「ねえ萃香、あなた外の世界にインターンシップに行ってみない?」

全ては八雲紫のその胡散臭い言葉から始まった

“インターンシップ”というその耳慣れない言葉に萃香は首を傾げた
すぐに紫が意味を補足する
「まぁ簡単に言えば、外の生活を体験しようって企画よ。期間はそうね・・・1ヶ月ってところかしら」
萃香は少しだけ考えた、考えすぐ結論を出した
「面白そうだね。いいね行ってみたいよ」
二つ返事で萃香はその企画に乗った




伊吹萃香は鬼である
鬼という種族は人間との真剣勝負が大好きで、勝負事なら格闘だろうが呑み比べだろうが何でもする
気に入った人間を見つけると人間が用意したルールで戦おうとする
そして、勝負に勝つとその人間を攫って行くのである
当然人間が鬼に敵うわけなどなく結果など勝負を始める前から見えている

鬼は楽しいと思ってやっていた事だが
自分たちを攫っていく鬼は恐怖の対象でしかなかった
だから人間は鬼を卑怯な手を使い、次々と鬼の数を減らしていった

古より鬼と人間の関りは深い

多くの御伽噺や童話、昔話に鬼は姿を見せ、その物語の登場人物と様々な関りを持つ
時に人を襲い、時に助け、時に進むべき道を示す存在

それらがある意味で鬼と人間の信頼関係だった
少なくとも萃香はそう思っていた

確かに人間にとって鬼に対する恐怖心や畏怖の念は必要なものだった

しかしそれを全て人間は自分達の都合で一方的に壊してしまった

鬼はそんな人間達を永遠に見捨て人間の手の届かない場所に移り住んだと伝えられている
伊吹萃香はその中にいた鬼だった

萃香は鬼と人間の信頼関係を取り戻したかった
紫の提案にあっさりと乗った根底にはこんな心理があったのかもしれない







「仮住まいのアパートと生活費はちゃんと手配するから安心して。あと向こうで生きていくための説明を書いた簡単なマニュアルも用意しておくわ
 それと境界を弄ってあなたを人間の姿にしてから送りこむから、持ち物も全て置いていくようにね。間違ってもこっちの服で出歩いちゃだめよ」
「オッケー♪」

その条件を快諾して、萃香は人間の姿で現代に送られた

ある都会、比較的治安の良い地域に建設されたアパートの一室がこれから萃香が寝泊りする場所となる
2LDKのアパート。生活に必要な家具は一式揃っていた

1ヶ月の間、別に『これをしなければならない』という目的は無い。自由気ままに過ごしても良いとのこと



最初の日
萃香は部屋の電化製品に興味深々だった
文明の進んだ世界に萃香は仰天し同時に胸躍らせた
紫に渡された『こちらで生きていくためのマニュアル』に軽く目を通した後
近所の散策をして、そのついでに昼食の弁当を買うことにした
ここで萃香は思わぬ誤算があったことに気がついた

 酒 が 入 手 で き な い

瓢箪を置いてきたため酒を飲むにはこちらで買うしかないのだが
未成年の飲酒、喫煙は法律で禁止されている
空が暗くなるまで町を一通り回ったが
法律や条令の厳しい現代において、見た目が幼い萃香に酒を売ってくれる店は無かった

(まあ何とかなるか・・・・・・・)
この時、萃香は楽観していた
ふと空を見上げても星は見えなかった。町の明るさが本来見えるはずの光をかき消していた

そんなことを感じながら帰路につく

光と雑音に埋め尽くされた町
夜を恐れない人間達
町の夜は萃香には昼間以上に騒がし過ぎた





一週間が経過した
幻想郷にいた時の萃香は常時酔っ払っていると言っても過言ではない
最初の数日は忙しすぎて飲酒しなくても何とか耐えられたがついに限界が来た
7日以上も酒を飲まないなど何百年ぶりだろうか
甘酒で誤魔化すも、酒の恋しさが増すばかりで逆効果だった
ノンアルコールビールも売ってもらえず、子供ビールを飲んで酔っ払えるわけもなく
スーパーでジュースの入ったカゴの中に缶ビールやチューハイを混ぜるもレジのときに注意され失敗し
ついには薬局でアルコールを直買いしようという強行にまで出たが、店の薬剤師に不審がられて販売を拒否される
かと言って居酒屋のゴミ箱を漁るわけにもいかず、萃香は途方に暮れた

「紫め、このこと知っててこの企画持ちかけたな・・・」
公園の自動販売機にお金を入れて、炭酸飲料水のところのボタンを拳で叩くように押す。逆に自分の手が痛くなった
そして出てきたジュースを一気に飲み干すとゲップが出そうになり慌てて口を押さえる
「・・・しかしなんで自販機でお酒って売ってないんだろ?」
愚痴りながら途中お菓子屋で見つけたウイスキーボンボンを口に放り込み深くため息をついた

公園の隅にはダンボールで出来た小スペースがあった
「なんだろ、あれ?」
少しだけ萃香はそれに興味を持った




二週間が経過した
夜の公園
大人たちの賑やかな声が聞こえる。火を囲み酒を飲むホームレスたちだった

その輪の中に萃香もいた

断じて萃香自身がホームレスになったわけではない
あれから萃香は考えた、どうしたら酒が飲めるのかと
悩んでいたある日、萃香は公園に居るホームレスを見た
ホームレスが社会的にどのような位置づけなのか萃香は調べ、そしてひらめいた
酒が呑めるところはここしかないと判断した

キブ アンド テイク。このルールは外の世界も幻想郷も変わらない
差し入れを持っていくとホームレス達は快く迎えいれてくれた。そして差し入れの代わりに酒を貰った
ホームレスは皆、良くも悪くも世捨て人であるため萃香について口を出す者は居なかった
もちろん密かに素性を疑う者はいたが自分達にとって無害だとわかるとそれ以上は踏み込んでこなかった

萃香の考えは思いのほか上手くいった

夜は宴会をして、朝になったらアパートに帰り寝る生活を繰り返す
紫に至急された資金は十分あったので酒とつまみには困らなかった

鬼の自分が人間たちに囲まれて酒を飲む。もう叶わないことだと思っていた
萃香にとってそれは何よりも尊いものだった






気付けば三週間目に突入していた
ホームレスと宴会に似た集会に参加する日が続いたある朝。萃香は公園の近所の警察署で目を覚ました
「あれ?」
自分の姿を確認すると、着ていた服が所々破けていた

良いやつもいれば悪いやつもいる。これもどの世界でも共通のことだった

昨晩のことを思い出す、自分が酔っ払ったホームレス達に組敷かれたことを
「あ」
思い出さなければ良かったと後悔する。萃香は頭を本能的に抱えた

昨晩のことが脳裏によぎる
抵抗するも見た目相応の力しか無い自分は全くの無力で、自分を押さえつける男たちの野獣のような飢えた目がただひたすら怖かった
すんでの所で、夜警中のたまたま通りかかった警察官に保護されてなんとか事無きを得た
事情聴取が終わり警察所を出る時まで、紫の力が介入しているのか警官は戸籍関係のことを一切訊いてこなかった
萃香はアパートを一目散に目指し、部屋の中に入るとすぐに鍵をかけいつもは開けっ放しのカーテンを全て閉め切り、布団をかぶり縮こまった

結果的に無傷だったものの、複数の男に襲われ恐怖が彼女の精神にえぐれるほど大きな爪痕を残した

気付けば夕日が沈もうとしていた
夜が暗闇が恐ろしい
それ故に萃香は人生で初めて引き篭もるという行動を取った

数日前に暇だったので買い込んだ漫画。そしてテレビと毎日投函される新聞だけを見て萃香はしばらく過ごした




そんな家に閉じ篭る日々を繰り返し、気づけばあと3日で1ヶ月が経とうとしていた
3日後には幻想郷に帰れる
そう思い始めたら急に、外に出ようという気になった
こんな貴重な体験を生涯で二度も味わえる保証はない。ならせめて他の思い出をつくろうと思い立った
力強く立ち上がり萃香は着替え、扉に手をつきながら靴を履き外へと飛び出した

平日の昼間にも関わらず、町の中心にある大通りは相も変わらず賑わっていた
(紫に支給されたお金もまだあるし、なんか旨いもの食べよう。あ、お土産ってありかな?)
などといつも通りの陽気さを取り戻し、にやけ顔でマンションや店の並ぶ大通りを進む
周りはスーツを着たサラリーマンに奇抜なファッションの若者、学生に老人老若男女問わず、全ての年齢層がいた
全員に共通していることといえば、皆何かに追われるような早歩きな点だった
(そんなに急いでどこに行くんだろ?)

ふと、そんな疑問を感じた時。萃香は異臭を嗅ぎ取った。幻想郷では何度も嗅いだことのある臭いだった
(な、なんで・・・・・・?)
その臭いに対しての疑問ではない。臭い自体に疑問は持たない
(なんでみんなはこの臭いに気付かないの?これだけハッキリ臭うのに・・・・・・)
萃香は一瞬、周囲を歩く人間たちに疑いの目を向けた
が、すぐに目を戻すと今度は真横の生け垣の中に顔を突っ込み向こう側を覗く

(やっぱり・・・・・)

そこで人が死んでいた
見たところ遺体は老人のようで、足を滑らせての転倒による頭部の強打が死因のようだ、生垣の手入れでもしようとしたのだろう
生物が死ぬと発する香り死臭。萃香はその臭いを知っているから死体を見つけることができた
萃香の行動を目にした通行人も段々と寄ってきて。ついに事態が周囲にも認識された
周りが騒ぎ出すと、萃香はその場から僅かに離れて適当なベンチに腰を下ろし人間を観察する
携帯で警察に通報するものがいれば、友人に連絡を取り知らせるもの、遺体に近づき口元を押さえるもの
人は時間が経過するごとに増えていく


萃香はまたそこで信じられない光景を目の当たりにする
野次馬の何人かが携帯電話を遺体に向けてシャッター音を鳴らし始めた、ところどころで歓声に似た声が上がる
(なんなんだ、こいつら?)
萃香にはその奇行の理由が理解出来なかった

やがて警察が到着し、野次馬たちも遠巻きに事態を眺めるようになる
老人の死因は萃香の予想通り頭部打撲によるものだと、鑑識は場の最高責任者の刑事らしき年配の男に報告していた


そんな時、萃香の後ろで女性の声が聞こえた
「ちょっとメリー。なんだろうね、この人だかり?」
「なにか事件でもあったんじゃない? 蓮子見てきたら?」
「そんなことしてたら午後の講義に間に合わないじゃない・・・・」
女学生らしき二人の会話
(あれ?紫?)
メリーと呼ばれた金髪の少女の姿を見てそう思った
「ん?どうしたのお嬢さん」
メリーに視線を送る萃香に気付いた蓮子と呼ばれていた少女が声を掛ける
「あ、いやごめん。このお姉さんが知り合いに似てたもんだからつい・・・」
「そうなの?」

それだけ言うと、蓮子は萃香から視線を外して友人のメリーに向き直った
この二人も野次馬の会話で何が起きていたのか大体察しがついたようだ

「どうして誰も気付かなかったの?あんなに臭いがしてたのに」
野次馬たちを観察しながら萃香は独り言のようにつぶやいた。このもやもやする気持ちを言葉にして外に出したかった
「におい?」
突然、尋ねられたと思った二人は戸惑い、鸚鵡返しに返事した
萃香は無言で頷く。正直納得のいく答えが返ってくるとは期待していない
「ああ死臭のこと?」
「!?」
萃香にとって最も気になるキーワードである“死臭”という言葉に反応しバッと顔を上げる
この二人ならと、淡い期待を込めて先ほどの質問を分かりやすくして訊き直した
「なんであれだけの人が近くを通っていても、その臭いに気が付かないの?」
「そりゃまぁ。今は家で家族の死を看取ることは殆ど無いからね、今は病院や施設で死ぬのが一般で、死臭と言われもピンとこないんだよ」
「そうなの?」
「そうよ、今は死んですぐ防腐処理されるから。その臭いすらしないのよ」

萃香の知っている昔はそうじゃ無かった、当時は病院も施設も無い
だから老いを迎えた者、病に倒れた者のほとんどが我が家でその生涯を全うする
慣れ親しんだ住処で息を引き取るこらこそ、人は心を静かにして最後を受け入れられる

だが今は違うと二人は言った。医療の発展し老人の増えすぎた現代で、その老人たちはいつの間にか“負担”という目で見られ始めた
ある者は施設に、あるものは病院に送られて。家族に看取られることなく最後を迎える
死んでから埋葬するまでの間、遺体と共に過ごすのが当たり前だった当時、死臭の持つ独特のにおいを知らぬものはいなかった

しかし今は違う

人の死すら効率化させた現代社会
その社会の仕組みと自分たちの先祖に当たる存在を敬わないの人々に萃香は心を痛めた
そして人の死を冒涜する野次馬の行動に気分を害した

「ねえ、大丈夫?気持ち悪いの?」
「うん、平気。ありがとう・・・・・」
力なく俯く萃香をメリーが心配する

人だかりの向こうで再び野次馬がまた騒ぎ出した
『死んでから四日は経ってたんだって』
『うそっ、四日もあそこに転がったままだったの!?私毎日通ってたよ・・・・もう最悪』

萃香は野次馬を睨みつける、その目に年齢以上の貫禄と威圧感を感じて、二人は知らず知らずの内に一歩後退していた

(四日も気付かないないんてあいつらはどうかしてる・・・・・・・・・・・・・・・・・え?四日?今、四日って・・・・・・え?)

発見した老人の遺体を思い出す。外傷らしい外傷は無かった。むしろ死体が『綺麗過ぎる』と感じた
このあたりにもカラスや野生動物は生息している
四日も放って置いたら噛まれたりつつかれたりして痛んでいるのが萃香にとって、幻想郷にとっての常識だった

「どうして四日も放って置いて、カラスはそれに気付かなかったんだろう?」
野次馬を睨みつけたままの目で、二人を見たものだから。メリーと蓮子はさらに一歩退った
自分が酷い顔をしていることに気付き、素早く表情を切り替える。だがやはり笑顔がぎこちない
だが逆にそのぎこちないのが良かったのか、それを見て二人の緊張は解け妙なプレッシャーから解放される
一呼吸おいてメリーの方がその質問に答えた
「最近じゃ、どの国も風葬(死体を埋葬せず風化させる葬法)はしなくなった。って聞くわね」
「どうしてよメリー?」
萃香ではなく蓮子もその言葉に興味を示す
「食べなくなったんだって。カラスが、その人間を」
「グルメになってもんだね、カラスも」
呆れる萃香を他所にメリーは言葉を続ける

「もう人間は他の動物にとって“毒”でしかないそうよ。だから賢いカラスは人間の死体を見つけてもつつかないんだって」

(は?)
この女は何を言っているんだと萃香は思った。人間が毒?意味がわからない
だが蓮子は萃香とは逆で、メリーの意見に同意した
「ああ、それちょっとわかる。今の人間は昔の人間に比べて腐りにくいなんて書いてあるコラムを大学で読んだことあるよ
 確かに今私達が食べてるのは保存料と着色料のオンパレードだからね。どっかの国じゃ奇形の子が生まれる率が上がったらしいね」

(人間が・・・・・食べられない・・・・・・って?)
その事実に萃香は愕然とした。その事実に萃香の心拍数が不自然に上がる

「ねえやっぱりあなた具合悪いんじゃ・・・・」
蓮子が差し出す手を萃香は払い立ち上がり、片足を引きずるような緩やかな速度で野次馬がいるのと反対の方へ歩いていった
心配する二人の声は耳に入らなかった
秘封倶楽部の二人はそのまま萃香を見送るしかなかった




アパートまでの道がひどく長く感じられた、到着するまでの間、萃香は鬼と人間の関係について考えていた
昔、鬼は人間を食べていた、これは鬼に関らず妖怪すべてにいえることだが
しかし今の人間は“毒”があって食べられないという
食べられない以上、鬼にとって人間は攫われる価値の無い存在に成り下がったのだと知った

自分の知らないうちに鬼と人間の関係は、もう修復の及ばない規模まで達していることに絶望した

(でもなぜ、人間は鬼を嫌ったのだろう・・・)

萃香はいつもよりも踏み込んだことを考え始めていた。陽気で楽観的な彼女は普段ならそんなことは考えない
ここまで考えられたのは、今自分は人間だからなのかもしれない
人間の視点で鬼を見てようとしたら、自然と数日前にホームレスに襲われたことを思い出した
あの時は本当に怖かった、どうあがいても勝てない相手に自分は死すら覚悟した

「・・・・・・・・」

なぜ鬼は人間に嫌われたのか? 答えはそこにあった

「怖かったんだ人間は。鬼が一方的に楽しんでただけ・・・・・・・人間はただ迷惑だった?」

もしかしたら人間と鬼の間に初めから信頼関係など無かったのではないか?
あるのは捕食者と非捕食者の関係だけなのではないか?
だから鬼は駆逐された

「そんなわけ・・・・・あるもんか・・・・・」

首を大きく振り、脳の奥から這い出てくる不愉快な思考をシャットダウンさせる
けれど、どの道今の人間に期待できるものなど何もないと心では悟ってしまっていた

ふと目を前に向けると、ちょうどあの公園の場所だった。けれどホームレスは一人としていなかった。
警察に目を付けられて散り散りなったのか、ホームレス狩りの憂き目に遭い居なくなったのかは分からない
(いいやつも居たんだけどな・・・・・・・)

嫌なことはあったが、それまで楽しかったのは事実。萃香はここでの思い出を無碍には出来なかった
一瞬だけ名残惜しんでその場から離れた


ここに来たときから思っていたことだがここには“垂直なもの”が多すぎると萃香は感じていた
建物、電柱、壁や塀、曲がっているものがほとんど見受けられない人工物に溢れた世界
それを意識しだすと先ほどの思考を相まって自然と視界が歪み狭まり、なぜか心が汚れていくような気がした
こんなものを毎日見ている現代人の心は穢れているのだろうか? ふと、そんなことを思った


ようやくアパートにたどり着いた時にはもう空は暗かった
冷蔵庫から以前ホームレスから貰いストックしておいた缶ビール取り出し、部屋の真ん中に腰を下ろしてビールを開ける
冷えたビールの感触が彼女に安定を与えた
様々なものが散乱する床から手探りでリモコンを探し当てて、テレビのスイッチを入れる
今日のニュースも殺人、外国の民族紛争、政治家の汚職とネガティブ極まりない報道ばかりを繰り返す
他に無いのかと番組を何度も切り替えるとアニメが放映されていた
「お、いいねっ♪」
萃香はそのチャンネルで固定する
アニメの内容は可愛らしい姿の怪物から格好の良い怪物と様々な姿のモンスターが登場していた
いわゆるファンタジーと呼ばれているものだった。引き篭っている間、萃香は何度かこのアニメを見ていた
世界観が幻想郷に似てなくも無い
その物語の中に鬼のようなキャラクターも登場していた

「・・・・・・・・・」

それを見たとき萃香は気付いた
ファンタジーとは空想だ、そこに登場するものは全てこの世界には実在しないということ
つまり鬼という存在は人間にとって妄想の産物過ぎないということ
実在していたはずの鬼は人間に嫌われ追い出され、何時しかその存在すら否定されていたのだと気付いてしまった

現在では地方によって恐怖の対象になる所もあれば、魔除けとして崇められる所もあるが、そのどちらも『形だけ』で鬼の存在を信じているわけではない
今は幻想郷ですら鬼退治を生業にするものはいないのが現状である

見捨てたのは鬼のほうでは無く、人間の方だったのではないか。そう考えたら寂しさがこみ上げてきた
ごろりと床に寝転がると勝手に涙が出てきた

自分は何をしたくてここに来たのだろう?
遊びに来たのか? 人間との関係を修復する糸口を見つけるために来たのか?
人間の頭でどれだけ考えても、答えは出てこなかった




紫が迎えに来るまでの残り二日間、自分はどう過ごせばいいのか?
絶望に打ちひしがれながら、萃香は残っていた缶ビールを静かに飲んだ

何かから逃げたいという想いで酒を飲んだのはこれが生まれて初めてだった





















  • むぅ・・・・・
    かなり深いな -- 名無しさん (2008-08-11 01:56:23)
  • 考えさせるねぇ…。 -- 名無しさん (2008-08-23 09:56:59)
  • ちょっと唐突に終わりすぎだよーーー?!
    -- 名無しさん (2008-10-18 03:46:34)
  • なるほどね・・・・・たしかにそういう考えかたもできるねえ。
    無邪気な彼女のしてみればこのうえない恐怖感だったんだろうな。現実世界が。
    とても考えさせられました。 -- J (2008-11-23 01:11:16)
  • …道徳の教科書を思い出したよ -- 名無しさん (2008-12-01 17:52:23)
  • これで終わりなのー? -- 名無しさん (2009-05-06 01:20:19)
  • 誰かこれを教科書に載せてこい -- 名無しさん (2009-05-21 22:31:59)
  • レイプ完遂された萃香も見たい -- 名無しさん (2009-05-22 08:28:31)
  • 萃香って真面目ないい子だよな、鬼だし -- 名無しさん (2009-05-28 18:17:10)
  • 名作。 -- 名無しさん (2009-06-10 22:00:04)
  • これは名作なんじゃないか!? -- 名無しさん (2009-09-13 14:02:38)
  • 結局鬼がただの馬鹿だったって事なんだろうか
    勝手に殺して食って友達面されりゃ人間も排除したくなるよな -- 名無しさん (2009-09-24 06:38:41)
  • 同胞が死んでるのとかを平気で写メする奴とか、もうなんか色々考えさせられた。これは良い作品だとオモタ
    …のだが、折角の名作にも↑こんなコメとは、なんかもうやるせないほど、情けない。 -- 名無しさん (2009-09-24 07:14:43)
  • ↑そこは読んだ人の考え方次第だから情けないとかじゃないと思うぞ。
    俺は現代人の異常性と鬼の傲慢さの両方に非があると思った。 -- 名無しさん (2009-09-24 22:08:46)
  • 鬼は馬鹿より愚直、のほうが正しいかな
    これ見て色々考えてたら人間って素直なんだか捻くれてるんだかよく分からなくなってきた -- 名無しさん (2009-09-26 13:09:17)
  • 先に鬼が傲慢になってそれから人間が異常になった -- 名無しさん (2009-09-26 14:46:53)
  • 紫はこうなるのを見越してやったのかな。
    萃香が襲われたり打ちひしがれる姿を見て…… -- 名無しさん (2009-09-28 17:45:06)
  • これは俺の妄想で、否定する人も居るかもしれない。
    萃香は人間と鬼の間にあった信頼関係を人間が勝手に破った、だから鬼は人間を見限って地中に潜ったと考えてた。
    でも実際には人間は自分達を守るために、自分達を襲い、喰らおうとする鬼を排除しただけ、信頼関係など結べもしない化け物を撃退しただけ。
    なのに萃香は人間を見限り、(一部除く)人間をうそつき呼ばわりして毛嫌いしている。
    幻想郷も妖怪も鬼も人間も愛している紫は親友の萃香が、自分を棚に上げている事が許せなかった。
    だからこのような回りくどい方法で萃香に「見捨てたのは鬼のほうでは無く、人間の方だった」
    という事を知ってもらいたかった。

    たぶん色々間違った考察だと思う -- 名無しさん (2009-09-29 00:10:43)
  • ↑良い考察だと思う -- 名無しさん (2009-09-30 01:45:07)
  • スイカ襲いに加わりたかった なんか難しく考えすぎてる節あるな。視野を広げる為にもっと多くの人に触れればな。 -- 名無しさん (2009-09-30 23:17:35)
  • 鬼と人間に元々信頼関係なんて存在せず
    どちらが裏切ったなどと言う事も無いって事かね。
    力をつけた人間が本質的には人食いで付き合いを
    続けるには利益より代償が大きいと判断した鬼を叩き出し
    鬼の方も無自覚だと思うが都合の良い獲物だった人間が
    割に合わない存在になった為に離れて行っただけ。
    まあこんな解釈は異端だしスイカが可哀想か。
    -- 名無しさん (2009-10-01 05:23:12)
  • 酒ならお使いということにすればなんとかなると思うが・・・ -- 名無しさん (2009-10-15 15:48:34)
  • 情けないとか言ってる奴何様だよ・・・お前が情けないわ -- 名無しさん (2009-10-15 22:22:07)
  • 昔の人間は人間以外に対する畏怖も敬意もあった。
    今の人間はそんな事は知らない。
    目に見える物と価値のある物だけを萃めて、幻想のもの、価値の無いものを捨てる。
    鬼と呑み競べ、河童と泳ぎ、天狗と唄う事など無くなった。
    人が失った力は、幻想を見る力だ。
    共に歩んだ幻想は、もう見えない。

    ごめんなさい、長くなっちゃいました。色々考え為せられるとてもいい作品でした。うーむ・・・。 -- 名無しさん (2009-10-17 23:18:29)
  • 捕食者と非捕食者の関係を「信頼」だとか考えてる時点で人間と相容れない存在だな
    強者が到底人間には理科出来ない俺ルールを信頼とか名付けて押し付けてるようにしか見えん
    -- 名無しさん (2009-10-23 22:38:35)
  • 鬼が人間を喰いそれを信頼関係だと思っていた。
    人間は自分を喰おうとする化け物から身を守ろうと必死知恵を絞った。
    ある時、人間の努力が実り鬼に痛撃を与える事が出来た。
    それを鬼は人間が一方的に自分の信頼を裏切ったと思いこみ、地下にもぐった。
    人間は身を守る事に成功したが、鬼が居なくなったため、目的を失いぬるま湯の中で堕落して少しづつおかしくなっていった。
    全ては鬼が招いた事、元凶。それを紫は萃香に見せ付けた。

    自分が感じたのはこんなところか。
    こう書くとまたなさけないとか言われるんだろうか? -- 名無しさん (2009-10-24 04:02:08)
  • この話の萃香って本当に怖い存在だと思える
    喰われる恐怖を知らずに一方的な戦いを楽しみそれを信頼と己の価値観で称する
    相手が嘘を付かなきゃいけないのが一方的な理屈の押しつけから逃れるためと考えない
    数百年生きても恐怖を知る事が無いとか一生ジャイアン気分かよ -- 名無しさん (2009-10-24 20:44:19)
  • 現時点では、人間と鬼の立場は逆転してしまったわけだが。
    妖怪は人間には絶対に勝てない。 -- 名無しさん (2009-10-25 13:35:44)
  • ところで萃香が外の世界にいた時代には平均寿命的に考えて老人はほとんどいなかったんじゃないだろうか -- 名無しさん (2010-03-19 11:23:21)
  • 萃香が外の世界にいた時代がはっきりしないが大結界のできる前(江戸時代後期~明治初期?)より前なら
    早死にする人が多いというだけで、それなりに老人というものもいたらしい。
    6~70歳ぐらいという人もそれほど珍しくはないんだとか -- 名無しさん (2010-03-20 01:16:21)
  • まあ、自分達のルールを勝手に押し付けて奪って殺して我が物顔で自分の家を歩かれちゃ殺したくもなるわな。どこぞのキムチ臭いゴミ屑のようだ。 -- 名無しさん (2010-03-21 08:28:42)
  • ようは相手の立場に立って物事を考えることができてなかったのが問題だろう -- 名無しさん (2010-03-21 15:48:31)
  • 幻想郷はそんな心配りが出来ないようなやつらが集まってる印象がある。
    会話見るにも、目的見るにも。
    紫的には自分を含めそんな妖怪達を生き残らせるために幻想郷を作ったんだろう -- 名無しさん (2010-03-22 12:03:49)
  • …極端な話、幻想郷なんて滅んでしまったほうがよかったのかもしれないと思える一文 -- 名無しさん (2010-03-22 12:20:05)
  • 泣いたロリ鬼 -- 名無しさん (2010-03-31 22:35:20)
  • 誰がうまいこと言えと -- 名無しさん (2010-03-31 23:32:22)
  • 道徳の教科書みたいとはよくいったもんだ
    深いな -- 名無しさん (2010-06-10 02:42:42)
  • つまり、シマウマはライオンのことを全く好意的に見てないと言うことでおk? -- 名無しさん (2010-06-15 08:46:59)
  • で、シマウマが力を持ってライオンを追い出したらライオンが「シマウマに裏切られた」と -- 名無しさん (2010-06-15 23:57:06)
  • そもそも自分を食う相手と信頼関係を築くってのは現実では
    不可能だよな…フィクションならいくつかあるかもしれないが
    ってか何故か寄生獣を思い出したよ -- 名無しさん (2010-06-16 01:05:37)
  • 深いねぇ……。 -- 名無しさん (2010-06-17 23:20:34)
  • おもしろそうだなーと思って見てみたら凄く深い話ですね・・ -- 名無しさん (2011-01-25 20:31:16)
  • 考えさせられるな・・・・・
    -- 名無しさん (2011-02-17 20:44:40)
  • 元々鬼ってのが人を攫って食う、統括して畏れの体現な訳だし
    そういう風に創られてるからねえ… この萃香の思ってる復縁は無理だけど、襲う必要がなくなったのなら別の形で縁を作るなりすりゃあいいんじゃないかな -- 名無しさん (2012-03-29 09:48:59)
  • ただ言えることはどこの命住む星には
    争いがなくなることは・・なんでもない -- マルゲリータピザ (2013-03-29 03:05:50)
  • ぶっちゃけ、負ければ食われる戦いを勝負として楽しめる存在は、生き物として狂ってるよな。
    鬼は生まれた時点からの種族的な絶対的有利があるから楽しめるだけで。
    だから「知略」という自分達が不利な要素が加わる事を疎み、さも自分達が人間を見捨てたようなポーズを取って逃げたんじゃないかと思う。 -- ぱんだ (2014-02-16 23:08:32)
  • 日本政府道徳の教科書にのせい -- 名無しさん (2014-07-05 20:08:03)
  • 道徳で草 -- 名無しさん (2014-11-08 15:14:41)
  • 鬼が酷い言われようしてるな。
    ほんと人間っ自分勝手で嫌だね。
    繁殖能力が高いんだから、
    食われる事も必要なのに、
    死ぬの嫌とか、言うなとは言えないが、
    鬼を全否定するのはちょっと… -- キング クズ (2016-06-28 02:29:42)
  • ↑いやそれは違う。個々の命が大事なのはあたりまえだろ。繁殖力が高いからって喰われるのは嫌に決まってんだろ。すこしは考えろよ。 -- 名無しさん (2016-07-19 12:58:45)
  • これは道徳だな
    続きが気になる -- 醤油 (2016-07-24 08:54:54)
  • ↑↑2
    キュうべぇかな? -- 名無しさん (2016-09-10 21:34:21)
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最終更新:2016年09月10日 21:34