在でありましょうが
 一般の人間はもちろん、力の弱い妖精などにとっては深刻な問題となりえるのです」
「取り憑かれて殺された者、発狂した者、洒落で済まない悪戯をされた者。
 たくさんいるらしいわ。もちろん紅魔館にもね」
「紅魔館に来るまでに、人里や博麗神社などを既に回っています。
 被害を受けた者、またはその親類縁者などから様々な妨害活動、抗議行動があったようです」
「抗議の主な内容としては、『無責任だ』『後始末をつけろ』『返れ』と言ったところよ、
 便乗して火を消そうとする愉快犯や、観衆に飛びかかろうとする悪霊、
 火を守ろうとする守護霊などが入り交じって大変らしいわね」
「博麗神社は当日いきなりルートを変更して石段の往復だけにし、鳥居を潜らせなかったようです。
 神社に悪霊を入れるわけにはいかないと言っていました」
「…もういいわ、聞けば聞くほど頭が痛くなってくるわ」

つまりは、明日紅魔館でも相応の混乱が発生するということだろう。
それが分かっているから準備を念入りにしっかりとやっている。そういうことか。

「まぁ、しっかりやって頂戴。私は遠くから眺めることにするわ」

お茶を啜る。ああ、駄目だ。すっかりぬるくなってる。









「点呼ぉー!」
「1!」
「2!」
「3!」


……
………。

そこは戦場だった。
咲夜が気合い十分な顔で広間に集まった精鋭の妖精メイドを前に演説を始める。

「いいか、我々の任務は灯火を消させないことだ!
 野蛮な乱入者、暴徒は殺してでも鎮圧しろ!どうせ一緒に連れて行かれる、遠慮はするな!」
「サー!」
「冥界の蒼い守護霊隊の参加は謹んで拒否した!紅魔館特殊妖精部隊の実力を連中に見せつけてやれ!」
「サー!」

その異様に高いテンションの集会を横目に眺めながら私は一種の開き直りで優雅に朝食を取っていた。

「どうしてこんなことに………」

目を逆方向に向けると縮こまって震えている魂魄妖夢がいた。
顔も真っ青だ。半人半霊どころか全身全霊悪霊の様相だ。

「一つ聞いて良いかしら」
「はひっ!」

良い機会だから聞いておくことにしよう。
昨日聞きそびれたし、何より今あの集会に割り込んで聞く勇気はない。

「灯火って途中で消されたらどうなるのかしら」
「…。悪霊が逃げ出します」
「それだけ?」
「捉えられた悪霊は灯火の上で高密度に圧縮された状態となっています。
 それが一気に弾けます。…間違いなく物理的な被害が発生します。爆弾的な意味で」

想像する。
…キュッとしたものが、…どかーん。

背筋を寒いものが走り抜ける。
いやいや、その規模は無いだろう。常識的に考えて。

「あと、再点火しても悪霊の全数再回収は難しいと思われます。
 紅魔館には相応の数の悪霊が潜伏することに…」

妖夢が更に恐ろしいことを言っているが、最早そんな枝葉のことはどうでもよい。

「咲夜ぁーっ!!」

大声で咲夜に呼びかける。

「何としてでも灯火は守り抜きなさい!絶対よ!」
「承知しております、お嬢様」

おーっ!!
妖精メイド軍団から同調して雄叫びがあがる。
頼もしい。こいつらなら何とかしてくれるに違いない。
いや何とかしてください。お願いします。









館内は騒然としていた。

「見れば紅魔館の者でない者もたくさんいるようね、何故わざわざ外部の者を招き入れるのかしら」
「何でも悪霊を集めるために、あちこち解放しないといけないらしいですね
 そのために、こんなにたくさん集まっているのですよ」
「やっかいねえ」

咲夜は警備隊長をやっているため今日はレミリアの傍にいられない。
そのため美鈴がレミリアの傍についているのだ。

「ほんとバカなことやってますよね」
「あんまりそうやって過小評価するのは感心しないわね。気を付けなさい」
「あ、すいません」

のんきな美鈴を諫める。もう少し緊張感を持つべきだと思う。

「始まりますよ」

美鈴が時計を見て言う。鐘がなり、正面玄関が開いていく。

途端に、もの凄い霊気が流れ込んでくる。
開いた門の隙間から姿を現したのは…

「…悪霊」

扇を展開した冥界の亡霊嬢、西行寺幽々子。
提灯を掲げ、悪霊を集めるその姿に思わずレミリアが呟く。

「チルノちゃんを返せーっ!この悪霊ーっ!!」

開始早々に大声を張り上げ、果敢にも突撃する者がいた。

「あれは…」

突風を伴い、涙を流しながら突進する。大妖精だ。

「取り押さえろー!」
「押さえ込めー!」

幽々子の周囲を固めていた妖精メイドが一斉に大妖精に飛びかかり一瞬で地面に押さえ込んでしまう。

「ちくしょうっ、チルノちゃんを、チルノちゃんを食べやがって!」
「おとなしくしろっ、このっ」
「縄だ!縄もってこーい!」

拘束され、縄でぐるぐる巻きにされる大妖精。
その横を、扇子で笑っている口元を隠した幽々子がふわふわと通り過ぎる。

「あの子を!あの子を返してぇー!この亡霊!覚えていろぉーっ!」

ずるずると引きずられていく大妖精。いきなり滅茶苦茶なスタートである。
頭を抱えるレミリア。それを慰める美鈴。

「ほら、原因は悪霊ではありませんし。大丈夫ですって」

一体何が大丈夫なのかさっぱり分からないが美鈴は美鈴で頑張っているのだろう。
それにしても…
レミリアは思う。
なんだあのおぞましい行進は。
扇を展開した幽々子が提灯もって悠々浮かんでいるだけでも十分怖いのだが
さらに周辺に得体の知れない魂魄が無数に回遊し、幽々子の後ろに尾を引いている。
視線を上に向ければアンリマユやらオズマやら崩壊紋章といったもの顔負けな
怪しげな球体がぐにぐにと蠢いて周辺から何かを吸い込んでいる。
なんだこれ。
もう一度言う。なんだこれ。

「気の弱い人が見たらそれだけで死んじゃいそうですよね」
「で、そのまま吸い込まれてアレと同化するのね」
「…それはいやですねぇ」

想像したのか、美鈴は下腹部に力を入れる。
いや、それ違うし。なんか間違ってるし。

一方の幽々子は平然とした様子だ。
次々と襲いかかる暴徒を横目に見ながらゆっくりと進んでいる。

「よくもエナを、あの子はまだ160歳だったっていうのにっ」
「チコちゃんはお前の悪霊の性で発狂したんだぁ!」
「帰れこの悪霊ーっ!」

四方から罵声が飛び提灯に向かってギョーザやらペットボトルが投げ込まれる。
しかし、それらのものは尽く妖精メイド部隊に阻まれ提灯まで届かない。

「いいかげんにしろぉー!罵声は良いけど物を投げるな!灯火が消えたら大惨事だぞわかってんのか!」
「だからこそ消す!邪魔をするなぁー!」
「やめれー」

そしてそこら彼処で散発する妖精メイド同士の小競り合い。

「きゃあぁぁぁぁ!!」
「マイマイ!?どうしたの」
「悪霊よ!そこをどきなさい!」

さらに悪霊が引き起こす阿鼻叫喚。

あああああ。
もうほんとになんだこれ。
あまりの惨状にレミリアは頭を抱えてしゃがみ込んでしまう。

「お嬢様、お気を確かに。あと十分ほどの辛抱です。堪えてください」
「あと十分、されど十分、まだ十分も…」

ブツブツと呟く。現実逃避。

紅魔館は魑魅魍魎、跳梁跋扈の素晴らしい惨状となっていた。
誰も彼もが皆必死である。
吸い込まれまいとする悪霊。
抗議活動を行うもの。
灯火を死守する妖精メイド。

楽しそうなのは幽々子のみである。


 ・・・・・。


「以上をもちまして紅魔館での鎮魂パレードを終了させていただきます。ありがとうございましたぁ!!!」

妖夢がやけくそ気味に終了を宣言しようやく紅魔館に平穏が訪れる。

咲夜による本日の被害まとめが発表される。
逮捕9名
負傷57名
行方不明2名

「なにが鎮魂なのよ、全然鎮まらないわ」

ぐったりとしているレミリア。

「でも死者が出なかっただけ良い方ですわ」

更にへばっているが、気丈に振る舞い続ける咲夜。

「もうこりごりよ。こんな事二度とやるもんですか」
「ええ、次があるなら開催を拒否してしまいましょう」

素晴らしい結果に終わった今回のイベント。きっと紅魔館にとって忘れられない思い出になるはずである。










そして、翌日の文々。新聞

『熱烈歓迎』

冥界のスポークスマンである魂魄妖夢氏は今朝、紅魔館で行われた鎮魂パレードについて
「紅魔館でのパレードは大成功。現地の観衆は情熱的な拍手で祝意を示した」
と発言し、感謝の意を表明した。
記者の、混乱や妨害があったようだがとの質問に対しては
「そんなことはない、パレードはきわめて平和的に、粛々と執り行われた」
とし、騒然とした雰囲気であったことを否定した。
灯火は今後幻想郷数カ所を回り、冥界へ渡ってゆく。









  • 中国ネタだから中国が活躍するんだと思った
    でもしなかった -- 名無しさん (2009-03-15 13:37:39)
  • 中国ネタというと
    これは聖火リレーのことだったのか! -- 名無しさん (2009-03-15 15:11:50)
  • 冥界の蒼い守護霊隊というところで全て把握した -- 名無しさん (2009-03-15 22:28:28)
  • チルノに何があった -- 名無しさん (2009-05-16 18:35:01)
  • さりげなく射命丸がまた捏造してる件について -- 名無しさん (2009-05-18 09:19:48)
  • そうか、長野の聖火リレーを風刺してたのか!うめえwww -- 名無しさん (2009-05-19 20:47:48)
  • なるほどwww
    初っ端の大ちゃんにはわらたww -- 名無しさん (2009-05-31 00:12:58)
  • まあチルノは妖精だしすぐに復活するから
    まあいいだろww
    -- 名無しさん (2009-07-26 03:26:37)
  • 誰がチルノを食べたんだよw -- 名無しさん (2009-07-26 12:24:35)
  • 行方不明2人って・・・ -- 名無しさん (2009-07-27 10:20:30)
  • グッバイチルノ -- 名無しさん (2010-03-31 00:41:35)
  • チルノ···ちょっと馬鹿だけどいい奴だったのに··· -- 名無しさん (2010-09-17 21:03:16)
  • いつのまにか二人食われとるwwww -- 名無しさん (2011-03-18 20:53:44)
  • 提灯にペットボトルはまだいいがギョーザ投げ込むなwww -- 名無しさん (2011-03-19 00:20:27)
  • 毒入りですね、わかりますwwww -- 名無しさん (2011-03-19 07:32:35)
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