581 名前:名前が無い程度の能力 投稿日:2006/10/16(月) 20:28:22 [ 2FEaMuKA ]
人里と博霊神社の間に鉄道を敷設し、よりによってキハ391を走らせて
爆音で沿線の妖怪たちを不眠症にしたい。

585 名前:名前が無い程度の能力 投稿日:2006/10/17(火) 09:57:52 [ K0i/yM8I ]
 >>581
しかし博麗神社にも人里にもそのような何の利益も生まぬ鉄道を維持する金は無かった。
それでも慧音は妖怪を困らせる事ができるのならと身の回りの物を売り、鉄道を支えた。
参考書や歴史書は売って替わりにできなかったので、ガソリンの変わりに窯にくべた。

しかしそれでも資金は到底たりず、彼女は森の魔法使い達に自分の角や毛を差し出して石油を手に入れた。
さらに経営をより完全なものにするために、ついにはその身を……。

一定量のガソリンを手に入れる術を手に入れた彼女であったが、車庫に帰るまでに妖怪に襲われる。
角と毛を売り力を失った彼女は雑魚妖怪に叩きのめされ、せっかく手にいれたガソリンも無駄にぶちまけられ
てしまうのであったが、すんでのところで脱出する事に成功する。

しかし、満身創痍で車庫にたどり着いた彼女が見たものは、妖怪達に襲われボコボコのスクラップにされた
キハ391の残骸であった。

「ああああああっ!!」

彼女はその残骸にすがりついて泣いたが、運悪くそこを整備に出てきた村人に見つかってしまう。
必死に弁解するも、彼女の姿は油まみれであり、その所業を疑われるに十分であった。

「こやつめ! 人の味方のふりをしておいて、やはり化生の類であったか!」
「やはり妖怪! 夜寝るのにこいつが邪魔だったんだろう!」

雪の中裸にむかれ、吊るし上げられる彼女に容赦の無い罵声と暴力が飛ぶ。
この鉄道は人が敷設したものであるが、経営難に勝手にほうりだしたのもまた人であると言うのに。

「わたし…が、わたしのせい…で」

うわ言のようにつぶやく彼女の声は喧騒の中に消え、その頬を伝う雫も、彼女に
纏わりついたドス黒い液体を清める事は無かった。

611 名前:名前が無い程度の能力 投稿日:2006/10/21(土) 07:25:42 [ ObpshfuM ] ←「>>604」の文字を消したこと明記
 勝手に後日談を妄想した

春。
暖かな陽射しで、僅かに残っていた雪も全て融けようとしていた。

狭い和風家屋の中。
包丁が俎板を打つ小気味良い音が台所から響いている。

板間にのべられた布団の中に、白い襦袢を着た慧音が寝ていた。
枕に乗っている蒼銀色の髪は、うなじが見える程に短い。
横になったまま天井の一点を見つめているが、その瞳はどこか焦点がズレた様に虚ろだった。
目だけではない。
身体全体から生気が感じられなかった。
胸にかけられた布団がゆっくりと、微かに上下している。
時々、瞳を潤す為に身体が瞬きをさせる。
動きといえばそれだけで、放って置けばいつまでもそのままで居そうであった。


囲炉裏に吊るされた小型の鍋から、味噌の煮える香りが漂っている。
包丁の音が止んで、配膳台を持った妹紅が台所から出てきた。
「慧音、朝餉だよ」
そう呼びかけるが、布団の中の慧音は天井を見たまま微動だにしない。
配膳台を置いた妹紅は、埃が立たないように静かに慧音のかけ布団をどける。
横になっている慧音の背中に手を差し込み、ゆっくりとその上体を起こしてあげる。
そこで初めて慧音の頭が動き、不思議そうな表情で妹紅を見つめてきた。
一回り小さくなってしまった慧音の軽さが、手を介して妹紅に伝わって来る。
慧音の目に掛かった前髪を払ってあげながら、妹紅は憂いの表情を浮かべた。


あの日以来、慧音は日を追う毎に衰えていった。
食事を摂っても、ほとんどを吐いてしまう。
やはり明日からはお粥にするべきだろうか、妹紅はそう考えながら小さな米桶の蓋を開ける。
立ち上る白い湯気に、慧音の目が反応した。
おへらで茶碗に盛られた米を目で追う。
それが配膳台に置かれると、それまで虚ろだった慧音の表情が、陽が差したように明るくなった。
まるで幼子のように屈託の無い笑顔を浮かべると、慧音は茶碗の中に両手を突っ込んだ。
焚きたての熱さに一瞬眉をしかめるが、そのまま米の塊を取り出す。
そして布団から立ち上がろうとして――倒れる。
味噌汁をよそおうとして鍋の方を向いていた妹紅が振り向く。
だが、その目に動揺の色は無かった。

慧音の身体は弱りきっており、歩く事すらままならなかった。
それでも、床を這って壁に辿り着き、肩を壁に持たれさせながら立ち上がる。
胸には、米の塊を大事そうに両手で抱えている。
着物をはだけさせながらも、壁伝いに歩いて外へ出ようとする。

また、あの庵の場所へ行こうとしている。

今はもう何も無いあの場所へ。

妹紅はお椀とおたまを置いて立ち上がり、ゆっくり慧音に近づく。
その肩を優しく掴むと、慧音が怯えた表情で振り向いた。


612 名前:名前が無い程度の能力 投稿日:2006/10/21(土) 07:27:32 [ ObpshfuM ]
「手、火傷しちゃうから、それを戻して、戻ろう…」
言いながら、慧音が両手に握っている米に触れようとする。
それを慧音は物凄い力で拒むと、一層強く米の塊を胸中に抱く。
先程までの童子のような表情が一変、怒りの形相になり、獣のように唸りながら妹紅を睨みつけてきた。
そんな慧音を、妹紅はそっと抱きしめる。
「慧音、大丈夫だから、あの子達は大丈夫だから…」

慧音はその抱擁を肩で振りほどこうとしながら、なおも屋外へ出ようとする。
だが衰弱した体は思うように動かず、妹紅にも抱きすくめられているので前に進めない。
慧音は身体を弱々しく揺すりながら、食いしばった歯の間から嗚咽を漏らし始めた。
涙を流し、赤子が発するなん語のような意味の無い声を上げて泣き叫んだ。

「ご飯もちゃんと届けてあるから、慧音は心配しないで…」
慧音の背中をさすりながら、妹紅はできる限り優しく囁いた、震える声で。
ゆっくりと、慧音と共にその場に座りながら、その背中を撫で続ける。
慧音の表情と呼吸が、少しずつ穏やかなものに戻っていく。



妹紅は、ふと視線を感じて戸口に目を向けた。
一人の少年が、山菜を乗せた笊を持ったまま、土間に立ち尽くしていた。
時々食べ物を届けてくれる少年。
口減らしを免れて生き残った、数少ない里の子。

「あぁ、いつもありが…」
妹紅が少年に礼を述べようとすると、慧音が妹紅の腕の中から抜け出て少年の方へ駆け出した。
やはり数歩も進まぬ内に床に転倒するが、戸口の少年の足元に辿り着く。
少年は驚き、固まった様子で慧音を見おろす。

慧音は尻を床につけたままの座り方で、下方から少年に微笑みかけ、両手を差し出した。
その手の中には握りつぶされた米の塊。
動揺する少年が慧音の顔とソレを交互に見つめる。
妹紅はその様子を呆然と見ていた。

ずい、と慧音がさらに少年の顔前に両手を突き出す。
少年は戸惑いながらも笊を板間に置き、潰れた米の塊を両手で受け取った。
慧音は満足そうに微笑むと、米粒がついたままの両手で少年の頭を胸に抱きかかえた。
少年の髪に米粒が絡みつくのも構わずに、愛しそうに頭を撫でる。
慧音の腕の中から、少年が困ったように妹紅の方を向く。
妹紅は座ったまま口を押さえて俯き、肩を震わせて泣く事しかできなかった。