596 名前:名前が無い程度の能力 投稿日:2006/10/18(水) 00:58:12 [ vh/.6Yt2 ]
なんか電波が飛んできたので投稿してみる。理不尽かつ支離滅裂な、話にもなっていない話になったが。

久々に3人で囲んだ食卓の雰囲気は、悪かった。どうしようもなく悪かった。むしろ惨劇だった。
体が動かなくなっていくのを感じつつ、それでも這いつくばりながら魔理沙は必死に思考をめぐらせた。

(毒……か?)

冷静に考えれば考えるほど、そうとしか思えなかった。同じものを食べたアリスも気絶し、痙攣している。
魔理沙自身もまた体中に痺れを感じ、指を震わせ、脂汗を垂らしている。
ただ分からないのは、霊夢が今このタイミングで自分らを謀殺する理由だ。魔理沙は飛んでしまいそうな意識の中でなんとか思考を進める。
自分もアリスも霊夢の良き友人であり、抹消すべき対象になっているとは思えない。彼女が自分を殺す必然性などには全く心当たりが無い。意味が無い。

畳を掴みながらなんとか顔を上げると、昼食のキノコ入りクリームシチューを作った当の霊夢でさえ、机に突っ伏してビクンビクンと身体を震わせていた。
演技とは思えない。おそらく彼女は無実なのだろう。
何年も前に霊夢が美味しそうなキノコを見つけたと言ってきて毒キノコ入り料理を食べさせられ、泣かされたことがある。霊夢も泣いていた。
あの時は色々な意味でとてもまずかったが、あんな事もあったし同じ轍は踏まないだろうとタカを括っていたのが甘かった。
むしろキノコの毒性はあの時より数十倍以上に強化されている。まずい、というレベルなどではなく純粋に苦しい。
魔理沙は心の底から後悔した。たとえ上機嫌な霊夢の気分に水を差すことになっても、無理やりにでもどんなキノコなのかを調べるべきだった。
あの頃食べた時には人生に対する価値観が変わる程度で済んだが、今はそこに刃物でもあれば衝動的に自害してしまいそうだった。

(……だが)

そう。だが、と続けて魔理沙は自分を奮い立たせる。ここでは終われない。こんな終わり方は出来ない。
こんなことで終わったら哀れすぎる。魔理沙は、自分の身体が崩れ果ててしまいそうな感覚に抗いながら、立ち上がる。立ち上がった。
誰も見ていないであろうが、その姿はとても雄々しかった。そして、一つの決心をする。

(吐こう……)

なすべきことが決まったなら、まずそのためにするべきことも決まる。便所へ行くことだ。
魔理沙は廊下に出るふすまに手をかけた。意識は朦朧としていても家の間取りくらいは思い出せる。左に行って、少し歩いて、右のドア。そこに便所がある。
そこへ行こう。そこへ!

襖を開けた。

無かった。

(なんだこりゃ!?)

何も無かった。正確に言うと、便所が無かったのではなく廊下も無かった。
さらに言えば、家の中ですらなかった。青い空と、黄色い大地と、それを隔てる地平線。広大な空間が広がっていた。

(間違えた、のか?)

しかし普通はふすまをどう開け間違えても、こんな場所には出ない。
混乱しながら、魔理沙は家の外に踏み出す。
それは土ではなく砂だった。そこは砂漠だった。その割にはやけに涼しい。風が吹いていた。雲は無い。
砂漠の上にはただ、空が青く青く広がっていた。そして眩しく輝く太陽。ここは。

「幻想郷は崩壊した」

後ろから声をかけられた。紫の声だった。だが魔理沙には、振り返って返事をする余裕は無かった。
あり得ない。何かの夢だ。ためしに頬をつねる。だがそれは依然として目の前に広がっていた。
魔理沙は唾を飲んだ。

「嘘だろ…?」

「本当よ。とてもとても大きな隕石が外界のどこかで落下したの。
 その爆風で大結界は破れ、一部を残して幻想郷は吹き飛んだ。そして外界もあらゆるものが吹き飛ばされ、次に巻き上がる大地に飲み込まれていった。
 世界は崩壊したわ。全てが無慈悲に、とてつもない速度で、消し飛んだ。
 あまりに理不尽な終わり。だけど、反論を唱える者も、不満を覚える者も、もう、どこにも、存在、しない」

声が途絶えた。ドサリと音がした。
向こうの空では小さな太陽が、大きな大きな黒い波に呑み込まれていくところだった。

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最終更新:2007年07月05日 00:13