623 名前が無い程度の能力 [sage] 2012/09/03(月) 20:26:28 ID:CUnIdv5s0

人間はどんなに長くても百年と少しの時間でいなくなってしまう
妖怪だって数百年も経てば寿命を迎えることがある

…いやだ

フランドール・スカーレットは強く願った
自身の持つ「あらゆるものを破壊する」力で、
霊夢や魔理沙、咲夜、美鈴たちの寿命を破壊し、ずっと一緒に
いられるよう力を尽くした

…結果として、願いは叶った
彼女たちは百年以上の時が過ぎても、出会った頃とほとんど
変わらぬ姿で紅魔館に遊びに来てくれていた
その永い交遊の裏にも、フランドールの力が働いていた

…他の場所にいかないで。私とずっと遊ぼうよ

フランドールは彼女達の運命すら破壊した
だが彼女達がそれに気付く事はなかった
違和感や猜疑心すらも、フランドールが破壊したからだ
不都合な現実をことごとく破壊しながら、フランドールは彼女達と過ごす時を
無邪気に笑って楽しんでいた

しかし、その時は永遠ではなかった

はじめは些細なものだった
話しかけた時の反応が鈍かったり、口から出る言葉が時々たどたどしくなったり…
フランドールも「おかしいな」と思いつつも、気のせいだと信じ、彼女達を傷つけまいと気付かぬ振りをした

…だが、それは気のせいなどではなかった

「あなた、誰だっけ」
いつも自分微笑むを向けてくれた巫女が、困ったような顔をしてそう言った
「ここ、何?あれ、わたし、あれ、あああ、ああ」
紅魔館に訪れた魔法使いが、突然立ち止まったかと思うとキョロキョロとしだし、奇妙な声を上げた
「………」
あのメイド長すら、時折立ち止まって動かなくなる。まるで、人形のように
「ぶつぶつ…ぶつぶつ…」
美鈴すらも、門番をしながらよくわからないことを小声で呟き続けるようになっていた

やがて、巫女と魔法使いは館に来なくなり、美鈴や咲夜が部屋から出てこなくなった
心配したフランドールが手始めにと思い咲夜の部屋を訪れると、咲夜はベッドの上で動かなくなっていた
死んでいるわけではない。呼吸はしているし、血色も生きている人のそれだ
なのに彼女は動かない。さりとて眠っているわけでもない。目を見開いたまま、ただただ、動かない

そんな馬鹿な。フランドールは慌てた
咲夜は死んではいない。だが、これは、こんなものは――

愕然とするフランドールの後ろに、いつの間にかレミリアが暗い顔で立っていた
それまでフランドールの行動に何も言わなかった姉が、搾り出すような声で、告げた

「どんなに命を永らえさせても、どんなに運命を弄んでも――― ヒトのココロは、数百年の時には耐えられない」

それだけをいい終えると、レミリアはふらふらとした足取りでフランドールの前から姿を消した
後には、どうすることもできなくなった、ちっぽけな少女だけが残された

―――フランドールは破壊した。自分の傍から友達を奪ってしまうものを、片っ端から壊した。

咲夜は動かない。ベッドの上で、ずっと天井を見つめている

―――彼女達の寿命も、運命も、病も、不運も、不都合も、何もかも

美鈴は動かない。自室の壁にもたれたまま、門番の真似事をした姿のまま固まっている

―――そうして気付かぬうちに、気付けぬうちに、

魔理沙は動かない。魔法の森の一角で、石に躓いてこけた姿で止まっている

―――彼女の傍から離れていこうとしていた彼女達そのものを、

霊夢は動かない。博麗神社の裏庭で、自らが干そうとした洗濯物に包まれて倒れていた

―――破壊してしまった



624 名前が無い程度の能力 [sage] 2012/09/03(月) 20:35:16 ID:CUnIdv5s0

はぐ!誤字があったので訂正
×:いつも自分微笑むを向けてくれた巫女が、困ったような顔をしてそう言った
○:いつも自分に微笑みを向けてくれていた巫女が、ある日突然困ったような顔でそう言った

ちなみにパチェはレミリアが死守しました


  • フラン・・・可哀想・・・その気持ち痛いほどわかる・・・ -- サクラクローバー (2014-10-13 17:12:34)
  • そしてだれも居なくなるのか? -- キング クズ (2016-07-10 04:59:54)
  • ↑そして誰もいなくなった -- 醤油 (2016-07-24 10:31:56)
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最終更新:2016年07月24日 10:31