324 名前:名前が無い程度の能力 投稿日:2006/09/18(月) 10:42:50 [ Zd9.9zsY ]
館の全員で結託して美鈴をいじめることにした。

まずは美鈴が寝ている間彼女だけ時間を止めて下準備だ。
ぐっすり眠っている美鈴を寝巻きからネグリジェに着替えさせてお嬢様のベッドに運び込み、私達はそれぞれ用意したものに着替える。
お嬢様と妹様はお揃いのメイド服、私は美鈴がいつも着ている門番の服。

「一度これ着てみたかったんだー」

妹様はメイド服が気に入ったようで、スカートを翻して楽しそうにくるくる回る。

「私に咲夜の代わりが務まるかしら、少し不安だわ」
「大丈夫です、そんな時のためにパチュリー様が用意した通信機イヤリングがあるのですから」

パチュリー様と小悪魔の司書は図書館に篭って通信機を通して皆に指示を出す係だ。
他のメイド達には既に指示を済ませてある。

「作戦、開始」

 ****

「おはようございます、お嬢様」
「……えっ?」

美鈴が目を覚ますと、そこは自室ではなかった。傍に立つのは遣えるべき主人の姿。だが何かがおかしい。

「お、お嬢様これはいったい…」
「嫌ですわお嬢様、私はメイド長のレミリアです。あなたは紅美鈴、紅魔館の当主ではありませんか」
「ち、違…私は紅魔館の門番で…」
「何をおっしゃいますやら、紅魔館の紅の字はお嬢様の姓ではありませんか」
「それは…あっ、そうだ…仕事しなくちゃ咲夜さんに怒られ…」

おろおろしながら飛び起きる美鈴。慌てて着替えようとして、自分が日頃着慣れないものを着ていることに気付く。

「はしたないですわお嬢様、お着替えでしたらこちらにご用意してございます」

用意されている衣装は、本来なら館の主が着るべきもの。しかしサイズは美鈴に合わせたものだ。
いったいこれはどういうことなのか…美鈴は困惑しながら衣装に手をかける。

「お着替えなら私が…」
「い、いえそんなお手数を…」

慌しく着替えた美鈴は部屋を飛び出し、ばたばたと館を駆け抜ける。すれ違うメイド達は深々と礼をする。

扉を開け放ち、門の詰め所までたどり着くと、そこにはいつもの自分の姿をした見慣れた人物がいた。

「何やってるんですか咲夜さん!」
「あらお嬢様…さん付けなんてどうなされたのです? 私は確かに門番の十六夜咲夜ですけれど」
「門番は私で咲夜さんはメイド長でレミリア様は館の主で……」
「お嬢様、それは何のお話で? 夢でもご覧になったのではありませんか?」

その言葉に打ちのめされたのか、ふらふらと館に戻っていく美鈴。
その途中ですれ違う金髪で小柄なメイドが声をかける。

「美鈴お嬢様、おはようございます」
「フランドール…様?」

「私は地下倉庫管理のメイドでフランドールと申しますけど、それがいかがしました?」

がっくりと膝をつく美鈴。

『ここはどこなんだろう、私の知っている紅魔館はどうしたのだろう…』
「メイド長、お嬢様がお倒れになりました!!」

そう叫ぶフランドールの声を聞きながら、美鈴は気を失った。

 **

結局、その日一日美鈴は至極落ち着きのない様子でお嬢様としての務めを果たし終えた。
おっかなびっくりでメイド長のレミリアを呼び捨てにし、しきりに門の様子を伺っては門番の咲夜にたしなめられていたが。

「これこそが夢でありますように…」

そう願いながら、美鈴は眠りに落ちていった。

 ****

無事に終了し、皆でパチュリー様が記録していた美鈴の映像を見ながらお茶会を開く。

「美鈴の反応、最高だったわね」
「お嬢様、メイド長の演技なかなか板についてましたわ」
「ああ、あれは咲夜のモノマネよ」
「お姉様、今度はどんな筋書きがいいかなー?」
「そうね…次はあの幽霊やスキマも抱き込んでみんなで入れ替わってみるのもいいわね」


#視点が切り替わってるのは描写の関係でー

330 名前:名前が無い程度の能力 投稿日:2006/09/18(月) 20:49:56 [ Zd9.9zsY ]
#書くつもりはなかったが続きというか完結編
「お嬢様、根回しは全て終了しました。これから皆こちらに向かうとのことです」
「じゃあ、あなたは美鈴を博麗神社に運びなさい」

慣れないお嬢様生活ですっかり精神的に疲弊した上に眠りの香を嗅がされてすっかり熟睡している美鈴をあらかじめ用意した衣装に着替えさせると、咲夜は美鈴を背負い夜空へと飛び立った。

 *****

「…起きて、起きて美鈴。いつまで寝てるのよ」
「ふぁ…あ、咲…夜さん…ですよね?」

目を開けた美鈴の枕元にいたのは、確かに十六夜咲夜だった……黒い三角帽子に黒いエプロンドレスを着ていたが。

「ええっ!? その格好はいったい……」
「何言ってるのよ、私は『普通の奇術使い』十六夜咲夜、あなたの相棒よ」

慌てて飛び起きた美鈴が寝ていたのは、博麗神社の煎餅布団だったのだ。

「ここは博麗神社じゃないですか!?」
「寝呆けてるの? 美鈴。あなたは『博麗神社の妖怪巫女』博麗美鈴なんだから当然じゃないの」

美鈴の目の前の着物掛けに吊るされているのは脇の大きく開いた巫女装束。色は赤と緑色なのだが。

「そんなことより紅魔館の連中がまた悪企みをしてるのよ、行ってさっさと懲らしめてやるわよ」
「えっ? えっ? えっ?」

 **


紅緑の巫女装束を纏った美鈴は咲夜と共に空を翔る。
湖を越えて、勝手知ったる…はずの紅魔館正門前。
そこに待ち受けていたのは、紅白のチャイナドレスに人民帽を被った黒髪と八卦炉を持った金髪のメイド。

「気をつけて美鈴、あれは紅魔館の門番・紅霊夢とメイド長の霧雨魔理沙よ…っ!?」

いきなり放たれた魔力の奔流、マスタースパークが咲夜を吹き飛ばす。一撃でボロボロになった咲夜は湖へと落ちていった。
無論これはトリックである。時間を止めてマスタースパークを回避した咲夜は、あらかじめ衣装に仕込んだ弾着を爆発させてわざと墜落したのだ。

「おのれ、ここまで侵入されるとは…仕方が無い、背水の陣よ」

と言いつつもニヤニヤと笑う霊夢。

「門番隊、展開っ!」

二人の指示と共に紅魔館のメイド服に身を包んだ一団が配置に付くが…その顔触れを見た美鈴の表情が凍りつく。

門扉中央で身構えるのはすきま妖怪とその式とその式の式。
右翼に展開したのは七曜と七色の魔法使い。
左翼に展開したのは亡霊嬢とその庭師だ。
遊撃隊には神社の鬼っ子や竹林の蓬莱人まで加わっている。

…この面子が揃っている門を突破できる者などこの幻想郷のどこにいるだろうか。

「総員、撃てーっ!!」

あまりに豪華な面々の放つ壮絶な弾幕の嵐に呑まれて、美鈴の意識は途切れたのだった。

 *****

「皆さん、お疲れさまでした」

気絶した美鈴に肩を貸して湖から上がってきた咲夜の一声で、門番隊に扮した一同から緊張が解け笑いが漏れる。

「あんたたち本当に暇ねー、このドッキリ手が込みすぎよ」
「妖夢ー、この服貰っていきなさい。よく似合うわよ」
「でもちょっと可哀想じゃないかしら」
「日頃本を持っていくネズミを素通しにしてるんだからいい薬だわ」
「酷い言い草だな」

そして窓からオペラグラスで観戦していたレミリアが『GJ』と親指を立てた。かくして美鈴は再び平穏な日常へと戻る。


「咲夜さん、昨日酷い夢を見たんですよ…」
「はいはい」