「くそ、一体何だと言うんだ…」
  紅魔館地下の一室に、ボロボロの衣服を纏った魔理沙が捕われていた。
  部屋の中央に突き立てられた木の柱に、頭上に上げた両手が縛り付けられている。
  地面に着いている両足も同様に木柱にくくり付けられている。
  その魔理沙を囲むように、パチュリー、レミリア、咲夜、美鈴の四人が立っていた。

  ほんの数刻前、魔理沙はいつものように紅魔館に乗り込んだ。
  その時、迎撃に上がって来たのがこの場に居る四人だった。
  紅魔館のベスト4を相手にしての、四対一。
  幻想郷の弾幕ごっこにあるまじき卑劣なやり口。
  四方を囲まれ逃げる事すらできず、結果、この様である。


「なあ、パチュリー…。 どうして私にこんな事をするんだ…?」
  もはや精根尽き果てて煙も出ない魔理沙が、目の前に立つパチュリーに弱々しく問う。
「こんなのは、おかしいだろ? 今回は一体、どういう本の妄想を真に受けてこんな―――」
「妄想?」
  パチュリーが魔理沙の言葉を遮った。

「これは妄想なんかじゃないわ。貴女が辿るべき、当然の末路よ。」
  魔理沙を正面から見据えるパチュリーの白い顔に表情は無い。声も、至って平坦である。

「魔理沙、確かに私達は貴女の事を、良き隣人であると思っていたわ。
  貴女が来てから、この館も随分と変わった。
  妹様も、レミィも、そして私も、みんなが明るくなった。
  貴方という風が吹き込んで来た事で、停滞していた館の空気が新鮮なものになった気がするわ。」

  唐突に語り出したパチュリーに、魔理沙は少しばかり驚く。
  それも、こんなに饒舌な彼女を見るのは初めてかもしれない。

「その一方で貴女は門を破って勝手に館に上がり込み、図書館の本を持ち出し、私達を困らせたりもした。
  それでも、何故か憎めない不思議な愛嬌が貴方には有るわ。  ―――でもね」

  パチュリーの病的なまでに白い顔のこめかみに、青筋が浮かび上がる。

「私達の、寛容な心にも、限度が、有るの。」

  低く、静かに絞り出した声に含まれる怒気。
  魔理沙は息を飲む。パチュリーの怒りが本物であると感じられたからだ。

  後方に立っているレミリアも口を開く。
「よくよく考えれば、人間風情がこの私の館に我が物顔で出入りしている事自体、許し難い無礼なのよね」
  パチュリーの怒気を含んだ瞳とは対照的に、レミリアの瞳には悪戯っぽい色が浮いていた。明らかこの状況を楽しんでいる。
  傍らに控える瀟洒な従者も、その表情こそ、意思持たぬ冷たい刃物の様だが、やはり同様の瞳をしている。
  美鈴も無言のまま、満足気な笑みを浮かべている。
  三人共、これから魔理沙の身に起こる出来事が、楽しみで仕方無いといった様子。




          ―――




「ところで、今日は外の世界では『ハロウィーン』という祭事が行われる日なの。」
  顔に浮かべた青筋はそのままに、パチュリーが口を開く。

「ハロ…ウィーン?」 
  急に外の世界の話を持ち出され、魔理沙は訳が判らず鸚鵡返しに呟く。

「その祭事では、『魔女の火葬パーティー』というモノを行うらしいわ。
  …貴女への制裁に、ぴったりの趣向だと思わない?」

  そう言って、パチュリーが後ろに控える咲夜に目配せをした。
  次の瞬間、魔理沙の足元には大量の藁の束が積み上げられていた。
  藁束は油をたっぷりと含み、艶やかな光沢を放っている。
  空気が唸るような音と共に、パチュリーの両手に炎が宿った。

「ッ! ま、待て! パチュリー待ってくれ!」
  自分が何をされるのかを理解した魔理沙は、顔色を変えて狼狽する。

「ええ、待ったわ。 それはもう、ずぅっと待っていたわ、貴女が本を返しに来てくれるのをね。」
  凄みのある低い声を出しながら、魔理沙を睨みつけるパチュリー。
  見慣れていた筈の、平たく半開きになった魔女の目。
  それが今は異常に恐ろしく感じる。
  パチュリーが全身から発している怒気が、殺気に変わった。

「お、おい… 冗談…だよな…?」 
  パチュリーは何も答えない。
  その体から発せられる殺気の塊が、無言の答えとなって魔理沙の皮膚に吹き付けられた。
  両手の炎の照り返しが、パチュリーの白い顔に不気味な陰影を作っている。
  燃える炎を前にして、魔理沙はいよいよ自分の背筋が凍りつくのを感じた。

「悪かったッ! わた、わたしが悪かったッ! 盗んだ本は必ず返すからッ だから…ッ!」
「あら、盗んだ、という自覚は有ったのね。
  それにしても……貴方は今までに持っていった本の冊数を覚えてるの?」

  魔理沙の謝罪を耳にしても尚、パチュリーの表情と殺気は変わらない。
  薄く開いた半眼を魔理沙から逸らさぬまま、屈み込んで手の炎を藁に近づける。

「待って! やだッ! いやぁッ!!」
  目の端に涙の粒を浮かべながら、魔理沙は激しく身をよじる。
  だが小柄な少女の膂力では、固い縛めから逃れられる筈もない。
  木柱に縛りつけられた体は、小さな軋み音と共に僅かに左右に揺れただけだった。


  紅の館の地下室から、少女の絶叫が響いた。






































「はぁッ……はッ……はッ……」
  自身の心臓の音だけが、魔理沙の頭の中に響いていた。
  きつく閉じた瞼の闇の中で、やがて少しずつ、他の音も聞こえるようになってくる。
  荒く乱れた自分の呼吸の音。
  乾ききった喉が水分を求めて生唾を飲み込む音。
  瞼を恐る恐る開く。
  まだ自分は生きている様だ。


「ぷっ」
  堪えきれない、といった様子でレミリアが吹き出す。
「ははっ あの魔理沙が『いやぁ!』なんて声っ」

  ぼやけていた視界が、元に戻り始める。
  パチュリーの手の炎も、足元の藁も消えていた。
  魔理沙は目に涙を溜めたまま、傍らに立っているパチュリーの顔を呆然と見つめた。
  そのパチュリーの目は、先程よりも幾分か柔らかさが戻っていた。
  パチュリーの後方では美鈴が腹を抱えて笑いを堪えており、咲夜も面白そうに魔理沙の呆けた表情を眺めている。


「小悪魔、持ってきて。」
  パチュリーの呼びかけに応じて、部屋のドアが開く。
  小悪魔が大きな鍋と幾つかの食器を載せた配膳台を押して部屋に入って来た。
  上質な銀メッキをあしらった鍋の中からは湯気が立ち昇り、えもいわれぬ香ばしい匂いが部屋中に広がる。
  これは香辛料の煮える匂い。カレーの様な匂いだ。 

「……貴女の積み上げた知識を、ここで灰にしてしまうのは余りにも惜しいわ。
  それに私も鬼ではないし、命までは取らないわよ。」 

  言いながら、パチュリーは配膳台まで歩いて行き、銀の深皿を手に取る。
  鍋の中身の液体をそれに注いだ。何かのスープのようだ。 

「とりあえず、食事にしましょう。」

  何故、またも唐突に話の流れが変わるのか。
  パチュリーが何を考えているのか判らない。
  徐々に蘇り始めていた魔理沙の思考回路が、再び混乱する。
  そもそも、このような精神状態で、今すぐ食事が喉を通る訳が無い。
  それ以前に、このいましめを解いてもらわない事には食事などできない。

「私が食べさせてあげるわね。」
  魔理沙に歩み寄るパチュリー。
  その手に持った銀皿に視線を移した魔理沙の両目が、大きく見開かれた。
  皿の中に満たされていたのは、真っ赤な液体だった。

「いや…待って、くれ…。私は…吸血鬼用の、スープは、飲めないぜ…。」 
  呼吸を落ち着かせながら、魔理沙はどうにか言葉を絞り出す。
  だが、その言葉を無視するかのように、パチュリーは赤い液体をすくった銀のスプーンを魔理沙の口元に近づける。

「大丈夫。これは外の世界の料理で『スープカレー』というものなの。人間用の食べ物よ。」
  そう言って、更にスプーンを魔理沙の口に近づける。
「ほら、早く口を開ける。」

  魔理沙は唇を一文字に結んで押し黙った。
  この、果てしなく不条理な事の流れを、おかしいと感じない方がおかしい。
  このスープも、恐らくパチュリーが作った物。
  飲めばどうなるか、わかったものではない。

「どうしたの。 口を開けないと、スープが飲めないわよ?」
  パチュリーの瞳に、再び先程の鋭さが戻り始める。 
  …悔しいが、選択の余地は無い様だ。
  固形物は喉を通りそうにないが、スープ位なら飲めない事もない。
  魔理沙は覚悟を決め、一度唾飲み込んでから、恐る恐る小さく口を開いた。
  赤い液体を乗せたスプーンが、魔理沙の口を割り開くかの様に乱暴にねじ込まれる。

「むぶぅ!?」
  ゴクリ、と喉を鳴らして魔理沙は思わずソレを飲み込んだ。
  パチュリーが冷たい目をしたまま、口元だけを微笑の形に歪ませた。




          ―――



  液体を飲み込んでから僅か数秒後、魔理沙の後頭部に打撃を受けたような衝撃が走った。
  全身の毛穴が開いたような感覚。
  目の前で微かに火花が散った様な幻覚。
  舌が、喉が、口内が、胸の中の食道が、焼け付く様な感触。

「ご…ッ がァ…ッ」
  魔理沙は口を一杯に開き、掠れた呼吸音と共に必死に空気を口内に吸い込む。
  辛い。
  辛いというよりも、痛い。
  口内全体が焼けるように痛い。

「紅魔館特製激辛スープカレー~夜雀腿肉の魔女風味~よ。 お味は、どうかしら?」
「がふッ がふぅッ!」
  激しく咽る魔理沙を冷たい半眼で見つめながら、パチュリーは薄く笑う。 

「スープが触れた所が、燃えるように熱いでしょう?
  これで貴女を、体の内部から『火葬』してあげるわ」 

  パチュリーの声だけが、魔理沙の耳に聞こえていた。
  涙で目が霞んで何も見えない。

「もっとも、味なんてわからないと思うけれど。
  そもそも人の舌は、甘味、鹹味(塩気)、酸味、苦味を感じるもの。」

  魔理沙は激しく咳き込み、呼吸すらままならない。
  パチュリーは教師が生徒に講義をするかの様に、平坦な声で語り続ける。

「でも『五味』の中でも『辛味』だけは、舌で感じ取られるものではないと言われているの。
  西欧系の言語にも、辛味を味覚として捉える言葉は存在しない。
  つまり、辛味は味覚とは言えない。 痛覚なのよ。」

「はぐッ はッ」 
  魔理沙は中空へ舌を突き出し、口内を少しでも冷たい空気に触れさせようとしている。
  パチュリーは傍らに来ていた小悪魔に皿を持たせると、再びスプーンで赤い液体をすくった。
  空いた方の手で、人魚の様に喘ぐ魔理沙のおとがいを掴み、その口の中に素早くスプーンごと液体をねじ込む。
「がひゅッ」
  辛さの衝撃で前後不覚に陥っている所へ喉奥に液体を注ぎ込まれ、魔理沙は再び咳き込む。 
  それで飛び散った赤い液体が、魔理沙の口の端から垂れ、白いエプロンドレスを汚した。

  パチュリーが三口目のスプーンを魔理沙の口元へ流し込む。。  
  だがその直後に魔理沙は首を思い切り振り、顎に添えられたパチュリーの手を振りほどく。 
  そして口に入れられた液体を霧吹きの様にパチュリーの顔に吹き付けた。

  パチュリーの悲鳴が部屋の中に響く。
  思わぬ魔理沙の抵抗に、背後で事を見守っていた咲夜やレミリアも僅かに動揺する。
  顔面を押さえて呻きながら床をのた打ち回るパチュリーに、小悪魔が慌てて駆け寄った。
  魔理沙は俯いたまま荒い息を吐き、口内で暴れる辛味を必死に耐えている。

「う…ぐぁ、 ……美鈴ッ、魔理沙を押さえて!」
  小悪魔に助け起こされながら、パチュリーが怒気を含んだ声で美鈴に指示を出す。
  どす黒い笑みを浮かべた美鈴が、指をゴキりと鳴らしながら魔理沙の横に立つ。
  呼吸の為にだらしなく開かれていた魔理沙の口に両手を差し込み、上あごと下あごを開けたまま固定した。

「あが…」
  涙と汗でぐしょぐしょになっていた魔理沙の表情が固まる。
  顎が、頭全体が動かない。まるで、万力でガッチリと固定されたかの様。
  これが、魔理沙がいつも軽くあしらっていた門番妖怪の腕力なのか。
  その美鈴の両目と表情は、恍惚と歓喜に染まっていた。
  口の端が釣りあがり、そこからくぐもった小さな笑いが漏れている。

  唯一動かす事のできる魔理沙の眼に、怒りの形相で近付いてくるパチュリーの姿が映る。
  パチュリーは顔に付着した液体がもたらす痛みに顔を歪ませながら、スプーンで赤い液体をすくう。
  今度はソレを魔理沙の口に運ばずに、その目元へ塗りつけた。

  最初はパチュリーが何をしているのか、魔理沙には判らなかった。
  だが、ほんの数秒後にその意図を理解した。

「ん”オ”ア”ア”アァッッ!!!」
  魔理沙は、美鈴の手で開け放ったままにさせられている口から、奇妙に歪んだ悲鳴を上げた。
  目元の皮膚が、焼ける様に痛み出す。 
  眼球にも痺れるような痛みを感じ始める。
  眼を開けていられなくなった魔理沙は、目尻に涙を押し出しながら瞼をきつく閉じた。 
  それでも、痛みが引く事は無い。 

  無防備に開け放たれている魔理沙の口に、ゆっくりとスプーンの中から液体が注がれる。
「がほッ!」
  魔理沙の体がビクリと小さく跳ねる。
  視界を奪われている状態で与えられる刺激は、その恐怖感が何倍にも増幅される。

  魔理沙は口内に溢れた液体を飲むまいとして、うがいをするように喉の奥で押し留めた。
  それでも喉や口内の粘膜に痺れる様な激痛が広がっていく。
  そしてやがて、喉は生来の反射により、意思とは無関係に液体を飲み込んでしまう。
  魔理沙の食道が、燃える。
  普段、食道という器官の存在を、肉の内に体感する事は無い。
  だがその食道が、激痛に晒される事で胸肉の下に浮かび上がるような感覚を魔理沙は感じていた。




          ―――



「魔理沙、苦しい?」

  不意に、魔理沙の上下の顎を押さえていた美鈴の両手が離れた。
  きつく瞼を閉じたまま、掠れた呼吸で喘ぐ魔理沙の耳元で、パチュリーが囁く。

「でもね、このスープに使っているトウガラシの辛さの成分は、とても健康に良いらしいのよ」
「ばッ ばぢゅり”… も”、やめ”…」
「その成分は血行を促進し、脂肪を燃焼させる効果があるの。
  ビタミンAも豊富だし、発汗を促すからお肌も綺麗になるのよ。
  研究で家に篭ったり夜更かしをしている貴女には、有り難い効果ね。」

  魔理沙は見えぬ眼から涙を流しながらパチュリーに許しを乞うが、
  パチュリーはそんな声は聞こえていないかのように、一方的に言葉を続ける。

「その他の用途としては、古くは不倫を犯した女性を罰する為にも、トウガラシは使われたそうよ。
  ……トウガラシの粉を女性のドコに塗りつけるかは、今から実践してあげるわね」

「ひぐッ や”ッ! や”べで…ッ!」
  魔理沙は自分の唇が大きく腫れあがったように感じていた。うまくしゃべる事ができない。
  それは強すぎる刺激で唇の周りの感覚が一時的に痺れているだけであり、実際には唇は元のままである。

「ごッふ! ごめ”ッ、ばぢゅり”ごふォッ…ゆるじで……!」
  何も見えない瞼の暗闇の中、魔理沙は咳き込みながらも謝り続ける。
  不意に、魔理沙は自分の服が下着を残して引き剥かれ、肌が外気に晒されるのを感じた。
  次いで魔理沙の口が物凄い力で開かれ固定された。
  パチュリーの手だけではない複数の手が、魔理沙の肢体の表面で蠢き、至る所に何かを塗りつけ始める。
  ほどなくして、全身の皮膚という皮膚が炎で焼かれた様な激痛に覆われる。 
  身をよじり、絶叫を上げようとする魔理沙の喉の奥が、流れ込んで来る真紅の液体で塞がれた。

















  • ナンテコッタイ・・・ -- 名無しさん (2008-06-24 17:24:31)
  • てっきりエロに続くのかと -- 名無しさん (2008-07-02 13:01:49)
  • 続きの神展開に吹いた。
    つーかカレー攻めってはじめてみたわ・・・ -- 名無しさん (2009-01-10 12:20:00)
  • カレーの色が茶だったら…

    あれだぞっと -- 名無しさん (2009-07-11 16:35:50)
  • やっぱり魔理沙はいじめた方がかわいいよね! -- 名無しさん (2010-08-07 01:48:05)
  • せっかくパンツ脱いだのにエロが無いとは… -- 名無しさん (2010-08-07 09:50:54)
  • パチュリーの小者臭が、なんかいい…… -- 名無しさん (2010-11-01 19:58:09)
  • 魔理沙は虐められてこそ光る -- 名無しさん (2012-05-17 19:09:39)
  • ふぅ・・・ -- 名無しさん (2013-02-05 19:59:17)
  • 凄く可愛いぜ -- これは・・・よろしい (2014-03-16 00:32:43)
  • 魔理沙いじめないでください‼(`ロ´;) -- 名無しさん (2016-12-28 02:43:52)
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