いぢめスレ SS


注意)
  • fuku0143.txtの椛vs妖夢(シグルイ風)の設定とストーリーを引き継いでいます
  • 殺傷の描写があります













妖怪の山の山道を鳴らす下駄音が二つ、足音が一つ
下駄音の一つは射命丸文、もう一つが犬走椛。そして、足音が魂魄妖夢

「わざわざ案内していただいてありがとう御座います」
「これぐらい御安い御用っス」
「そのかわり、今度良いネタがあったら私に教えて下さいね?」

この三人は山の神社を目指して、山道を歩いていた
天狗二人が先頭、後ろに妖夢が続く


妖夢は山の神社に用があったのだが道に迷ってしまい
偶然文の新聞のネタ探しを手伝っていた椛が、その妖夢を発見して事情を聞きき「よかったら道案内しましょうか」という流れでこの三人は行動を共にしている


「そういえば。椛と妖夢さんは、以前お会いしたことが?」
「はい、大天狗様の言いつけで西行寺家に修行に出していただいた時に」
「私の体調の関係で、日帰りになってしまいましたが・・・」

妖夢は恥ずかしそうに苦笑いを浮かべ
椛は妖夢の体調不良の原因を思い出し赤面する

実際のところ、文は椛が妖夢に圧勝だったのを密かに知っている
しかし、あえて知らない振りを装った


「ん?」
突然、椛は背後から妙な気配を感じ、来た道を振り返る
視線の先の妖夢と目が合う
「どうしたんですか、椛さん?」
文と妖夢は不思議そうに首をかしげる
「後ろからだれかにつけられてる感じがしたんスけど・・・・どうやら気のせいでした」
目を凝らしたが何も見つからなかった


椛のその発言で場がおかしな雰囲気になり、文が機転を利かせ話題を変える


「ところで椛の武器は重そうですね?ちょっと持たせてもらってもよろしいですか?」
「いいッスよ。どうぞ」

言われるがままに文に剣と盾を渡す

「うわぁぁっとっと!! 結構重いですね・・・・・・よくこんなものが持てますね」

文は剣と盾をそれぞれ片手で持ち、椛の構えの真似をする

「大丈夫ですか? 腕がプルプルしてるっス」

椛の意識が完全に文に向いたその瞬間、妖夢の雰囲気が僅かばかり変わった
天狗二人に気付かれぬよう、ゆっくりと刀に手を掛ける

柄を掴み

腕の筋肉を限界まで引き絞り

椛の背中めがけ一閃

「っ!!」

背後から抜刀時に聞こえる独特の金属音が聞こえ、椛は咄嗟に文を抱え真横に跳び間一髪でそれをかわす

「あやややや!!」
「いきなりなにするんスか、妖夢さん!!」

椛は抱えた文を下ろし、素早く反転。混乱して尻餅をついたまま動けない文を守るために、素手で妖夢の前に立ちはだかる


妖夢は相手が素手でもお構いなしに剣を振り上げ、大上段の型をとる
「覚悟!」

(まず剣がないことには防げない・・・・)
混乱する文の足元に、剣と盾が転がっていた

椛は文のいる後方に跳んで妖夢の大上段を回避してから、刀を拾い反撃に移るのが得策だと判断し大地を蹴る


だが

トンッ

「え?」

緊迫した状況の中で椛は間抜けな声を漏らす

太刀をかわそうとバックステップしようとした椛の背中を何者かが押した
押されて、妖夢の剣の間合いに入ってしまう
振り向き、自分を押した犯人を見つめる

(文さん・・・・・・・なんで・・・・・・)

そこで、椛の視界は暗転した






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ことの発端は一ヶ月ほど前にさかのぼる
椛が西行寺で修行に来た際、まず妖夢と軽く手合わせをした
結果は妖夢の惨敗に終わった
主の機転で妖夢の世間体は保たれたが、妖夢に対する主の信頼はがた落ちだった
切腹を実行してしまうほどまでに妖夢は精神的に追い詰められていた
切腹後すぐさま永遠亭に担ぎ込まれ、なんとか妖夢は一命を取り留めた

そして永遠亭から退院後、主人の幽々子が白玉楼に復帰する条件として出したのが
『汚名を雪ぐ』というものだった

「手段は一切問わないわ。あの犬を討ち取りなさい。あなたもそろそろ、汚いことを覚える時期だわ」
それが主の言葉だった

退院してから今日まで、妖夢は椛を討ち取ることだけを考えて過ごしてきた
椛に対する悔しさは、明確な殺意へと形を変えていった

正攻法で勝とうとは考えなかった


##########################


肩から胸にかけて垂直に斬られた椛は
傷口から心臓の鼓動に合わせて血が噴き出し、口から血の泡を吹き、しばらく痙攣したあと動かなくなった
山の土が椛の血をじわりじわりと吸っていく

椛の目は開いたままだった
乾いた虚ろな目が、目の前に広がる高い高い空を見つめていた

妖夢が椛の首に手をあて、脈を取る

「完全に止まっています」
「そう・・・ですか・・・」

文はただ無表情で、椛を見つめていた

「ご協力感謝します」
血のついた刀を携えたまま妖夢は協力者に礼を言う

「いいえ。犬一匹の命で、西行寺家との友好な関係が維持できるなら安いものです。それなりの見返りもありますし」



幽々子は妖夢のことを気に入り、なんだかんだ言っても彼女のことを家族同然に思っている
故に椛の一件で天狗との関係が悪化するのは必至であった

『妖夢に協力なさい。私がその気になれば妖怪の山の上層部に圧力をかけるどころか、それ以上の被害を与えることなど容易いのよ? もちろんそれ相応の見返りは用意するわ』

白玉桜に呼び出された文に、幽々子はそう耳打ちした
西行寺家は幻想郷でかなりの影響力を持つ名家であり、八雲紫とも深い親交を持つ
その言葉が冗談ではなく、明確な脅迫であると文は理解した


椛に非が無いことは重々承知しているが、下っ端天狗一匹のせいで、一族を危険にさらすわけにはいかなかった
椛の命を差し出すのにそれ以上の理由は要らなかった


こうして妖夢と文は利害の一致で結託した

文がネタ探しに椛を誘ったのも
妖夢と偶然会ったのも
椛から武器を取り上げたのも
全てが二人の立てた計画のうち
初めから神社に行く気などさらさら無かった

「『椛があなたを侵入者と誤認し、斬りかかった。しかし剣術であなたに敵うはずもなく返り討ちに』そう上に伝えておきましょう。この私、射命丸文が証人です」


仇討ちは成功し、後腐れの無い最高の形で計画は幕を閉じた

しかし、全てが上手くいったにも関わらず妖夢の顔はどこか釈然としていないようだった
その理由はなんとなくだが文にはわかった

「今は勝てなくても。いずれあなたは確実に椛以上の腕前の剣士になります。遅かれ早かれ椛はこうなる運命だったんです・・・・・」
そう言って椛の横に座り、開いたままになっている目を閉じてやる


「そうですね。言われてみればその通りです。得心いきました」

妖夢は刀を持った状態の椛を斬れなかったことが残念で仕方が無かった
しかし文の言葉で納得したのか、とたんに顔が誇らしげなものになった
その言葉を聞いた今、卑怯な手を使った罪悪感より、本懐を遂げられたうれしさの方が妖夢の中では大きかった


人生で初の挫折を味わい、妖夢は心の有り様がどこか変わってしまっていた


「では、討ち取った証として御印(くび)を」
言いつつ、妖夢は椛の首に刀をあてる

それを見た文の瞳の奥が小さく揺れ動いた

「あの・・・できればこれ以上・・・椛の体を傷つけないで頂けないでしょうか?」
血を吐くように、苦しそうな声で文は懇願した

妖夢は渋々それを聞き入れた
「わかりました・・・・・・・・なら、代わりにこれを」

妖夢が手に取ったのは椛の盾だった
打ち込み稽古の時に、散々自分を苦しめた忌々しい武具
よく目を凝らしてその盾を見ると
所々削れていたり、抉れていたりと無数に傷跡が見受けられた
椛がどれだけこの盾を信頼し、命を預けて戦い続けてきたのかが二人にはわかった

「その盾こそ、椛そのものです」
「そうですね。これなら幽々子様も納得して頂けるでしょう」

盾に質量以上の重みを感じながら妖夢は立ち上がる

「死体はどうします? ここに埋めましょうか?」
「いえ、すぐ近くに川があります。そこに流します。魚や他の妖怪が食べてくれるので川下につくころには骨になっていると思います」
「そうですか」

文は椛を川辺まで運び、浅瀬に浮かべる
椛の両手を胸の前に組ませ、その位置にその辺で咲いていた花を供える

「次は、もう少し世渡り上手な性格で生まれてきてください」

無責任な別れの言葉を告げ、椛の体を本流に向かい流した
その際、風を操って流れを加速させようと思ったが、死者を送るのにそれは無粋だと気付きやめた


文が椛を送っている間、妖夢は川の水で血のついた刀を清めていた
流れていく椛など眼中に無かった


文は流れる椛を見ていると、自分の意思とは関係無く彼女との思い出が湧き出し始めた
弾幕が苦手で時々仕事でミスもするが、真面目一筋でとても素直で努力を惜しまない、いい子だった
哨戒・斥候で最前線に身を置き、体を張って仲間を守り続けていた
不器用なりに精一杯任務をこなしていた
蔑まれてもひたむきにやっていた
自分を慕い信頼してくれていた

それを自分は裏切った
大を守るために小を捨てた

文の脳裏には、最後に椛が振り返り自分を見たときの表情が焼きついていた
『どうして・・・・・』
なぜ、妖夢は襲ってきたのですか? なぜ、私を押したのですか? という表情だった

(たまに居るんです。努力しても全然報われない子が・・・)

何も知らないまま理不尽な終焉を迎えた不憫な部下を想い、黙祷を捧げようと目を閉じる
だが、目を閉じた直後、文の背中に声がかかる

「必ずや、幻想郷一の剣の使い手となりましょう。それが私のできるせめてもの手向けです」
黙祷を妨害させられたことを不快に感じつつも返事をする
「・・・まったくです。死んだ椛のためにも、さっさと一人前になって下さい」

背を向けて話す文の声は僅かに上擦っていた
どこか背中が寂しそうだった
それが妖夢にはわかった


「心中お察しします」
それぐらいの気遣いは今の妖夢でもできた

だが、文の返事は彼女が予想したものとは少し違うものだった

「勘違いしないでください。別に悲しくなどありません」
「 ? 」

背を向けたまま、文は弁解する

「白狼天狗なんて所詮下っ端、使い捨ての犬です。そんなのに一匹一匹、情なんて移してたらきりがありませんよ、あんな犬のことなど明日にはもう忘れています」
「申し訳ありません。あなたの仰るとおりです。あのような犬などに・・・」
「さあ!!すぐに戻って上司への報告とこのネタを記事にしないと!今夜は徹夜ですね!」

妖夢の言葉を強引に遮った
遮り、振り向いた文はいつもの調子に戻っていた

その言葉が本心なのか強がりなのか妖夢にはわからない
もとい今となってはそんなことに興味など無かった

(やりましたよ、幽々子様。憎き犬を討ち取りました。これでまたあなた様にお使えすることができます)
自分の居場所に帰ることができるという安堵感が体中に広がり
清め終わった刀を握り締め、歓喜に震える


黙祷を捧げ直そうと文が川下に目を向けると、椛の姿はかなり小さくなっていた

「今日はありがとうございました。これで大手を振って白玉楼に戻ることができます」
「・・・では、私もこれで失礼します。新聞のこともありますし」


妖夢は達成感に満たされて
文は微細な喪失感を感じて


二人は正反対の感情を胸にそれぞれの帰路についた












二人が立ち去った瞬間

突然、川を流れる椛の体が水中に沈んだ

まるで何者かによって引きずり込まれたように





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  • 続くのか?
    -- 名無しさん (2011-10-29 00:43:21)
  • http://www35.atwiki.jp/th_izime/pages/891.html
    優しい俺がお前の為に探してきてやったぞ -- 名無しさん (2011-10-29 19:02:38)
  • さすが文汚い -- 名無しさん (2012-08-17 20:59:17)
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