426 名前:名前が無い程度の能力 投稿日:2006/10/02(月) 14:45:13 [ jzy1lSFs ]
ごめんね、容量大きくてごめんね


          迷惑な弾幕を撒き散らして・・・

 お仕置き・・・

        制裁…


    よし、ここは皆でひとつ・・・


      * * *


 冬が終り、春が始まろうとしていた。
 春を伝える妖精・リリ-ホワイトは、幻想郷の晴れ空を飛んでいた。
 少しずつ暖かくなる空気、芽吹き始める植物、活発に動き始める小動物達。
 近づく春を感じさせる色々なものを、嬉しそうに眼下に眺める。
 彼女の役割は、出会った者達に春の訪れを伝える事。
 満面の笑みと、沢山の弾幕と共に。 


 前方の空から、箒に乗った黒い魔法使いが飛んで来た。
 リリーはにっこりと笑い、早速春を伝える為に近づく。
 具体的にどうするのかというと、大量の弾幕を浴びせるのだ。
 だが困った事に彼女自身には、一片の悪気も無い。
 彼女の中の春を喜ぶ気持ちと、その嬉しさを相手にも分けてあげたいと思う気持ちが一杯になった時
 それが大量の弾幕となって自然と周囲に溢れ出すのである。

 すぅーっと、大きく息を吸い込み
 「 春 で す よ ―――! 」
 笑顔で、大量の弾に嬉しさを込めて相手に―――ー

 「あ、あれ?」
 送ろうとして、 奇妙な違和感を感じたリリーはピタリと動きを止めた。
 黒い魔法使いが近づいて来る。

 「 お 前 は 何 を 言 っ て い る ん だ ?」
 呆れ気味に苦笑しながら言う彼女の服装は、真夏の季節のものであった。

 「今は夏のド真ん中だぜ?」
 「えっ?」
 それはおかしい。
 つい先程、自身の目で春の景色を見てきたばかりなのに。
 しかし現実に今、空からは、春にしては強すぎる太陽光が照りつけてリリーの肌を焼いていた。
 じわりと額に汗が浮く。
 暑い。確かにこれは夏の暑さだ。
 「春はとっくに過ぎてるぜ。 寝過ごしたんじゃないのか?」
 軽く笑って、黒い魔法使いは飛び去っていった。


 「うー。おかしいな・・・」
 空に一人取り残されたリリーは、再び眼下の景色を見やる。
 「あ・・・」
 そこには春の花々が咲き乱れる草原が広がっていた。
 気づけば、気温も柔らかな春のそれに戻っている。
 「?」
 やっぱり、今は春だ。間違い無い。
 何かの錯覚だったのかな。 うん、きっとそうだ。
 春の陽気にも似た、持ち前の明るさで気を取り直したリリー。
 もっともっと多くの者に春を伝えるべく、再び空を駆け出した。


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 i | r'_r',!イノ)ノン,),  .ノくノノ人リ))ゝ              
 ヽ>,_(.ノノ!゚ ー゚ノ)´  ルi§゚ー゚ノ§                
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427 名前:名前が無い程度の能力 投稿日:2006/10/02(月) 14:47:25 [ jzy1lSFs ]
 今度は湖畔の洋館に勤めているメイドを見つけた。
 その後方から近づいて挨拶(弾幕)をする。

 「こんにちわー! 春です・・・・・・ょ・・・」
 声の最後の方は、小さくすぼまってしまった。 
 リリーの声に振り向いたメイドの首に、毛糸のマフラーが巻かれているのを見たからだ。

 「 貴 方 は 何 を 言 っ て い る の か し ら ?」
 腕を組み、黒魔法使いと同じように呆れた様子で言い放つメイド。
 その服装は見るからに秋のもの。

 「ぁ・・・う・・・?」
 先程と同様に、しどろもどろになるリリー。
 眼下の景色に目を落として、ぎょっとする。
 そこには燃えるように紅く色づいた森林が一面に広がっていた。
 「少し気が早過ぎたみたいね。 今は秋よ?
  まだ、貴方の出番ではないんじゃないかしら」
 リリーは戸惑いの表情で、メイドと眼下の紅葉とを、何度も頭を上下させて交互に見る。

 「それでは、ご機嫌よう。」
 言って、メイドは飛び去った。
 リリーはもう一度、地上を見やる。
 紅葉の森林が広がっている。
 顔を上げてメイドが飛んでいった方向を見る。
 再度、地上を見る。
 新緑の森林が広がっている。
 「!?」
 変な汗をかきながら、地上の森の中へ降りてみる。
 地面にかがみ込み、草花にそっと触れる。――本物だ。
 そのリリーの手の甲に、ヒラヒラと飛んできた蝶が止まる。――この感触も、本物。
 木のうろ穴から顔を出したリスが、幹を滑るように降りて来てリリーの肩に乗る。――この子も、本物。
 では、さっきのアレは一体何のだ。訳がわからない。
 「・・・・・・」
 触れていた花を一輪摘み取り、複雑な表情でリリーは立ち上がる
 蝶とリスが彼女から離れていった。
 ややふらつきながら上空へ飛び上がる。


      * * *


 先程からの出来事が頭の中で渦巻いていた。
 手の中の花を見つめながら、フラフラと飛ぶ。
 名前は知らないけれど、これは春にしか咲かない花。
 ということは、今は、春・・・・・・・・・のはずである。


 前方に、見知った顔の氷精を見つける。
 リリーはしばし、ジッとその後姿を見る。次に手の中の春の花を見てから、眼下の春の森林を見る。
 そして再び、前方の氷精に目を戻す。
 そろそろと近づいて、絞り出すように口から言葉を紡ぐ。
 「は、春、です・・・・・・・よね?」

 声をかけられ振り向いた氷精が、訝しげな顔でリリーを見つめ

 「 は ぁ ?  あ ん た バ カ ァ ?」
 小馬鹿にしたような口調で言った。
 カタカタ、とリリーが小さく震え出す。

 「今は、誰が、どー見たって、冬でしょーが。 ほら、下見なさいよ」
 ビシっと下を指差す氷精。
 リリーは困惑し、怯えるような表情で氷精の顔を見つめてから、
 恐る恐る、視線を地上へ降ろしていった。

 「ひっ!」
 眼下の森林の木々は葉を全て落とし、枝に真っ白な雪を被っていた。
 その雪を冷たい吹雪がさらっていく。
 先程からリリーの身体が震えているのは、寒さの為であった。
 手の中にあったはずの春の花が、消えていた。
 「・・・・・・ぁ? ・・・・・・ぇ?」
 金魚のように口をぱくぱくと開閉させるリリー。
 その目には、傍らで必死に笑いを堪えて痙攣している氷精の姿は、もはや映っていなかった。

 「そ、それじゃ、あたいはもう行くから。じゃね~」
 飛び去る氷精の言葉も、リリーには聞こえていないようであった。
 空に浮いたまま、呆けたように動かず、吹雪にその身を晒していた。


428 名前:名前が無い程度の能力 投稿日:2006/10/02(月) 14:48:49 [ jzy1lSFs ]
 花畑の中に、リリーは座っていた。
 暖かい。
 陽の光が柔らかい。
 春の花も咲いている。
 だから、今は春。
 春なのはずなのに、どうして・・・。 

「おやおや、これはこれは春の妖精さん」
 黒髪から兎の耳を生やした少女が、いつの間にか側に立っていた。
 ぼんやりしていて気づかなかったようだ。
「こんな所で油を売ってていいのかしらー? いつもみたいに春を伝えに行かないの?」
 言う声の中に、噛み殺した笑いが含まれていたが、リリーは気づかない。
「え・・・あ、はい。 そう・・・ですね」
「そうだぜ」
 横手から声がかかる。
「いつもみたいに、お前さんが春を伝えてくれないと、気分的にも締まらないしな」
 先程の黒魔法使いだ。

「私からも是非お願いしますね」
 今度は背後から声がかかる。
「はやくお布団の日干しをしたいですから」
 白玉楼の庭師だった。

「花見もやりたいしね」
 上空から神社の巫女が降りてくる。

「春一番(の弾幕)到来! 一面記事はコレで決まりですね」
 天狗の記者。
「さあ、春を伝えてくださらないかしら?」
 メイド。
「ほら、はやくしなさいよー」
 氷精。
「春なのかー」
 よくわからない妖怪。

 大勢の人妖に詰め寄られ、リリーは困惑した。
「は、はぃ。 そ、それでは・・・」
 言って、身を縮めながらそろそろと立ち上がる。
 自分を取り囲んでいる人妖達を、不安げな目でちらっと見る。
「ほら、どうしたんだ? 早くアレをやってみせてくれよ」
 黒い魔法使いがぽふぽふ、とリリーの帽子を軽く叩く。
「・・・ぅ」
「ふふ、この子、一体何を怖がっているのかしら?」
 リリーの心の不安を見透かしたかのように、腕を組んだメイドが微笑する。
「変ねぇ、いつもなら頼んでもいないのに、出会い頭にアレを披露してくれるはずなんだけど」
 巫女も面白そうに微笑んでいる。
「ほらほら、どうしたのよー」
 ぺちぺち、とリリーの頬を氷精が叩く。
「ぁ・・・・・ぅ・・・」
「さぁさぁ、私もリリーさんのアレを撮影したいですし、早くお願いしますよ~。」
 天狗がわくわくした様子で言う。
「それにしても、こんなに近くに密着されているのにアレを出さないなんて、おかしいですね。
 リリーさん、どうしてしまったんですか?」
 庭師がリリーの顔を覗き込む。
「伝えないのかー?」
「ほらほら」
「さあさあ」
「はやくはやくー」


429 名前:名前が無い程度の能力 投稿日:2006/10/02(月) 14:50:17 [ jzy1lSFs ]

「ぅっ・・・・・うっ・・・・ぐしゅ・・・」
 リリーは半泣きになり、崩れるように花畑に座り込んでしまった。
「おいおい、一体なんだというんだ?」
 黒い魔法使いがリリーに歩み寄って来る。
「で、できないんです・・・」
「できないなんて事は無いはずだぜ。 春を伝えるのは、お前さんの大切な役目なんだろ?」 
「ち、違うんです・・・ひくっ、変なんです、頭がおかしくなっちゃいそうなんです・・・」
「変なのはリリーさんじゃないですかー? 急に泣き出したりして」
 構えたカメラに隠れて天狗の目を伺うことはできないが、その口元は微かに笑っていた。
「そうじゃ・・・なくて・・・、春が、春じゃないんです・・・」

    くくっ・・・     
           ぷっ・・・

「何を言っているんだ? 今は春だぜ?」
「でも・・・でも・・・」

     クスクス・・・ 
              ウササササッ

「・・・みんな、お前さんの伝えてくれる春を待っているんだぜ」 
 うずくまっているリリーの肩に手を置き、ひどく優しい口調で囁く黒い魔法使い。
「ぁ、あの・・・今、春、ですよね・・・?」
 その魔法使いに、すがる様な目でリリーは問いかける。
「ああ、今は、春だ」
 にっ、と白い歯を見せて笑う。 


「さあ、リリーさんに泣き顔は似合いませんよぉ。
 とびきりの笑顔を見せてくださーい」
 天狗がカメラの照準をリリーの顔に定める。
 リリーは鼻をすすりあげ、よろめきながらも立ち上がる。
 取り囲む人妖達の円の中心から、天狗が構えたカメラのレンズに顔を向ける。
 とても笑える精神状態では無かったが、リリーは懸命に笑顔を作ろうと努力する。
 泣き腫らした目、不自然に引きつった口の端。
 笑顔とは到底言い難い、酷い顔であったが、それが今のリリーに作れる精一杯のものであった。

「それじゃあ写真を撮りますから、思い切り春を伝えてくださいねー」

 ぎこちなく頷いて、リリーは両手をゆっくりと上げる。
 嗚咽がおまるまで、息を整える。
 深呼吸をして、身体の中に気を溜める。
 そして、開放する。


「は・・・、春で・・・・・・」


 言葉を発した瞬間。
 リリーの視界が真っ白になった。
 ごうっ、という音と共に、冷たい吹雪がリリーの顔面に叩きつけられた。
 その激しさと、白のまぶしさに閉じた目を、徐々に開く。
 周りを取り囲んでいた者達は、ひとり残らず消えていた。
 誰も居ない、何も無い広大な雪原の中央。
 膝まで雪に埋もれて、リリーは一人、いびつな笑顔のまま両手を上げた姿勢で立っていた。
 糸が切れたように、両手がダラリと下げられる。
 首が、力の支えを失ってうなだれる。
 膝を折り、腰まで雪の中に埋もれて、うずくまる。
 目から止め処なく溢れ続ける涙が凍って頬に張り付く。
 そのまま雪の中で、リリーは肩を震わせ嗚咽を漏らし始めた。
 やがてその細い泣き声は、猛吹雪の轟音の中に飲まれて消えた。







  • その後幻想郷に春が訪れることはなかった。
    気温が幾ら上がろうと、太陽が燦々と輝こうと
    草木が芽吹くことは無い。

    そう、彼女達は妖精を舐め過ぎた。


    って所まで幻視出来た。
    マスパを所かまわずぶっ放してる魔理沙の方が迷惑だろうて。
    三月精じゃそんなに迷惑そうに見えなかったしな。 -- 名無しさん (2008-12-02 20:11:42)
  • 砂漠じゃないか! -- 名無しさん (2008-12-03 02:20:22)
  • まあ妖精だから死なないんですけどね -- 名無しさん (2009-05-25 07:09:46)
  • 死なないが、力を失うかもしれない。 -- 名無しさん (2009-08-24 04:52:38)
  • ヤバい、リリー可愛い -- 名無しさん (2009-08-25 00:20:27)
  • リリー可愛そうなのに可愛いという罠
    リリーナイスだ!もっとやれ! -- 名無しさん (2009-10-07 14:02:17)
  • 絶対野暮だと思うけどこれは一体どうゆう異変だ? -- 名無しさん (2009-11-01 18:35:36)
  • 本当良かったwww
    リリー良すぎだ···可愛すぎるwww -- 名無しさん (2009-11-08 05:51:01)
  • ↑↑パチュの魔法じゃないかな
    こんなのはパチュくらいだろ -- 名無しさん (2010-05-19 19:42:15)
  • 紫じゃね? -- 名無しさん (2010-05-21 21:43:50)
  • 季節の境界弄くったのか -- 名無しさん (2010-05-21 21:55:03)
  • age -- age (2011-01-03 01:19:42)
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最終更新:2011年01月03日 01:19