(一部で魔理沙をまりさと書いています、読みにくくてすいません)


とても平和な幻想郷


ある日の朝のことでした。
まりさはいつも通り午前八時に起きました。
まりさはいい子なのでお寝坊なんてすることはありません。

「きょうもいい天気だぜ」

まりさはベットの脇にあるカーテンを左右にバッと開いて
空に上りつつあるお日様を窓を通して見上げながら言いました。

「きょうは何をしようかな、とりあえず朝ごはんにするぜ」

まりさは朝ごはんを食べるために台所へ行きました。
まりさは和食派なので普段はパンを食べたりはしません。
何時もの様にまりさはご飯を食べようと米びつを開けると
そこにあるはずのほかほかのご飯はなく、

「げっ、お米が炊けてないぜ」

昨日の夜、セットしたはずの魔法の炊飯器の中には水浸しの生米があるだけでした。

「しまったな。これじゃあ餓死してしまう、しかたないからパンを食べるぜ」

まりさは普段は食べないパンを食べる決意を固めながら、
魔法の貯蔵庫へと向かいました。


「パーン、パンパン。パーンブレッド~」

まりさはパンを讃える歌を歌いながら貯蔵庫の中でパンを探しています。
普段から整理の悪いまりさのこと、貯蔵庫の中も様々な食料からゲテ物までごちゃごちゃに混ざっています。
しかし、どうやらまりさは食べられそうな食パンを見つけたみたいです。

「よし、これで餓死をまぬがれることができたぜ!」

まりさは大喜びで見つけた食パンを持って台所に戻りました。
バターを出して、お皿を出して、お皿の上に食パンを置いて八卦炉で焼けば朝ごはんの完成です。

「よし、焼くぜ。……あれ、あれ?」

まりさの様子がおかしいです。
どうやら八卦炉が見つからないようですね。
まりさは首をかしげながら寝室へと戻っていきました。

「おかしいぜ、どこにもないぜ」

まりさは寝室を隅から隅まで探しましたが、愛用の八卦炉を見つけることができません。
首をかしげながらまりさは台所に戻りました。
すると、食パンを置いたままだったはずのお皿の上に紙が一枚乗っていました。

「食パンが紙切れに変わってる。ついに私もれんきんじゅつをますたーしたぜ」

まりさは意味もなく誇らしげに胸を張っています。
しばらく自分以外誰もいない空間に自慢げに胸を張っていましたが、
飽きてきたのかまりさは紙切れを持って読み始めました。

「えーと、

まりさへ
あなたの八卦炉は私がかくしました。
返してほしかったらはくれい神社の
さいせんばこの中をさがしなさい。」

何ということでしょう、まりさの愛用の八卦炉は何者かに盗まれてしまいました。
しかし、こんなことで泣き寝入りするまりさではありません。
まりさはすぐにパジャマから外出着に着替えると、
八卦炉を取り戻すのに必要になるであろうマジックアイテムを魔法の袋にしまうと箒に乗って飛び出しました。

「はっけろは私のものだぜ!」




場所は変わって博麗神社。
ここはまりさの友人博麗霊夢が管理する神社です。
まりさは二日に一度はここに来てお茶を飲んでご飯を食べて、
三回に一度はそのまま泊まって行きます。

おっと、こうして説明している間にまりさが飛んできました。
流石に「げんそうきょうで三ばんめのすぴーど、だぜ!」と普段から言っているだけはあります。
神社に到着したまりさは賽銭箱を目指して一目散に歩いていきます。

「あら、魔理沙じゃない。今日は早いわね」
「きょうはお前のあいてをしているひまはないんだぜ、れいむ」

掃除をしていた霊夢の挨拶にも邪険に返事をして、まりさは賽銭箱の前に立ちました。

「あら、魔理沙。お賽銭でも入れてくれるの?」
「……とりゃぁ!」

霊夢が期待をしないまま言った言葉に反応することもなく、
まりさは賽銭箱をじっと眺めていたかと思うと懐から取り出した斧で賽銭箱を叩きはじめました。

「ちょ、ちょ、ちょっと! 魔理沙! 何をやって……る…………の……」

まりさの趣味はマジックアイテムの蒐集。
もちろん、この斧も切れ味を強化させた"でびるあくす"と呼ばれる逸品です。
まりさの弱い力でも数回殴りつけるだけで、賽銭箱をばらばらにすることができました。
賽銭箱の残骸に紛れて数枚の小銭と、一枚の紙切れが入っていました。

「えーと……、あったぜ!

まりさへ
あなたの八卦炉はここにはありません。
つぎはこうまかんのさくやのナイフのたなを
さがしてみましょう。」

まりさはそれを読むなり、箒に跨り紅魔館を目指して最高速度で飛んでいきました。
後に残されたのは真っ白になった霊夢一人。
固まっていた原因はばらばらになった賽銭箱のせいでしょうか、
それとも中を見ないようにしていた賽銭箱の中身が数枚の小銭だったことでしょうか。



まりさは紅魔館の上空にやってきました。
紅魔館は霧の湖の湖畔に立つ立派な洋館です。
入り口には陽気なお姉さん、紅美鈴が門番をやっています。

「あいつはいじわるだから、通してくれないんだぜ」

まりさは腕を組んでどうやって突破しようか悩んでいます。
おや、名案を思いついたようです。
またもや懐から何かを取り出しましたよ。
あれは……クロスボウというやつですね。
古めかしい型をしていますが、どこか不思議な輝きがあります。

「ふっふっふっ、このすないぱーまりささまにねらわれたからには、
めいりんの命はないんだぜ」

まりさはクロスボウの先をのんきに背伸びをして日向ぼっこをしている美鈴に向けて狙いを定めています。
おっと、左右にふらふらゆれていた美鈴の動きが止まりました。
絶好の狙撃のチャンスです……流石まりさチャンスは逃しません。
まりさのクロスボウから放たれた矢は狙い過たず美鈴の頭に突き刺さりました。

「めいりんは丈夫だからこのくらいじゃなんともないぜ」

まりさはそう言って地面に倒れてぴくぴく震えている美鈴の脇を走って通り抜けました。
矢が一本刺さっただけなのに随分とダメージを受けてしまっていますね、情けない妖怪です。
まりさはクロスボウもちゃんと袋にしまって……ああ、思い出しました。あれは獅子心王を――


おっといけません。
昔のことを思い出しているうちにまりさは紅魔館の中に進入していました。
今は……ああ、いました。
わき目を振らずに咲夜の部屋を目指しているようです
廊下の曲がり角では小さな鏡をそっと出し、通路にメイドがいないことを確認しながら進んでいますね。
流石、稀代の大泥棒まりさです。

今日のまりさは幸運に恵まれているようです。
誰にも見つかることなく咲夜の部屋の前までたどり着くことができました。
まりさはこっそりとドアを開けました、どうやら罠はしかけられていないようですね。
まりさは咲夜の部屋の中へと進入を開始しました。


「えーと、ナイフのたな、ナイフのたな」

まりさはナイフのたな、と呟きながらあちらこちらを適当に開けていきます。
衣装棚、ベットの掛け布団、机の引き出し等など。
おや、壁の一角に怪しげな部分があります。
どうやら隠し扉のようです、まりさも気づいたようですね。
触ったり、軽く叩いたりして開け方を調べているようです。
おっ、カチャという軽い音がしました。
開錠に成功しましたね、まりさは隠し扉を開けて隠し部屋へと踏み込んでいきました。

「す、すごいぜ」

まりさは部屋の中に入って壁を見回すと唖然としてしまいました。
無理もありません、壁には古今東西のナイフや剣が飾ってありました。
中には有名な伝承に詠われる剣もいくつかあるみたいですね。

「ぬすむべきか、もらうべきか、それが問題だ、だぜ」

まりさはそんなことを言いながらどれを盗もうか悩んでいるようです。
あんまり、長く悩んでいると咲夜が帰ってきますよ?

「あんまりゆっくりしているひまはないんだぜ」

まりさはそう言って詠唱を始めました。
随分と長い詠唱のようですね、これは効果が期待できそうですわ。
おや、この気配は……。

「白黒ネズミが一匹、私の部屋で何をしているのかしら」

咲夜が帰ってきました、どうやら大分お怒りのようですね。
タイミングがいいですわ、ちょうどまりさの詠唱が終わったようです。

「――我らは彼の者達の身を大地に還そう。鉄は金に、金は土に、土は土に!」
「魔理沙! 貴女、美鈴を…………へ」

咲夜が隠し部屋に飛び込んできたとき、ちょうどまりさの詠唱が発動しました。
四方の壁一面に飾られていたナイフに刀剣が崩れ落ち、粉となって床に落ちていきます。
ここで光が差していたらきらきら光って綺麗なんでしょうね。

「…………」

咲夜は固まっていますね、無理もないですわ。
秘蔵のコレクションのほとんどがただの鉄粉になってしまったし――

「なんだ、さくやのコレクションもたいしたことないぜ。 それにかちある宝はわたしのものだぜ」

まりさの魔法で粉にならない、つまりは魔法の篭められたナイフなどは
まりさが袋の中にほいほい詰めていくのですから。
でもまりさ、咲夜が再起動する前にここから脱出しないと大変なことになりますよ?
私もそろそろ出て行きなさいという紅い圧力を感じていますし。

「えーと……、あったぜ!

まりさへ
あなたの八卦炉はここにはありません。
つぎは白ぎょくろうの台所を
さがしてみましょう。」

どうやら、次の手がかりが書かれた紙を見つけたようですね。
まりさは咲夜の部屋の窓ガラスを割って飛び出していきました。



そして、この後もまりさの活躍は続きました。

次の白玉楼では食物が腐り落ちる呪いを振りまきました。
これでこの先百年は白玉楼では食物を扱うことはできないでしょう。

その次の竹林ではメイズ・ウッズの魔法を唱え迷いの竹林を魔界とも言えるほどの迷宮に変えてしまいました。
これでは村人はおろか、兎達も、もしかすると月人達ですら迷ってしまうでしょう。
中から外には出られても外にいる者は、例えばお使いに出ていた鈴仙などはメイズ・ウッズの効果が消えるまで
――凡そ数世紀の間は永遠亭に帰る事ができないでしょうね。

その後もまりさは各地に残された紙切れに従い幻想郷を巡り歩きました。

そして、まりさの前に現れた最後の紙には

「えーと……、あったぜ!

まりさへ
あなたの八卦炉はここにはありません。
つぎはまりさのいえの台所のテーブルにもぐりましょう。
そしてねころんで上を見上げるとそこに八卦炉があります」

と書いてありました。
まりさは喜び勇んで箒を飛ばし自宅へと向かいます。
これだけ幻想郷中を巡った冒険もようやく終わろうとしています。


「やれやれだぜ、いったいこんないたずらをしたやつはだれなんだ」

まりさはお怒りのようです。
そういえば、結局朝ごはんを食べていません。
食パンを焼こうとしただけなのに随分と大冒険になってしまいました。


そろそろ魔法の森が見えてきました。
まりさの家は魔法の森の中にあります。
おや? 何やら煙が上がっていますね。

火の手が上がっているのは……まりさのお家です。


「なっ……なんなんだぜ」

まりさは唖然とした顔で燃えている家の前に降り立ちました。
まりさの家からは火がゴウゴウと噴出していて、まるでプロミネンスのようですわ。

「しょ、しょうかしないと、水の魔法だぜ」

まりさは急いで詠唱を始めました。
でももう無駄です、ここまで焼けてしまえば後は崩れ落ちるだけ。
そしてこの火は……。


やっぱりまりさの努力は無駄でした。
まりさの家は崩れ落ちてしまったのです。
親しんできた自宅の惨状にまりさはぺたりと地面に膝をついて泣き出してしまいました。

「わ、わたしがいったいなにをしたっていうんだ……」
「わからない?」

泣いているまりさの背中の方から声がかけられます。
まりさは驚いて後ろを振り向きました。
そこには咲夜、妖夢、鈴仙、妹紅などなど色んな人が立っていました。

「自業自得よ」
「これで少しは反省しなさい」
「輝夜並みの最低な奴だ……いや、そこまでじゃないか」

呆然としているまりさに皆それぞれの思いをぶつけます。
まりさの耳にはそれらの声が段々遠いどこか別世界の言語のように思われてきました。
何を言っても反応がないまりさに皆は苛立ったり、呆れ果てたり、様々な反応を示しました。


しばらく時間がたちました。
地面に横たわり焦点が合っていなかったまりさの瞳に光が戻ってきました。
どうやら夢の世界からは戻ってこれるくらいに精神が回復したみたいです。

「……いたっ」

身体を動かそうとすると痛みが走ったようです。
何人かはまりさの身体を殴ったりしていきましたから。

「あら、お目覚めかしら」

まりさの目の前には咲夜が立っていました。
まりさは顔を伏せて咲夜を見ようとはしません。

「さ、さくや。 わ、わたしは何もわるくないぜ!」
「いいのよ、魔理沙。 気にしないで」

思いがけない言葉をかけられたまりさはおどおどと顔を上げて咲夜の顔を見上げます。
咲夜はにっこりと笑っていました。

「魔理沙は何も悪くないわ。 私も同じことをしたから」
「え」

咲夜は相変わらずにっこり笑ったままですが、まりさは何かに怯えたかのように逃げようとして――

「う、うごかない。わたしの足が……うごかない」
「ふふ」

咲夜から逃げようとして足が動かないまりさは腕の力で地面を這って逃げようとします。
そんなまりさの姿を見て咲夜は嬉しそうに微笑むと、次の瞬間には姿を消していました。
時止めの能力を発動させたみたいですね。
まりさは咲夜の姿が消えたのにも気づかずしばらく這っていましたが、
恐る恐る後ろを見て咲夜がいないことに気づくと腕から力を抜いて地面に上体を倒しました。

「さくやめ、さくやめ。くそっくそ…………うう」

また泣き出してしまいましたね。
しかし、今度はただ泣いているだけでなく泣きながら焼け落ちた自宅へと這って行っています。
地面に落ちている破片に身を切られながら、
地面を這うまりさには絶対の遮蔽物となる折れた柱を迂回し、
まりさはマジックアイテムの保管場所へと時間をかけて辿り着きました。

そう、ここにはまりさの宝の中の宝というべきマジックアイテムが保管されているのです。
ここの秘宝を使えばぴくりとも動かなくなった下半身を元の身体に戻すことはおろか、
腕を六本に増やしたり、空を飛ぶ翼を生やすことも、第三の眼を額に生むことも可能なほどです。
まりさは腕の最後の力を振り絞って上半身を元宝物庫の中に押し入れました。

「…………え?」

そこには何もありませんでした。
数々の秘宝も、怪しげな効果を生み出す薬も、何も残っていませんでした。
後に残るのはキラキラと煌く灰のみ。
そう、まりさの家を燃やしてのは八卦炉から出た炎だったのです。
八卦炉の炎は全てを溶かしつくす炎です、その力の前には秘宝といえども抗うことはできなかったのですね。


呆然とするまりさの顔に水滴が当たりました。
どうやら雨が降るようですね、藍は洗濯物をちゃんと入れているかしら。
次第に強くなる雨にまりさの身体は段々と冷えていきます。

私もそろそろ暖かい布団が懐かしくなってきました。
では私も自分の家に帰るとしましょうか。


「幻想郷は全てを受け入れるのよ。それはそれは残酷な話ですわ」










  • いい締めくくりだけど、だぜだぜうっさい。魔理沙はそんな基地外にあらず。
    -- 名無しさん (2008-08-01 17:01:35)
  • 無理に だぜ つけんでもいいだろ。
    -- 名無しさん (2008-08-10 02:26:25)
  • これは当時のスレの流れからできたネタ要素多めの実験作だから、あんまり言ってやるな -- 名無しさん (2008-08-10 13:35:26)
  • 犯人はゆかりんだったのか...まぁ隙間を使えば簡単か。 -- 名無しさん (2008-08-25 10:24:00)
  • こいつ魔理沙じゃなくて胴付きだろ -- 名無しさん (2015-08-21 12:35:25)
  • まりさばーかばーかww -- 朝 (2015-08-26 02:05:36)
  • 真理沙「デデドン(絶望)」 -- 名無しさん (2016-01-06 10:09:32)
  • キチガイ嫌われ魔理沙の一生 -- 名無しさん (2016-02-29 03:17:50)
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